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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1249323
審判番号 不服2008-25492  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-03 
確定日 2011-12-26 
事件の表示 特願2002-265228「イネ葉緑体リボソームタンパク質L11遺伝子のプロモーターDNA」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 8日出願公開,特開2003-189877〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は,特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成14年9月11日(優先日,平成13年9月13日)の出願であって,平成20年8月11日に手続補正がなされたが,平成20年8月27日付で拒絶査定がなされ,これに対して平成20年10月3日に審判請求がなされたものである。
そして本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成20年8月11日の手続補正書により補正された明細書の記載からみて,以下のとおりのものである。

「【請求項1】 配列表の配列番号1に記載された塩基配列の5’側の7番目のcから1271番目のtまでの領域の塩基配列を有し且つ1265bpのサイズを有するDNAであって,このDNAは,イネの葉緑体リボソームタンパク質L11をコードする遺伝子に対するプロモーター活性を有すると共に,イネのリジン合成遺伝子とトリプトファン合成遺伝子との発現に対するプロモーター活性をもそれぞれに有することを特徴とする,前記の1265bpのサイズのDNA。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された,本願優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,Database DDBJ/EMBL/GenBank [online],2001年 1月27日,Accession No. AB042934(以下,「引用例」という。)は,いまではURL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/12583658?sat=8&satkey=2466824において利用可能になっている,核酸配列データベースに登録されたデータで,
「LOCUS AB042934 790 bp mRNA linear PLN 27-JAN-2001
DEFINITION Oryza sativa mRNA for plastid ribosomal protein L11, complete cds.
ACCESSION AB042934
VERSION AB042934.1 GI:12583658
KEYWORDS .
SOURCE Oryza sativa
ORGANISM Oryza sativa
Eukaryota; Viridiplantae; Streptophyta; Embryophyta; Tracheophyta;
Spermatophyta; Magnoliophyta; Liliopsida; Poales; Poaceae;
Ehrhartoideae; Oryzeae; Oryza.
REFERENCE 1 (sites)
AUTHORS Tozawa,Y., Satsu,H., Ito,Y. and Ochi,K.
TITLE Rice cDNA encoding plastid ribosomal protein L11
JOURNAL Published Only in DataBase (2001) In press
REFERENCE 2 (bases 1 to 790)
AUTHORS Tozawa,Y., Satsu,H., Ito,Y. and Ochi,K.
TITLE Direct Submission
JOURNAL Submitted (18-MAY-2000) Yuzuru Tozawa, National Food Research
Institute, Genetic Engineering Laboratory; 2-1-2 Kannondai,
Tsukuba, Ibaraki 305-8642, Japan (E-mail:tozaway@nfri.affrc.go.jp,
Tel:81-298-38-8124)
FEATURES Location/Qualifiers
source 1..790
/organism="Oryza sativa"
/mol_type="mRNA"
/cultivar="Nipponbare"
/db_xref="taxon:4530"
CDS 41..673
/codon_start=1
/product="plastid ribosomal protein L11"
/protein_id="BAB21483.1"
/db_xref="GI:12583659"
/translation="MATTSLSLHGVPSPTATKLSSSFLGAPASFLRPTPPPLAAPSRR
ALAVRAMAPPKPGGKPKKVVGLIKLALEAGKATPAPPVGPALGAKGVNIMSFCKEYNA
KTAEKAGYIIPVEITVFDDKSFTFILKTPPASVLLLKAAGIEKGSKEPQREKVGKVTA
DQVRTIAQEKLPDLNCKSIDSAMRIIAGTAANMGIEVDPPILEKKEKVLL"
ORIGIN
1 cgttcatctc ctcgtctcgc cccgctccaa gcgcgccgcc atggccacca cctccttgtc
61 cctgcatggc gtcccatccc ccaccgccac caagctctcc tcctcctttc tcggcgcccc
121 cgcctccttc ctccggccga cgccgccgcc gctcgctgcc ccctcgcgga gggcgctcgc
181 cgtcagggcc atggcgccac ccaagcccgg gggcaagccc aagaaagtgg tgggcctcat
241 aaagctggcg ctggaggccg ggaaggccac gccggcgccg ccggtcggcc ccgcgcttgg
301 tgccaagggt gtgaacatca tgtccttctg caaggagtac aatgccaaga cggccgagaa
361 ggccggctac atcatccctg tcgagatcac cgtgttcgat gataaaagtt tcacctttat
421 cttgaagacc cctcctgcct cagtccttct cctcaaggca gcaggtatcg agaaaggttc
481 aaaagaaccg cagcgagaga aggttggaaa agtaacagca gatcaagtac gtacaatagc
541 tcaagagaag ttgccagatt tgaactgcaa gagcattgac tcggccatga gaattatagc
601 gggcactgct gctaatatgg gaatcgaggt tgaccctcca atacttgaga agaaggaaaa
661 ggtgctcttg tagtctgttt ctctggcacc catgaatcac cttactgatg gccacctgta
721 gattttactt cctttttgtt cgtcaatatg ttgtcctagt gcttgaatct tttccctccg
781 tggtcagttt
//」という,イネの葉緑体リボソームタンパク質L11のmRNA及びcDNA(DEFINITION及びTITLEの項)の塩基配列のデータ(ORIGINの項)である。

3.対比
本願発明を引用例と比較すると,本願発明における「配列表の配列番号1に記載された塩基配列の5’側の7番目のcから1271番目のtまでの領域の塩基配列」の1255番目から1271番目までのcgttcatctcctcgtctという配列が,引用例の核酸配列の1番目から17番目までの配列と一致し,共通する配列を有するDNAに関するものであるが,以下の点で相違している。

相違点1:
引用例の塩基配列には,本願発明における,「配列表の配列番号1に記載された塩基配列の5’側の7番目のcから1271番目のtまでの領域の塩基配列」のうち,5’側の7番目のcから1254番目のcまでの領域の塩基配列がなく,そのため,1265bpのサイズを有するものでない点。

相違点2:
本願発明のDNAは,「イネの葉緑体リボソームタンパク質L11をコードする遺伝子に対するプロモーター活性を有すると共に,イネのリジン合成遺伝子とトリプトファン合成遺伝子との発現に対するプロモーター活性をもそれぞれに有する」ものであるが,引用例には,そのような活性のデータが含まれていない点。

4.判断
(相違点1について)
葉緑体は,リブロース二リン酸カルボキシラーゼのLサブユニットを大量に合成していることが知られ,そのため,タンパク質への翻訳に必要である葉緑体リボソームを構成する,リボソームタンパク質も大量に発現しているものであり,そのプロモーター活性も高いことが予測されることから,当業者であれば,葉緑体リボソームタンパク質のプロモーターにも興味を持つものである。そして,引用例に,イネの葉緑体リボソームタンパク質L11のcDNAの配列が記載されているのであるから,この配列を利用して,イネの葉緑体リボソームタンパク質L11のプロモーターの配列やプロモーター活性を調べてみる程度のことは,当業者が容易に想到できるものである。
このとき,公知の配列をもとに作成したプライマーを用い,PCRによりプローブを作成し,ゲノムライブラリーより,プロモーターを含むクローンを選択することは,例えば,Nucleic Acids Research, 18 (1990) p.6845-6852,Nucleic Acids Research, 18 (1990) p.3459-3466,Plant Molecular Biology, 41 (1999) p.75-87,Biochimica et Biophysica Acta, 1487 (2000) p.106-111などに記載される周知技術であり,周知のイネの品種である日本晴を用い,当業者は容易に,その葉緑体リボソームタンパク質L11のプロモーターのある5’上流領域をクローニングし,その配列やプロモーター活性のある部分を調べることができ,本願発明における,「配列表の配列番号1に記載された塩基配列の5’側の7番目のcから1271番目のtまでの領域の塩基配列」を有し且つ1265bpのサイズを有するDNAに到達することができる。

(相違点2について)
配列表の配列番号1に記載された塩基配列の5’側の7番目のcから1271番目のtまでの領域の塩基配列を有し且つ1265bpのサイズを有するDNAに,イネの葉緑体リボソームタンパク質L11をコードする遺伝子に対するプロモーター活性を有すると共に,イネのリジン合成遺伝子とトリプトファン合成遺伝子との発現に対するプロモーター活性をもそれぞれに有するものと,これらのプロモーター活性を有さないものがあるわけではなく,相違点1に関し,当業者が容易に到達できると判断したDNAも当然に,イネの葉緑体リボソームタンパク質L11をコードする遺伝子に対するプロモーター活性を有すると共に,イネのリジン合成遺伝子とトリプトファン合成遺伝子との発現に対するプロモーター活性をもそれぞれに有するものである。
また,プロモーターの機能は,下流の遺伝子を発現するものであり,コメにおいて下流のL11を発現させるプロモーターであれば,コメにおいて発現することが知られたイネのリジン合成遺伝子とトリプトファン合成遺伝子を発現する機能を当然に有しているものである。

(本願発明の効果について)
本願明細書の記載をみても,他の活性が高いと知られたプロモーターと比較した記載もなく,本願発明のDNAが,当業者が予測できないほどの格別顕著な効果を有しているものとは認められない。
また請求人は,平成23年9月29日の回答書において,日本特許3814482号及び日本特許4150498号の記載との比較により,カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターやトウモロコシユビキチン1プロモーターと同等の活性を示したことを主張しているが,あくまでも,同等の活性というにすぎないもので,当業者が予測できないほどの格別顕著な効果を有しているものとは認められない。
さらに,本願発明のDNAが,葉においてのみ活性が認められ,組織特異性を有することを主張しているが,本願発明のDNAは,葉緑体リボソームタンパク質のプロモーターであり,本願の明細書の段落0002に記載されるように,葉緑体リボソームは,植物体中の葉,茎等の葉緑体を含む細胞に多く存在することが知られているから,葉において特異的に発現したとしても何ら格別のことではないし,また,双子葉植物のタバコの葉,および花弁においても活性が認められ,宿主以外の他植物での発現することを主張しているが,単子葉植物でも,双子葉植物でも発現するプロモーターは多く知られ(例えば,The Plant Cell, 4 (1992) p.971-981,Enzyme and Microbial Technology, 28 (2001) p.106-113,Transgenic Research, 3 (1994) p.249-255。)何ら格別のことではない。

(小括)
したがって,本願発明は,引用例の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,本出願に係る他の請求項について検討するまでもなく,本出願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-25 
結審通知日 2011-10-26 
審決日 2011-11-08 
出願番号 特願2002-265228(P2002-265228)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太田 雄三  
特許庁審判長 平田 和男
特許庁審判官 冨永 みどり
六笠 紀子
発明の名称 イネ葉緑体リボソームタンパク質L11遺伝子のプロモーターDNA  
代理人 平井 輝一  
代理人 浜野 孝雄  

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