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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1249120
審判番号 不服2009-23409  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-30 
確定日 2011-12-22 
事件の表示 特願2006-114810「携帯電話機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月28日出願公開、特開2006-262506〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成12年6月1日に出願した特願2000-164154号の一部を平成18年4月18日に新たな特許出願としたものであって、平成21年9月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年11月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。


第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年11月30日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の平成21年4月9日付けの手続補正の特許請求の範囲の請求項1に記載された、
「【請求項1】
情報を記録するメモリと、
データを表示する表示部と、
画像を撮影する撮影部と、
前記撮影部による画像撮影中に、前記メモリの記録可能残容量を前記表示部に表示する制御部とを備え、
前記制御部は、前記メモリの記憶可能残容量が予め定められた容量以下になったときに、前記表示部に前記メモリの記録可能残容量を表示する、携帯電話機。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を、

「【請求項1】
動画像または静止画像である画像情報、および音声情報を含む複数種類の各種情報を記録可能なメモリと、
データを表示する表示部と、
画像を撮影する撮影部と、
前記撮影部による画像撮影中に、前記メモリの記録可能残容量を前記表示部に表示する制御部とを備え、
前記制御部は、前記メモリの記憶可能残容量が予め定められた容量以下になったときに、前記表示部に前記メモリの記録可能残容量を、静止画像を記憶している場合には記憶可能枚数を、動画像を記憶している場合には記憶可能時間を、音声情報を記憶している場合には録音可能時間を示すように前記情報の種類に応じて文字情報およびグラフィックを用いて表示する、携帯電話機。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件
上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「情報を記録するメモリ」を「動画像または静止画像である画像情報、および音声情報を含む複数種類の各種情報を記録可能なメモリ」と限定し、「前記メモリの記録可能残容量を表示する」を「前記メモリの記録可能残容量を、静止画像を記憶している場合には記憶可能枚数を、動画像を記憶している場合には記憶可能時間を、音声情報を記憶している場合には録音可能時間を示すように前記情報の種類に応じて文字情報およびグラフィックを用いて表示する」と限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成18年法律第55号改正法の附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

(2)独立特許要件
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

[補正後の発明]
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。

[引用発明]
A.原審の拒絶理由に引用された特開平9-135414号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【請求項1】 少なくとも撮影した画像を記録媒体に記録するデジタルスチルビデオカメラにおいて,前記記録媒体の記録残容量を算出する残容量算出手段と,前記記録媒体の記録残容量を通知する残容量通知モードを設定する設定手段と,音声を出力する音声出力手段と,前記設定手段を用いて残容量通知モードが設定された場合に,前記残容量算出手段で算出した記録残容量を前記音声出力手段を介して出力する残容量通知手段と,を備えたことを特徴とするデジタルスチルビデオカメラ。」
(2頁1欄2?10行)

ロ.「【請求項4】 少なくとも撮影した画像を記録媒体に記録するデジタルスチルビデオカメラにおいて,前記記録媒体の記録残容量を算出する残容量算出手段と,前記記録媒体の記録残容量を通知する通知条件を指定する通知条件指定手段と,音声を出力する音声出力手段と,前記通知条件指定手段で通知条件が指定されており,かつ,前記残容量算出手段で算出した記録残容量が前記通知条件を満たす場合に,前記残容量算出手段で算出した記録残容量を前記音声出力手段を介して出力する残容量通知手段と,を備えたことを特徴とするデジタルスチルビデオカメラ。」
(2頁1欄38?48行)

ハ.「【0005】一方,デジタルスチルカメラにおいても多機能化が進み,撮影画像を静止画として記録する静止画モードに加えて,静止画を連続的に記録する連写モードや,音声を記録する音声モード,静止画と同時に音声を記録する静止画+音声モード,ビデオカメラのように動画を記録する動画モード,文字等をきれいに記録する文字モード等のように種々の記録モードが提供されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,上記従来のデジタルスチルビデオカメラによれば,記録媒体の残りデータ量(記録残容量)が少なくなったときに適切な警告を与えるようにしているものの,何れも表示によって警告を行うため,ユーザが警告表示に気づかない場合には,撮影した画像の記録を行えないことをもあるという問題点があった。
【0007】本発明は上記に鑑みてなされたものであって,ユーザの注意を喚起し,記録媒体の記録残容量を的確に知らせることを目的とする。」
(2頁2欄20?38行)

ニ.「【0014】カメラ本体101は,レンズ・オートフォーカス(AF)・絞り・フィルター・メカ機構等からなるレンズユニット104と,レンズユニット104を介して入力した映像を電気信号(アナログ画像データ)に変換するCCD(電荷結合素子)105と,CCD105から入力したアナログ画像データをデジタル画像データに変換するA/D変換器106と,A/D変換器106から入力したデジタル画像データを色差と輝度に分けて各種処理,補正および画像圧縮/伸長のためのデータ処理を施すIPP(Image Pre-Processor )107と,JPEG準拠の画像圧縮/伸長の一過程である直交変換を行うDCT(Discrete Cosine Transform )108と,JPEG準拠の画像圧縮/伸長の一過程であるハフマン符号化・複合化を行うコーダー(Huffman Encoder/Decoder )109と,圧縮処理された画像とマイク111から取り込まれ,デジタル化された音声を一旦蓄え,同時処理してメモリカード103への記録・読み出しを行うMCC(Memory Card Controller)110と,マイク111によって入力した音声をデジタル変換すると共に,圧縮/伸長処理を施すADPCM(Adaptive Differential Pulse Code Modulation )112と,上記各部を制御するCPU113と,ROMおよびRAMからなるシステム用のワークメモリであるMEM114と,リモコン受信機能を有したリモコン機能部115と,後述する各種ボタン・スイッチ群のキー入力を行うと共に,表示パネルの表示制御を行う操作表示部116と,上記各部に電力を供給するバッテリー117とを備えている。なお,118は光学ローパスフィルターを示す。」
(3頁3欄49行?4欄26行)

ホ.「【0020】図3は,表示パネル212の表示画面を示し,記録時に,残り枚数・残り時間・日付・時間・カード状態表示・モード表示に使用し,再生時に,画像ファイル番号表示・カウンター表示・カード状態表示・モード表示に使用する記録情報表示部301と,ストロボの使用有無・使用状態を示すストロボ表示部302と,メモリカード103がセットされているか否かを示すカード表示部303と,メモリカード103用バッテリー(電池)の残量有無を示すメモリカード用電池マーク部304と,バッテリー117の残量有無を示す電池マーク部305と,静止画モードの設定を示す静止画モード表示部306と,音声モードの設定を示す音声モード表示部307と,連写モードの設定を示す連写モード表示部308と,動画モードの設定を示す動画モード表示部309と,文字モードの設定を示す文字モード表示部310とを有している。
【0021】なお,同図では,全ての情報を同時に表示した状態を示しているが,実際は必要な情報のみが表示される。また,実施例1では,後述するように静止画モード表示部306と音声モード表示部307とを用いて静止画+音声モードの表示を行うものとする。
【0022】図4は,設定された記録モードによる表示パネル212上の表示画面の切り替わりを示し,図2で示した記録モードボタン204を押下する度に,図示の如く,表示パネル212の表示画面が切り替わる。なお,図において,401は静止画モードでの撮影可能な残り枚数,402は静止画+音声モードでの撮影可能な残り枚数,403は連写モードでの撮影可能な残り枚数,404は動画モードでの撮影可能な残り回数,405は音声モードでの撮影可能な残り時間,406は文字モードでの撮影可能な残り枚数を示し,記録モードの切り替えに伴ってメモリカード103の記録残容量に基づいて算出された値が表示される。」
(4頁5欄18行?50行)

ヘ.「【0030】なお,デジタルスチルビデオカメラの記録モードとしては,静止画モード,静止画+音声モード,連写モード,動画モード,音声モード,文字モードと多数存在する。したがって,メモリカード103に記録する際の記録容量も使用する記録モードに応じて異なる。このため,記録モードに応じた記録残容量を算出し,スピーカー120を介して音声伝達することが重要である。」
(5頁7欄23行?30行)

ト.「【0053】〔実施例4〕実施例4のデジタルスチルビデオカメラは,メモリカード103の記録残容量を通知する通知条件を指定可能とし,該通知条件が指定されており,かつ,メモリカード103の記録残容量が該通知条件を満たす場合に,記録残容量を音声伝達するものである。
【0054】なお,実施例4のデジタルスチルビデオカメラの構成は,実施例1と同様であるため,ここでは異なる部分のみを説明する。
【0055】図8は,実施例4の動作を示す概略フローチャートを示し,カメラ本体101のメインスイッチ201を電源ON(記録モード)または電源ON(再生モード)に切り替えると(S801),CPU113はシステムの初期設定を開始し,同時にメモリカード103の記録残容量(容量A)を算出する(S802)。
【0056】その後,システムの初期設定が終了し,エラー等の発生がなければ,使用可能状態に移行する(S803)。
【0057】使用可能状態で,ユーザが操作表示部116を介してモード選択を行い,選択したモードの実行を入力すると,CPU113は選択されたモードによる動作マル1(なお,引用例1原文においては,マル1は丸数字の1で記載されている。以下同様。)?マル5を実行する(S804)。なお,詳細な説明は省略するが,記録モードはメインスイッチ201を電源ON(記録モード)にセットすることにより選択され,削除モード,残容量通知モードおよび通知条件設定モード(メモリカード103の記録残容量を通知する通知条件を指定するモード)は電源ON(再生モード)にセットした後,モード選択を行うことによりセットされる。また,終了モードはメインスイッチ201を電源OFFとすることにより,実際の電源断の前に実行される。
マル1 記録モードが選択された場合,CPU113は画像・音声情報をメモリカード103に記録した後,記録に要した容量(容量B)を算出して保持する。
マル2 削除モードが選択された場合,CPU113はメモリカード103から削除した画像・音声情報の容量(容量C)を算出して保持する。
マル3 残容量通知モードが選択された場合,残容量通知モードを設定し,現時点での記録残容量(容量D)を算出する。ただし,容量D=容量A-容量B+容量Cによって算出する。
マル4 通知条件設定モードが選択された場合,リミッタフラグをセットし,記録残容量の音声伝達を行う通知条件を設定する。ここで,通知条件として限界容量を設定する。限界容量としては,メモリカード103の総記録容量に対するx%,またはxMB(メガ・バイト),残り枚数がx枚,残り時間がx時間,残り記録回数がx回のように設定できる。
マル5 電源OFFによって終了モードが選択された場合,システムの終了を設定する。このとき,メモリカード103から容量Aを読み込むタイプの場合には,現時点での記録残容量(容量D)をメモリカード103の所定の領域に記録する。
【0058】次に,システムの終了か否かを判定し(S805),終了であれば処理を終了する。また,終了でなければ,残容量通知モードが設定されているか否かを判定し(S806),設定されていなければ,ステップS804へ戻り,設定されていれば,ステップS807へ進む。
【0059】ステップS807では,通知選択モードで選択・設定された記録モードに基づいて,現時点での記録残容量(容量D)から該当する記録モード毎の残り枚数・残り時間を算出する。続いて,リミッタフラグがセットされているか否かを判定し(S808),セットされていなければ,ステップS810へ進み,スピーカー120を介して残り枚数・残り時間(すなわち,記録残容量D)を音声伝達し,ステップS804へ戻る。
【0060】一方,ステップS808でリミッタフラグがセットされている場合には,記録残容量(容量D)が限界容量未満であるか否かを判定し(S809),容量D<限界容量であれば,スピーカー120を介して残り枚数・残り時間(すなわち,記録残容量D)を音声伝達し,ステップS804へ戻る。また,容量D<限界容量でなければ,そのままステップS804へ戻る。
【0061】前述したように実施例4では,記録残容量を知らせるタイミングを通知条件によって設定できるので,ユーザーが所望のタイミングで記録残容量の音声伝達を行うことができる。」
(7頁11欄13行?12欄39行)

上記イ.乃至ト.の摘記事項及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、
引用例1には、静止画モード、音声モード、動画モード等の種々の記録モードがあるデジタルスチルカメラについて記載され、
上記ハ.及び上記ヘ.に記載のように、静止画、音声、動画等はメモリカード103に記録され、ここで、記録される動画及び静止画は技術常識から画像情報であり、記録される音声は音声情報であり、
上記ホ.には、表示パネル212に、残り枚数、残り時間、日付、時間、カード状態表示、モード表示等の記録情報を表示する表示パネル212が記載されており、
上記ニ.及び図1には、レンズユニット104、光学ローパスフィルター118、CCD(電荷結合素子)105により画像が撮影されるようになされており、
上記へ.及び上記ト.には、記憶残容量にかかる情報を音声伝達するスピーカー120が記載され、
上記ト.には、CPU113が、記録モードにおいて、記録残容量をスピーカー120を介して音声伝達することが記載されており、ここで、記録モードは画像撮影中であるといえ、記録残容量はスピーカーに伝達されているといえ、
上記ト.には、通知条件設定モードが選択され、予め限界容量が設定されているとき、記憶残容量<限界容量、すなわち記憶残容量が限界容量未満となった場合に、CPUが記録残容量を音声伝達することが記載され、
そして、段落【0057】のマル4(なお,引用例1原文においては,マル4は丸数字の4で記載されている。)にかかる記載と段落【0022】の記載から、音声伝達される記録残容量として、静止画モードであるときは残り枚数、動画モードであるときは残り記録回数、音声モードであるときは残り時間のように設定できることが記載されている。

したがって、上記引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されている。

(引用発明1)
「動画像または静止画像である画像情報、および音声情報を含む複数種類の各種情報を記録可能なメモリカード103と、
記録情報を表示する表示パネル212と、
音声を出力するスピーカー120と、
画像を撮影するレンズユニット104、光学ローパスフィルター118、CCD(電荷結合素子)105と、
前記レンズユニット104、光学ローパスフィルター118、CCD(電荷結合素子)105による画像撮影中に、前記メモリカード103の記録残容量を前記スピーカー120に伝達するCPU113とを備え、
前記CPU113は、前記メモリカード103の記憶残容量が予め定められた限界容量未満になったときに、前記スピーカー120に前記メモリカード103の記録残容量を、静止画モードである場合には残り枚数を、動画モードである場合には残り記録回数を、音声モードである場合には残り時間を示すように前記情報の種類に応じて音声を用いて伝達するデジタルスチルビデオカメラ。」

B.また、原審の拒絶理由に引用された特開平5-75966号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

チ.「【請求項1】 撮影素子から得られる静止画像信号をA/D変換し、ディジタル化した信号を圧縮し、該圧縮信号を複数回記憶することができる記憶媒体を有する電子スチルカメラにおいて、
記憶媒体の残り容量を検出する検出手段と、撮影するごとに前記圧縮信号の容量を記憶する記憶手段と、画像1枚に相当する圧縮信号の容量で記憶媒体の残り容量を割ることにより撮影可能残り枚数を求める演算手段を設け、撮影済み枚数と、前記撮影可能残り枚数とを表示する表示手段を具備したことを特徴とする電子スチルカメラ。」
(2頁1欄2?12行)

リ.「【0026】
【実施例】以下、本発明による電子スチルカメラの実施例について図面を参照して説明す
る。図1は本発明による電子スチルカメラの外観図である。図1において、電子スチルカメラ本体11には開口部13があり、撮影した画像データを記憶するための記憶媒体であるメモリカード12が開口部13を通して挿入され、カメラ本体からの画像データがメモリカード12に記憶される。本体11の背面に設けられた表示装置14には、撮影済み枚数と、撮影可能な残り枚数もしくは残り容量とが表示される。残り枚数の表示数の決定方法については詳しく後述する。表示装置はもう1つ設けられており、液晶によって表示される表示装置15は、メモリカード12の内容を表示したり、電子式ビューファインダとして使用される。カメラの露光動作はレリーズ釦16によって開始される。モード設定用のダイヤル17は、通常はシャッター秒時や撮影レンズの絞りの設定に用いられるが、セレクト釦18を押しながら設定ダイヤル17を回動させることで表示装置15の内容を切り替えることができる。さらに本体上部には光学式のファインダ19が設けられている。
【0027】また、表示装置14に撮影済み枚数、撮影可能な残り枚数等を表示する代わりに、液晶等の表示装置15上に画像をオーバーラップさせて表示させてもよい。更に表示装置15の表示例としては、通常はメモリカード12に記憶されている内容のうちの指定した内容を表示していて、レリーズ釦16を半押しにすることで電子式ビューファインダに切り替えるようにしてもよい。
【0028】図2は本スチルカメラの構成図である。本スチルカメラはCPU21と、A/D変換部22、圧縮部23、メモリカード12、表示装置14、撮影枚数カウンタ24、撮像部25と、バッファメモリ26とで構成されている。図3はCPU21による制御の基本的な流れを示したフローチャート図である。ステップS10において、まず電源をONにすると表示装置に撮影済み枚数と撮影可能残り枚数もしくは残り容量が表示される。このときの撮影可能残り枚数の表示数の決定方法に付いては後述する。」
(7頁12欄19行?8頁13欄5行)

ヌ.「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、圧縮に際しては、撮影画面が単調な画面の場合と細かく複雑な画面の場合とで、圧縮処理方法によっては圧縮後のデータ量が常に一定になるとは限らなく、例えば±50%程度は圧縮後のデータ量がバラついてしまう。つまり1回の撮影で得られる圧縮後のデータ量の平均が 0.1MBで、この量が被写体の絵柄により±50%程度変わるとする。すなわち圧縮後のデータは0.05?0.2 MBの間でバラついてしまう。この様な場合に撮影済み枚数のみを表示する方式だと、記憶媒体に記憶可能な総撮影枚数が毎回変わってしまい、撮影者がその記憶媒体に撮影可能な残り枚数を知ることは不可能である。また総容量の異なる記憶媒体を使用した場合も同様である。これとは逆に、記憶媒体に記憶される1枚あたりの割当てを設定せずに撮影可能残り枚数のみを表示しようとすると、1枚ごとに撮影画面のデータ量がバラつくので、確実な残り枚数を表示することは不可能である。そこで請求項1から4の発明は、この様な従来の表示の問題点を克服するためになされたもので、撮影済み枚数と、撮影可能枚数もしくは残り容量とを同時に表示することにより、撮影者に確実に、撮影後の記憶媒体の残り状態とを知らせることを目的とする。」
(4頁6欄33行?5頁7欄5行)

ル.「【0049】さらに、設定ダイヤル17の回動によって、撮影済み枚数のみの表示や、撮影可能残り枚数もしくは撮影可能残り容量のみを表示できるようにしても良い。図10は、第9実施例として、図1における表示装置14の表示方法を示したものである。図10において、撮影済み枚数を表示するための1対で2桁までの数字を表すセブンセグメント素子61と、セブンセグメント素子61を取り囲むように配置されているシングルセグメント 62a、62b は撮影可能残り枚数を表示するものである。残り枚数に相当するシングルセグメント部分62bが点灯し、残りの範囲62aは消灯している。つまり撮影を繰り返し行うと、中央部の撮影済み枚数を表示するセブンセグメント61は1つずつ増加していき、周囲の撮影可能残り枚数を表すシングルセグメント62bは左回りに消灯していく。これにより視覚的に容易に撮影者へ残り枚数を示すことが可能となる。本実施例での撮影可能残り枚数は、前記第5実施例によって決定される。」
(10頁17欄3?19行)

ヲ.「【0108】まず図22は第17実施例として、撮影可能残り枚数を、撮影可能最小残り枚数と撮影可能最大残り枚数との数字の範囲、本図では15枚から20枚の範囲で表示するものである。 図23は第18実施例として、互いに隣接する表示部として例えば液晶表示の一部を点灯することで、撮影可能残り枚数範囲をバー表示したものである。本図においては15枚から20枚の範囲が点灯していて、残り枚数がこの範囲にあることを示している。」
(15頁27欄32?39行)

上記チ.乃至ヲ.の摘記事項及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、
引用例2には、画像データをメモリカードに記憶する電子スチルカメラについて記載され、
上記リ.及び【図2】には、CPUが表示装置に撮影可能な残り枚数もしくは残り容量を表示させることが記載され、
上記ル.及び上記ヲ.には、撮影可能な残り枚数もしくは残り容量を、文字情報及びグラフィック(シングルセグメント、バー)を用いて表示装置に表示することが記載されている。

したがって、引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されている。

(引用発明2)
「画像データを記録可能なメモリカードと、
データを表示する表示装置と、
前記メモリカードの撮影可能な残り枚数もしくは残り容量を前記表示装置に表示するCPUとを備え、
前記CPUは、前記表示装置に前記メモリカードの撮影可能な残り枚数もしくは残り容量を、文字情報およびグラフィックを用いて表示する、電子スチルカメラ。」

[対比]
補正後の発明と引用発明1を対比すると、
引用発明1の「メモリカード103」は、補正後の発明の「メモリ」に相当する。
引用発明1の「記録情報」は、補正後の発明の「データ」に相当する。
引用発明1の「表示パネル212」は、補正後の発明の「表示部」に相当する。
引用発明1の「レンズユニット104、光学ローパスフィルター118、CCD(電荷結合素子)105」は、画像を撮影するための構成であるから、補正後発明の「撮影部」に相当する。
引用発明1の「記憶残容量」は、記憶が可能な残容量であるから、補正後の発明の「記憶可能残容量」に相当する。
引用発明1の「スピーカー120に伝達する」と補正後の発明の「表示部に表示する」は、共に「報知手段に報知する」で一致する。
引用発明1の「CPU113」は、制御する装置であるから、補正後の発明の「制御部」に相当する。
引用発明1の「限界容量未満」の「限界容量」は容量の上限を示す値であり、「未満」であるか「以下」であるかは限界容量をどのように設定するかの差でしかないので、引用発明1の「限界容量未満」は、補正後の発明の「容量以下」と一致する。
引用発明1の「静止画モードである場合」は、「静止画モード」が静止画を記憶しているモードであるから、補正後の発明の「静止画像を記憶している場合」に相当し、引用発明1の「残り枚数」は、メモリーカードに記憶が可能な残り枚数であるから、補正後の発明の「記憶可能枚数」に相当する。
引用発明1の「動画モードである場合」は、「動画モード」が動画像を記憶しているモードであるから、補正後の発明の「動画像を記憶している場合」に相当し、引用発明1の「残り記録回数」と補正後の発明の「記憶可能時間」は、共に「可能残容量」で一致する。
引用発明1の「音声モードである場合」は、「音声モード」が音声情報を記憶しているモードであるから、補正後の発明の「音声情報を記憶している場合」に相当し、引用発明1の「残り時間」は、メモリーカードに録音が可能な残り時間であるから、補正後の発明の「録音可能時間」に相当する。
引用発明1の「音声を用いて伝達する」と補正後の発明の「文字情報およびグラフィックを用いて表示する」は、共に「所定の報知方法を用いて報知する」で一致する。
引用発明1の「デジタルスチルビデオカメラ」と補正後の発明の「携帯電話機」は、共に「電子機器」で一致する。

したがって、両者は以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「動画像または静止画像である画像情報、および音声情報を含む複数種類の各種情報を記録可能なメモリと、
データを表示する表示部と、
画像を撮影する撮影部と、
前記撮影部による画像撮影中に、前記メモリの記録可能残容量を報知手段に報知する制御部とを備え、
前記制御部は、前記メモリの記憶可能残容量が予め定められた容量以下になったときに、前記報知部に前記メモリの記録可能残容量を、静止画像を記憶している場合には記憶可能枚数を、動画像を記憶している場合には可能残容量を、音声情報を記憶している場合には録音可能時間を示すように前記情報の種類に応じて所定の報知方法を用いて報知する、電子機器。」

(相違点)
a)「報知手段に報知する」に関し、補正後の発明では「表示部に表示する」ことであるのに対し、引用発明1では「スピーカに伝達する」ことである点。
b)「動画像を記憶している場合には可能残容量を、」に関し、「可能残容量」が補正後の発明では「記憶可能時間」であるのに対し、引用発明1では「残り記録回数」である点。
c)「所定の報知方法を用いて報知する」に関し、補正後の発明では「文字情報およびグラフィックを用いて表示する」であるのに対し、引用発明1では「音声を用いて伝達する」である点。
d)「電子機器」に関し、補正後の発明は「携帯電話機」であるのに対し、引用発明1は「デジタルスチルビデオカメラ」である点。

[判断]
相違点a)および相違点c)について検討する。
[引用発明]において前述したように、引用発明2は、「画像データを記録可能なメモリカードと、データを表示する表示装置と、前記メモリカードの撮影可能な残り枚数もしくは残り容量を前記表示装置に表示するCPUとを備え、前記CPUは、前記表示装置に前記メモリカードの撮影可能な残り枚数もしくは残り容量を、文字情報およびグラフィックを用いて表示する、電子スチルカメラ。」である。
ここで、引用例2の「メモリカード」、「表示装置」、「撮影可能な残り枚数もしくは残り容量」及び「CPU」は、それぞれ補正後の発明の「メモリ」、「表示部」、「記憶可能残容量」、「制御部」に相当するから、引用発明2は、「画像情報を記録可能なメモリと、データを表示する表示部と、前記メモリの記憶可能残容量を前記表示部に表示する制御部とを備え、前記制御部は、前記表示部に前記メモリの記録可能残容量を、文字情報およびグラフィックを用いて表示する、電子スチルカメラ。」であるといえる。
引用発明1のデジタルスチルビデオカメラは「ユーザの注意を喚起し,記録媒体の記録残容量を的確に知らせることを目的とする」(引用例1の段落【0007】参照)ものであり、引用発明2の電子スチルカメラは「撮影済み枚数と、撮影可能枚数もしくは残り容量とを同時に表示することにより、撮影者に確実に、撮影後の記憶媒体の残り状態とを知らせることを目的とする」(引用例2の段落【0004】参照)ものであり、両発明はともにメモリに記憶可能なデータ容量をユーザに知らせることを目的とするものである。
したがって、当業者であれば、引用発明2を引用発明1に適用し、メモリの記憶可能残容量が予め定められた容量以下となったときに、引用発明1のように「スピーカーに伝達する」ことに替えて「表示部に表示する」ことを容易に想到するものである。
さらに、引用発明2では「文字情報およびグラフィックを用いて表示」しているから、当業者であれば引用発明1においても、そのように表示することを適宜為し得るものである。
したがって、相違点a)及び相違点c)は格別なものでない。

相違点b)について検討する。
特開平10-13721号公報(特に、【請求項1】-【請求項4】の記載参照)、特開平10-172269号公報(特に、段落【0031】の記載参照)、特開平11-341434号公報(特に、段落【0059】の記載参照)、等に記載されているように、動画像記録装置において、記録媒体に動画像を記憶している場合に、記録媒体への記憶可能時間を示すように文字情報やグラフィック等を用いて表示することは周知である(以下、「周知技術」という。)。
この周知技術を引用発明1の動画像を記録する動画モードの可能残容量の表示技術として適用し、可能残容量として引用発明1の「残り記録回数」を表示することに替えて「記憶可能時間」を表示することは当業者が適宜為し得ることである。
したがって、相違点b)は格別なものでない。

相違点d)について検討する。
デジタルカメラ機能を有し、メモリに画像情報等を記憶する携帯電話機は、特開平11-41669号公報(特に、段落【0015】-【0016】の記載)、特開平11-205761号公報(特に、段落【0045】-【0050】の記載)、特開平10-336574号公報(特に【請求項1】-【請求項4】の記載)等に見られる如く周知の構成であるから、電子機器を、引用発明1の「デジタルスチルビデオカメラ」に替えて「携帯電話機」とすることは当業者が適宜為し得ることである。
したがって、相違点d)は格別なものでない。

そして、補正後の発明が奏する効果も引用発明1、2及び周知技術から容易に予測出来る範囲内のものである。

よって、補正後の発明は、引用発明1、2及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正法の附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する同法第126条第5項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成21年11月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の[引用発明]で認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は上記補正後の発明から本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、引用発明1、2及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1、2及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、2及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-19 
結審通知日 2011-10-25 
審決日 2011-11-07 
出願番号 特願2006-114810(P2006-114810)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 義仁  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 萩原 義則
宮田 繁仁
発明の名称 携帯電話機  
代理人 堀井 豊  
代理人 仲村 義平  
代理人 佐々木 眞人  
代理人 荒川 伸夫  
代理人 深見 久郎  
代理人 森田 俊雄  
代理人 酒井 將行  

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