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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F21M
管理番号 1249131
審判番号 不服2010-18882  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-20 
確定日 2011-12-22 
事件の表示 特願2005- 17628「ヘッドランプ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月10日出願公開、特開2006-210030〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成17年1月26日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「【請求項1】
電池を収容する略円筒状の電池収容部と光源を収容して電池収容部の外周側面中央に形成した略円筒状の投光部とを有する本体ケースを備え、光源と電池とを電気的に接続する回路部と、回路部の電気的接続状態を切り換えるスイッチとを電池収容部内に設け、電池収容部に対して投光部の反対側に配置されて電池収容部を保持する保持部材を有し、この保持部材に結束ベルトを連結したヘッドランプにおいて、
この結束ベルトは、ベルトの幅方向両側に位置する一対の解除部材を含んだバックルを一端部に有し、前記バックルは該一端部から延設された舌片部を備え、
前記保持部材には該バックルの前記舌片部が連結されるバックル連結部が設けられ、
該バックルは、その表面及び裏面の何れを前記電池収容部側に向けても、前記バックル連結部に着脱自在に連結でき、
前記バックル連結部と前記バックルとの連結構造は、前記バックル連結部に連結されたバックルを離脱させる際、前記一対の解除部材を挟むように押さえる状態を継続しながら前記バックルを前記バックル連結部から引き出すことにより解除されるものであり、
前記舌片部の全体は外部に露出しており、前記一対の解除部材は前記舌片部の幅方向両側に設けられており、
前記略円筒状の電池収容部の両端部のうち、前記保持部材のバックル連結部が設けられている側である一方の端部には、略円筒状の電池キャップが螺合されて設けられ、他方の端部には、回動により前記スイッチを操作する略円筒状の回転操作ノブが嵌合して設けられていることを特徴とするヘッドランプ。」

2.引用刊行物記載の発明

(2-1)これに対して、当審における、平成23年7月26日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開2005-19002号公報(平成17年1月20日公開、以下「引用例1」という。)には、「電池蓋の着脱構造」に関する発明が開示されており、そこには、図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0011】
(実施の形態)
本実施の形態では、ヘッドライトを例として説明する。図1、図2は本発明のヘッドライトの全体を示し、図1は側面図、図2は正面図である。両図において、10はヘッドライトの樹脂製の本体、1は本体10の一部を構成する円筒状の電池ケースであり、乾電池等の所定の電池を装填するように構成されている。2は電池ケース1の電池装填のための開口を閉じる、着脱可能な、本体1と同材で形成した電池蓋であり、詳細は後述する。3は電池蓋2を取り外した際の脱落を防止する蓋止めで、これも詳細は後述する。31は蓋止め3から一体に延設された紐状部で、後述のヘッドバンド取り付け部などに一端を固定し、電池蓋2の脱落を防止する。5は本体10の下端にヒンジ構造51を介して設けたバックル状のヘッドバンド取り付け部であり、この部分に布製等のベルトを取り付け、このベルトによってヘッドライトを人体頭部に装着するが、詳細は記述しない。また、6は照明機能を備えたライト部で、正面の透明レンズ、内部のランプ等からなるが、詳細は公知であるので省略する。7は電池ケース1の一端に設けたスイッチ部で、電池ケース1に対し回動操作してランプへの通電をオン、オフする。この構造も公知であるので詳細は述べない。」

・図2には、円筒状の電池ケース1の一方の端部には、略円筒状の電池蓋2が設けられ、他方の端部には、回動操作してランプへの通電をオン、オフするスイッチ部7が設けられていることが記載されている。

これらの記載事項によると、引用例1には、

「所定の電池を装填するように構成されている円筒状の電池ケースと、正面の透明レンズ、内部のランプ等からなり、照明機能を備えたライト部とを有する本体を備え、回動操作してランプへの通電をオン、オフするスイッチ部を電池ケースの一端に設け、本体の下端にヒンジ構造を介して設けたバックル状のヘッドバンド取り付け部を有し、このヘッドバンド取り付け部にベルトを取り付けたヘッドライトにおいて、円筒状の電池ケースの一方の端部には、略円筒状の電池蓋が設けられ、他方の端部には、回動操作してランプへの通電をオン、オフするスイッチ部が設けられているヘッドライト。」の発明(以下「引用例1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

(2-2)同じく、当審における、平成23年7月26日付けで通知した拒絶の理由に引用した実願平4-49917号(実開平6-3109号)のCD-ROM(平成6年1月18日公開、以下「引用例2」という。)には、「プラスチック製バックル」に関する発明が開示されており、そこには、図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0004】
そこで上記従来のバックルの有する課題を解決すべく、出願人より先に図10及び図11に示されるプラスチック製バックルが提案されている。
このバックルは相対向している側壁に対をなす操作窓213を有する断面方形の筒状ケース210と、ベルトC等の取り付けられる板部221から一体に延設され、かつ、この板部から延設されると共に前記筒状ケース210内に収納、組み付けられる一対の弾性脚片223を有する係脱部材220とからなる雌具A’と、ベルトC等の取り付けられる板部230と、この板部230から延設され、かつ、先端部に互いに向き合う鈎状部233を有すると共に、前記筒状ケース210の前記操作窓213が設けられている側壁212に摺接して該筒状ケース内に抜き差し可能に差し込まれる一対の弾性係止片232とよりなる雄具B’とからなり、前記係脱部材220の前記弾性脚片223の先端には前記筒状ケース210内側壁に向き、かつ、前記雄具B’の鈎状部233と前記筒状ケース210内で掛り合う鈎状係止部225が設けられていると共にこの弾性脚片223には前記筒状ケース210の操作窓213より筒状ケース210外方に突き出す操作突片227が設けられている構造を有しており、この構造を採用することによりこのバックルでは、雄具B’の弾性係止片232は雌具A’の筒状ケース210の内側壁に沿って筒状ケース210内に挿入され、雌具A’の係脱部材220の鈎状係止部225に鈎状部を当接した後、この雌具A’の鈎状係止部225と鈎状部233を掛り合い、雌具A’に係止されるので、鈎部を雄具B’のみに設けた場合に比し、雄具B’と雌具A’の係止に係わる雄具B’あるいは雌具A’の係止部分が不完全に係止される事態が少なく、不完全な係止状態がもたらす係止部分の経時的な塑性変形を防止して、長期間にわたり確実な係止状態を保つことができ、従って、雄具B’の弾性係止片232及び雌具A’の弾性脚片223の肉厚を厚くする必要もないので、薄型のバックルとすることができる。また、雌具A’の筒状ケース210の操作窓213より突き出されている操作突片227を筒状ケース210内方に押し込むだけで、雌具A’の筒状ケース210内側壁に先端を向けられた鈎状係止部225を雄具B’の互いに向き合う鈎状部233より外して、雌具A’の鈎状係止部225と雄具B’の鈎状部233との係止状態は解除できるので、雄具B’と雌具A’との係止状態の解除を片手で容易に行うことができ、上記従来のプラスチック製バックルの有していた不都合の是正が図られている。」

(2-3)同じく、当審における、平成23年7月26日付けで通知した拒絶の理由に引用した登録実用新案第3047603号公報(平成10年4月24日発行、以下「引用例3」という。)には、「乳児運搬具」に関する発明が開示されており、そこには、図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0011】
乳児保持帯2の一側縁に沿って、細長い布帛を幅方向に2重に折り重ねてなる補強片7が縫着されると共に、補強片7の両端部を乳児保持帯2に縫着せずに延出してベルト4,5が形成される。すなわち、乳児保持帯2の一側縁において、肩当て部3の両端から乳児保持帯2に沿って間隔を開けた位置に、1対のベルト4,5がそれぞれ対向するよう装着される。
また、ベルト4,5の先端部には、互いに着脱自在に係合される雌雄の係止具8,9がそれぞれ装着される。雄の係止具8は一方のベルト4に摺動可能に取り付けられ、係止具8を摺動することによって、一方のベルト4の長さを調節できるようになっている。さらに、一方のベルト4の基部外面には、ベルト4の係止具8より先の部分を折り返して挿通するためのベルト通し10が架設されている。
【0012】
図に示す例では、雌の係止具9は他方のベルト5の先端に固着されているが、係止具9もベルト5に摺動自在に取り付けて、他方のベルト5の長さを調節できるようにしても良い。
また、雌雄の係止具8,9は、押し込むだけでワンタッチで係合され、操作部11を操作しない限りはずれない形式のものが、装着が簡単で安全性が高いので望ましい。」

・図1には、外部に露出した雄の係止具8のベルト4の幅方向両側に一対の操作部11が設けられていることが記載されている。

3.対比
本願発明と引用例1記載の発明を対比すると、後者における「所定の電池を装填するように構成されている円筒状の電池ケース」は、前者における「電池を収容する略円筒状の電池収容部」に相当する。
また、後者における「正面の透明レンズ、内部のランプ等からなり、照明機能を備えたライト部」は、前者における「光源を収容して電池収容部の外周側面中央に形成した略円筒状の投光部」に、後者における「本体」は、前者における「本体ケース」に相当する。
また、後者における「回動操作してランプへの通電をオン、オフするスイッチ部」は、前者における「回路部の電気的接続状態を切り換えるスイッチ」に相当し、後者において該スイッチ部を「電池ケースの一端に設け」ていることから、後者においても、前者における「光源と電池とを電気的に接続する回路部と、回路部の電気的接続状態を切り換えるスイッチとを電池収容部内に設け」た構成に相当する構成を備えているといえる。
また、後者における「ベルト」は、前者における「結束ベルト」に相当し、後者における「本体の下端にヒンジ構造を介して設けたバックル状のヘッドバンド取り付け部」と前者における「電池収容部に対して投光部の反対側に配置されて電池収容部を保持する保持部材」とは、「保持部材に結束ベルトを連結」しているので、「結束ベルトを連結する部材」である点において共通する。
また、後者における「ヘッドライト」は、前者における「ヘッドランプ」に相当する。
また、後者において「円筒状の電池ケースの一方の端部には、略円筒状の電池蓋が設けられ、他方の端部には、回動操作してランプへの通電をオン、オフするスイッチ部が設けられている」ことと、前者において「略円筒状の電池収容部の両端部のうち、保持部材のバックル連結部が設けられている側である一方の端部には、略円筒状の電池キャップが螺合されて設けられ、他方の端部には、回動によりスイッチを操作する略円筒状の回転操作ノブが嵌合して設けられていること」とは、「略円筒状の電池収容部の両端部のうち、一方の端部には、略円筒状の電池キャップが設けられ、他方の端部には、回動によりスイッチを操作する略円筒状の回転操作ノブが嵌合して設けられていること」である点で共通する。

したがって、両者は、
「電池を収容する略円筒状の電池収容部と光源を収容して電池収容部の外周側面中央に形成した略円筒状の投光部とを有する本体ケースを備え、光源と電池とを電気的に接続する回路部と、回路部の電気的接続状態を切り換えるスイッチとを電池収容部内に設け、結束ベルトを連結する部材を有し、この部材に結束ベルトを連結したヘッドランプにおいて、前記略円筒状の電池収容部の両端部のうち、一方の端部には、略円筒状の電池キャップが設けられ、他方の端部には、回動により前記スイッチを操作する略円筒状の回転操作ノブが嵌合して設けられているヘッドランプ。」である点で一致し、次の各点において相違する。

[相違点1]
「結束ベルトを連結する部材」について、本願発明においては、「電池収容部に対して投光部の反対側に配置されて電池収容部を保持する保持部材」であるのに対し、引用例1記載の発明においては、「本体の下端にヒンジ構造を介して設けたバックル状のヘッドバンド取り付け部」である点。

[相違点2]
結束ベルトを連結する構成に関し、本願発明においては、「結束ベルトは、ベルトの幅方向両側に位置する一対の解除部材を含んだバックルを一端部に有し、バックルは該一端部から延設された舌片部を備え、保持部材には該バックルの舌片部が連結されるバックル連結部が設けられ、該バックルは、その表面及び裏面の何れを電池収容部側に向けても、バックル連結部に着脱自在に連結でき、バックル連結部とバックルとの連結構造は、バックル連結部に連結されたバックルを離脱させる際、一対の解除部材を挟むように押さえる状態を継続しながらバックルをバックル連結部から引き出すことにより解除されるものであり、舌片部の全体は外部に露出しており、一対の解除部材は舌片部の幅方向両側に設けられて」いるのに対し、引用例1記載の発明においては、「バックル状のヘッドバンド取り付け部を有し、このヘッドバンド取り付け部にベルトを取り付けた」ものである点。

[相違点3]
「一方の端部には、略円筒状の電池キャップが設けられ」ている点について、本願発明においては、「保持部材のバックル連結部が設けられている側である一方の端部には、略円筒状の電池キャップが螺合されて設けられ」ているのに対し、引用例1記載の発明においては、「一方の端部には、略円筒状の電池蓋が設けられ」ている点。

4.判断
相違点1について検討すると、「電池収容部に対して投光部の反対側に配置されて電池収容部を保持する保持部材を有し、この保持部材に結束ベルトを連結したヘッドランプ」は周知の構成であり(一例として、当審における、平成23年7月26日付けで通知した拒絶の理由でも提示した登録実用新案第3097442号公報参照)、引用例1記載の発明において、「本体の下端にヒンジ構造を介して設けたバックル状のヘッドバンド取り付け部」の代わりに「電池収容部に対して投光部の反対側に配置されて電池収容部を保持する保持部材」を設けて、この保持部材に結束ベルトを連結するようにすることが、当業者にとって格別なことであるとは認められない。

相違点2について検討すると、引用例2、3には、舌片部とその両側に解除部材を有する部材(引用例2における雌具、引用例3における雄の係止具)と、該部材の舌片部が連結される部材(引用例2における雄具、引用例3における雌の係止具)からなるバックルが記載されており、該バックルは、舌片部、解除部材の形状から、表面、裏面を入れ換えても連結可能であり、一対の解除部材を挟むように押さえる状態を継続しながら係止状態を解除できるものと認められ、また、引用例3に記載されたものは、舌片部の全体が外部に露出していると認められ、本願発明における、バックル、バックル連結部の構成が、当業者にとって格別なものであるとは認められない。
そして、引用例1記載の発明において、結束ベルトを連結する構成に関し、相違点2にかかる構成を採用することは、該引用例2、3の記載に基づき、当業者が容易に想到し得ることである。

相違点3について検討すると、引用例1記載の発明においては、図2を参照すると、本体の両側にヘッドバンド取り付け部5が設けられており、いずれの側をバックルとするか、あるいは両側をバックルとするかは、当業者にとって、適宜選択し得る事項にすぎず、その作用、効果も、当業者にとって格別なものがあるとは認められない。また、電池キャップを螺合して設けることは周知である(一例として、特開平11-224501号公報参照)ので、該相違点3にかかる構成は、当業者にとって、適宜採用し得る設計上の微差にすぎない。

そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1記載の発明、引用例2、3の記載、および周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1記載の発明、引用例2、3に記載された事項、および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-19 
結審通知日 2011-10-25 
審決日 2011-11-09 
出願番号 特願2005-17628(P2005-17628)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F21M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 正志  
特許庁審判長 丸山 英行
特許庁審判官 川向 和実
栗山 卓也
発明の名称 ヘッドランプ  
代理人 竹内 宏  
代理人 河部 大輔  
代理人 関 啓  
代理人 今江 克実  
代理人 竹内 祐二  
代理人 松永 裕吉  
代理人 間脇 八蔵  
代理人 長谷川 雅典  
代理人 川北 憲司  
代理人 原田 智雄  
代理人 二宮 克也  
代理人 福本 康二  
代理人 前田 弘  
代理人 岡澤 祥平  
代理人 杉浦 靖也  
代理人 岩下 嗣也  
代理人 前田 亮  
代理人 嶋田 高久  

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