• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C04B
管理番号 1249110
審判番号 不服2009-7678  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-09 
確定日 2011-12-22 
事件の表示 特願2002-107087「アルミナセラミックスセッター及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月28日出願公開、特開2003-306386〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯・本願発明
本願は平成14年4月9日の出願であって、平成20年3月24日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年6月2日に意見書及び手続補正書が提出され、平成21年3月6日付けで拒絶査定され、同年4月9日に拒絶査定不服審判請求されたものであり、技術説明のための面接を希望する旨の記載が拒絶査定不服審判請求書に記載されていたから平成23年9月22日に技術面接を行い、この技術面接を踏まえて同年10月3日に上申書が提出されたものである。
本願請求項1?9に係る発明は、平成20年6月2日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項に特定されるとおりであるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

【請求項1】 セラミックス系電子デバイス部品の製造や、射出成形によって得られる金属系部品の製造の際の熱処理または焼成工程に用いる、複数の貫通孔を有するセラミックスセッターにおいて、その構成材料は、少なくとも98重量%以上99.5重量%以下のアルミナを含み、シリカ(酸化ケイ素)の含有量が0.3重量%以下であり、且つその形態は、相対密度(かさ密度/理論密度×100)が95%以上であって、上記複数の貫通孔のそれぞれの形状が、その長手方向において内径が略同一の直線状で、該内径の平均孔径が0.3?1mmであり、且つ、複数の貫通孔が設けられている部品を載せる部分の気孔率が30?70容量%であることを特徴とするセラミックスセッター。

第2.引用文献
1.引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された特開平11-79853号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載され、視認される。
(1)「【請求項1】セッターの厚みが、0.2mmから2mmの範囲内にあり、理論密度の95%以上に相当する焼結体密度を有し、焼成物との接触面に独立した貫通孔を形成させたことを特徴とする焼成用セッター。」(特許請求の範囲 請求項1)
(2)「【請求項2】請求項1に記載の貫通孔の1個の面積が、0.07mm^(2)から36mm^(2)の範囲内にあることを特徴とする焼成用セッター。」(特許請求の範囲 請求項2)
(3)「【請求項3】請求項1及び請求項2に記載の独立した貫通孔の開孔率が、10%から60%の範囲内にあることを特徴とする焼成用セッター。」(特許請求の範囲 請求項3)
(4)「【請求項5】請求項1?4のいずれかの請求項に記載のセッターの材質が、アルミナ・・・・・・を主成分とする複合材料からなることを特徴とする焼成用セッター。」(特許請求の範囲 請求項5)
(5)「【請求項6】請求項1?5のいずれかの請求項に記載のセッターが、泥漿鋳込成形法あるいはドクターブレード法により成形した後、この成形体に打抜加工により貫通孔を形成させ、焼成したことを特徴とする焼成用セッターの製造方法。」(特許請求の範囲 請求項6)
(6)「【産業上の利用分野】本発明は、電子材料部品などを焼成する際に用いられるセッターに関するものである。
【従来の技術】積層コンデンサ、高電圧コンデンサなどを含むセラミックコンデンサ、圧電セラミックスなどの圧電材料、マイクロ波誘電体、積層LC複合チップ、SAWフィルタなどの高周波部品、半導体コンデンサ、PTCサーミスタ、NTCサーミスタ、セラミックバリスタ、セラミックセンサーなどの半導体セラミックスの原料としてチタン酸バリウム(・・・・・・)、チタン酸ジルコン酸鉛(・・・・・・)、チタン酸ストロンチウム(・・・・・・)、酸化亜鉛(・・・・・・)、酸化ジルコニウム(・・・・・・)、稀土類酸化物、ガラス材料などの酸化物、あるいは、これらの複合物が用いられている。
このような電子部品は、一般に、これらの原料を調合し、成形し、焼成用セッターにのせ、800?1400℃で焼成することで、セラミックス素体をつくり、この素体へ電極を形成させることで素子がつくられ、最終的に組み立てることで部品となっている。」(【0001】?【0003】)
(7)「本願発明は、これらの問題の解決された、セッターの厚みが薄いので、焼成物に均一に熱が伝わりやすく、セッター上での温度差による焼成物の焼きむらがなく、焼結体密度が高いので機械的強度もあり、焼成物との接触面に独立した貫通孔が形成されているため、セッター上での焼成物の安定性がよく、焼成物とセッターが点接触に近いので、焼成温度が高くなっても、焼成物とセッターが接着しにくく、セッター表面に敷粉や焼結体などの接着物がないので、繰り返して使用しても、異物混入がなく、焼成物の回収も容易である、焼成用セッターの提供を目的とするものである。」(【0015】)
(8)「(g)貫通孔の形成方法
・・・・・・。得られたシート状の成形体を打抜金型を用いて打抜加工し、成形体に一定間隔の孔を開けることで、表面に独立した貫通孔が形成された成形体が得られる。特に、成形体と打抜金型の離型性をよくするため、打抜金型の加工面にテーパーを付けることが好ましい。」(【0025】)
(9)「円形平行型貫通孔セッター上面図とその開孔率を求める式である」と説明されている図1をみると、複数の円形の貫通孔が見て取れる。

2.引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された特開平7-315915号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
(10)「即ち、本発明は、下記の配向性アルミナ質焼結体、並びに該焼結体からなる・・・・・・セッター・・・・・・を提供するものである。」(【0006】)
(11)「以下に、本発明の配向性アルミナ質焼結体が満足すべき要件について具体的に説明する。
・・・・・・
iii)該焼結体のAl_(2)O_(3)含有量が99.5重量%以上であること。
焼結体中のAl_(2)O_(3)含有量は、99.5重量%以上であることが必要であり、99.7重量%以上であることが好ましく、かかる範囲の含有量とすることによって、高い耐熱性及び耐食性を有するものとなる。Al_(2)O_(3)の含有量が、99.5重量%を下回ると、焼結体中の不純物量が増加し、アルミナ結晶以外の結晶やガラス相がアルミナ結晶粒界に多く生成して、耐熱性、耐食性等を低下させると共に、結晶成長を抑制して配向度の低下をきたし、このために粒界が増加して被熱処理物と反応しやすくなって耐食性が低下するので好ましくない。該焼結体中には焼結助材としてSiO_(2)・・・・・・等が含まれてもよく、SiO_(2)量は0.2重量%以下、・・・・・・であることが好ましく・・・・・・0.1重量%以下であることがより好ましい。」(【0019】?【0043】)

第3.引用文献1に記載された発明
1.引用文献1の上記(1)には「セッターの厚みが、0.2mmから2mmの範囲内にあり、理論密度の95%以上に相当する焼結体密度を有し、焼成物との接触面に独立した貫通孔を形成させた」「焼成用セッター」が記載されているといえ、同(2)によれば、この「焼成用セッター」の「貫通孔の1個の面積が、0.07mm^(2)から36mm^(2)の範囲内にあ」り、また、同(3)によれば、この「貫通孔」の「開孔率が、10%から60%の範囲内にあ」るといえ、この「貫通孔」は、同(9)の視認事項からみて複数の円形のものといえる。
2.上記1の「焼成用セッター」は、同(4)によれば、その材質は「アルミナ・・・・・・を主成分とする複合材料からなる」ものだからアルミナを含むものといえ、同(6)によれば、「電子材料部品などを焼成する際に用いられる」ものである。
3.上記1.?2.の検討を踏まえて、引用文献1の上記(1)?(6)、(8)及び(9)の記載事項、視認事項を本願発明の記載ぶりに則して整理すると、引用文献1には、
「電子材料部品などを焼成する際に用いる、複数の貫通孔を有する焼成用セッターにおいて、その材質はアルミナを含む複合材料で、セッターの厚みが、0.2mmから2mmの範囲内にあり、理論密度の95%以上に相当する焼結体密度を有し、上記複数の貫通孔のそれぞれの形状が円形であり、貫通孔の1個の面積が、0.07mm^(2)から36mm^(2)の範囲内にあり、貫通孔の開孔率が、10%から60%の範囲内にある焼成用セッター。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

第4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
1.引用発明の「電子材料部品」は、引用文献1の上記(6)の記載をみると、セラミックスを用いたものといえ、本願発明の「セラミックス系電子デバイス部品」といえる。
そうすると、引用発明の「電子材料部品などを焼成する際に用いる」とは、本願発明の「セラミックス系電子デバイス部品の製造の際の焼成工程に用いる」に相当する。
2.引用発明の「焼成用セッター」の「材質はアルミナを含む複合材料」であるから、本願発明の「セラミックスセッター」の「構成材料は、少なくとも98重量%以上99.5重量%以下のアルミナを含み、シリカ(酸化ケイ素)の含有量が0.3重量%以下であ」ることと、アルミナを含む点で共通するし、引用発明の「焼成用セッター」は、本願発明の「セラミックスセッター」といえる。
3.引用発明の「理論密度の95%以上に相当する焼結体密度」とは、本願発明の「相対密度(かさ密度/理論密度×100)が95%以上」に相当する。
4.引用発明の貫通孔は、引用文献1の上記(5)及び(8)の記載によれば、打抜加工により形成されており、該(8)に「成形体と打抜金型の離型性をよくするため、打抜金型の加工面にテーパーを付けることが好ましい。」と記載されていること、セッターの厚みが0.2mmから2mmの範囲内にあることから、セッターの厚さ方向に貫通孔の内径がほぼ等しい、すなわち、本願発明でいう「複数の貫通孔のそれぞれの形状が、その長手方向において内径が略同一の直線状」であるとみることができる。
5.引用発明の貫通孔は円形であり、その面積が0.07mm^(2)から36mm^(2)の範囲内にあるから、貫通孔の直径は0.3(=2×√(0.07/3.14))?6.8(=2×√(36/3.14))mmであるといえ、上記4.で検討したことを併せみると、本願発明の貫通孔の内径の平均孔径と0.3?1mmの範囲で一致しているとみることができる。
6.引用発明の「貫通孔の開孔率」は、本願発明の「複数の貫通孔が設けられている部品を載せる部分の気孔率」に相当するから、引用発明の「貫通孔の開孔率」が「10%から60%の範囲内にある」ことは、本願発明の該気孔率が「30?70容量%」と「30?60容量%」で一致している。
7.上記1.?6.の検討を踏まえると、両者は、
「セラミックス系電子デバイス部品の製造の焼成工程に用いる、複数の貫通孔を有するセラミックスセッターにおいて、その構成材料はアルミナを含み、且つその形態は、相対密度(かさ密度/理論密度×100)が95%以上であって、上記複数の貫通孔のそれぞれの形状が、その長手方向において内径が略同一の直線状で、該内径の平均孔径が0.3?1mmであり、且つ、複数の貫通孔が設けられている部品を載せる部分の気孔率が30?60容量%であることを特徴とするセラミックスセッター。」である点で一致し、次の点で相違している。
相違点1:セラミックスセッターの構成材料がアルミナを含む点につき、本願発明は、「少なくとも98重量%以上99.5重量%以下のアルミナを含み、シリカ(酸化ケイ素)の含有量が0.3重量%以下であ」るのに対し、引用発明は、アルミナの含有量やシリカ(酸化ケイ素)の含有量について特定がない点

そこで、この相違点1について検討する。
8.引用文献2の上記(10)及び(11)を参照すると、セッターの構成材料として、「焼結体中のAl_(2)O_(3)含有量は、99.5重量%以上であることが必要であり」、「SiO_(2)量は0.2重量%以下であることが好まし」いことが記載されているといえる。
9.そうすると、引用文献2の(10)及び(11)の記載に接した当業者は、引用発明の焼成用セッターの構成材料として、この(10)及び(11)の記載に記載されたもの、すなわち、Al_(2)O_(3)含有量が、99.5重量%以上、SiO_(2)量が0.2重量%以下のものを用いる動機付けを得るといえ、上記相違点1に係る本願発明の特定事項に含まれる「99.5重量%のアルミナを含み、シリカ(酸化ケイ素)の含有量が0.3重量%以下」とすることは当業者であれば適宜なし得ることである。
10.そして、本願発明の「セッター材料との反応を防止」する、「セッター内部における均一な温度分布の実現」という作用・効果(【0011】)は、引用文献1の上記(7)に記載されており、格別のものではないし、また、「雰囲気ガスの均一な分散、外部への容易なガスの移動」という作用・効果(【0011】)は、セラミックスセッターのみによってもたらされるものではなく、焼成炉におけるガスの供給・排出方法等にもよるいえるが、引用発明においても本願発明と同じ貫通孔や相対密度等を有しているから、引用発明も有している作用・効果といえる。

第5.上申書における請求人の主張について
請求人は、平成23年10月3日付けの上申書において、「射出成形によって得られる金属系部品の製造」を削除し、アルミナの含有量について「98重量%?99重量%のアルミナ」とする補正を希望する旨を述べているので検討する。
1.「射出成形によって得られる金属系部品の製造」の削除について
(1)本願発明は「セラミックス系電子デバイス部品の製造や、射出成形によって得られる金属系部品の製造の際の熱処理または焼成工程に用いる」と特定しており、上記「や」は「並立助詞」であるから、この特定は、「セラミックス系電子デバイス部品の製造」あるいは「射出成形によって得られる金属系部品の製造」「の際の熱処理または焼成工程に用いる」と解するべきものである。
(2)そして、上記「第4.対比・判断」の「1.」のところで述べたように、引用発明の「電子材料部品などを焼成する際に用いる」とは、本願発明の「セラミックス系電子デバイス部品の製造の際の焼成工程に用いる」に相当するから、「射出成形によって得られる金属系部品の製造」を削除しても、引用発明と本願発明の一致点・相違点は何ら変わらない。
2.アルミナの含有量について「98重量%?99重量%のアルミナ」とする補正について
(1)引用文献2の上記(11)には、「Al_(2)O_(3)の含有量が、99.5重量%を下回ると、粒界が増加して被熱処理物と反応しやすくなって耐食性が低下するので好ましくない」旨の記載があり、一見、Al_(2)O_(3)の含有量を99.5重量%を下回るようにすることを引用文献2は阻害するような記載がなされているが、引用文献2でいう耐食性とは、セッターと被熱処理物との反応に対するものであって、この耐食性は被熱処理物の材質や、被熱処理物の熱処理温度、熱処理雰囲気などの様々な要因によって変わるものといえ、この99.5重量%という値は普遍的な下限値といえるものではないことは明らかであって、Al_(2)O_(3)の含有量を99.5重量%を下回るようにすることは格別困難なこととはいえない。
(2)一方、本願明細書の【0017】には、「本発明のセッターは、少なくとも98重量%のアルミナを含有し、且つシリカの含有量が0.3重量%以下に制限されていることを特徴とする。本発明のセッターは、少なくとも98重量%のアルミナ、好ましくは、少なくとも99重量%、更に好ましくは、少なくとも99.5重量%からなるため、特に、高温におけるセッターの化学的に高い耐久性が実現される。」との記載がなされている。そうすると、この補正希望は、アルミナの含有の上限値を、さらに好ましい範囲の下限値である99.5重量%から、好ましい範囲の下限である99重量%に変更するものであるが、アルミナ含有量が99.5重量%のときと99重量%のときとを比較すると、本願発明のセラミックスセッターの物性が99?99.5重量%の範囲で臨界的に変化することは実施例の記載を参照しても、本願明細書からは確認することができないし、0.5重量%の変化で物性が大きく変わることも予想できない。
(3)してみると、引用発明において、Al_(2)O_(3)すなわち、アルミナの含有量を99.5重量%よりも低い値、例えば99重量%とすることは、当業者ならば適宜なし得ることといえる。
3.よって、上記の各補正希望を受け入れたとしても、本願発明は依然として特許を受けることはできないから、補正の機会を与えない。

第6.むすび
以上のとおり、本願発明は引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-20 
結審通知日 2011-10-25 
審決日 2011-11-07 
出願番号 特願2002-107087(P2002-107087)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横島 重信櫻木 伸一郎  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 目代 博茂
中澤 登
発明の名称 アルミナセラミックスセッター及びその製造方法  
代理人 近藤 利英子  
代理人 近藤 利英子  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ