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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1249614
審判番号 不服2009-23206  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-26 
確定日 2012-01-06 
事件の表示 特願2003-342690「固体電解コンデンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月21日出願公開、特開2005-109273〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成15年9月30日の出願であって,平成21年7月27日に手続補正がされたが,同年8月24日付けで拒絶査定がされ,それに対して同年11月26日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1?2に係る発明は,平成21年7月27日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲1?2に記載された事項により特定されるとおりのものであり,そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,請求項1に記載されている事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】 陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータを介して巻回するとともに、導電性ポリマーをセパレータで保持したコンデンサ素子を備えた固体電解コンデンサにおいて、陰極電極箔として表面に炭窒化チタン皮膜を形成したエッチング箔を用いた固体電解コンデンサ。」

3 引用刊行物に記載された発明
(1) 引用例1に記載された発明
本願の出願前に日本国内において頒布され,原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された刊行物である特開2000-114108号公報(以下「引用例1」という。)には,「固体電解コンデンサとその製造方法」(発明の名称)に関して,以下の記載がある(なお,下線は当合議体にて付加したものである。以下同様。)。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 弁金属からなる陰極箔と表面に酸化皮膜を形成した弁金属からなる陽極箔とを、セパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成し、前記陰極箔と陽極箔の間に導電性ポリマーからなる電解質層を形成した固体電解コンデンサにおいて、
前記陰極箔の表面に、金属窒化物からなる皮膜を形成したことを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項2】 弁金属からなる陰極箔と表面に酸化皮膜を形成した弁金属からなる陽極箔とを、セパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成し、前記陰極箔と陽極箔の間に二酸化鉛からなる電解質層を形成した固体電解コンデンサにおいて、
前記陰極箔の表面に、金属窒化物からなる皮膜を形成したことを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項3】 前記導電性ポリマーが、ポリエチレンジオキシチオフェンであることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】 前記弁金属がアルミニウムであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】 前記金属窒化物が、TiN、ZrN、TaN、NbNのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】 前記金属窒化物が、蒸着法によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項7】 前記蒸着法が、陰極アークプラズマ蒸着法であることを特徴とする請求項6に記載の固体電解コンデンサ。」

イ 「【0012】また、本発明者は、陰極箔の表面にTiNを蒸着形成し、この陰極箔を用いて後述する条件下でコンデンサを作成し、陰極箔のみの容量を測定したところ、その容量は無限大となった。すなわち、TiNと陰極箔金属が導通していることが判明した。ところで、電解コンデンサの静電容量Cが、陽極側の静電容量Ca と陰極側の静電容量Cc とが直列に接続された合成容量となることは、次式により表される。
【数1】


上式より明らかなように、Cc が値を持つ(陰極箔が容量を持つ)限り、コンデンサの容量Cは陽極側の静電容量Ca より小さくなる。言い換えれば、本発明のように陰極箔表面に蒸着したTiNと陰極箔金属とが導通して陰極箔の容量Ccが無限大となった場合には、陰極箔の容量成分がなくなり、陽極箔と陰極箔の直列接続の合成容量であるコンデンサの容量Cは陽極側の静電容量Ca と等しくなって、最大となる。
【0013】なお、金属窒化物としては、表面に酸化皮膜が形成されにくい、TiN、ZrN、TaN、NbN等を用いることができる。また、陰極の表面に形成する皮膜は金属窒化物に限らず、皮膜を形成することができ、且つ酸化することの少ない導電性材料であれば他の材質でも良い。例えば、Ti、Zr、Ta、Nb等を用いることができる。
【0014】また、弁金属からなる陰極に金属窒化物からなる皮膜を形成する方法としては、形成される皮膜の強度、陰極との密着性、成膜条件の制御等を考慮すると、蒸着法が好ましく、なかでも、陰極アークプラズマ蒸着法がより好ましい。この陰極アークプラズマ蒸着法の適用条件は以下の通りである。すなわち、電流値は80?300A、電圧値は15?20Vである。なお、金属窒化物の場合は、弁金属からなる陰極を200?450℃に加熱し、窒素を含む全圧が1×10^(-1)?1×10^(-4)Torrの雰囲気で行う。
【0015】また、上述したように、導電性ポリマーとしては、高温処理を必要としないPEDT、ポリピロール、ポリアニリン、TCNQもしくはこれらの誘電体等を用いることができるが、なかでも、小型大容量の巻回型コンデンサにおいては、コンデンサの製造過程において温度管理等が容易で、耐熱性に優れたPEDTを用いることが望ましい。」

ウ 「【0022】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
【0023】[1.第1実施形態]本実施形態は、電解質層として導電性ポリマーを用いた巻回型の固体電解コンデンサに関するものである。なお、本発明に係る表面に金属窒化物からなる皮膜を形成した陰極箔は、以下の実施例1のように作成した。また、従来例1として通常の陰極箔を用いた。
【0024】(実施例1)高純度のアルミニウム箔(純度99%、厚さ50μm)を4mm×30mmに切断したものを被処理材として使用し、エッチング処理後、TiN膜を陰極アークプラズマ蒸着法により形成した。なお、陰極アークプラズマ蒸着法の条件は、窒素雰囲気中でTiターゲットを用い、高純度のアルミニウム箔を200℃に加熱し、5×10^(-3)Torr、300A、20Vで行った。そして、この陰極箔を陽極箔及びセパレータと共に巻回して、素子形状が4φ×7Lのコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子にEDTモノマーを含浸し、さらに酸化剤溶液として45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を含浸して、100℃、1時間加熱した。その後、コンデンサ素子の表面を樹脂で被覆し、エージングを行って、固体電解コンデンサを形成した。なお、この固体電解コンデンサの定格電圧は6.3WV、定格容量は33μFである。
【0025】(従来例1)被処理材には実施例1と同じものを用い、表面に金属窒化物からなる皮膜を形成していないものを陰極箔として用いた。そして、この陰極箔を用い、実施例1と同様にして固体電解コンデンサを形成した。
【0026】[比較結果]上記の方法により得られた実施例1と従来例1の固体電解コンデンサの電気的特性を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】表1から明らかなように、表面に金属窒化物からなる皮膜を形成していない陰極箔を用いた従来例1においては、静電容量(Cap)が“30.2”と低く、tanδは“0.120”と高かった。これに対して、実施例1においては、Capは“47.8”と従来例1の約1.6倍の値を示し、tanδは“0.027”と従来例1の約22.5%に低下した。なお、等価直列抵抗(ESR)はそれぞれ“49”“47”であり、大きな差は見られなかった。このように、実施例1において、Capが従来例1の約1.6倍となったのは、陰極箔の表面に金属窒化物からなる皮膜を形成したことにより、陰極箔と金属窒化物とが導通し、陰極箔部分の容量が無限大となった結果、陰極箔の容量成分がなくなり、陽極箔と陰極箔の直列接続の合成容量であるコンデンサの容量が最大となったためと考えられる。」

以上によれば,引用例1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「陰極箔と陽極箔とをセパレータを介して巻回し、前記陰極箔と陽極箔の間に導電性ポリマーからなる電解質層を形成した固体電解コンデンサにおいて、
前記陰極箔の表面に、エッチング処理後,陰極アークプラズマ蒸着法によりTiNからなる皮膜を形成したことを特徴とする固体電解コンデンサ。」

(2) 引用例2に記載された発明
本願の出願前に日本国内において頒布され,原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された刊行物である特開平4-71214号公報(以下「引用例2」という。)には,以下の記載がある。
ア 「2.特許請求の範囲
(1)高純度アルミニウム表面に、チタン、バナジウム、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、タングステンから選ばれたいずれか金属の炭窒化物からなる薄膜を形成したことを特徴とする電解コンデンサ用アルミニウム電極。(2)炭化水素ガスおよび窒素ガスを含む雰囲気中で、チタン、バナジウム、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、タングステンから選ばれたいずれか金属をターゲットとして、陰極アーク蒸着法によって高純度アルミニウム表面に前記金属の炭窒化物からなる蒸着層を形成することを特徴とする電解コンデンサ用アルミニウム電極の製造方法。」(第1ページ左下欄5行?17行)

イ 「【従来の技術】
電解コンデンサは、小型、大容量、安価で整流出力の平滑用などの用途に用いられ、各種の電気、電子機器の重要な構成要素の一つである。
電解コンデンサは、一般にアルミニウム等の絶縁性酸化皮膜が形成され得る、いわゆる弁金属を少なくとも陽極に用い、前記絶縁性酸化皮膜を誘電体層として、集電用の陰極電極との間にセパレータに保持された電解液を介在させてコンデンサ素子を作成し、これを密閉容器内に収納して構成される。 電極材料は前述したように、アルミニウムをはじめ、タンタル、ニオブ、チタンなど弁金属であれば、理論上使用が可能である。しかしながら現実には、材料の経済的理由や、誘電体酸化皮膜層の形成性において、アルミニウムおよびタンタルが実用化されている。」(第1ページ右下欄2行?18行)

ウ 「また陰極側電極についても、陽極側電極と同種の弁金属が使用されることが多いが、この陰極側電極表面には、自然酸化による酸化皮膜層が表面に形成される。この傾向はアルミニウムにおいて特に顕著である。そしてこの自然酸化皮膜は極めて薄い絶縁層となるため、陰極側にも静電容量が形成され、電解コンデンサは、陽極側の静電容量および陰極側の静電容量が直列に接続された合成容量となり、陽極側電極の静電容量より低い値となる。
この影響を少なくするためには、陽極側の静電容量値に比べ陰極側の静電容量値を著しく高くすれば、陰極側の静電容量による影響は殆ど無視できることになるが、低電圧用の電解コンデンサの陽極の単位面積あたりの静電容量は相当に高い水準にあり、これをより高めるのは困難で、合成容量による静電容量値の低下は免れ得ない。
そこで静電容量を増大させるためには、電極表面に形成された誘電体酸化皮膜の比誘電率を上げることが考えられる。しかし通常は、陽極材料である弁金属の酸化物固有の比誘電率によってその値は決まってしまい、変更の余地は殆どない。
電極表面の誘電体酸化皮膜層の被誘電率を上げるためには、基材である電極金属の酸化物とは異なる高い比誘電率を持つ物質を、電極の絶縁酸化皮膜の一部もしくは全部に代えて形成することが考えられる。」(第2ページ左上欄18行?同ページ左下欄4行)

エ 「【発明が解決しようとする課題】
そこでこの発明は、電解コンデンサの電極となる高純度アルミニウムの表面に、より高い誘電率を持ち、しかも特性上安定度の良い薄膜を形成することで、電極単位面積あたりの静電容量が大きく、しかも信頼性の高い電解コンデンサ用電極を得ることを目的としている。」(第2ページ右下欄8行?14行)

オ 「またアルミニウム表面はエッチング処理を施しても良いし、プレーンのままであっても使用可能である。」(第3ページ左上欄16行?18行)

カ 「通常の陰極アーク蒸着法によれば、蒸着処理を行うチャンバ内は、アルゴンガス等の不活性ガスが僅かに存在する雰囲気中で蒸着を行うが、この発明においては、金属の炭窒化物からなる蒸着膜を形成する必要があることから、チャンバ内に微量の炭素化合物ガスと窒素ガスを所定量存在させて蒸着処理を行う。
チャンバ内に炭化のため存在させるガスは、炭化水素であるメタン、エチレンなどが好適である。またガスの量は、炭化反応が充分行われ、しかも遊離した金属イオンが被処理材表面に蒸着形成されるのを妨げない範囲で選択されるべきである。
また窒化のために、窒素ガスをチャンバ内に併せて存在させる必要がある。これらガスの好ましい濃度範囲は炭化水素化合物ガスと窒素ガス双方を含む全圧で1×10^(-3)?1×10^(-4)Torrである。
【作 用】
この発明で選択した金属の炭窒化物は、いずれも硬質な化合物でアルミニウムとの反応性も良好なことから、アルミニウム表面に緻密な薄膜が形成される。そしてこの金属の炭窒化物薄膜は、従来の同種の金属のみの蒸着に比べて高い静電容量が得られることが判明した。」(第3ページ左下欄15行?同ページ右下欄17行)

4 対比・判断
(1) 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用例1には,「陰極箔を陽極箔及びセパレータと共に巻回して、」「EDTモノマーを含浸し、さらに酸化剤溶液として45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を含浸して、100℃、1時間加熱」することが記載されており,セパレータに含浸されたモノマーが重合して導電性ポリマーになっていることから,引用発明のセパレータには導電性ポリマーが保持されていることは明らかであるから,引用発明は,本願発明の「導電性ポリマーをセパレータで保持」する構成を実質的に備えている。
また,引用発明の「陰極箔」,「陽極箔」は,本願発明の「陰極電極箔」,「陽極電極箔」にそれぞれ相当し,さらに,引用発明の「陰極箔の表面に,エッチング処理後,」「皮膜を形成したこと」は,本願発明の「陰極電極箔として表面に」「皮膜を形成したエッチング箔を用いた」ことに相当する。
したがって,本願発明と引用発明とは,
「陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータを介して巻回するとともに、導電性ポリマーをセパレータで保持したコンデンサ素子を備えた固体電解コンデンサにおいて、陰極電極箔として表面に皮膜を形成したエッチング箔を用いた固体電解コンデンサ。」
である点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点)
本願発明は,陰極電極箔の表面の皮膜の材料が「炭窒化チタン」であるのに対して,引用発明は「TiN」である点。

(2) 判断
ア 相違点について
引用例2に記載の発明は,3(2)ウ,カによれば,「陽極側の静電容量及び陰極側の静電容量が直列に接続された合成容量とな」る「電解コンデンサ」の容量を,陰極電極の「基材である電極金属の酸化物とは異なる高い比誘電率を持つ物質」を形成して,「陰極側の静電容量値を著しく高く」し,全体として「高い静電容量を得」ているものである。そして,3(2)アによれば,その「電解コンデンサの」陰極である「アルミニウム表面」に形成する物質として「チタン」の「炭窒化物からなる薄膜」を「アーク蒸着法」で形成しているものである。
引用発明も,引用例2に記載の発明も直列に接続された容量のうち,陰極側の静電容量値を高くして,全体として高い静電容量を得ている点について共通するが,引用発明では,導電性の「TiN」(窒化チタン)を形成して,「陰極箔のみの容量」を「無限大」,すなわち,TiNと陰極箔が導通していると認識しているが,引用例2に記載の発明では,誘電率の高い「炭窒化チタン」を形成して,陰極側の容量を大きくしているもので,その原理が相違しているように見える。
しかしながら,導電性を有するTiCと,同じく導電性を有するTiNとの固溶体である「炭窒化チタン」がTiNと同様に導電性を有することは,以下の周知例1に記載されているように周知の技術である。
そうすると,引用例2に記載の発明においても,「炭窒化チタン」の高比誘電率と導電性により,「陰極側の静電容量値を著しく高く」しているものであることが分かり,陰極側の容量を大きくする原理に実質的な相違がないといえる。
したがって,引用発明において,陰極の皮膜として導電性の「TiN」に換えて,導電性のある「炭窒化チタン」の皮膜を設けて,全体の静電容量値を高くすることは当業者ならば容易になし得たことである。

なお,審判請求人は,炭窒化チタン皮膜と導電性ポリマーとの接着性が良好なため,炭窒化チタン皮膜を用いた電解コンデンサの方が,窒化チタン皮膜のものよりもESR値が優れており,顕著な効果を有している旨,及び,窒化チタンよりも比抵抗の高い炭窒化チタンを陰極電極箔の表面の被膜の材料として敢えて選択検討することは困難である旨主張している。
しかしながら,ESR値には,「層間の接触抵抗」が影響を及ぼすことは,審判請求人し,かつ,以下の周知例2にも記載されているように「電解コンデンサ」の技術分野において周知の技術であるから,ESRを低減するに当たり,各材料の比抵抗のみならず,「層間の接触抵抗」等を含めて総合的に比較・検討を行うことは当然のことであって,炭窒化チタンの比抵抗が窒化チタンよりも高いとしても,直ちに皮膜材料として排除されるということはできない。そして,「窒化チタン」,「炭窒化チタン」どちらも陰極上に形成する皮膜としては公知であるから,陰極上に形成する被膜として引用発明の窒化チタンに換えて「炭窒化チタン」を選択することに困難性もなく,炭化チタン皮膜を用いたことによるESR値の改善も,本願明細書の表1を見る限り,当業者の予測の範囲内である。

(ア) 周知例1:特開平7-109534号公報
a 「【0002】
【従来の技術】炭窒化チタン{Ti(C,N)}は、炭化チタン(TiC)と窒化チタン(TiN)の全率型の固溶体であり、高硬度、高融点、耐熱衝撃性を有し、かつ電気の良導体である。」

(イ) 周知例2:特開2003-229330号公報
a 「【0003】固体電解コンデンサについて、固体電解コンデンサの内部電極(即ちコンデンサ素子)の従来の製造方法を例示する。まず、陽極導体となる弁金属(valve metal;例えばタンタル金属)をリン酸などの電解質溶液中で陽極酸化し、その表面に酸化膜層(誘電体層)を形成する。次に、この酸化膜層の表面に固体電解質を形成する。固体電解質としては、例えば、陽極導体を硝酸マンガン溶液に浸漬し、引き上げ、さらに焼成することにより形成できる二酸化マンガンが知られている。最後に、固体電解質上に陰極導体を形成する。陰極導体としては、例えばカーボン層と外装銀導電性樹脂層との積層体が用いられる。コンデンサ素子には、外部への電気的接続のために、陽極導体に陽極リード端子が、陰極導体に陰極リード端子がそれぞれ接続される。
【0004】ESRには、上記各部材がそれぞれ有する抵抗が影響を及ぼし得るが、抵抗について最も考慮すべき余地があるのは固体電解質である。固体電解質の抵抗を引き下げるために、二酸化マンガン(導電率0.1S/cm程度)よりも導電率が高い導電性高分子材料を用いることが提案され、実用化されている。例えばポリピロールを用いれば、100S/cm程度の導電率を実現できる。導電性高分子材料を構成するための単量体(モノマー)としては、ピロールの他、アニリン、チオフェン、3,4-エチレンジオキシチオフェンなどが知られている。導電性高分子層の形成方法は、化学酸化重合と電解酸化重合とに大別できる。
【0005】ESRには層間の接触抵抗も影響を及ぼす。本出願人による特開2000-232036号公報では、導電性高分子層に導電性ポリマー微粒子を混在させ、この微粒子によって形成された凹凸により導電性高分子層と陰極導体との接触抵抗を低下させることが開示されている。この公報に記載の方法では、導電性ポリマー微粒子を分散させた重合溶液を用いた化学酸化重合により、導電性高分子層が形成される。」

(3) 判断についてのまとめ
以上検討したとおり,本願発明は,当該技術分野における周知の技術を勘案し,引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって,本願発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

5 むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-07 
結審通知日 2011-11-09 
審決日 2011-11-24 
出願番号 特願2003-342690(P2003-342690)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 弘亘  
特許庁審判長 齋藤 恭一
特許庁審判官 西脇 博志
酒井 英夫
発明の名称 固体電解コンデンサ  

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