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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1249427 |
審判番号 | 不服2010-28147 |
総通号数 | 146 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-12-13 |
確定日 | 2012-01-04 |
事件の表示 | 特願2004-355012「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月22日出願公開、特開2006-158685〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第一.手続の経緯 本願は、平成16年12月8日の出願であって、拒絶理由に対して平成22年8月19日付けで手続補正がなされ、その後、同年9月6日付けでなされた拒絶査定に対し、平成22年12月13日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正がなされたものである。 また、当審において、平成23年5月17日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から同年7月15日に回答書が提出されている。 第二.平成22年12月13日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年12月13日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正後の本願発明 本件補正により補正された、特許請求の範囲の請求項1記載の発明(以下「本願補正発明」という。)は次のとおりである。 「 図柄を表示可能な主表示手段を有し、始動開始操作に基づいて複数の小役を含む役の抽選を行い、前記主表示手段による図柄変動を開始して、当該図柄変動の停止操作によって、当該役抽選により当選した役に対応する図柄が前記主表示手段に表示された場合に前記当選した役を入賞とする遊技機であって、 前記役抽選の結果に基づいて、前記役抽選の結果に対応する予告演出の実行又は非実行並びに前記予告演出の種類を決定する予告演出決定手段と、 前記予告演出決定手段によって予告演出の実行が決定した場合に、前記主表示手段とは別に設けられた副表示手段に当該予告演出を表示する予告演出表示制御手段と、 前記予告演出表示制御手段により、前記予告演出が副表示手段に表示演出されている途中で先の遊技が終了し、次の遊技に移行した場合に、前記予告演出表示制御手段の予告演出が継続中か否かを判断する判断手段と、 前記判断手段の判断により前記予告演出が継続中である場合に、前記次の遊技のために指示された予告演出を破棄し、前記継続中の予告演出を前記次の遊技で継続する予告演出継続手段と、 を有する遊技機。」 (下線部は補正によって追加又は変更された箇所。) 2.補正要件(目的)の検討 請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である「予告演出継続手段」について、「前記予告演出が継続中である場合に、前記次の遊技のために指示された予告演出を破棄」する点を付加する補正である。 そうしてみると、該補正は、補正前の発明特定事項を限定する補正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。 よって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に該当する。 3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討 (1)引用された文献の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-337392号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 【0023】図1は、本発明の一実施の形態に係るスロットマシン100の外観を示す斜視図である。 【0025】前面扉101には、リール表示窓113が設けられており、リール110?112を正面から眺めると、これに施された絵柄がリール表示窓113から縦方向に3つ見えるようになっている。つまり、全リール110?112が停止した場合、遊技者は、3×3の合計9個の絵柄をリール表示窓113において見ることができる。これらのリール110?112が回転し、停止することにより、様々な絵柄の組み合せが表示されることになる。なお、本実施の形態では、3個のリールを備えているが、リールの数やリールの設置位置はこれに限定されるものではない。また、本実施の形態では、絵柄の組み合せを変動可能に表示するために、このように複数種類の絵柄を施したリールを複数列設け、各リールを回転可能に構成したが、例えば、液晶ディスプレイ等を採用することにより、同様に絵柄の組み合せを変動可能に表示することも可能である。 【0031】メダル投入口ブロック133は、遊技を開始するに当たって遊技者が直接メダルを投入するための開口を有する。メダルを直接投入した際に、メダル投入口直下にあるメダルセレクターユニット(図示せず)内にメダルが詰まってしまった場合は、メダルキャンセルスイッチ133aを操作することによってメダルの詰まりを解消させる。スタートレバー135は、遊技の開始操作として、リール110?112の回転を開始させるレバー型のスイッチである。 【0032】ストップボタンユニット136には、3つのストップボタン136a?136cが設けられている。各ストップボタンは、押下することによって対応するリール110?112を停止させるボタン型のスイッチである。136aを操作することによって左リール110が、136bを操作することによって中リール111が、136cを操作することによって右リール112がそれぞれ停止する。 【0066】遊技の進行において、スタートレバー135を操作して、主制御部300において内部抽選処理が実行される。内部抽選の結果、内部当選役が決定されると、その内部当選役に応じて設定された複数の演出の中なら1つの演出態様が決定される。決定された演出態様は、演出コマンドとして副制御部400に送信される。本実施の形態では、内部当選役に応じて演出態様が複数設定されている。各演出態様には、所定の選択率が設定されており、抽選により決定される。ここで、選択率とは、演出態様の発生頻度を表すものであり、演出が一切行われない「演出なし」等の選択肢を含んで設定されている。これらの演出態様には、遊技終了とほぼ同時に終了するような短時間演出から遊技終了後においても所定時間に亘り演出が行われる長時間演出までが複数設定されている。 【0068】副制御部400は、演出選択処理において、演出コマンドに応じた演出データを選択する。演出データは、遊技の進行に応じて演出を進行させるため、遊技操作毎に行われる演出データの集合体で構成されている。遊技操作は、回転開始(スタートレバー135操作時)→第1停止操作時→第2停止操作時→第3停止操作時→メダル投入時の順に操作毎に演出が設定されている。遊技操作に応じた制御コマンドを主制御部300から受信することを契機に設定された演出を順次実行する。この処理は、演出実行制御処理で行われる。演出実行制御処理は、選択された演出データを、各デバイスに応じて配分されたRAM上に展開する処理を行う。 【0069】本実施の形態では、演出実行制御処理において、制御コマンドの種類に応じて演出を継続するか否か若しくは演出の実行を遅延させる制御処理を有している。詳細については後述するが、遊技操作が終了しても継続するような長い期待感演出が実行されている際に、次回の遊技のための遊技操作が行われ、新たな期待感演出が選択された場合、現在実行中の演出と比較して、より期待感の高い演出であるか否かによって実行中の演出を中断して新たに選択された演出を実行するか、実行中の演出をそのまま継続させるかを決定するようになっている。演出の選択について、種々の選択基準を考えることができるが、本実施の形態では、選択率の低い演出、すなわち上述したように、内部当選への期待感を高めるような長時間演出を優先的に実行するように構成している。 【0073】演出データは、図中左の表に示すようにパターン番号、実行時間、繰返し回数で構成されている。操作毎に行われる演出を構成する演出データは、図中左の表に示すように楽音制御データ(SOUND××)、ランプ発光制御データ(LUMP××)、画像制御データ(MOVIE××)で構成されている。 【0076】画像制御データは、LCD制御部500に対して、表示させる画像(動画)のパターン番号、実行時間、繰返し回数を送信して画像表示制御を行う。LCD制御部500は、受信したデータに基づいて図中に示す順序で画像を表示するための画像制御データをVDP510に与える。VDP510は、与えられた画像制御データに使用される画像データを画像データROM521及び522から読み出してLCD180に表示させる。画像データは、図示のように00?03に分割されていると共に、その中で更に細分化されている。このため、細分化されたData1?9の単位でLCD180の表示させることもできる。このように細分化されたデータ構成とすることにより、本発明の特徴の1つである短縮制御も容易に行えるようになる。 【0079】図6において、遊技1で発生した「演出××」が、全リール停止後も継続して期待感演出を行う長時間演出であった場合、通常、この演出の最終表示を見ようとすると、約3遊技分の時間を消費しなければ最終表示を見ることはできない。しかしながら、本実施の形態において、次遊技である遊技2を開始するための遊技操作を行い、演出を発生させない決定があった場合、遊技1の長時間演出を引き続き実行させるように制御するのである。具体的には、図4において、主制御部300から送信された次遊技の演出コマンドに基づき演出選択処理で決定された演出番号と、実行中の演出番号とを比較して、優先順位の高い演出を選択して、演出実行制御を行わせるものである。 【0080】本実施の形態では、上述したように、演出の選択率の低い方が優先順位を高いと判定するように設定されている。図6において、演出選択率が、「演出××」<「演出▲▲」<「演出なし」の順に設定されている場合、遊技1において実行中の「演出××」と遊技2で選択された「演出なし」を比較すると、「演出××」の方が、低い選択率であるため、副制御部400において「演出××」を引き続き実行する。そして、遊技3において、「演出▲▲」が選択された場合であっても、低い選択率であるため引き続き「演出××」が実行される。 【0081】尚、遊技2又は遊技3において、「演出××」よりも選択率の低い新たな演出が設定された場合、「演出××」は中断され、新たな演出が実行されることになる。この場合、新たに開始された演出は、特別入賞役への内部当選の期待感に対するより高い演出となるため、演出の切り替わりに期待感が高まることになる。本実施の形態では、演出の優先順位を選択率で決定するように構成しているが、演出毎にあらかじめ優先順位を設定するように構成してもよい。 【0082】以上のように、遊技において何らかの演出を発生させる決定があった場合でも、後述するように、遊技1における「演出××」と遊技2において発生した演出を比較して、遊技1における演出の方が演出効果が高ければ、同様に遊技1の演出を引き続き実行させる。また、遊技3においては、「演出▲▲」を発生させる決定がなされているが、遊技1の演出××が継続中であった場合は、遊技3の演出▲▲の実行を中止して遊技1の演出を継続させる制御を行うようにしたものである。 (認定に当たって考慮したこと) 引用文献1には、入賞役を決めるための抽選を示す用語として、「抽選」(【請求項1】、段落【0012】)、「内部抽選」(段落【0041】、【0066】、【0103】)、「内部抽選処理」(段落【0066】)、「乱数抽選」(段落【0110】)等が混在しているので、すべて「内部抽選」に統一して認定した。 また、段落【0110】には、「乱数抽選において内部当選した入賞役」と記載されているが、上記用語の統一及び段落【0105】や【0066】では「内部当選役」という用語を同様のものとして記載していることから、「内部抽選における内部当選役」に換えて認定した。 摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「 様々な絵柄の組み合せを表示するためのリール110?112を有し、スタートレバー135を操作して、主制御部300において内部抽選が実行され、前記リール110?112の回転を開始させ、3つのストップボタン136a?136cを押下することによって対応する前記リール110?112を停止させ、有効化された入賞ライン114上に、前記内部抽選における内部当選役に対応した入賞絵柄の組み合せが揃って停止しているか否か判定し、入賞判定後入賞した入賞役に対応して所定数のメダルをメダル払出口165より受皿160に払い出す処理を行い、入賞判定の結果が入賞なしであった場合はメダルの払い出しは行われないスロットマシン100であって、 前記主制御部300において前記内部抽選が実行され、内部当選役が決定されると、その内部当選役に応じて設定された複数の演出態様の中から1つの演出態様が決定され、前記複数の演出態様には、演出が一切行われない「演出なし」、及び遊技終了とほぼ同時に終了するような短時間演出から遊技終了後においても所定時間に亘り演出が行われる長時間演出までが設定されており、 決定された演出態様は、演出コマンドとして副制御部400に送信され、該副制御部400は、前記演出コマンドに応じた演出データを選択し、該演出データは楽音制御データ、ランプ発光制御データ及び画像制御データで構成され、LCD制御部500は、副制御部400から前記画像制御データを受信してVDP510に与え、該VDP510は、与えられた前記画像制御データに使用される画像データを画像データROM521及び522から読み出してLCD180に表示させ、 遊技1で発生した「演出××」が全リール停止後も継続して期待感演出を行う前記長時間演出であった場合において、次遊技である遊技2を開始するための遊技操作を行い、演出を発生させない決定があった場合、前記「演出××」を引き続き実行させるように制御し、前記遊技2において何らかの演出を発生させる決定があった場合でも、前記「演出××」と前記遊技2において発生した演出を比較して、前記「演出××」の方が選択率の低いものであれば、同様に遊技1の演出を引き続き実行させ、前記遊技2において発生した演出の方が選択率の低いものであれば、「演出××」は中断され新たな演出が実行されることになるスロットマシン100。」 (2)引用発明と本願補正発明との対比 引用発明の「様々な絵柄の組み合せを表示するためのリール110?112」は、本願補正発明の「図柄を表示可能な主表示手段」に相当し、以下同様に、 「スタートレバー135を操作して」は「始動開始操作に基づいて」に、 「内部抽選が実行され」は「複数の小役を含む役の抽選を行い」に、 「前記リール110?112の回転を開始させ」は「前記主表示手段による図柄変動を開始して」に、 「3つのストップボタン136a?136cを押下することによって」は「当該図柄変動の停止操作によって」に、 「前記内部抽選における内部当選役」は「当該役抽選により当選した役」に、 「スロットマシン100」は「遊技機」に、 「前記内部抽選が実行され、内部当選役が決定されると」は「前記役抽選の結果に基づいて」に、 「その内部当選役に応じて設定された」は「前記役抽選の結果に対応する」に、それぞれ相当する。 さらに、引用文献1の記載等からみて、以下のことがいえる。 a.引用発明において「前記内部抽選における内部当選役に対応した入賞絵柄の組み合せが揃って停止しているか否か判定し、入賞判定後入賞した入賞役に対応して所定数のメダルをメダル払出口165より受皿160に払い出す処理を行」うということは、内部当選役に対応した入賞絵柄の組み合せがリール110?112で表示され、その内部当選役の入賞に対応した所定数のメダル払出しを行うことにほかならないから、引用発明の「スロットマシン100」は、本願補正発明の「当該役抽選により当選した役に対応する図柄が前記主表示手段に表示された場合に前記当選した役を入賞とする」に相当する機能を有している。 b.引用発明は「主制御部300」において、内部当選役に応じて設定された複数の演出態様の中から1つの演出態様が決定されており、内部当選役を予告できるものといえるから、その「演出態様」は、本願補正発明の「予告演出の種類」に相当している。 また、その複数の演出態様には、演出が一切行われない「演出なし」、及び遊技終了とほぼ同時に終了するような短時間演出から遊技終了後においても所定時間に亘り演出が行われる長時間演出までが設定されているから、引用発明において、複数の演出態様の中から1つの演出態様を決定することは、本願補正発明において「予告演出の実行又は非実行並びに前記予告演出の種類を決定する」ことに相当する。 よって、引用発明の「主制御部300」は、本願補正発明の「前記役抽選の結果に基づいて、前記役抽選の結果に対応する予告演出の実行又は非実行並びに前記予告演出の種類を決定する予告演出決定手段」に相当するものといえる。 c.引用発明の「LCD180」が「リール110?112」とは別に設けられたものであることは、引用文献1の図1の記載から明らかであるから、引用発明の「LCD180」は、本願補正発明の「前記主表示手段とは別に設けられた副表示手段」に相当する。 また、引用発明においては、主制御部300によって演出態様が決定され、「演出なし」でない演出態様が決定された場合(本願補正発明の「予告演出決定手段によって予告演出の実行が決定した場合」に相当)に、LCD180に画像データ(本願補正発明の「予告演出」に相当)を表示するものということができるから、引用発明の「副制御部400」、「LCD制御部500」及び「VDP510」は、本願補正発明の「前記予告演出決定手段によって予告演出の実行が決定した場合に、前記主表示手段とは別に設けられた副表示手段に当該予告演出を表示する予告演出表示制御手段」に相当するものといえる。 d.引用発明においては、遊技1の演出態様(「演出××」)が長時間演出であるかどうかが、遊技2における演出実行に関係しているから、引用発明は、長時間演出であるか否かを判断する手段(本願補正発明の「前記予告演出が副表示手段に表示演出されている途中で先の遊技が終了し、次の遊技に移行した場合に、前記予告演出表示制御手段の予告演出が継続中か否かを判断する判断手段」に相当)を有しているということができる。 e.上記d.で述べたことを考慮すると、引用発明の「遊技1で発生した「演出××」が、全リール停止後も継続して期待感演出を行う前記長時間演出であった場合」は、本願補正発明の「前記判断手段の判断により前記予告演出が継続中である場合」に相当する。 そして、引用発明において「遊技1で発生した「演出××」が、全リール停止後も継続して期待感演出を行う前記長時間演出であった場合」には、遊技2において前記「演出××」を引き続き実行させるように制御することがあり、そうした時には段落【0082】及び図6の記載等から、遊技2の開始時点で「演出▲▲」を発生させる決定がなされても該「演出▲▲」は中止され実行されないことが分かるから、遊技2の開始時点における「演出▲▲」を発生させる決定は破棄されるものということができる。 そうしてみると、引用発明と本願補正発明は“判断手段の判断により予告演出が継続中である場合に、次の遊技のために指示された予告演出を破棄し、継続中の予告演出を前記次の遊技で継続することがある予告演出継続決定手段”を有している点で共通している。 以上を総合すると、両者は、 「 図柄を表示可能な主表示手段を有し、始動開始操作に基づいて複数の小役を含む役の抽選を行い、前記主表示手段による図柄変動を開始して、当該図柄変動の停止操作によって、当該役抽選により当選した役に対応する図柄が前記主表示手段に表示された場合に前記当選した役を入賞とする遊技機であって、 前記役抽選の結果に基づいて、前記役抽選の結果に対応する予告演出の実行又は非実行並びに前記予告演出の種類を決定する予告演出決定手段と、 前記予告演出決定手段によって予告演出の実行が決定した場合に、前記主表示手段とは別に設けられた副表示手段に当該予告演出を表示する予告演出表示制御手段と、 前記予告演出表示制御手段により、前記予告演出が副表示手段に表示演出されている途中で先の遊技が終了し、次の遊技に移行した場合に、前記予告演出表示制御手段の予告演出が継続中か否かを判断する判断手段と、 前記判断手段の判断により予告演出が継続中である場合に、次の遊技のために指示された予告演出を破棄し、継続中の予告演出を前記次の遊技で継続することがある予告演出継続決定手段と、 を有する遊技機。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点]“予告演出継続決定手段”に関して、本願補正発明は「前記判断手段の判断により前記予告演出が継続中である場合に、前記次の遊技のために指示された予告演出を破棄し、前記継続中の予告演出を前記次の遊技で継続する」のに対し、引用発明は、遊技1で発生した「演出××」が全リール停止後も継続して期待感演出を行う前記長時間演出であった場合において、遊技2で前記「演出××」を引き続き実行させるように制御することがあるものの、前記遊技2において発生した演出の方が選択率の低いものであれば、「演出××」は中断され新たな演出が実行されることになる点。 (3)相違点の検討及び判断 引用発明は、遊技1で発生した「演出××」が、次遊技である遊技2において発生した演出を比較して、前記「演出××」の方が選択率の低いものであるか、前記遊技2において発生した演出の方が選択率の低いものであるかによって、前記「演出××」を引き続き実行させるか否かを決定するものであるが、引用発明において遊技1で発生した「演出××」と、遊技2において発生した演出を比較することになるのは、前記「演出××」が全リール停止後も継続して期待感演出を行う前記長時間演出であった場合に限られるとともに、引用文献1の段落【0069】には「内部当選への期待感を高めるような長時間演出を優先的に実行するように構成」とも記載されているから、引用発明において「長時間演出」を最も選択率の低い演出として、遊技1で発生した「演出××」が全リール停止後も継続して期待感演出を行う前記長時間演出であった場合に、該遊技2において前記「演出××」が中断されることのないようにして、上記相違点に係る本願補正発明のような構成とすることは、遊技機の技術分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に想到し得ることである。 さらに、引用文献1の段落【0069】には「演出の選択について、種々の選択基準を考えることができる」、段落【0081】には「本実施の形態では、演出の優先順位を選択率で決定するように構成しているが、演出毎にあらかじめ優先順位を設定するように構成してもよい。」とも記載されており、遊技1で発生した演出を選択率によって決定するものに限る必要はないことも示されている。 そして、複数の事象が競合した時に最先の事象を優先する、いわゆる先着順もごく普通に採用されている決定手法であるから、引用発明において「演出××」を継続するか否かを選択率で決定するのに代えて、遊技1で発生した「演出××」を遊技2において発生した演出より優先させ、遊技2において前記「演出××」が中断されることのないようにして、上記相違点に係る本願補正発明のような構成とすることも、当業者が容易に想到し得ることである。 (4)まとめ 以上のように上記相違点は、当業者が容易に想到し得るものであり、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。 よって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4.むすび したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第三.本願発明について 1.本願発明 平成22年12月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年8月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「 図柄を表示可能な主表示手段を有し、始動開始操作に基づいて複数の小役を含む役の抽選を行い、前記主表示手段による図柄変動を開始して、当該図柄変動の停止操作によって、当該役抽選により当選した役に対応する図柄が前記主表示手段に表示された場合に前記当選した役を入賞とする遊技機であって、 前記役抽選の結果に基づいて、前記役抽選の結果に対応する予告演出の実行又は非実行、並びに前記予告演出の種類を決定する予告演出決定手段と、 前記予告演出決定手段によって予告演出の実行が決定した場合に、前記主表示手段とは別に設けられた副表示手段に当該予告演出を表示する予告演出表示制御手段と、 前記予告演出表示制御手段により、前記予告演出が副表示手段に表示演出されている途中で先の遊技が終了し、次の遊技に移行した場合に、前記予告演出表示制御手段の予告演出が継続中か否かを判断する判断手段と、 前記判断手段の判断により前記予告演出が継続中である場合に、当該予告演出を前記次の遊技で継続する予告演出継続手段と、 を有する遊技機。」 2.特許法第29条第2項の検討 (1)引用文献記載事項 原査定における引用文献1及びその記載事項は、上記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。 (2)引用発明と本願発明との対比及び判断 本願発明は、上記「第二」で検討した本願補正発明の「予告演出継続手段」について、「前記予告演出が継続中である場合に、前記次の遊技のために指示された予告演出を破棄」する点についての限定を省いたものといえる。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第二.3.(3)及び(4)」に記載したとおり、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第四.むすび 本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項(請求項2及び3)について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-10-26 |
結審通知日 | 2011-11-01 |
審決日 | 2011-11-15 |
出願番号 | 特願2004-355012(P2004-355012) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高木 亨 |
特許庁審判長 |
小原 博生 |
特許庁審判官 |
秋山 斉昭 吉村 尚 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 中島 淳 |
代理人 | 加藤 和詳 |
代理人 | 福田 浩志 |