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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1249261
審判番号 不服2008-17221  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-04 
確定日 2011-12-28 
事件の表示 特願2003-577840「化粧組成物中の日光遮断剤の安定化」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月2日国際公開、WO03/80009、平成17年7月14日国内公表、特表2005-520849〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年3月13日(パリ条約による優先権主張2002年3月22日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成19年6月22日付で拒絶理由が通知され、同年12月20日付で手続補正がなされるとともに、同日に意見書が提出されたが、平成20年3月31日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年7月4日に拒絶査定不服審判がされるとともに、同年8月1日付で審判請求書及び特許請求の範囲の手続補正がなされたものである。

2.平成20年8月1日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年8月1日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成20年8月1日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成19年12月20日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1、
「【請求項1】
a.0.01重量%?20重量%の有機日光遮断剤(ただし、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、p-アミノ安息香酸エチルを除く)と、
b.有機日光遮断剤を安定化するための0.0001重量%?50重量%の一般式I:
【化1】

[式中、
R_(1)及びR_(2)の各々は独立に、水素原子、-CO-R、-COO-R、CONHRを表し、ここにRは飽和または不飽和の線状、分枝状または環状のC_(1)-C_(18)炭化水素基を表し、
R_(3)は1-18個の炭素原子を有しているアルキル基を表すか、または、一般式(II):
【化2】

の基を表し、ここにXは、水素;OR^(1){R^(1)は水素、(C_(1)-C_(6))アルキルまたはアリール-(C_(1)-C_(6))アルキルを表す};OCOR^(2){R^(2)は(C_(1)-C_(6))アルキル、アリール-(C_(1)-C_(6))アルキルまたはフェニルを表す};ハロゲン;(C_(1)-C_(6))アルキル;アリール-(C_(1)-C_(6))アルキルまたはアリール-(C_(1)-C_(6))アルキル;またはNHR^(1){R^(1)は上記の定義と同義}を表し、
nは一般式IIの構造が5、6、7または8員環となるような0-3の数であり、
点線は場合によっては存在する二重結合を表す]
の4-置換レゾルシノール誘導体と、
c.化粧品に許容される担体と、
を含み、
但し、有機日光遮断剤が2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノンであるときは、4-置換レゾルシノール誘導体が4-イソアミルレゾルシノールでないことを付帯条件とする化粧組成物。」を

「【請求項1】
a.メトキシシンナメート、オクチルメトキシシンナメート、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、及びそれらの混合物から選択される0.01重量%?20重量%の有機日光遮断剤と、
b.有機日光遮断剤を安定化するための0.0001重量%?50重量%の一般式I:
【化1】

[式中、
R_(1)及びR_(2)の各々は独立に、水素原子、-CO-R、-COO-R、CONHRを表し、ここにRは飽和または不飽和の線状、分枝状または環状のC_(1)-C_(18)炭化水素基を表し、
R_(3)は1-18個の炭素原子を有しているアルキル基を表すか、または、一般式(II):
【化2】

の基を表し、ここにXは、水素;OR^(1){R^(1)は水素、(C_(1)-C_(6))アルキルまたはアリール-(C_(1)-C_(6))アルキルを表す};OCOR^(2){R^(2)は(C_(1)-C_(6))アルキル、アリール-(C_(1)-C_(6))アルキルまたはフェニルを表す};ハロゲン;(C_(1)-C_(6))アルキル;アリール-(C_(1)-C_(6))アルキルまたはアリール-(C_(1)-C_(6))アルキル;またはNHR^(1){R^(1)は上記の定義と同義}を表し、
nは一般式IIの構造が5、6、7または8員環となるような0-3の数であり、
点線は場合によっては存在する二重結合を表す]
の4-置換レゾルシノール誘導体と、
c.化粧品に許容される担体と、
を含み、
但し、有機日光遮断剤が4-t-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタンであるときは、4-置換レゾルシノール誘導体が4-シクロヘキシルレゾルシノールでないこと、有機日光遮断剤がパラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシルであるときは、4-置換レゾルシノール誘導体が4-n-ブチルレゾルシノールでないことを付帯条件とする化粧組成物。」(以下、「本願補正発明」という。)とする補正を含むものである。

(2)判断
本願補正発明は、有機日光遮断剤について、
本件補正前の、
「有機日光遮断剤(ただし、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、p-アミノ安息香酸エチルを除く)」とともに、
「有機日光遮断剤が2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノンであるときは、4-置換レゾルシノール誘導体が4-イソアミルレゾルシノールでない」

「(有機日光遮断剤が)メトキシシンナメート、オクチルメトキシシンナメート、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、及びそれらの混合物から選択される」とともに、
「有機日光遮断剤が4-t-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタンであるときは、4-置換レゾルシノール誘導体が4-シクロヘキシルレゾルシノールでないこと、有機日光遮断剤がパラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシルであるときは、4-置換レゾルシノール誘導体が4-n-ブチルレゾルシノールでない」
とするものである。
ここで、本願補正発明の「オクチルメトキシシンナメート」、及び「ブチルメトキシジベンゾイルメタン」は、本件明細書の表1に、それぞれ商標「PARSOL MCX」、及び「PARSOL 1789」であることが示されており、これら商標の化合物が、それぞれ「パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル」、及び「4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン」であることは、当業者に自明な事項である。
そうしてみると、本件補正により、有機日光遮断剤から除かれていた2つの化合物が、特定の4-置換レゾルシノール誘導体との組合せの場合に限って除かれることとなり、それ以外の場合には含まれるように変更された。
したがって、本件補正は、有機日光遮断剤に包含される化合物の範囲を拡張するものとなるから、特許請求の範囲の減縮に該当しない。

また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものではないことは明らかである。

なお、審判請求人は、審判請求書の審判請求の理由、(2)補正の根拠の明示において、「実施例等に記載された旧請求項2(審決注:本件補正前の請求項2)の一部を請求項1(本願補正発明)に組み込み、請求項2を削除し、これ以降の請求項の番号を繰り上げた。なお、前回の補正(審決注:平成19年12月20日付の手続補正)で4-t-ブチル-4’-メトキシベンゾイルメタンを削除したが、旧請求項2にブチルメトキシベンゾイルメタンが記載されていることから、これを復活させ、引用文献1(審決注:特開2002-285019号公報)に記載の4-シクロヘキシルレゾルシノールとの組み合わせを削除するに留めた。
上記補正の全ては、新規事項の追加等や要旨の変更等に該当するものではない。」と釈明している。
そこで検討するに、審判請求時の補正は、新規事項の追加に該当しないのみではなく、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものに限られているところ、このいずれを目的とするかについて説明されていない。
そして、本願補正前の請求項1に係る発明において除かれているものが、前記請求項1を引用する請求項2に記載されていたとしても、前記請求項1に係る発明を特定するために必要な事項とはならないから、本件補正はこれを限定するものとはいえず、誤記の訂正とも、明りょうでない記載の釈明でもないことは明らかである。

(3)むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成20年8月1日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?12に係る発明は、平成19年12月20日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
a.0.01重量%?20重量%の有機日光遮断剤(ただし、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、p-アミノ安息香酸エチルを除く)と、
b.有機日光遮断剤を安定化するための0.0001重量%?50重量%の一般式I:
【化1】

[式中、
R_(1)及びR_(2)の各々は独立に、水素原子、-CO-R、-COO-R、CONHRを表し、ここにRは飽和または不飽和の線状、分枝状または環状のC_(1)-C_(18)炭化水素基を表し、
R_(3)は1-18個の炭素原子を有しているアルキル基を表すか、または、一般式(II):
【化2】

の基を表し、ここにXは、水素;OR^(1){R^(1)は水素、(C_(1)-C_(6))アルキルまたはアリール-(C_(1)-C_(6))アルキルを表す};OCOR^(2){R^(2)は(C_(1)-C_(6))アルキル、アリール-(C_(1)-C_(6))アルキルまたはフェニルを表す};ハロゲン;(C_(1)-C_(6))アルキル;アリール-(C_(1)-C_(6))アルキルまたはアリール-(C_(1)-C_(6))アルキル;またはNHR^(1){R^(1)は上記の定義と同義}を表し、
nは一般式IIの構造が5、6、7または8員環となるような0-3の数であり、
点線は場合によっては存在する二重結合を表す]
の4-置換レゾルシノール誘導体と、
c.化粧品に許容される担体と、
を含み、
但し、有機日光遮断剤が2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノンであるときは、4-置換レゾルシノール誘導体が4-イソアミルレゾルシノールでないことを付帯条件とする化粧組成物。」(以下、「本願発明」という。)

(1)引用例
ア 原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前である平成14年2月19日に頒布された「特開2002-53448号公報」(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)「下記化1で示される一般式(I)で表されるキヌレニン、キヌレニン誘導体、その塩から選ばれる少なくともひとつを有効成分として含有してなり、アウトドアにおける紫外線の刺激で活性化するチロシナーゼの作用によって、チロシンからドーパとなり、ドーパが酸化して生じたドーパキノンをドーパに還元して循環させるアウトドア化粧料にドーパキノン生成抑制剤及び/又は紫外線防御剤を含有せしめてなるアウトドア化粧料。
【化1】

(但し式中、
X:水素又は水酸基を表すか、あるいは、水酸基とグルコースとの配糖体を形成する。
R:水素又は低級アルキル基を表す。
A:遊離、あるいは、鉱酸又は酸性ムコ多糖類を表す。(蔗糖、Zn、Cuの場合は、コンプレックスを形成する。)」(請求項1)

(イ)「ドーパキノン生成抑制剤がグルコサミン及びその誘導体、リノール酸及びその誘導体、L-アスコルビン酸及びその誘導体、コウジ酸及びその誘導体、ハイドロキノンの配糖体及びその誘導体、エラグ酸及びその誘導体、レゾルシノール誘導体、動・植物エキスから選ばれた1もしくは2以上であることを特徴とする請求項1?2のいずれか1項に記載のアウトドア化粧料。」(請求項3)

(ウ)「紫外線防御剤が紫外線吸収剤として、
(A)(PABA系)パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル
(B)(けい皮酸系)p-メトキシ桂皮酸-2-エチルヘキシル、p-メトキシ桂皮酸-2-エトキシエチル、ジパラメトキシ桂皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、2,5-ジイソプロピル桂皮酸メチル、トリメトキシ桂皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル
(C)(ベンゾフェノン系)2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルフォン酸塩、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノンジスルフォン酸塩、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン
(D)(サリチル酸系)サリチル酸オクチル、サリチル酸-2-エチルヘキシル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸ジプロピレングリコール
(E)(その他)ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、4-tert-ブチル-4’-メトキシベンゾイルメタン、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5-トリアジン、シノキサート、1-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-1,3-ペンタンジオン、ジメトキシベンジリデンジオキシイミダゾリンプロピオン酸2-エチルヘキシル又紫外線散乱剤として、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カオリン、タルクから選ばれた1もしくは2以上であることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載のアウトドア化粧料。」(請求項4)

(エ)「レゾルシノール誘導体が、4-n-ブチルレゾルシノールであることを特徴とする請求項3に記載のアウトドア化粧料。」(請求項11)

(オ)「キヌレニン及びその誘導体と「パルソールA」の特性とを、下記表1に併記する。該表及び図1から明らかなように、キヌレニン及びその誘導体は最大吸収波長(λmax)は360?365nmにあり、皮膚を直接黒化する最も危険なUV-A領域(320?380nm)にあり好適である。しかし、紫外線吸収の強さの指標となる分子吸光係数(ε)が市販のパルソールA(ε=36,000)に比べてキヌレニン(ε=4,000)のそれは約10分の1にすぎない。この事はパルソール1%配合製品と同等な効力を持たせるにはキヌレニン及びその誘導体の配合量は10倍量の10%となり、異常ともいえる高配合が必要となる。」(段落[0011])

(カ)「レゾルシノール誘導体はチロシナーゼ活性抑制作用を有している。4-n-エチルレゾルシノール、4-n-ブチルレゾルシノール、4-n-ヘキシルレゾルシノール、4-n-イソアミルレゾルシノールが使用できる。」(段落[0045])

(キ)「また、ドーパキノン生成抑制剤又は紫外線防御剤については、グルコサミン及びその誘導体、リノール酸及びその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、コウジ酸及びその誘導体、アルブチン及びその誘導体、エラグ酸及びその誘導体、ルシノール(審決注:レゾルシノールの誤記と認める。)及びその誘導体、動・植物エキス及び紫外線防御剤よりからなる群から選ばれた一種または二種以上の配合量には特に制限はないが、0.01?10.0重量%、好ましくは、0.1?5.0重量%を配合する。」(段落[0050])

(ク)「【実施例10:ローションの製造】
1)ステアリン酸 1.5重量%
2)セチルアルコール 0.5
3)水添ラノリン 2.0
4)ポリオキシエチレン(20モル)モノオレイン酸エステル 1.0
5)エタノール 10.0
6)p-アミノ安息香酸エチル 0.5
7)4-n-ブチルレゾルシノール 1.0
8)エラグ酸 0.5
9)プロピレングリコール 5.0
10)3ヒドロキシ-L-キヌレニン 2.0
11)香料 適量
12)防腐剤、酸化防止剤 適量
13)イオン交換水 残余
9)?13)、5)?8)及び1)?4)を各々混合溶解し、70℃に加熱する。3種の溶液を良く混合し、予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化させる。良く撹拌しながら30℃まで冷却する。
【実施例11:クリームの製造】
1)ステアリルアルコール 7.0重量%
2)ステアリン酸 2.0
3)水添ラノリン 2.0
4)p-メトキシケイ皮酸-2-エトキシエチル 3.5
5)スクワラン 5.0
6)2-オクチルドデシルアルコール 6.0
7)ポリオキシエチレン(25モル)硬化ヒマシ油エーテル 3.0
8)グリセリンモノステアリン酸エステル 2.0
9)プロピレングリコール 5.0
10)L-アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩 1.0
11)アルブチン 0.5
12)DL-キヌレニン硫酸塩 2.0
13)香料 適量
14)防腐剤、酸化防止剤 適量
15)イオン交換水 残余
イオン交換水に9)?12)を加え、70℃に加熱する。他の成分を混合、70℃に加熱融解し、水相に添加、予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化した後、良く撹拌しながら30℃まで冷却する。
【実施例12】
W/O型エマルジョン化粧品
(A)ペンタオレイン酸デカグリセリン 2.5重量%
新油性処理酸化チタン 2.0
オクチルメトキシシンナメート 6.0
ポリリシノール酸ヘキサグリセリン 0.3
スクワラン 5.0
デカメチルシクロペンタンシロキサン 12.0
リノール酸 2.0
プロピルパラベン 0.1
(B)硫酸マグネシウム 0.5
グリセリン 5.0
コージ酸 1.0
グルコサミン 1.0
胎盤抽出物 2.0
メチルパラベン 0.2
イオン交換水 残余
(A)、(B)を各々別個に溶解後、乳化機にかけエマルジョン化粧品を得る。」(段落[0056]?[0058])

イ 原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前である平成13年10月31日に頒布された「特開2001-302505号公報」(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

(ケ)「【請求項1】アルキルレゾルシノール及びその塩の少なくとも何れかからなる活性酸素消去剤。
【請求項2】前記アルキルレゾルシノールのアルキル基が、炭素数1?20のアルキル基であることを特徴とする、請求項1に記載の活性酸素消去剤。
【請求項3】前記アルキルレゾルシノールが4-n-ブチルレゾルシノールであることを特徴とする、請求項2に記載の活性酸素消去剤。
【請求項4】前記請求項1?3の何れか1項に記載の活性酸素消去剤を含有する、炎症存在下使用用の皮膚外用剤。
【請求項5】前記炎症が、化学物質に対する過敏症によるもの及びアトピー性皮膚炎によるものの少なくとも何れかであることを特徴とする、請求項4に記載の炎症存在下使用用の皮膚外用剤。
【請求項6】前記炎症が起因して起こすしわ形成及び皮膚の弾力喪失の少なくとも何れかを予防する作用を有することを特徴とする、請求項5に記載の炎症存在下使用用の皮膚外用剤。
【請求項7】前記活性酸素消去剤の含有量が、総量で前記皮膚外用剤全量に対して0.001?10重量%であることを特徴とする、請求項4に記載の炎症存在下使用用の皮膚外用剤。
【請求項8】化粧料であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の炎症存在下使用用の皮膚外用剤。」(特許請求の範囲)

(コ)「(2)本発明の炎症存在下使用用の皮膚外用剤
本発明の炎症存在下使用用の皮膚外用剤は、上記アルキルレゾルシノール及びその塩の少なくとも何れかを含有することを特徴とする。ここで、本発明で言う皮膚外用剤とは、皮膚の外用に適用されるものの総称を意味し、例えば、化粧料、皮膚外用医薬等が例示でき、この中では、化粧料が特に好ましい。これは、本発明の皮膚外用剤の必須成分である、アルキルレゾルシノールやその塩の作用が緩和で安全性に優れる為である。」(段落[0012])

(サ)「本発明の炎症存在下使用用の皮膚外用剤は、必須成分である上記アルキルレゾルシノールやその塩以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来、この様な任意成分としては、例えば、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、ホホバ油、カルナウバワックス、オレイン酸オクチルドデシル等のエステル類、オリーブ油、牛脂、椰子油等のトリグリセライド類、ステアリン酸、オレイン酸、リチノレイン酸等の脂肪酸、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類、アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類、ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブタンジオール等の多価アルコール類、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色材、防腐剤、粉体等を例示することができる。」(段落[0014])

ウ これらの記載によれば、引用例1には、上記(ア)?(ウ)からみて、
「下記化1で示される一般式(I)で表されるキヌレニン、キヌレニン誘導体、その塩から選ばれる少なくともひとつを有効成分として含有してなり、
アウトドアにおける紫外線の刺激で活性化するチロシナーゼの作用によって、チロシンからドーパとなり、ドーパが酸化して生じたドーパキノンをドーパに還元して循環させるアウトドア化粧料に
グルコサミン及びその誘導体、リノール酸及びその誘導体、L-アスコルビン酸及びその誘導体、コウジ酸及びその誘導体、ハイドロキノンの配糖体及びその誘導体、エラグ酸及びその誘導体、レゾルシノール誘導体、動・植物エキスから選ばれた1もしくは2以上であるドーパキノン生成抑制剤及び/又は
紫外線吸収剤として、
(A)(PABA系)パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル
(B)(けい皮酸系)p-メトキシ桂皮酸-2-エチルヘキシル、p-メトキシ桂皮酸-2-エトキシエチル、ジパラメトキシ桂皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、2,5-ジイソプロピル桂皮酸メチル、トリメトキシ桂皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル
(C)(ベンゾフェノン系)2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルフォン酸塩、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノンジスルフォン酸塩、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン
(D)(サリチル酸系)サリチル酸オクチル、サリチル酸-2-エチルヘキシル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸ジプロピレングリコール
(E)(その他)ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、4-tert-ブチル-4’-メトキシベンゾイルメタン、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5-トリアジン、シノキサート、1-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-1,3-ペンタンジオン、ジメトキシベンジリデンジオキシイミダゾリンプロピオン酸2-エチルヘキシル又紫外線散乱剤として、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カオリン、タルクから選ばれた1もしくは2以上である紫外線防御剤
を含有せしめてなるアウトドア化粧料。
【化1】

(但し式中、
X:水素又は水酸基を表すか、あるいは、水酸基とグルコースとの配糖体を形成する。
R:水素又は低級アルキル基を表す。
A:遊離、あるいは、鉱酸又は酸性ムコ多糖類を表す。(蔗糖、Zn、Cuの場合は、コンプレックスを形成する。)」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較する。
本願発明の「有機日光遮断剤」は、本件明細書に「本発明組成物に適した有機日光遮断剤は、290-400nmの範囲内の紫外線を吸収する少なくとも1つの発色性基を有している有機日光遮断剤である。」(段落[0018])と記載されていることから、紫外線を遮断する機能を有するものと認められる。
したがって、引用発明の「紫外線吸収剤として、・・・又紫外線散乱剤として、・・・から選ばれた1もしくは2以上である紫外線防御剤」と、本願発明の「有機日光遮断剤(ただし、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、p-アミノ安息香酸エチルを除く)」とは、「紫外線防御剤」である点で共通する。
そして、引用発明の「アウトドア化粧料」は、化粧組成物の一態様であるから本願発明の「化粧組成物」に相当する。
したがって、両者は、
「紫外線防御剤を含む化粧組成物」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]「紫外線防御剤」が、本願発明では、「4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、p-アミノ安息香酸エチルを除く有機日光遮断剤」であるのに対し、引用発明では、「紫外線吸収剤として、・・・又紫外線散乱剤として、・・・から選ばれた1もしくは2以上である紫外線防御剤」とされている点。
[相違点2]本願発明は、「0.01重量%?20重量%の有機日光遮断剤と、有機日光遮断剤を安定化するための0.0001重量%?50重量%の一般式Iの4-置換レゾルシノール誘導体」を含むのに対し、引用発明は、「一般式(I)で表されるキヌレニン、キヌレニン誘導体、その塩から選ばれる少なくともひとつを必須成分とし、ドーパキノン生成抑制剤と紫外線防御剤のいずれか一方又は両方」を含むものであって、ドーパキノン生成抑制剤が紫外線防御剤を安定化するための4-置換レゾルシノール誘導体と特定されておらず、それらの含有量も特定されていない点。
[相違点3]本願発明は、さらに「化粧品に許容される担体」を含むのに対し、引用発明では、そのような特定がされていない点。
[相違点4]本願発明では、「有機日光遮断剤が2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノンであるときは、4-置換レゾルシノール誘導体が4-イソアミルレゾルシノールでない」のに対し、引用発明では、このような組み合わせが除かれているのかどうかが明らかでない点。

(3)判断
[相違点1]について
引用発明では、紫外線防御剤は、有機物質である(PABA系)、(けい皮酸系)、(ベンゾフェノン系)、(サリチル酸系)、及び(その他)に分類される紫外線吸収剤と、無機物質である酸化チタンなどからなる紫外線散乱剤のいずれかである。
そして、上記3.(1)(ク)に示した実施例では、p-アミノ安息香酸エチル(実施例10)、p-メトキシケイ皮酸-2-エトキシエチル(実施例11)、オクチルメトキシシンナメート(実施例12)のように、いずれも有機物質である紫外線吸収剤を用いたことが示されている。
ここで、上記実施例10のものは、本願発明で有機日光遮断剤から除くとされているものであるが、残りのものは本願発明の有機日光遮断剤に相当する。
そうしてみると、引用発明の紫外線防御剤として、選択肢の中から有機物質である紫外線吸収剤であって、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、p-アミノ安息香酸エチル以外のものを選択することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本件明細書の記載を参酌しても特定の紫外線吸収剤を除いたことによる効果は認められない。

[相違点2]について
引用発明は、一般式(I)で表されるキヌレニン、キヌレニン誘導体、その塩から選ばれる少なくともひとつとともに、ドーパキノン生成抑制剤、紫外線防御剤のいずれか一方又は両方を含有するものである。
ここで、上記キヌレニン等は、上記3.(1)(オ)に、キヌレニン及びその誘導体の最大吸収波長(λmax)は360?365nmであり、皮膚を直接黒化する最も危険なUV-A領域(320?380nm)にあり好適である旨記載されているように、紫外線吸収剤としての機能を有するものであるから、引用発明は、特定の紫外線吸収剤キヌレニン等とともに、本願発明の有機日光遮断剤に相当する他の紫外線防御剤、及びドーパキノン生成抑制剤の両方を含有してよいものである。
そのうえ、上記3.(1)(ク)にあるように、引用例1の実施例10?12には、上記キヌレニン等の紫外線吸収剤とともに、これ以外の紫外線吸収剤、及びドーパキノン生成抑制剤の両方を含有する例が記載されている。

また、上記3.(1)(エ)には、ドーパキノン生成抑制剤として、本願発明の一般式Iの4-置換レゾルシノール誘導体に相当する4-n-ブチルレゾルシノールを用いることができることが記載されている。
一方、引用例2には、上記3.(1)(ケ)?(サ)に示すとおり、前記4-n-ブチルレゾルシノールは活性酸素消去剤であり、作用が緩和で安全性に優れるため、皮膚外用剤としての化粧料に適し、通常皮膚外用剤で使用される任意成分、例えば紫外線吸収剤などと併用できることが記載されている。
ところで、上記引用発明の紫外線吸収剤は、光分解を起こさないこと、熱安定性の良いことなどが求められているものの、基剤中での不安定化などの問題を抱えていることが知られている(機能性化粧品III、2000年1月1日、株式会社シーエムシー発行、138?139頁参照)。
以上のことから、引用発明のドーパキノン生成抑制剤として、活性酸素消去剤、すなわち抗酸化剤としての機能をも期待して、併用する紫外線吸収剤の酸化分解を抑制し、安定化を図る目的で、4-n-ブチルレゾルシノールを選択することは、当業者が容易に想到し得たことである。

さらに、引用例1には、上記3.(1)(キ)にあるように、レゾルシノール等のドーパキノン生成抑制剤又は紫外線防御剤の配合量は0.01?10.0重量%程度が好ましいとされており、化粧組成物において、各成分の配合量の最適化を図ることは、当業者が普通に行うことである。
よって、引用発明において、4-n-ブチルレゾルシノールと紫外線吸収剤の両方を配合するとともに、化粧組成物に通常配合する配合量の範囲内から、実施例に示された配合量も参考にしつつ、各配合量をその近傍の適当な範囲とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、4-n-ブチルレゾルシノールと紫外線吸収剤との両方を配合することによって、前者が抗酸化剤としても機能し、紫外線吸収剤の安定化を図れるであろうことは、引用例2の記載及び周知の事項に基づき当業者が予測し得たことであるし、本願発明の配合量の範囲としたことによって格別な効果を奏するものともいえない。

[相違点3]について
本件明細書には、化粧品に許容される担体について明確に定義されていないが、エチルアルコールなどのアルコール、アルキレングリコールなどの多価アルコール、水、溶媒などが担体として使用し得る旨説明されている(段落[0043]、「0048]、[0050]など参照)。
そうしてみると、上記3.(1)(ク)で示した引用例1の実施例10?12で使用されているエタノール、プロピレングリコール、イオン交換水などは、その剤型及び配合量からみて、本願発明の化粧品に許容される担体に相当するものと認められる。
このように、引用発明のアウトドア化粧品の剤型に応じて、適宜公知の化粧品に許容される担体を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

[相違点4]について
上記相違点2で検討したとおり、引用発明において、4-n-ブチルレゾルシノールを選択することは当業者が容易になし得たことであり、よって、レゾルシノール誘導体が4-n-イソアミルレゾルシノールであることを必須とする組み合わせが除かれていることは、実質的な相違点とはならない。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1?2に記載された発明、並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-29 
結審通知日 2011-08-02 
審決日 2011-08-16 
出願番号 特願2003-577840(P2003-577840)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上條 のぶよ關 政立  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 関 美祝
▲高▼岡 裕美
発明の名称 化粧組成物中の日光遮断剤の安定化  
代理人 川口 義雄  

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