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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1249145
審判番号 不服2011-205  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-05 
確定日 2011-12-22 
事件の表示 特願2000-164642「ナビゲーション装置,ナビゲーション方法及びこれを実現するプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月14日出願公開,特開2001-343247〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成12年6月1日の出願であって,平成21年10月19日付けで最初の拒絶理由が通知され,これに対し,同年12月10日付けで意見書及び手続補正書が提出され,さらに,平成22年3月17日付けで最後の拒絶理由が通知され,これに対し,同年5月6日付けで意見書及び手続補正書が提出されたところ,同年9月22日付けで平成22年5月6日付けの手続補正が却下されるとともに,同日付けで拒絶査定され,これに対し,平成23年1月5日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願の発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成21年12月10日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める(なお,平成22年5月6日付け手続補正は却下された。)。
「自己の位置を測定し,地図情報を基にルート案内を行うナビゲーション装置であって,
商品の種類を指定する指定情報と,前記商品の購入希望価格,商品の製造元,現在位置商品供給元までの距離と,これらの項目に付与した優先順位を含む前記商品の選択条件を初期設定情報として入力する入力手段と,
前記商品の指定情報及び前記商品の選択条件を前記初期設定情報として保存する第1の記憶手段と,
前記入力手段から入力された前記指定情報と前記選択条件を,前記商品の固有情報を格納した外部記憶手段を備える固定局に送信する送信手段と,
前記送信手段から前記固定局に送られた前記商品の指定情報及び前記商品の選択条件に基づいて,前記固定局における前記外部記憶手段を検索して得られ,前記固定局から送信された前記固有情報を受信する受信手段と,
前記固定局から送信され,前記受信手段で受信された前記固有情報を保存する第2の記憶手段と,
前記受信手段で受信され,前記第2の記憶手段に保存されている前記固有情報の中から前記選択条件に最適な固有情報を検索する検索手段と,
前記検索手段で検索された前記最適な固有情報を表示する表示手段と,
前記検索手段で検索された前記最適な固有情報に基づいて,前記商品の供給元所在地を自動的に設定し,前記供給元所在地までのルート案内をルート表示及び/又は音声により行う案内手段と,を備えることを特徴とするナビゲーション装置。」

以下,理由1:進歩性について,理由2:新規事項について,の順に検討する。

〔理由1:進歩性について〕

3.引用刊行物
これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-97288号公報(以下「引用例1」という。),特開平10-254911号公報(以下「引用例2」という。),特開2000-74686号公報(以下「引用例3」という。),特開平7-105492号公報(以下「引用例4」という。)には,それぞれ図面とともに次の事項が記載されている。

(3-1)引用例1
・「【0012】前記目的を達成するために,第3の発明は,第2の発明の商品情報提供装置において,さらに,前記最適販売場所提示手段で提示された最適販売場所を目的地とする移動経路を提示する移動経路提示手段を有することを特徴とする。」

・「【0017】
【発明の実施の形態】以下,本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。
【0018】本実施形態においては,商品(物品だけでなくテニスコートの提供や美容技術の提供等の役務を含む)を販売している各販売場所と商品購入者との間に情報センターが設けられ,この情報センターが商品情報の送受信の中継や必要な商品情報のデータ処理を行う例を示す。また,商品購入者は車両(自動車)で移動し,前記情報センターと交信を行い所望の商品を販売している販売場所を選択する例を示す。
【0019】図1は本実施形態の商品情報提供装置を用いた情報提供システムの全体構成図である。複数の販売場所A,B,C,D(本実施形態では4店舗)は,それぞれ扱っている商品の商品名,販売価格,在庫数等を商品種類毎にデータベース(D/B)10a,10b,10c,10dに整理して格納している。各販売場所のデータベース10a,10b,10c,10dは所定の通信手段,例えば電話回線等を利用し情報センター12に接続されている。情報センター12は各種情報を収集可能なセンターで,前記販売場所からの商品データの他,例えば交通情報や車両の燃料価格情報,交通機関の運賃情報等を他の情報提供者14から受信している。また,情報センター12は複数の商品購入者16a,16bの車載端末と電話回線等を用いて通信する通信手段を有している。商品購入者16a,16bの車両には車載端末(不図示)が搭載され,商品購入者16a,16bは所望の商品名を前記車載端末から入力することによって,情報センター12から商品購入に関する必要な情報を入手することができる。
【0020】図2には,商品購入者16aの車載端末18の基本構成が示されている。制御部20は車載端末18全体の制御を行うと共に,GPS22や地図D/B24等から構成されるナビゲーション装置の制御を行う。また,前記ナビゲーション装置に基づく表示や商品購入に関する商品情報の表示,車載端末18の操作表示等を行うCRT26,車載端末18の操作や商品選択を行うための入力部28,前記情報センター12との通信を行う通信部30等が接続されている。・・・」

・「【0021】図1?図3に加えて図4に示す車載端末18側のフローチャートと図5に示す情報センター12側のフローチャートを用いて,複数の販売場所の中から商品購入者に最適な商品販売場所に関する情報を提示する提示動作について説明する。
【0022】まず,商品購入者16aは車載端末18の入力部28から所望の商品名,例えばA社製化粧品,形番7K1SNTを入力する(S100)。続いて,車載端末18は燃費D/B32から車両の各平均速度の燃費データを取得し(S101),GPS22や地図D/B24等からなるナビゲーション装置から車両の位置,つまり商品購入者16aの現在位置を特定する現在位置データを取得し(S102),情報センター12に送信する(S103)。・・・
【0023】情報センター12では商品購入者16aからの購入希望商品の商品名,車両の燃費データ,車両の現在位置データ等を受信すると(S200),情報センター12に接続された各販売場所A,B,C,Dのデータベース10a,10b,10c,10dを検索して,対象商品を販売している販売場所とその販売場所における在庫数を調べる(S201)。この時,商品購入者16aは車載端末18を用いて,現在位置から販売場所までの距離的制限(例えば,現在位置から20Km以内)や価格的制限(例えば,1200円以内)等を入力して対象商品を販売している販売場所の検索範囲をある程度限定してもよい。」

・「【0024】続いて,情報センター12では商品購入者16aの現在位置と各販売場所との距離を算出し,現在位置から販売場所に移動するために必要な移動コストを算出する(S202)。この移動コストは,例えば車両の燃費から算出する。・・・そして,販売場所毎に対象商品の販売価格と各販売場所までの移動コストとに基づいて,対象商品を入手するために必要なトータルコストを算出する(S203)。・・・
【0025】続いて,算出したトータルコストに基づいてトータルコストの安い順に図6(a)に示すように順位付けを行い,対象商品を最も安く入手できる最適販売場所を提示する(S204)。本実施形態の場合,販売場所Cがトータルコストが最も安い最適販売場所として提示される。・・・
【0026】次に,各販売場所間での経路中に渋滞や交通規制を行っている場所があるか否かの判断を行う(S205)。・・・もし各販売場所までの経路中に渋滞や交通規制が存在しない場合,(S204)で示された最適販売場所を商品購入の販売場所として仮決定する(S206)。一方,各販売場所までの経路中に渋滞や交通規制が存在する場合,渋滞や交通規制の存在する販売場所毎に移動コストを再度算出する(S207)。・・・この結果に基づいてトータルコストの安い順に再度順位付けを行い,図6(b)に示すように最適販売場所を再度提示する(S209)。なお,図6(a)や図6(b)のような最適販売場所を商品購入者16の車載端末18に送信し(S104),CRTに表示(S105)する場合,渋滞の有無や有料道路の有無等を同時に表示するようにすれば,移動コストの変動理由が理解しやすくなる。」

・「【0027】そして,(S209)で示された最適販売場所を商品購入の販売場所として仮決定する(S206)。販売場所の仮決定が行われると,実際に希望商品が購入できるか否かの判断を行う。まず,情報センター12を介して同一の商品を同一の販売場所で購入しようとしている購入希望者数と商品の在庫数を比較する(S210)。この時,在庫数が購入希望者数より多い場合は当該商品購入者は商品の購入が可能であると判断し,商品を購入する販売場所を決定し,必要に応じて,その販売場所までの誘導経路を決定し(S211),商品購入者16aの車載端末18に前述した最適販売場所やトータルコスト等の商品情報を送信し(S212),処理を終了する。一方,(S210)で在庫数が購入希望者数より少ない場合は,他の商品購入希望者が販売場所に到達する時間と当該商品購入者が販売場所に到達する時間との比較を行い(S213),もし,他の商品購入希望者より当該商品購入者が早く販売場所に到着し商品を購入することが可能であれば,その販売場所を購入場所として決定し,必要に応じて,その販売場所までの誘導経路を決定し(S211),商品購入者16aの車載端末18に商品情報を送信する(S212)。もし,他の商品購入希望者の販売場所到着時間より当該商品購入者の販売場所到着時間が遅く商品を購入することが不可能であれば,(S206)で提示した最適販売場所の次候補を提示する(S214)。例えば,図6(b)において,販売場所Bの対象商品の在庫数が10個であり,販売場所Bを商品購入場所として仮指定している商品購入者が14人いた場合,在庫数が足らないので,(S213)に進み,他の商品購入希望者より早く目的とする販売場所に到達できるか否かを判断する。情報センター12は,各商品購入希望者の現在位置や道路交通情報を把握しているため前述の判断を容易に行うことができる。情報センター12は当該商品購入者が販売場所に到着する順位が10番目以内であると判断した場合は,販売場所Bを商品購入の販売場所として決定する。逆に,到着する順位が11番目以降であると判断した場合は,商品購入不可能であると判断して,次候補の提示,例えば販売場所Dの提示を行う。そして,商品購入可能な販売場所が得られるまで(S206),(S210),(S213),(S214)の処理を繰り返し行う。」

・「【0028】以上説明したように商品購入者にとって,最適な商品購入情報が得られるまで販売場所の検索を行う。・・・また,図7に示すように経路誘導を行う地図上に図6(a)や図6(b)の情報を一緒に表示するようにしてもよい。なお,図7は図6(a)の情報が示されている。これは,渋滞や交通規制がなく,また販売場所Cに対象商品の在庫が十分にある場合である。この場合,最適販売場所を明確にするために,図7において,最適販売場所Cは,例えば点滅表示され,販売場所Cまでの移動経路は太線や色違いで表示される。」

・また,上記「【0022】・・・車載端末18は・・・GPS22や地図D/B24等からなるナビゲーション装置から車両の位置・・・を特定する現在位置データを取得し・・・」,「【0028】・・・図7において,最適販売場所Cは,例えば点滅表示され,販売場所Cまでの移動経路は太線や色違いで表示される。」によれば,引用例1には,自己の位置を測定し,地図情報を基にルート案内を行うナビゲーション装置の車載端末18が記載されていることは明らかである。

・さらに,上記「【0022】まず,商品購入者16aは車載端末18の入力部28から所望の商品名,例えばA社製化粧品・・・を入力する(S100)。」,及び「【0023】・・・この時,商品購入者16aは車載端末18を用いて,現在位置から販売場所までの距離的制限・・・や価格的制限・・・等を入力して対象商品を販売している販売場所の検索範囲をある程度限定してもよい。」の記載によれば,所望の商品が化粧品であるという情報と,価格的制限,所望の商品がA社製であること,現在位置から販売場所までの距離的制限とが,商品の選択条件に含まれることは明らかである。

・加えて,「【0025】・・・トータルコストの安い順に図6(a)に示すように順位付けを行い,対象商品を最も安く入手できる最適販売場所を提示する(S204)。・・・」,「【0026】次に,各販売場所間での経路中に渋滞や交通規制を行っている場所があるか否かの判断を行う(S205)。」,「【0027】そして,商品購入可能な販売場所が得られるまで(S206),(S210),(S213),(S214)の処理を繰り返し行う。」,「【0028】以上説明したように商品購入者にとって,最適な商品購入情報が得られるまで販売場所の検索を行う。・・・」の記載によれば,順位付けされた,対象商品を最も安く入手できる最適販売場所を提示し,その最適販売場所のなかから,渋滞や交通規制,購入可能性を加味して,最終的な最適販売場所の検索を行う検索手段が,情報センター12に備えられていることは明らかである。
上記記載事項及び図示内容を総合すると,引用例1には,
「自己の位置を測定し,地図情報を基にルート案内を行うナビゲーション装置の車載端末18であって,
所望の商品が化粧品であるという情報と,前記商品の価格的制限,所望の商品がA社製であること,現在位置から販売場所までの距離的制限と,を含む前記商品の選択条件を検索範囲として入力する入力部28と,
前記入力部28から入力された前記所望の商品が化粧品であるという情報と前記選択条件を,情報センター12に送信する通信部30と,
前記通信部30から前記情報センター12に送られた前記所望の商品が化粧品であるという情報及び前記商品の選択条件に基づいて,各販売場所A,B,C,Dのデータベース10a,10b,10c,10dを検索して得られ,順位付けされた,対象商品を最も安く入手できる最適販売場所を提示し,その最適販売場所のなかから,渋滞や交通規制,購入可能性を加味して,最終的な最適販売場所の検索を行う検索手段と,
前記検索手段で検索された前記最終的な最適販売場所を表示するCRT26と,
前記検索手段で検索された前記最終的な最適販売場所に基づいて,最適販売場所Cが,例えば点滅表示され,販売場所Cまでの移動経路は太線や色違いで表示される移動経路提示手段と,を備えるナビゲーション装置の車載端末18。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(3-2)引用例2
・「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は,複数の対象物についての情報を検索して所定の条件に適合する対象物を抽出するための技術に関し,殊にこの発明は,目的とする対象物を抽出するための検索条件を作成する方法および装置,ならびにこの検索条件作成方法を用いて前記条件に適合する対象物を検索するための方法および装置に関連する。」

・「【0023】以下,上記購入物品検索システムを用いてスキー板の購入候補の検索する場合を想定し,各データベースの構成およびこのシステムの骨子となる検索条件の設定処理の詳細を説明することにする。図2は,前記対象物データベース9の中のスキー板用のデータベースの構成を示すもので,各商品毎に,板の重さ,幅など各種属性毎の属性情報が商品名に対応づけけられて記憶されている。」

・「【0046】図11は,この重み入力画面の具体例であって,ここでは前記図11で提示された各検索条件に対し,それぞれ5段階評価による評価値を入力させるように構成している。なお重み付けの方法は,この方法に限らず,例えば,優先させる検索条件から順に順位付けを行わせ,その順位付け結果を重みに変換するようにしてもよい。」

上記記載事項及び図示内容を総合すると,引用例2には,
「購入物品を検索する際に,検索条件(選択条件に相当)が複数項目ある場合,各検索条件に優先順に順位付けを行わせる」技術(以下「引用例2記載の技術」という。)が記載されているものと認められる。

(3-3)引用例3
・「【0004】
【発明が解決しようとする課題】・・・従来のカーナビゲーション装置では,以下のような問題がある。(1)ユーザが必要とする施設情報を得るためには毎回ユーザによる設定操作が必要となる。・・・
【0005】本発明は,このような従来の問題を解決するものであり,ユーザが一度案内条件を設定すると,その後はその条件に適合した施設候補の案内を自動的に行うことができ・・・る車載用案内装置を提供することを目的とする。」

・「【0015】・・・ユーザが表示手段4に表示されている案内に従って施設の検索条件を入力すると,システムコントローラ2はその条件を検索条件記憶手段3に記憶させる。次にシステムコントローラ2は,地図データ読み出し手段8を通じて地図データ記憶手段9から経路案内や施設検索に必要となるデータを読み出す。そして,検索条件記憶手段3に記憶されている検索条件と照合して,条件に一致している施設がある場合は,その旨を表示手段4に表示するとともに,音声案内手段7により音声案内を行う。このようにして,予めユーザにより設定された検索条件に応じて,ユーザが必要とする施設情報を自動的に検索してユーザに案内することができる。」

上記記載事項及び図示内容を総合すると,引用例3には,
「ナビゲーションにおいて,施設の検索条件(選択条件に相当)を記憶(保存に相当)する検索条件記憶手段3(第1の記憶手段に相当)を備える」技術(以下「引用例3記載の技術」という。)が記載されているものと認められる。

(3-4)引用例4
・「【0062】図7において,500は施設データ送信局,600は移動体に設置されたナビゲーション装置である。
【0063】図7に示すように,施設データ送信局500は,送受信機13,制御手段14,データベース15,送受信用アンテナ16を備えている。また,ナビゲーション装置600は,解析手段5,位置測定手段6,制御手段7,読出手段8,地図データ記憶手段9,描画手段10,表示手段11,入力手段12,送受信用アンテナ17,送受信機18,データ記憶手段19を備えた構成となっている。なお,図7では,1つのナビゲーション装置600に対して,1つの施設データ送信局500しか示していないが,実際には,複数存在する。」

・「【0065】そして,本実施例では,上記第2の実施例で説明したように,1つの施設データ送信局500は,1種類の施設データをデータベース15に記憶しているものとして説明する。すなわち,データベース15には,施設データ送信局500からの距離が予め決められた範囲内(例えば,半径数キロメートル以内)に位置する施設のうち,種類が同じ施設に関する情報を示す施設データが記憶されている。なお,施設データの構成は,上記第1の実施例で説明した通りである。
【0066】ナビゲーション装置600においては,上記第1の実施例で説明したように,入力手段12は,ナビゲーション装置600のユーザが,場所等を知りたい所望の施設の種類を1つ以上選択指示することができるようになっている。」

・「【0069】さて,制御手段7は,ユーザにより施設の種類が選択指示されると,該施設の種類を送信するよう,制御部71によって送受信機18を制御する。送受信機18は,送受信用アンテナ17を通じて,ユーザにより選択指示された施設の種類を送信する。
【0070】施設データ送信局500においては,送受信機13は,送受信用アンテナ16を通じて,ナビゲーション装置600から送信された施設の種類を受信すると,該施設の種類を制御手段14に渡す。
【0071】制御手段14は,送受信機13により受信された施設の種類が,自施設データ送信局500が記憶している施設データに含まれている識別コードが示す施設の種類と一致した場合は,データベース15に記憶されている施設データを送信するよう,送受信機13を制御する。送受信機13は,送受信用アンテナ16を通じて,データベース15に記憶されている施設データを送信する。
【0072】ナビゲーション装置600においては,送受信機18は,送受信用アンテナ17を通じて,施設データ送信局500から送信された施設データを受信すると,該施設データをデータ記憶手段19に記憶する。
【0073】続いて,制御手段7は,位置測定手段6により測定された現在位置と,データ記憶手段19に記憶されている施設データに含まれている場所データとを,位置比較部72によって比較し,データ記憶手段19に記憶されている施設データのうち,ユーザにより選択指示された種類を示す識別コードを含み,かつ,該現在位置からの距離が予め決められた範囲内(例えば,半径500メートル以内)に位置する施設データを解析するよう,制御部71によって解析手段5を制御する。また,制御手段7は,地図データ記憶手段9に記憶されている地図データのうち,位置測定手段6により測定された現在位置をほぼ中心とする地図データを読み出すよう,制御部71によって読出手段8を制御する。」

上記記載事項及び図示内容を総合すると,引用例4には,
「ナビゲーション装置において,施設データ送信局500(固定局に相当)から送信された施設データ(固有情報に相当)を受信する送受信機18(受信手段に相当)と,前記施設データ送信局500から送信され,前記送受信機18で受信された前記施設データを保存するデータ記憶手段19(第2の記憶手段に相当)と,前記送受信機18で受信され,前記データ記憶手段19に保存されている前記施設データの中から予め決められた範囲内に位置する施設データを解析(検索に相当)する解析手段5(検索手段に相当)とによって,ナビゲーション装置側で施設データ(固有情報)を記憶してから解析(検索)する」技術(以下「引用例4記載のデータ解析技術」という。)が記載されているものと認められる。

また,上記段落【0063】,【0065】の記載事項及び図7の図示内容を総合すると,引用例4には,
「ナビゲーション装置において,施設データ(固有情報に相当)を施設データ送信局500(固定局に相当)のデータベース15に記憶(格納に相当)する」技術(以下「引用例4記載のデータ格納技術」という。)が記載されているものと認められる。

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると,その機能・作用からみて,引用発明の「ナビゲーション装置の車載端末18」は本願発明の「ナビゲーション装置」に相当し,以下同様に,「所望の商品が化粧品であるという情報」は「商品の種類を指定する指定情報」,「指定情報」,または「商品の指定情報」に,「価格的制限」は「購入希望価格」に,「所望の商品がA社製であること」は「商品の製造元」に,「現在位置から販売場所までの距離的制限」は「現在位置商品供給元までの距離」に,「検索範囲」は「初期設定情報」に,「入力部28」は「入力手段」に,「通信部30」は「送信手段」に,「最終的な最適販売場所」は「最適な固有情報」に,「CRT26」は「表示手段」に,「最適販売場所Cが,例えば点滅表示され,販売場所Cまでの移動経路は太線や色違いで表示される移動経路提示手段」は「商品の供給元所在地を自動的に設定し,前記供給元所在地までのルート案内をルート表示及び/又は音声により行う案内手段」に,それぞれ相当している。
また,引用発明の「情報センター12」と本願発明の「商品の固有情報を格納した外部記憶手段を備える固定局」とは,「固定局」との概念で共通する。
さらに,引用発明の「各販売場所A,B,C,Dのデータベース10a,10b,10c,10d」と本願発明の「固定局における前記外部記憶手段」とは,「外部記憶手段」の概念で共通する。
加えて,引用発明の「順位付けされた,対象商品を最も安く入手できる最適販売場所を提示し,その最適販売場所のなかから,渋滞や交通規制,購入可能性を加味して,最終的な最適販売場所の検索を行う検索手段」と本願発明の「固定局から送信された固有情報を受信する受信手段と,前記固定局から送信され,前記受信手段で受信された前記固有情報を保存する第2の記憶手段と,前記受信手段で受信され,前記第2の記憶手段に保存されている前記固有情報の中から選択条件に最適な固有情報を検索する検索手段」とは,「固有情報の中から最適な固有情報を検索する検索手段」との概念で共通する。

したがって,両者は,
「自己の位置を測定し,地図情報を基にルート案内を行うナビゲーション装置であって,
商品の種類を指定する指定情報と,前記商品の購入希望価格,商品の製造元,現在位置商品供給元までの距離と,を含む前記商品の選択条件を初期設定情報として入力する入力手段と,
前記入力手段から入力された前記指定情報と前記選択条件を,固定局に送信する送信手段と,
前記送信手段から前記固定局に送られた前記商品の指定情報及び前記商品の選択条件に基づいて,外部記憶手段を検索して得られた前記固有情報の中から最適な固有情報を検索する検索手段と,
前記検索手段で検索された前記最適な固有情報を表示する表示手段と,
前記検索手段で検索された前記最適な固有情報に基づいて,前記商品の供給元所在地を自動的に設定し,前記供給元所在地までのルート案内をルート表示及び/又は音声により行う案内手段と,を備えるナビゲーション装置。」
である点で一致し,次の点で相違する。

[相違点1]
本願発明は,「これら(すなわち,商品の購購入希望価格,商品の製造元,現在位置商品供給元までの距離)の項目に付与した優先順位」を,商品の選択条件に含むのに対し,引用発明は,そのような優先順位を含むかどうか不明である点。

[相違点2]
本願発明は,「商品の指定情報及び商品の選択条件を初期設定情報として保存する第1の記憶手段」を備えるのに対し,引用発明は,選択条件を保存するかどうか不明である点。

[相違点3]
外部記憶手段の配備箇所に関し,本願発明では,「商品の固有情報を格納した外部記憶手段を備える固定局」であるのに対し,引用発明では,外部記憶手段を固定局(情報センター12)には備えず,各販売場所A,B,C,Dのデータベース10a,10b,10c,10dとして備えた点。

[相違点4]
固有情報の中から最適な固有情報を検索する検索手段に関し,本願発明は,「固定局から送信された固有情報を受信する受信手段と,前記固定局から送信され,前記受信手段で受信された前記固有情報を保存する第2の記憶手段と,前記受信手段で受信され,前記第2の記憶手段に保存されている前記固有情報の中から選択条件に最適な固有情報を検索する検索手段と」によって,ナビゲーション装置側で固有情報を記憶してから検索するのに対し,引用発明は,「順位付けされた,対象商品を最も安く入手できる最適販売場所を提示し,その最適販売場所のなかから,渋滞や交通規制,購入可能性を加味して,最終的な最適販売場所の検索を行う検索手段」によって,固定局(情報センター12)側で検索する点。

5.判断
・相違点1について
購入物品を検索する際に,検索条件(選択条件)が複数項目ある場合,各検索条件に優先順に順位付けを行わせることは,引用例2記載の技術にも見られるように慣用手段である。(なお,その他にも,特開平9-160989号公報(「【0025】ここで,発注情報には,取引条件として,純正商品又は互換商品の指定,納入価格優先又は納入時期優先の指定が含まれているようにすれば,受注側装置では,取引条件を満足する商品を自動的に決定できるようになる・・・。」)参照。)
そうすると,引用発明において,検索の利便性を考慮して上記慣用手段を適用し,相違点1に係る本願発明の構成とすることは,当業者が設計において適宜なし得たことである。

・相違点2について
前述のように,引用例3には,「ナビゲーション装置において,施設の検索条件(選択条件)を記憶(保存)する検索条件記憶手段3(第1の記憶手段)を備える」技術が記載されている。
また,検索条件(選択条件)の入力を簡便にすることは,検索技術一般において要求されることである。
そうすると,引用発明において,検索条件の入力を簡便にするという一般的な課題の下に,引用例3記載の技術を適用して,相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者が適宜なし得たことである。

・相違点3について
前述のように,引用例4には,ナビゲーション装置におけるデータの格納に関し,「施設データ(固有情報)を施設データ送信局(固定局)のデータベース15に記憶(格納)する」技術が記載されている。
また,ナビゲーション装置においてデータベースの設置箇所をどこに選定するかは,設計的事項であって,引用発明において,対象商品のデータを各販売場所A,B,C,Dのデータベース10a,10b,10c,10dに格納するか,情報センター12(固定局)に格納するかは,データ伝送上の便宜や,データ処理上の便宜等を勘案して,設計において適宜決めるべきことである。
そうすると,引用発明に引用例4記載のデータ格納技術を適用して,相違点3に係る本願発明の構成とすることは,格別の技術的困難性も認められず,当業者が容易になし得たことである。

・相違点4について
前述のように,引用例4には,ナビゲーション装置におけるデータ解析(検索)に関し,「施設データ送信局500(固定局)から送信された施設データ(固有情報)を受信する送受信機18(受信手段)と,前記施設データ送信局500から送信され,前記送受信機18で受信された前記施設データを保存するデータ記憶手段19(第2の記憶手段)と,前記送受信機18で受信され,前記データ記憶手段19に保存されている前記施設データの中から予め決められた範囲内に位置する施設データを解析(検索)する解析手段5とによって,ナビゲーション装置側で施設データ(固有情報)を記憶してから解析(検索)する」技術が記載されている。
また,ナビゲーション装置においてデータの保存と解析(検索)をどこで行うようにするかは,データ伝送上の便宜や,データ処理上の便宜等を勘案して,設計において適宜決めるべきことである。

そうすると,引用発明に引用例4記載のデータ解析技術を適用して,相違点4に係る本願発明の構成とすることは,格別の技術的困難性も認められず,当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本願発明の全体構成によって奏される効果も,引用発明,引用例2に記載された慣用手段,引用例3記載の技術及び引用例4記載のデータ格納技術とデータ解析技術から,当業者が予測し得る範囲内のものである。

したがって,本願発明は,引用発明,引用例2に記載された慣用手段,引用例3記載の技術及び引用例4記載のデータ格納技術とデータ解析技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

〔理由2:新規事項について〕

6.平成22年3月17日付けの最後の拒絶理由通知書には,概要以下のとおり記載されている。

「理由1.平成21年12月10日付けでした手続補正(審決注:以下「本件補正」という。)は,下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

・請求項1,3,4,段落番号【0005】,【0006】
請求項1,3,4,段落【0005】,【0006】には,「商品の選択条件に基づいて,固定局における外部記憶手段を検索して得られ」という記載があるが,願書に最初に添付した明細書又は図面(以下,「当初明細書等」という)には,固定局において商品の選択条件に基づいて検索することについての記載がなく,また,当初明細書等の記載から自明の事項ともいえない。」

7.当審の判断
当初明細書等には,商品の選択条件とこの選択条件に基づく検索に関して,以下の記載がある。

・「【0012】
次に,以上のように構成された本ナビゲーション装置の動作について説明する。
まず,操作パネル14aの操作により,内蔵メモリー12cに保存された初期設定用の買い物メニューをモニター11aに呼び出し,所要の商品又はサービス(商品等という)を選択する。それによって,モニター部11には選択した商品等の購入に関する初期設定画面が表示される。運転者等のユーザーは,その初期設定画面において,例えば,選択した商品の購入希望価格(最も安いものという設定も可能である。),種類,サイズ,メーカー,商品等の供給元(店舗等)までの距離等,実際の購入に必要な選択条件を入力し,更に,ユーザーが設定する前記条件のうち何を優先するか,その優先順位を任意に付して設定する。このように設定した初期設定情報を内蔵のメモリー12cに記録し保存する。なお,この初期設定情報は無線データ通信を利用して固定局のデータベースに記録することもできる。
【0013】
次に,初期設定を終了した状態で,モニター11aに買い物メニューを表示し,そのメニューから前記商品等を選択して指定すると,CPU12aは自動的に或いは操作パネル14aの操作により,無線通信手段12dを及び送受信アンテナ12eを介してその選択された商品等の選択情報を固定局に送信する。
【0014】
固定局は,例えば,ガソリンスタンド,商店等が存在する地域に設けられており,この固定局には商店等の所在地情報,取扱い商品,銘柄,価格,営業時間等の情報が登録されたデータベースが備えられており,例えば半径数キロ?数10キロ程度の通信範囲を有するデータ通信用の無線通信手段を備えている。
固定局は,通信範囲内にあるナビゲーション装置からの商品等の指定情報を受信すると,その指定された商品等の情報がデータベース中に存在するか否かを検索し,あればデータベースから読み出して返信し,なければその旨をナビゲーション装置側に伝える。
なお,固定局は,一定地域の複数のストアをまとめて設置しても,或いは各ストア毎に設置してもよい。
【0015】
ナビゲーション装置側では固定局からの商品等の情報を受信すると,その情報をダウンロードしてメモリー12cに格納する。続いて,CPU12aはダウンロードした固有情報の中からユーザが設定した条件に最適なものを検索し,その情報の内容をモニター上に表示する。この場合,自動的に1つを選択してもよいが,複数の候補を選び出してその中からユーザが選ぶようにしてもよい。
いずれにしても,最適な商品等の情報が検索されると,その情報(データ)から商店等の所在地又は経由地(目的地という)を自動的に設定し,その設定に応じてモニター11aに表示された地図上に,目的地を表示しかつその目的地へのルート案内を,通常のナビゲーション装置において行われてるように音声,表示等により行う。
なお,目的地として当初途中の経由地までの案内が設定された場合は,経由地に到達後,引き続き最終目的地までのルート案内を行うことは勿論である。
固定局側から,条件に合致する商品等の情報がない旨の通知を受けたときは,モニター部11にその旨を表示する。
ユーザーが希望する条件が付された買物メニュー情報は,内蔵メモリー12c又は固定局のデータベースに記憶させているため,繰り返し使用することができ,使用に際して操作パネル14aからの操作により条件の変更,削除なども自在に行うことができる。」

・「【0019】
次に初期設定が終了した後,到達目標位置のルート案内が示されるまでの手順を説明する。
図3は,この手順を示すフローチャートである。
まずモニター11aに買物のメニューを表示させ(S31),そのメニューから”ガソリン”を選択する(S32)。この選択により,ナビゲーション装置10のCPU12aは,自動的に無線通信手段12dを駆動して,固定局に接続し通信を開始し,固定局側の取扱い商品(ガソリン,軽油など),銘柄,価格,ガソリンスタンドの所在地情報を持ったデータベースにアクセスする(S33)。
なお,この時,必要に応じて通信を行っているという情報をモニター11aに表示してもよい。またCPU12aにより予めユーザーが設定した範囲を自車位置から計算し,決められたエリアの情報を無線通信を使用して固定局のデータベースに送信するようにすることも可能である。
【0020】
続いて,この無線通信により固定局のデータベースからデータを受信し,ガソリンスタンドの所在地情報,取扱い商品(ガソリン,軽油など),銘柄,価格等の固有情報をダウンロードし,これをメモリー12cに格納する(S34)。
続いて,CPU12aは,ダウンロードした情報の中からユーザーが既に設定した条件に最も適したものを選択(検索)する(S35)。そして,自動的にルート設定を開始し(S36),ルート案内を行う(S37)。このルート案内は,到達目標位置に到着するまで継続され(S38,NO),到達目標位置に到着する(S38,YES)と,終了する(S39)。」

上記記載によれば,当初明細書等には,ユーザーが設定した商品の種類,サイズ等の選択条件は,ナビゲーション装置に内蔵のメモリー12cに保存され,また,無線データ通信を利用して固定局のデータベースに送信され記録されること,固定局は,ナビゲーション装置からの商品等の指定情報を受信すると,その指定された商品等の情報がデータベース中に存在するか否かを検索し,あればデータベースから読み出してナビゲーション装置に返信すること等が記載され,さらに,ナビゲーション装置は,固定局のデータベースからデータを受信し,商品等の固有情報をダウンロードし,これをメモリーに格納し,ダウンロードした情報の中からユーザーが設定した条件に最も適したものを検索すること等が記載されているが,固定局で商品の選択条件に基づいた検索を行うことは記載も示唆もされていない。
したがって,本件補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものでないから,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでない。
よって,本件補正は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

8.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用例2に記載された慣用手段,引用例3記載の技術及び引用例4記載のデータ格納技術とデータ解析技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また,平成21年12月10日付けでした手続補正は,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
したがって,本願は,特許法第49条第1号及び第2号の規定に該当し,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-19 
結審通知日 2011-10-25 
審決日 2011-11-07 
出願番号 特願2000-164642(P2000-164642)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01C)
P 1 8・ 561- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上野 力  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 田村 嘉章
神山 茂樹
発明の名称 ナビゲーション装置、ナビゲーション方法及びこれを実現するプログラム  
代理人 特許業務法人信友国際特許事務所  

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