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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
管理番号 1249408
審判番号 不服2010-19633  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-31 
確定日 2012-01-04 
事件の表示 特願2003-388946「アクチュエータ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 9日出願公開、特開2005-151758〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年11月19日の出願であって、平成22年5月26日付けで拒絶査定がなされ、同年8月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成23年6月20日付けで当審の拒絶理由が通知され、同年8月10日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年8月10日付け手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲、及び、図面によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。

「モータカバと、上記モータカバ内に収容・配置されたモータと、上記モータカバ内に収容・配置され少なくとも上記モータを駆動するためのドライバやコントローラを備えた基板と、上記モータの回転軸に固着されたオルダム式カップリング機構の一方のカップリングハブと、から構成されているモータモジュールユニットと、
フロントブラケットと、リアブラケットと、これらフロントブラケット及びリアブラケットの間に設置されたフレームと、上記フロントブラケット及びリアブラケット及びフレーム内に収容されたボールネジと、上記ボールネジに固着されたオルダム式カップリング機構の他方のカップリングハブと、上記ボールネジに回転を規制された状態で螺合しボールネジの回転によって移動するボールナットと、上記ボールナットに取付・固定された移動体とを備えユニット化されたアクチュエータ本体と、
上記モータモジュールユニットのモータカバであって上記一方のカップリングハブの外周側に設けられた嵌合凸部と、
上記アクチュエータ本体のリアブラケットであって上記他方のカップリングハブの外周側に設けられ上記嵌合凸部に嵌合する嵌合凹部と、
上記嵌合凸部と上記嵌合凹部とを嵌合させた状態で上記嵌合凹部の外周側であって放射方向からねじ込まれる固定ねじと、
を具備し、
上記モータモジュールユニットと上記アクチュエータ本体を連結する場合には、上記一方のカップリングハブと他方のカップリングハブをカップリングスぺーサを介して連結するとともに上記嵌合凸部と嵌合凹部を嵌合させその状態で上記固定ねじをねじ込み、
上記モータモジュールユニットと上記アクチュエータ本体を分離させる場合には上記固定ねじを外して上記嵌合凸部と嵌合凹部の嵌合を解除するとともに上記一方のカップリングハブと他方のカップリングハブのカップリングスぺーサを介しての連結を解除するようにしたことを特徴とするアクチュエータ。」

3.引用例
(3-1)引用例1
当審の拒絶理由に引用した特開2003-120778号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【0002】
【従来の技術】図4は従来の直線作動機を示し、(A)はその一部断面正面図、(B)は(A)における円内の拡大図である。図4に示す従来の直線作動機1は、ハウジング2と、ハウジング2に連結された外筒3と、外筒3内に配置された内筒4と、内筒4に連結され内筒4とともに外筒3内を軸方向にのみ移動可能なボールねじナットユニット5と、ボールねじナットユニット5に螺合し回転可能なボールねじ軸6と、ハウジング2の端面に当接して取り付けられボールねじ軸6を回転駆動させるモータ7と、モータ7のモータ出力軸8とボールねじ軸6の軸部6aを連結するフランジ形たわみ軸継手11を備え、ハウジング2とモータ7のモータフランジ9の当接する端面間に嵌め合い部が設けられている。
【0003】また、ボールねじ軸6のモータ7側の軸部6aは2個の軸受12,12により支持されている。2個の軸受12,12はブラケット13を介してハウジング2と外筒3に支持されている。そして、モータ出力軸8とボールねじ軸6のモータ7側の軸部6aは軸端面が相互に対向するように配置されており、モータ出力軸8とボールねじ軸6のモータ7側の軸部6aはフランジ形たわみ軸継手11により連結されるようになっている。
【0004】ハウジング2の端面にモータ7のフランジ9を当接させて取付けボルト16によりハウジング2の端面にモータ7が取付けられている。そして、ハウジング2とモータ7のフランジ9の当接する端面間には、嵌め合い部(いんろう部)が設けられている。この嵌め合い部(いんろう部)は、ハウジング2の端面に形成された凹部2aと凹部2aに対応してモータ7のフランジ9の端面に形成された凸部9aで構成され、凹部2aに凸部9aが嵌め込まれたとき凹部2aと凸部9a間で半径方向に隙間ができないように凹部2aと凸部9aは形成されている。
【0005】そして、モータ出力軸8とボールねじ軸6のモータ7側の軸部6aの連結は、ハウジング2の端面に形成された凹部2aにモータ7のフランジ9の端面に形成された凸部9aをぴったりと嵌め込んだ後にフランジ形たわみ軸継手11により連結する。つまり、モータ出力軸8とボールねじ軸6の心出しは、ハウジング2の端面に形成された凹部2aにモータ7のフランジ9の端面に形成された凸部9aをぴったりと嵌め込むことにより行なわれている。このため、一般的にはハウジング2の加工精度や静的精度(幾何精度)から避けることのできない心ずれに対してはフランジ形たわみ軸継手11を用いることにより心ずれを許容している。」

・「【0015】また、外筒53に先端部には内筒54を支持する筒受64が取り付けられており、内筒54の先端部には先端金具65が取り付けられている。さらに、先端金具65には図示しない被作動部材が連結されるようになっている。」

・図4には、モータ7のモータ出力軸8に設けられたフランジ形たわみ軸継手11のフランジ部及びボールねじ軸6の軸部6aに設けられたフランジ形たわみ軸継手11のフランジ部、ブラケット13及びハウジング2及び外筒3内に収容されたボールねじ軸6、及び、取付けボルト16がモータ7のフランジ9に軸方向から取り付けられている点が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「モータ7と、モータ7のモータ出力軸8に設けられたフランジ形たわみ軸継手11のフランジ部と、
ブラケット13及びハウジング2と、ハウジング2に連結された外筒3と、ブラケット13及びハウジング2及び外筒3内に収容されたボールねじ軸6と、ボールねじ軸6の軸部6aに設けられたフランジ形たわみ軸継手11のフランジ部と、回転可能なボールねじ軸6が螺合し、外筒3内を軸方向にのみ移動可能なボールねじナットユニット5と、ボールねじナットユニット5を連結する内筒4とを備えた直線作動機1の一部と、
モータ7のフランジ9の端面に形成された凸部9aと、
ハウジング2の端面に形成された凹部2aと、
ハウジング2の端面にモータ7のフランジ9を当接させてフランジ9の軸方向から取り付けられ、ハウジング2の端面にモータ7を取付ける取付けボルト16と、
を具備した
直線作動機1。」

(3-2)引用例2
当審の拒絶理由に引用された特開2002-136057号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【請求項1】 サーボモータの動作に必要なデータを蓄積し該動作の手順を実行して該サーボモータの制御信号を生成する制御回路と、
該制御信号により該サーボモータを駆動する駆動回路と、
該サーボモータを構成するロータ、ステータおよび位置検出手段とを、
一つのモータケースに内蔵し、
該制御回路および該駆動回路を収納するモータケース部分と該ロータ、ステータおよび位置検出手段を収納するモータケース部分の間の結合部を熱伝導率の小さい熱伝導構造としたことを特徴とする制御/駆動回路一体型サーボモータ。」

・「【0014】図1は、本発明の一実施形態例の概略を示すブロック構成図である。本実施形態例のサーボモータ構成体1は、サーボモータ本体10と回路部11とが一つのモータケースに収納され一体化されて成る。サーボモータ本体10は、ロータ101とステータコイル102に位置センサ103やエンコーダ104等を加えたもので構成される。また、回路部11は、駆動回路111と制御回路112、および必要により通信回路113から構成される。」

・「【0019】本例のモータケース20は、サーボモータ本体10を収納しロータの回転軸を支える軸受け部を有する円筒状のモータケース部分201と、このモータケース部分201と一体化され回路基板203およびセンサ基板204を収納するモータケース部分202と、モータケース部分201,202の端面をカバーする蓋部205とから構成される。」

・「【0021】回路基板203には、図1に示した回路部11、すなわち駆動回路111、制御回路112、および必要により通信回路113が搭載される。・・・」

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例2には、モータケース20と、上記モータケース20内に収納されサーボモータ本体10と、上記モータケース20内に収納され少なくとも上記サーボモータ本体10を駆動するための駆動回路111、制御回路112、および必要により通信回路113が搭載された回路基板203と、から構成されている制御/駆動回路一体型サーボモータが開示されているものと認められる。

(3-3)引用例3
当審の拒絶理由に引用された実願平4-81150号(実開平6-43408号)のCD-ROM(以下、「引用例3」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【請求項1】 側面に軸方向のボール転動溝を有して延長されたガイドレールと、該ガイドレールに平行に配設され外周面に螺旋溝を有するボールねじ軸と、該ボールねじ軸の螺旋溝に対向する螺旋溝を有し相対する両螺旋溝内を転動する多数のボールを介して前記ボールねじ軸に螺合されたボールねじナットとを備え、該ボールねじナットには両側面に前記ガイドレールのボール転動溝に相対したボール転動溝が形成されると共にナット肉厚内に前記ボール転動溝に平行する軸方向のボール戻り通路が形成され、且つボールねじナットの前後の両端面にエンドキャップが固定され、該エンドキャップの端面に前記ボール転動溝とこれに対応する前記ボール戻り通路とを連通させる湾曲路が形成され、前記相対する両ボール転動溝と湾曲路とボール戻り通路とよりなる循環経路内にはリニアガイド用の多数のボールが転動自在に介装され、それらのリニアガイド方の多数のボールの循環を介してボールねじナットがガイドレールに対し軸方向に移動可能とされたボールねじ一体型直動案内ユニットにおいて、
前記エンドキャップにグリースニップルを装着するとともに、エンドキャップの内側端面に、前記グリースニップルから前記湾曲路に至るリニアガイドボール潤滑用の給油路と前記グリースニップルから前記ボールねじの螺旋溝に至るボールねじのボール潤滑用の給油路とを併設したことを特徴とするボールねじ一体型直動案内ユニット。」

・「【0010】
図1,図2に示すように、この実施例のガイドレール1は横断面略コ字状で、底面から立ち上げた両側面部1a,1aの内面に、それぞれ軸方向に延びる1本のボール転動溝2を対向位置に有して延長されている。このガイドレール1の長さ方向の両端には、軸受け板3,4がねじ止めして取付けられている。軸受け板3には図示しないボールベアリングが取りつけられ、軸受け板4にはベアリングハウジング6を介し図示しないアンギュラボールベアリングがダブルに取りつけられてサポートユニットが構成されており、これらのベアリングに支持されて、ボールねじ軸7がガイドレール1の幅の中心部においてボール転動溝2と平行に配設されている。ボールねじ軸7の外周面にはボールねじ溝としての螺旋溝8が形成されている。ボールねじ軸7の一方の軸端部7aはベアリングハウジング6から外方に突出して図外の駆動モータの出力軸と連結可能とされている。
【0011】
10はボールねじ軸7に螺合されたボールねじナットで、角形のナット本体10Aと、その前後の両端にそれぞれボルトで固定したエンドキャップ12とを備えている。ナット本体10Aの中心部に形成されたねじ孔の内周面には、ボールねじ軸7のボールねじ溝8に対応して同様に螺旋溝であるボールねじ溝9が形成されている。ナット本体10Aの横幅はガイドレール1の両側面部1a,1a間の内のり寸法より僅かに小さく形成されていて、その左右両側面の下部にはガイドレール1のボール転動溝2にそれぞれ対向させたボール転動溝13が形成されている。・・・。」

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例3には、軸受け板3、軸受け板4、ガイドレール1、ボールねじ軸7、ボールねじナット10からなるアクチュエータ本体をボールねじ一体型直動案内ユニットとする点が開示されているといえる。

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、その機能・作用からみて、後者の「モータ7」が前者の「モータ」に相当する。

次に、後者の「フランジ形たわみ軸継手11」と前者の「オルダム式カップリング機構」 とは、「カップリング機構」との概念で共通し、後者の「モータ7のモータ出力軸8」が前者の「モータの回転軸」に相当し、以下同様に、「フランジ部」が「カップリングハブ」に相当するので、後者の「モータ7のモータ出力軸8に設けられたフランジ形たわみ軸継手11のフランジ部」と前者の「モータの回転軸に固着されたオルダム式カップリング機構の一方のカップリングハブ」とは「モータの回転軸に設けられたカップリング機構の一方のカップリングハブ」との概念で共通する。

また、後者の「ブラケット13及びハウジング2」が前者の「リアブラケット」に相当する。

さらに、後者の「外筒3」が前者の「フレーム」に相当し、以下同様に「連結された」態様が「設置された」態様に相当するので、後者の「ハウジング2に連結された外筒3」と前者の「これらフロントブラケット及びリアブラケットの間に設置されたフレーム」とは、「リアブラケットに設置されたフレーム」との概念で共通する。

そして、後者の「ボールねじ軸6」が前者の「ボールネジ」に相当するので、後者の「ブラケット13及びハウジング2及び外筒3内に収容されたボールねじ軸6」と前者の「フロントブラケット及びリアブラケット及びフレーム内に収容されたボールネジ」とは、「リアブラケット及びフレーム内に収容されたボールネジ」との概念で共通する。

また、後者の「ボールねじ軸6の軸部6a」も前者の「ボールネジ」に相当し、上記のように、後者の「フランジ部」が前者の「カップリングハブ」に相当するので、後者の「ボールねじ軸6の軸部6aに設けられたフランジ形たわみ軸継手11のフランジ部」と前者の「ボールネジに固着されたオルダム式カップリング機構の他方のカップリングハブ」とは「ボールネジに設けられたカップリング機構の他方のカップリングハブ」との概念で共通する。

さらに、後者の「回転可能なボールねじ軸6が螺合し、外筒3内を軸方向にのみ移動可能」とする態様が、前者の「ボールネジに回転を規制された状態で螺合しボールネジの回転によって移動する」態様に相当し、以下同様に、「ボールねじナットユニット5」が「ボールナット」に相当する。

また、後者の「連結」する態様が前者の「取付・固定」された態様に相当し、以下同様に、「内筒4」が「移動体」に、「直線作動機1の一部」が「アクチュエータ本体」にそれぞれ相当するので、後者の「ボールねじナットユニット5を連結する内筒4とを備えた直線作動機1の一部」と前者の「ボールナットに取付・固定された移動体とを備えユニット化されたアクチュエータ本体」とは、「ボールナットに取付・固定された移動体とを備えたアクチュエータ本体」との概念で共通する。

さらに、後者の「凸部9a」が前者の「嵌合凸部」に相当するので、後者の「モータ7のフランジ9の端面に形成された凸部9a」と前者の「モータモジュールユニットのモータカバであって一方のカップリングハブの外周側に設けられた嵌合凸部」とは、「モータ側に設けられた嵌合凸部」との概念で共通する。

そして、後者の「凹部2a」が前者の「嵌合凹部」及び「嵌合凸部に嵌合する嵌合凹部」に相当し、上記のように、後者の「ハウジング2」は前者の「リアブラケット」を構成するものなので、後者の「ハウジング2の端面に形成された凹部2a」と前者の「アクチュエータ本体のリアブラケットであって他方のカップリングハブの外周側に設けられ上記嵌合凸部に嵌合する嵌合凹部」とは「リアブラケット側に設けられ嵌合凸部に嵌合する嵌合凹部」との概念で共通する。

また、後者の「ハウジング2の端面にモータ7のフランジ9を当接させ」る態様が前者の「嵌合凸部と嵌合凹部とを嵌合させた状態」に相当し、以下同様に「取付けボルト16」が「固定ねじ」に相当し、後者の取付けボルト16がモータ7を取付けるためには「ねじ込まれる」ことは明らかであるから、後者の「ハウジング2の端面にモータ7のフランジ9を当接させてフランジ9の軸方向から取り付けられ、ハウジング2の端面にモータ7を取付ける取付けボルト16」と前者の「嵌合凸部と嵌合凹部とを嵌合させた状態で嵌合凹部の外周側であって放射方向からねじ込まれる固定ねじ」とは「嵌合凸部と嵌合凹部とを嵌合させた状態でねじ込まれる固定ねじ」との概念で共通する。

最後に、後者の「直線作動機1」が前者の「アクチュエータ」に相当する。

したがって、両者は、
「モータと、モータの回転軸に設けられたカップリング機構の一方のカップリングハブと、
リアブラケットと、リアブラケットに設置されたフレームと、リアブラケット及びフレーム内に収容されたボールネジと、ボールネジに設けられたカップリング機構の他方のカップリングハブと、ボールネジに回転を規制された状態で螺合しボールネジの回転によって移動するボールナットと、ボールナットに取付・固定された移動体とを備えたアクチュエータ本体と、
モータ側に設けられた嵌合凸部と、
リアブラケット側に設けられ嵌合凸部に嵌合する嵌合凹部と、
嵌合凸部と嵌合凹部とを嵌合させた状態でねじ込まれる固定ねじと、
を具備した
アクチュエータ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明では、「モータモジュールユニット」であって、「モータカバと、上記モータカバ内に収容・配置されたモータと、上記モータカバ内に収容・配置され少なくとも上記モータを駆動するためのドライバやコントローラを備えた基板と、上記モータの回転軸に固着されたオルダム式カップリング機構の一方のカップリングハブ」から構成され、「モータカバであって、一方のカップリングハブの外周側に設けられた嵌合凸部」を具備しているのに対し、引用発明においてはそのような構成を有していない点。

[相違点2]
本願発明では、「ユニット化されたアクチュエータ本体」であって、「フロントブラケットと、リアブラケットと、これらフロントブラケット及びリアブラケットの間に設置されたフレームと、上記フロントブラケット及びリアブラケット及びフレーム内に収容されたボールネジと、上記ボールネジに固着されたオルダム式カップリング機構の他方のカップリングハブと、上記ボールネジに回転を規制された状態で螺合しボールネジの回転によって移動するボールナットと、ボールナットに取付・固定された移動体」を備え、「アクチュエータ本体のリアブラケットであって他方のカップリングハブの外周側に設けられ嵌合凸部に嵌合する嵌合凹部」を具備しているのに対し、引用発明においてはそのような構成を有していない点。

[相違点3]
嵌合凸部と嵌合凹部とを嵌合させた状態でねじ込まれる固定ねじに関し、本願発明においては、嵌合凹部の外周側であって放射方向からねじ込まれているのに対し、引用発明においては軸方向からねじ込まれている点。

[相違点4]
本願発明においては、モータモジュールユニットとアクチュエータ本体を連結する場合には、一方のカップリングハブと他方のカップリングハブをカップリングスぺーサを介して連結するとともに嵌合凸部と嵌合凹部を嵌合させその状態で固定ねじをねじ込み、上記モータモジュールユニットと上記アクチュエータ本体を分離させる場合には上記固定ねじを外して上記嵌合凸部と嵌合凹部の嵌合を解除するとともに上記一方のカップリングハブと他方のカップリングハブのカップリングスぺーサを介しての連結を解除するようにしているのに対し、引用発明においてはそのような構成を有していない点。

4.判断
上記相違点について以下検討する。

・相違点1、2、3、4について
まず、例えば、引用例2に開示されているように、モータカバ(「モータケース20」が相当)と、上記モータカバ内に収容・配置(「収納」が相当)されたモータ(「サーボモータ本体10」が相当)と、上記モータカバ内に収容・配置(「収納」が相当)され少なくとも上記モータを駆動するためのドライバやコントローラを備えた基板(「駆動回路111、制御回路112、および必要により通信回路113が搭載された回路基板203」が相当)と、から構成されているモータモジュールユニット(「制御/駆動回路一体型サーボモータ」が相当)はモータの分野における常套手段である(以下、「常套手段1」という。)。さらに、同様の技術は、当審の拒絶理由で引用された特開平11-55890号公報にも「ドライバ付モータ」として開示されている。(【請求項1】、段落【0004】、【0006】?【0008】、図1を参照)。

次に、引用例1の「(内筒54を支持する)筒受64」(段落【0015】、図3を参照)が本願発明の「フロントブラケット」に相当し、引用発明においても内筒4を有するものであるから、それを支持するための「筒受」(フロントブラケット)が設けられているものと解釈するのが相当である。
そして、例えば、引用例3に開示されているように、フロントブラケット(「軸受け板3」が相当)、リアブラケット(「軸受け板4」が相当)、フレーム(「ガイドレール1」が相当)、ボールネジ(「ボールねじ軸7」が相当)、ボールナット(「ボールねじナット10」が相当)からなるアクチュエータ本体をユニット化する(「ボールねじ一体型直動案内ユニットとする」が相当)ことは、ボールネジとボールナットを有するアクチュエータにおける常套手段である(以下、「常套手段2」という。)。さらに、同様の技術は、当審の拒絶理由で引用された特開2003-278873号公報にも開示されている(段落【0009】の「【発明の効果】請求項1に記載の発明によると、ボールネジ軸及びボールナットを筒状ハウジング内に収容しかつ該ハウジングに筒状移動部材を移動自在に被嵌して、該ハウジングの両端部分にベアリングにてボールネジ軸を支持し、該移動部材をボールネジ軸の回転にて移動し得るように構成したので、装置全体を位置決めユニットとしてまとめてコンパクト化できると共に、筒状ハウジングそのものを、作動機器等にセットする際の位置決め手段として利用することができ、良好な取り付け性を得ることができる。」なる記載を参照)。

さらに、例えば、特開2001-263025号公報に開示されているように、オルダム式カップリング機構(「オルダムカップリング」が相当)の一方のカップリングハブ(「フランジ部11」が相当)の外周側に設けられた嵌合凹部(図1のシリンダヘッド1における、O-リング7と接触する「嵌合凹部」が相当)、被駆動軸に固着された(「駆動軸4にナット6により取り付けられた」が相当)オルダム式カップリング機構(「オルダムカップリング」が相当)の他方のカップリングハブ(「ポンプ側カップリング5」が相当)の外周側に設けられ嵌合凹部(図1のシリンダヘッド1における、O-リング7と接触する「嵌合凹部」が相当)に嵌合する嵌合凸部(図1のポンプアダプタ2における、O-リング7が配設された「嵌合凸部」が相当)を設け、一方のカップリングハブ(「フランジ部11」が相当)と他方のカップリングハブ(「ポンプ側カップリング5」が相当)をカップリングスペーサ(「カップリング部材9」が相当)を介して連結する(「フランジ部11とポンプ側カップリング5との間にカップリング部材9を介在させオルダムカップリングを構成する」が相当)ことは、オルダム式カップリング機構における周知技術である(段落【0017】、【0018】、【0020】、図1?図10を参照)。さらに、同様の技術は、特開平9-303254号公報にも「オルダムジョイント15」として開示されている。(段落【0009】、【0017】、【0018】、図4を参照)。

ここで、引用発明における「フランジ形たわみ軸継手11」は、心ずれを許容するために用いられているものであるから(引用例1の段落【0005】参照)、「フランジ形たわみ軸継手11」にかえて同様の機能を有する上記周知技術のオルダム式カップリング機構(上記特開2001-263025号公報の段落【0020】の「オルダムカップリングが構成され、燃料ポンプ3の位置精度が低い場合でも、カムシャフト10とポンプ側カップリング5との間で円滑に駆動力が伝達されるようになっている。」なる記載参照)を採用する際に、回転軸側の一方のカップリングハブも他方のカップリングハブのように回転軸に「固着」するようにし、一方のカップリングハブの外周側に設けられた嵌合凹部を嵌合凸部とするとともに、他方のカップリングハブの外周に設けられた嵌合凸部を嵌合凹部とし、固定ねじを嵌合凹部の外周側であって放射方向からねじ込むように設計変更し、常套手段1のモータモジュールユニットとする点、常套手段2のアクチュエータ本体をユニット化する点を採用し、相違点1?3に係る本願発明の構成とし、かつ、それにより、モータモジュールユニットとアクチュエータ本体を連結する場合及び分離させる場合に、相違点4に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして、上記相違点1、2、3、4を併せ備えた本願発明の作用効果について検討してみても、引用発明、上記常套手段1、2及び上記周知技術から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別のものとは言えない。
したがって、本願発明は、引用発明、上記常套手段1、2及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-02 
結審通知日 2011-11-04 
審決日 2011-11-17 
出願番号 特願2003-388946(P2003-388946)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河村 勝也  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 藤井 昇
神山 茂樹
発明の名称 アクチュエータ  
代理人 島野 美伊智  

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