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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
管理番号 1249496
審判番号 不服2010-17392  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-16 
確定日 2012-01-04 
事件の表示 特願2005-38500「巻寿司」拒絶査定不服審判事件〔平成18年8月31日出願公開、特開2006-223131〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

この出願は,平成17年2月16日の出願であって,平成22年1月22日付けで拒絶理由が通知され,同年3月29日付けで意見書が提出されたが,同年4月14日付けで拒絶査定がなされ,同年7月16日に拒絶査定を不服とする審判が請求され,同年9月27日付けで当審により拒絶理由が通知され,同年12月3日付けで意見書が提出されたものである。

第2 本願発明の認定

この出願の請求項1ないし3に係る発明は,この出願当初の明細書,特許請求の範囲及び図面(以下,「本願明細書」という。)の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下,請求項1ないし3に記載された発明を「本願発明1」ないし「本願発明3」といい,これらをあわせて「本願発明」という。)。

「【請求項1】茄子漬の青色部を芯に含む巻寿司。

【請求項2】茄子漬の青色部を芯とした巻寿司。

【請求項3】請求項1および請求項2のいずれかに記載の巻寿司において,前記青色部を小片で構成してなる巻寿司。」

第3 拒絶の理由の概要

当審で通知した拒絶の理由は,本願発明1ないし3は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

特開平8-289721号公報(以下,「刊行物1」という。)
特開平8-173028号公報(以下,「刊行物2」という。)

というものである。

第4 刊行物に記載された事項

1 刊行物1に記載された事項

この出願前に頒布された刊行物である刊行物1には,以下の事項が記載されている。

(1a)「【請求項1】細切れにした漬物に増粘剤を添加混合してスティック状に成形したことを特徴とする漬物スティック」(【特許請求の範囲】請求項1)

(1b)「該漬物スティック(8)を巻きずしの芯として使用するときには,図3に示すようにすのこ(9)の上にのり(10)を置き,該のり(10)上に温かい酢めし(11)を載せ,凍結状態の漬物スティック(8)をプラスチックフィルム(7)を除いてその上に載せ,通常通りに巻いて図4に示すような巻きずし(12)を作る。」(段落【0007】)

2 刊行物2に記載された事項

この出願前に頒布された刊行物である刊行物2には,以下の事項が記載されている。

(2a)「・・小型のなすびを浅漬して食する・・。この浅漬けは,・・味とともに漬物の色が評価されるべきポイントとなる。色は鮮やかな藍青色が最も評価される。」(段落【0002】)

第5 当審の判断

A 本願発明1について

1 刊行物1に記載された発明

刊行物1は,「細切れにした漬物に増粘剤を添加混合してスティック状に成形したことを特徴とする漬物スティック」(摘示(1a))に関し記載するものであり,「該漬物スティックを巻きずしの芯として使用するときには・・すのこの上にのりを置き,該のり上に温かい酢めしを載せ,・・漬物スティックを・・その上に載せ,通常通りに巻いて・・巻きずしを作る。」(摘示(1b))と記載され,それによって作られた巻きずしが記載されている。

したがって,刊行物1には,

「細切れにした漬物に増粘剤を添加混合してスティック状に成形した漬物スティックを巻きずしの芯として使用した巻きずし」

の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

2 本願発明1と引用発明との対比

本願発明1と引用発明とを対比する。

引用発明の「漬物スティックを巻きずしの芯として使用した巻きずし」は,漬物を芯に含む巻きずしといえるから,本願発明1の「漬物を芯に含む巻寿司」に相当する。

したがって,両者は,

「漬物を芯に含む巻寿司」

である点で一致し,以下の点で相違する。

ア 「漬物」の種類が,
本願発明1は,茄子漬の青色部 であるのに対し,
引用発明は,明らかではない点 (以下,「相違点ア」という。)

イ 「漬物」の形状が
本願発明1は,明らかではない のに対し,
引用発明は,細切れにした漬物に増粘剤を添加混合してスティック状に成形したもの である点 (以下,「相違点イ」という。)

3 判断

(1)相違点について

ア 相違点アについて

巻寿司の彩りに変化をつけようとすることは,本願出願前周知の課題であり,該課題を解決する目的で,巻寿司の芯によって彩りに変化をつけること,及び,その彩りに変化をつける芯として,茶色みに甘辛味のかんぴょうやしいたけ等,黄色みに厚焼き卵等,緑みに細切りきゅうりや青菜(ゆでた三つ葉やほうれんそう)等を用いることは,本願出願前,周知事項であった(例えば,特開2003-125719号公報「従来巻きずしは,巻き簾に焼きのりを・・おき,・・すし飯を・・焼きのりの中央におき・・全体にのばし・・,その中央部に厚焼き卵,えびそぼろ,しいたけ,のりの長さに折ったかんぴょうと細切りのきゅうりを並べ・・巻き簾で巻き締め・・一般的な巻ずしである。従来の,よく用いられる甘辛味のかんぴょう,しいたけ,焼きあなご,甘みのある厚焼き卵,えびそぼろ,青みに細切りきゅうり,ゆでた三つ葉やほうれんそうで,彩りと味に変化をつける芯のとり合あわせた具を,巻き簾に焼きのりをおき,その上にすし飯を・・直接載せ,巻き簾で巻き締め両端を押えて成形される・・」(段落【0002】?【0003】)参照。審決注:下線は合議体が付与。以下同様。)。

さらに,巻寿司の彩りに変化をつける芯として,黄色みに,漬物の一つであるたくあんを用いることも,本願出願前周知事項であった(実用新案登録第3105773号公報「・・太巻き,海苔巻き,卵巻き,青菜巻き等々の寿司を調理する際,・・ピンク色のチューリップであれば,茹でたり煮たりしたソーセージや人参を・・。チューリップ形の色が黄色であれば,棒状のチーズや沢庵などを用いても良い。・・祭り用の巻き寿司の一例であり,チューリップの花形6に,青菜を用いた茎8,例えば胡瓜を縦に割いた葉9,外側を海苔10で巻いた太巻き寿司の一例である」(段落【0015】?【0017】),実願昭58-180476号のマイクロフィルム(実開昭60-87582号)「・・自動巻寿司製造機においては・・その中心部に装填すべき具材は,椎茸,卵,干瓢,凍豆腐,沢庵・・」(第3頁第14?18行目) 参照)。

そうすると,引用発明の漬物を芯に含む巻寿司には,上記周知の課題である,巻寿司の彩りに変化をつけようとする課題があったといえ,また,該課題を解決する目的で,巻寿司の芯によって彩りに変化をつけること,及び,巻寿司の彩りに変化をつける芯として彩り豊かな漬物(たくあん等)を用いることも,本願出願前周知事項であった以上,引用発明の漬物を芯に含む巻寿司において,上記周知の課題である巻寿司の彩りに変化をつけようとし,その課題を解決する目的で,上記周知事項を適用して,巻寿司の芯によって彩りに変化をつけようとし,その彩りに変化をつける芯として彩り豊かな漬物を適用することは,当業者であれば当然考えたことである。

一方,刊行物2には,漬物の一つとして茄子漬があり,茄子漬は味と共に漬物の色が評価され,色は鮮やかな藍青色のものが最も評価されていること(摘示(2a))が記載され,且つ,それのみならず,茄子漬における藍青色は茄子の皮に因るものであることも,本願出願前,周知事項であった。

そうすると,引用発明の漬物を芯に含む巻寿司において,上記周知の課題である巻寿司の彩りに変化をつけようとし,その課題を解決する目的で,上記周知事項を適用して巻寿司の芯によって彩りに変化をつけようとし彩りに変化をつける芯として彩り豊かな漬物を適用し,該彩り豊かな漬物として,刊行物2に記載され本願出願前周知の,色鮮やかな藍青色の茄子漬の皮(青色部)を用いることは,当業者が容易に想到し得たことと認める。

イ 相違点イについて

まず,引用発明の漬物の形状が「細切れにした」ものである点に関し,本願発明1における「茄子漬の青色部」の形状を検討すると,本願明細書の「青色部14は,たとえば,複数の点線Nに沿って包丁等で切り分けられることにより,さらに小さい複数の小片に形成される。芯2として用いられる青色部14の形状は,図3Cに示される,切り分け前の比較的大きな形状であってもよく,芯2として巻寿司1に合理的に格納される限り,どのような形状,大きさであってもよい。ただし,本発明に係る巻寿司1の芯2としては,たとえば,図3Cに示す切り分け前の形状のものを2ないし4程度または粗みじんに切り分けたり,点線Nに沿った細切りやみじん切りにしたりすることにより,青色部14をある程度小さな形状にして用いることが好ましい。」(段落【0035】参照)という記載から,本願発明1の漬物である「茄子漬の青色部」の形状としては,該青色部を細切りやみじん切りにしたものを含んでいることが分かる。
そうすると,本願発明1の漬物である「茄子漬の青色部」の形状としては,芯として巻寿司に合理的に格納されればどのような形状・大きさであっても良く,「細切れにした」ものも含まれることから,引用発明の漬物の形状である「細切れにした」は,本願発明1との相違点にはならない。

次に,引用発明の漬物に「増粘剤を添加混合し」ている点に関し,本願発明1は,漬物である茄子漬の青色部「を芯に含む」巻寿司であり,芯に漬物(茄子漬の青色部)を含んでいれば良く,漬物に他の素材や添加剤等が添加混合されていても良いものである。
そうすると,本願発明1と引用発明とは,漬物を巻寿司の芯に含むものである点では相違無いから,引用発明の漬物に「増粘剤を添加混合し」ている点も,本願発明1との相違点にはならない。

さらに,引用発明の漬物の形状が「スティック状に成形した」ものである点に関し,本願発明1における巻寿司の芯の位置に配置される漬物(茄子漬の青色部)の形状を検討すると,本願明細書の「・・青色部14は,巻き込んだときに巻寿司1の芯2の位置に配置される。また,青色部14の量は,一定(好ましくは巻寿司1の断面の2割ないし3割程度)の断面積を専有するよう調整する。上述のように,青色部14またはその小片は,基本的に細長の形状であるため,一定の断面積を確保するためには,複数の青色部14をまとめて(あるいは重ねて)配置することが望ましい。」(段落【0037】参照)という記載から,本願発明1における巻寿司の芯の位置に配置される漬物(茄子漬の青色部)の形状としては,巻寿司の芯の位置に一定の断面積を専有するようまとめて配置される形状,すなわち,巻寿司の芯として一定の断面積を専有できる棒状のようにまとめて配置される形状,いわゆるスティック状に成形されるものを含んでいるといえる。
そうすると,本願発明1の漬物である「茄子漬の青色部」の形状としては,巻寿司の芯として一定の断面積を専有できる棒状のようにまとめて配置される形状,いわゆるスティック状に成形されるものも含まれることから,引用発明の「スティック状に成形した」ものも,本願発明1との相違点にはならない。

以上のとおりであるから,「漬物」の形状について,本願発明1は,引用発明の「細切れにした漬物に増粘剤を添加混合してスティック状に成形したもの」を実質的に含んでいるものであり,相違点イは,実質的な相違点であるとはいえない。

(2)本願発明1の効果について

本願発明1は,本願明細書に記載されるように,「青色が鮮やかな寿司が提供され,寿司から与えられる色彩の印象をより豊かなものにすることができる」(段落【0016】),「この巻寿司の断面は,青色の芯の外側に白色の寿司飯が配置され,さらにその外側に黒色の海苔が配置されており,これによって,今までになかった,印象的な配色が形成される」(段落【0017】),「安全性が高く,傷みにくく,さらに採取および加工が容易である」(段落【0012】),及び,「健康増進という面でも大きな役割を果たす。茄子の皮の部分に含まれるナスニンは,抗酸化物質であるポリフェノールの一種であり,そのポリフェノールの働きにより,免疫力が高まり,ガンや老化予防に効果を発揮する。また,それに加えてポリフェノールには,血管をきれいにして高血圧や動脈硬化を予防する効果がある・・」(段落【0029】)という効果を奏するものである。

しかしながら,刊行物2には,茄子漬は,味と共に色が評価されるもので,色鮮やかな藍青色であることが最も評価されるものであること(摘示(2a))が記載され,且つ,茄子漬における藍青色は茄子の皮に因るものであることも,本願出願前,周知事項であったことから,引用発明記載の漬物を芯に含む巻寿司において,巻寿司の彩り変化をつける芯に含まれる漬物として,青色みに,彩り豊かな漬物である,色鮮やかな藍青色の茄子漬の皮(青色部)を用いれば,青色が鮮やかな寿司が提供され,寿司からの色彩の印象をより豊かなものにすることができることや,その巻寿司の断面が,青色の芯の外側に白色の寿司飯が配置され,さらにその外側に黒色の海苔が配置されており,印象的な配色が形成されるという効果は,当業者が予測し得ることである。

また,適用している茄子漬の皮(青色部)は,そもそも漬物という保存食品であることから,安全性が高く傷みにくいものであり,且つ,茄子漬は漬物として周知な漬物であり,その採取や浅漬け等の加工が容易であることも,当業者であれば当然予測し得ることであり,格別顕著なものとも認められない。

さらに,茄子の皮の部分に含まれるナスニンの薬効については,ナスニンには抗酸化作用があり,悪玉コレステロールの酸化を防いで血管をきれいにし,動脈硬化を予防,改善することや,発ガンも抑制するという薬効があることは,本願出願当時,周知事項であった(例えば,特開2004-254685号公報「なすの皮の,鮮やかな紫色はアントシアニン系色素によるもので,その約94%はナスニンである。近年,その色素成分ナスニンには多くの薬効があることが証明されている」(段落【0003】)及び「薬学博士,田村哲彦氏は,食べものが効く(家の光協会発行)で,なすのナスニンの薬効は驚異的で,細胞膜の酸化を防ぐ高酸化作用を備え,悪玉コレステロールの酸化を防いで血管をきれいにし,動脈硬化を予防,改善,発ガンも抑制すると記載されている。」(段落【0016】)参照)。そうすると,引用発明記載の巻寿司の芯に含まれる漬物として,茄子漬の皮(青色部)を用いれば,茄子漬の皮に含まれるナスニンの抗酸化作用より,悪玉コレステロールの酸化を防いで血管をきれいにし動脈硬化を予防,改善することや,発ガンも抑制するという効果を奏することも,当業者であれば当然予測し得ることであり,格別顕著なものとも認められない。

(3)請求人の主張について

ア 主張の概要

請求人は,平成22年12月3日付け意見書の「2.(4)C.引用発明1の認定の誤り」において,以下のように主張している。
「引用発明1のような巻きずしが実施不可能である理由は以下の通りである。
刊行物1には,漬物スティックが冷凍貯蔵され(段落[0006]),巻きずしの製造に際しては,これを温かい酢めしの上に載せ,凍結状態の漬物スティックが,周りの温かい酢めしによって解凍される(段落[0007])との記載がある。
しかし,本来,巻きずしには,凍結状態にある(巻きずしの芯となるほどの大きさの)漬物スティックが解凍されるほど温かい酢めしは使えないということが当業者には明らかである。すなわち,このような温かい酢めしを海苔に載せると,海苔が縮んで巻けなくなり,さらに,海苔の変質を招いて食感が悪くなる。また,このような温かい酢めしは,冷蔵保存してあるマグロやイカなどの新鮮なネタを温め,痛めてしまうことにもなるので,寿司の製造には適していない。他方,一般的に使用される酢めしの温度では,漬物スティックは解凍できない。
また仮に,漬物スティックが酢めしで解凍できたとしても,解凍時に生ずる水分によって,海苔が溶けるといった致命的なダメージを受けるとともに酢めしが崩れ,巻きずしの構造が維持できない。したがって,引用発明1のような方法では,顧客に提供できる品質の巻きずしは製造できないのである。」

イ 検討

一般に,巻寿司の芯として用いられる程度の細いスティック状の凍結物というのは,室温で静置するだけでも,通常,比較的短時間で解凍されるものである。
また,一般に,酢飯は冷まして使用されるものではあるものの,室内の室温下で調理され供されるものであるから,少なくとも室温程度の温度を有しているはずである。
そうすると,引用発明において,巻寿司の芯として,細細いスティック状に成形された凍結物を適用すると,少なくとも室温程度の温度を有する酢飯によって,凍結物は解凍されるはずである。
さらに,巻寿司の芯として用いられる程度の細いスティック状の凍結物が解凍しても,その際生じる水分は微量であり,請求人の主張するような「海苔が溶けるといった致命的なダメージを受けるとともに‘酢めしが崩れ’,’巻きずしの構造が維持できない’」という程の大量な水分が解凍と共に生じるとは一般には考えられない。
したがって,引用発明に記載の「巻きずし」においては,芯である漬物スティックは解凍されており,且つ,その際生じる水分によっても巻きずしを実施できない程のダメージを与えるものではないから,引用発明は実施可能なものである。

よって,請求人の上記主張を採用することはできない。

4 まとめ

したがって,本願発明1は,この出願の出願前に頒布された刊行物1,2に記載された発明,及び,本願出願当時の周知事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

B 本願発明3について

1 刊行物1に記載された発明

前記「A 1」に記載したとおりである。

2 本願発明3と引用発明との対比

本願発明3と引用発明とを対比する。

本願発明3は,本願発明1,2において,「前記青色部(茄子漬の青色部)を小片で構成してなる」ものという特定がなされているものである。
この茄子漬の青色部を「小片で構成してなる」とは,前記「A 3(1)イ」で述べたように,本願明細書の「本発明に係る巻寿司1の芯2としては,たとえば・・粗みじんに切り分けたり,・・細切りやみじん切りにしたりすることにより,青色部14をある程度小さな形状にして用いることが好ましい。」(段落【0035】)との記載から,茄子漬の青色部を‘細切れにしてなる’ことを意味すると解される。
そうすると,引用発明1の巻寿司の芯である漬物は「細切れにした」ものであることから,先に「A 2」で述べた点を踏まえ,本願発明3と引用発明とを対比すると,両者は,

「細切れにした漬物を芯に含む巻寿司」

である点で一致し,以下の点で相違する。

ア 「漬物」の種類が,
本願発明3は,茄子漬の青色部 であるのに対し,
引用発明は,明らかではない点 (以下,「相違点ア’」という。)

イ 「漬物」の形状が
本願発明3は,明らかではない のに対し,
引用発明は,増粘剤を添加混合してスティック状に成形したもの である点 (以下,「相違点イ’」という。)

3 判断

(1)相違点について

ア 相違点アについて

本願発明3は,本願発明1,2において,「前記青色部(茄子漬の青色部)を小片で構成してなる」ものという特定がなされているものであり,「漬物」の種類については,本願発明3と本願発明1,2とは相違なく,相違点ア’は相違点アと同じであるから,前記「A 3(1)ア」に記載した判断が適用できる。

イ 相違点イ’について

相違点イ’は,相違点イの,引用発明の「漬物」の形状の「細切れにした」という構成による相違が無いものであり,相違点イにおけるその他の相違については,相違点イ’と同じである。
そして,相違点イの,引用発明の「漬物」の形状の「細切れにした」という構成による相違が無い,相違点イにおけるその他の相違については,前記「A 3(1)イ」に記載したとおりである。
したがって,相違点イ’も,実質的な相違点であるとはいえない。

(2)本願発明3の効果について

本願発明3は,上述のように,本願発明1において,「前記青色部(茄子漬の青色部)を小片で構成してなる」ものという特定がなされているものであり,前記「A 3(1)イ」で述べたように,本願発明1の「茄子漬の青色部」の形状としては,「細切れにした」ものも含まれていることから,本願発明3は本願発明1に包含されているものである。
したがって,本願発明3の効果は,本願発明1の効果と同じといえ,前記「A 3(2)」に記載したとおりである。

4 まとめ

したがって,本願発明3も,この出願の出願前に頒布された刊行物1,2に記載された発明,及び,本願出願当時の周知事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

第6 むすび

以上のとおり,本願発明1,3は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,この出願は,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-11 
結審通知日 2011-03-22 
審決日 2011-03-29 
出願番号 特願2005-38500(P2005-38500)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 晴絵  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 松本 直子
齊藤 真由美
発明の名称 巻寿司  

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