ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B27L |
---|---|
管理番号 | 1249286 |
審判番号 | 不服2010-26260 |
総通号数 | 146 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-11-22 |
確定日 | 2011-12-28 |
事件の表示 | 特願2000-566086「薄板スライサ用駆動システム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月 2日国際公開、WO00/10783、平成14年 7月30日国内公表、特表2002-523253〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯・本願発明 本願は,1999年8月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年8月20日,米国,1999年6月8日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成22年7月14日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年11月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 そして,本願の請求項1ないし9に係る発明は,平成22年6月28日受付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,そのうち請求項1に係る発明は,次のとおりである。 「フレームと、フリッチから薄板を薄切りするためフリッチを支持するフリッチテーブルと、ナイフとを有する薄板スライサであって、前記フリッチテーブルは前記フレームによって支持され、前記フリッチテーブルおよび前記ナイフは互いに近接離間するように進路に沿って相対的移動が可能であり、前記フリッチテーブルは前記フレームに取り付けられ、切断行程および復帰行程において前記フリッチを前記ナイフに交差させるように運動し、前記フリッチテーブルは、前記フリッチテーブルと前記フレームとのうちのどちらか1つに固定されたガイド部材と、前記フリッチテーブルと前記フレームとのうちの残り1つに固定され前記ガイド部材と協動するベアリング部材とによって、前記フレームに支持され、且つ、前記ガイド部材および前記ベアリング部材はそれらの間に一つの溝を形成し、前記溝の中には複数のベアリングが配置されることを特徴とする薄板スライサ。」(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。) 2 引用刊行物の記載内容 (1)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先日前に米国で頒布された刊行物である,米国特許第4601317号明細書(以下,「刊行物1」という。)には,概略次の事項が記載されていると認められる。 (1a)「図1及び2には,本発明の薄板スライサ装置のより良い具体例が示されている。この装置は,フリッチと呼ばれる丸太又は丸太の切断片12を支持するフリッチ支持装置11を含む薄板スライサ10から構成されている。フリッチ支持装置11は,切削刃13に対し垂直方向に相対移動可能であり,例示では,フリッチの下方へ移動する毎に,フリッチから薄板を切削することができるように往復する。別例として,フリッチの上方への移動毎に,フリッチから薄板を切削することもできる。」(4欄4?15行) (1b)「フリッチ支持装置11は,ガイドに沿って上下往復運動するよう,複数の傾斜ガイド23(図2)の上に支持されたフリッチテーブル22を含む。ガイド23は支柱24によって支持されている。フリッチ12は,周知の複数のドッグ26によってフリッチテーブル22にしっかり据え付けられる。 フリッチ支持装置駆動手段17は,フリッチ駆動モータ27を含み,それは,符号29で示される周知の歯車装置やベルト装置によってモータと接続されたコネクティングロッド28によりフリッチテーブル22をガイド23に沿って上下方向へ迅速に往復運動させる。」(4欄41?52行) (1c)図2には,複数の固定部材である支柱24の夫々に,傾斜ガイド23が設けられていることが記載されている。 これらの記載事項及び図面の記載によれば,刊行物1には,次の発明が記載されているものと認められる。 「複数の固定部材である支柱24と,フリッチ12から薄板を切削することができるようにフリッチを支持するフリッチ支持装置11と,切削刃13とを有する薄板スライサ10であって, フリッチ支持装置11は,フリッチを支持し,支柱24に支持された複数の傾斜ガイド23に沿って上下方向へ往復運動するフリッチテーブル22を含み, 該フリッチテーブル22は,切削刃13に対し垂直方向に相対移動可能であり,上下動何れかの移動毎に,支持したフリッチ12から薄板を切削することができるように往復運動されるものであり, 前記フリッチテーブル22は,前記支柱24に固定されたガイド23と,ガイド23に沿ってフリッチテーブルを案内する部材とによって,前記支柱24に支持される, 薄板スライサ。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。) 3 対比 本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,刊行物1記載の発明の「複数の固定部材である支柱24」は,機能的に,本願発明の「フレーム」に相当する。 同様に,刊行物1記載の発明の「切削刃13」は,本願発明の「ナイフ」に相当し, 「傾斜ガイド23」は,「ガイド部材」に相当する。 刊行物1記載の発明において,フリッチテーブル22は,切削刃13に対し垂直方向に相対移動可能であり,上下動何れかの移動毎に,支持したフリッチ12から薄板を切削することができるように往復されるから,「フリッチテーブルおよびナイフは互いに近接離間するように進路に沿って相対的移動が可能」なものといえる。 また,切削刃13は,フリッチの長手方向と交差するように設けられていることは明らかであるから,刊行物1記載の発明のフリッチテーブル22は,「切断行程および復帰行程においてフリッチをナイフに交差させるように運動」するものといえる。 さらに,刊行物1記載の発明における「ガイド23に沿ってフリッチテーブルを案内する部材」と,本願発明の「ベアリング部材」とは,「ガイド部材と協働する案内部材」である点で共通する。 したがって,両者は, 「フレームと,フリッチから薄板を薄切りするためフリッチを支持するフリッチテーブルと,ナイフとを有する薄板スライサであって, 前記フリッチテーブルおよび前記ナイフは互いに近接離間するように進路に沿って相対的移動が可能であり,前記フリッチテーブルは,切断行程および復帰行程において前記フリッチを前記ナイフに交差させるように運動し, 前記フリッチテーブルは,前記フレームに固定されたガイド部材と案内部材によって,前記フレームに支持される, 薄板スライサ。」 の点で一致し,下記の点で相違している。 <相違点> ガイド部材と協働する案内部材が,本願発明では,「ベアリング部材」であり,ガイド部材およびベアリング部材の間に形成した一つの溝の中に複数のベアリングが配置されるのに対し, 刊行物1記載の発明では,このようなベアリング部材ではない点。 4 判断 本願発明の上記相違点に係る構成である「ガイド部材およびベアリング部材の間に形成した一つの溝の中に複数のベアリングが配置される」とは,溝の一つだけか否か明確でないが,本願明細書及び図面には,ガイド部材およびベアリング部材の間に溝が複数設けられたものしか記載されていないことからみて,上記の構成は,ガイド部材およびベアリング部材の間に「溝」が形成され,この溝は,「一つの溝の中に複数のベアリングが配置される」ものであることを表していると解釈して,上記相違点について検討する。 フレームに対してテーブルが往復動するのに伴って被加工物に対して切削加工などが行われる工作機械において,フレームには,レール等の「ガイド部材」を設け,テーブルには,ガイド部材に対して相対運動可能な「案内部材」を設け,ガイド部材と案内部材との間に溝を形成して,該溝に,転動する複数の転動体であるボールやローラを配列収容すること,すなわち案内部材を「ベアリング部材」とすることは,例えば,特開平7-145849号公報,特開平2-279243号公報,特開平2-51619号公報等に示されるように,本願の優先日前周知の技術である。 そうすると,刊行物1記載の発明において,フリッチテーブルをガイド部材に沿って滑らかに移動させるために,当該周知技術を採用して,フリッチテーブルの案内部材を「ベアリング部材」とし,ガイド部材およびベアリング部材の間に,「一つの溝の中に複数のベアリングが配置される」溝部を形成することは,当業者が容易になしうることである。 そして,本願発明の効果は,刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものであって格別なものということができない。 したがって,本願発明は,刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 むすび 以上のとおり,本願発明は,刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は,拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-07-25 |
結審通知日 | 2011-07-26 |
審決日 | 2011-08-12 |
出願番号 | 特願2000-566086(P2000-566086) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B27L)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 坂田 誠 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
宮崎 恭 仁科 雅弘 |
発明の名称 | 薄板スライサ用駆動システム |
代理人 | 一色 健輔 |