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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21D
管理番号 1249217
審判番号 不服2011-15325  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-15 
確定日 2011-12-28 
事件の表示 特願2005- 68321「金属板のプレス成形方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月21日出願公開、特開2006-247705〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本件出願の発明
本件出願は、平成17年3月11日の特許出願であって、同22年12月15日付拒絶理由通知に対し同23年2月16日に意見書と手続補正書が提出されたが、同23年4月8日付で拒絶査定がなされ、これに対して同23年7月15日に本件審判が請求されたものである。
本件出願の請求項1に係る発明(以下「本件出願の発明」という。)は、平成23年2月16日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの下記のものであると認める。
「しわ押さえを配し、ポンチとダイスで金属板を挟圧するプレス成形方法において、前記しわ押さえと前記ダイスで前記金属板を挟んだ状態で前記ポンチが前記金属板に最初に接触し成形が開始された後、前記ポンチがストローク終端に到達して成形が完了するまでの間に、前記しわ押さえを前記金属板から一旦離し、ポンプを利用して、金型の外に配置したノズルから前記金属板と前記しわ押さえの間隙に向かって潤滑油を噴出して前記金属板と前記しわ押さえが接触する面に直接潤滑油を供給した後、前記ポンチと前記ダイスと前記しわ押さえを用いて、再度金属板を成形する、という動作を、少なくとも1回以上経ることを特徴とする金属板のプレス成形方法。」
2.刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特公昭45-16579号公報(以下「引用刊行物」という。)の記載内容は以下のとおりである。

2.1 引用刊行物記載の事項
引用刊行物には以下の事項が記載されている。
「鉄板のような金属板を雄雌型を使用して絞り、有底筒を成型する場合は、金属板を雌型の上へ置き、金属板の周囲を抑え枠の下面及び雌型の上面を以て挟み、次に枠の中心孔を貫く雄型を雌型内へ押込んで金属板を絞り、有底筒を得るものであるが、金属板が絞られるに従い、雌型及び抑え枠によって挟まれている部分は移動して径が縮小し、その際雌型及び抑え枠との接触面に大きい摩擦が生じ、金属板は絞り成型不能となり、無理に雄型を挿入すれば、金属板は破断する。
そこで上記摩擦を減少するために、金属板と雌型及び抑え枠との接触面へ、潤滑油を充分に塗っておくならば、摩擦は減少し、金属板は縮径して絞り成型される。
然し浴槽のように口径に対して深さが大きく、しかも断面角型のものを成型する場合は、金属板の縮径移動に伴い、予め塗布した潤滑油の油膜が消失し、次第に摩擦が増大し、絞り不能の状態を再び招く。
そこで一応雄型を僅か後退させ、抑え枠は充分に復位上昇させたのち、その隙間へ作業員が這い込み、ブラシ又はローラーを以て金属板の表裏へ潤滑油を塗布した後、再び上述のように成型作業を行うものである。」(第1欄第35行?第2欄第15行参照。)

2.2 引用刊行物記載の発明
引用刊行物記載の事項を、技術常識を考慮しながら本件出願の発明に照らして整理すると、引用刊行物には以下の発明が記載されていると認めることができる。
「抑え枠を配し、雄型と雌型で金属板を挟圧する絞り成型方法において、前記抑え枠と前記雌型で前記金属板を挟んだ状態で前記雄型が前記金属板に最初に接触し絞り成型が開始された後、前記雄型がストローク終端に到達して絞り成型が完了するまでの間に、前記抑え枠を充分に復位上昇させて前記金属板から一旦離し、その隙間へ作業員が這い込み、ブラシ又はローラーを以て金属板の表裏へ潤滑油を塗布した後、前記雄型と前記雌型と前記抑え枠を用いて、再び成型作業を行う金属板の絞り成型方法。」
3.対比
本件出願の発明と引用刊行物記載の発明とを対比すると以下のとおりである。
引用刊行物記載の発明の「抑え枠」、「雄型」及び「雌型」は、それぞれ本件出願の発明の「しわ押さえ」、「ポンチ」及び「ダイス」に相当することが明らかである。
また、引用刊行物記載の発明において「金属板の表裏へ潤滑油を塗布」することは、金属板と抑え枠が接触する面にも潤滑油を塗布することを含んでいることから、「前記抑え枠を充分に復位上昇させて前記金属板から一旦離し、その隙間へ作業員が這い込み、ブラシ又はローラーを以て金属板の表裏へ潤滑油を塗布」することは、しわ押さえを金属板から一旦離し、金属板としわ押さえが接触する面に潤滑油を供給するという限りで、本件出願の発明において「前記しわ押さえを前記金属板から一旦離し、ポンプを利用して、金型の外に配置したノズルから前記金属板と前記しわ押さえの間隙に向かって潤滑油を噴出して前記金属板と前記しわ押さえが接触する面に直接潤滑油を供給」することと共通している。
また、引用刊行物記載の発明は「金属板の絞り成型方法」として把握されているが、本件出願の発明と同様に「金属板のプレス成形方法」として表現できるものであり、引用刊行物記載の発明において、潤滑油を塗布した後「再び成型作業を行う」ことは、潤滑油を供給した後「再度金属板を成形する、という動作を、少なくとも1回以上経る」ことを意味している。
したがって、本件出願の発明と引用刊行物記載の発明とは、以下の一致点と相違点とを有しているということができる。
[一致点]
しわ押さえを配し、ポンチとダイスで金属板を挟圧するプレス成形方法において、前記しわ押さえと前記ダイスで前記金属板を挟んだ状態で前記ポンチが前記金属板に最初に接触し成形が開始された後、前記ポンチがストローク終端に到達して成形が完了するまでの間に、前記しわ押さえを前記金属板から一旦離し、前記金属板と前記しわ押さえが接触する面に潤滑油を供給した後、前記ポンチと前記ダイスと前記しわ押さえを用いて、再度金属板を成形する、という動作を、少なくとも1回以上経る金属板のプレス成形方法である点。
[相違点]
金属板としわ押さえが接触する面に潤滑油を供給するに当たって、本件出願の発明では、ポンプを利用して、金型の外に配置したノズルから前記金属板と前記しわ押さえの間隙に向かって潤滑油を噴出して直接潤滑油を供給しているのに対して、引用刊行物記載の発明では、隙間へ作業員が這い込み、ブラシ又はローラーを以て潤滑油を塗布している点。
4.相違点についての検討
原査定の際にその旨述べているように、プレス成形技術において、ポンプを利用して、金型の外に配置したノズルから潤滑油を噴出して金属板に直接潤滑油を供給することは、特開平6-344197号公報、特開2004-314106号公報等に示されているように従来周知である。
そして、いろいろある産業機械の中でも特にプレス機械においては、その安全性が厳しく求められていることからみて、引用刊行物記載の発明のように、隙間へ作業員が這い込み、ブラシ又はローラーを以て潤滑油を塗布することに代えて、上記従来周知の事項を採用して、本件出願の発明のように構成することは、当業者が格別の創意を要することなく容易に想到するところである。
また、本件出願の発明の採用する構成によってもたらされる効果も、引用刊行物記載の発明及び上記従来周知の事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。
5.むすび
したがって、本件出願の発明は、引用刊行物記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができないものである。
よって、本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。
.
 
審理終結日 2011-10-17 
結審通知日 2011-10-25 
審決日 2011-11-07 
出願番号 特願2005-68321(P2005-68321)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 智宏  
特許庁審判長 豊原 邦雄
特許庁審判官 長屋 陽二郎
刈間 宏信
発明の名称 金属板のプレス成形方法  
代理人 落合 憲一郎  

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