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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B |
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管理番号 | 1249686 |
審判番号 | 不服2009-11823 |
総通号数 | 146 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-06-29 |
確定日 | 2012-01-04 |
事件の表示 | 特願2002-543799「高レートパケットデータおよび低遅延データ伝送のための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月23日国際公開、WO02/41509、平成16年 5月13日国内公表、特表2004-514369〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成13年10月24日(優先権主張 2000年10月25日 米国(US))を国際出願日とする出願であって,平成19年11月27日付けで拒絶の理由が通知され,平成20年6月4日付けで意見書とともに手続補正書の提出がなされ,平成21年3月30日付けで拒絶査定され,同年6月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同年7月29日付けで手続補正書の提出がなされたものである。 第2 補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年7月29日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願補正発明 (1)平成21年7月29日付け手続補正について 平成21年7月29日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は,平成20年6月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1の記載 【請求項1】 複数の伝送チャネル上へのパケットデータおよび低遅延データの伝送のために動作する無線通信システムであって、システムは、 複数の伝送チャネル内の第1のチャネル組み合わせと、なおこの第1のチャネル組み合わせは、パケットデータ伝送に対し割り当てられており、そしてパケットデータはフレーム内で伝送され、 複数の伝送チャネル内の第2のチャネル組み合わせと、なおこの第2のチャネル組み合わせは、低遅延データ伝送に対し割り当てられ、そして、 複数の伝送チャネル内のシグナリングチャネルとを含み、なおこのシグナリングチャネルは、メッセージ伝送に割り当てられ、ここで各メッセージはパケットデータの目標受信者を識別するシステム。 を 【請求項1】 音声情報などの低遅延データとともに高速パケットデータ情報を送信するための、複数の伝送チャネル上へのパケットデータおよび低遅延データの伝送のために動作する組み合わせ無線通信システムであって、システムは、 複数の伝送チャネル内の第1のチャネル組み合わせと、なおこの第1のチャネル組み合わせは、パケットデータ伝送に対し割り当てられており、そしてパケットデータはフレーム内で伝送され、 複数の伝送チャネル内の第2のチャネル組み合わせと、なおこの第2のチャネル組み合わせは、低遅延データ伝送に対し割り当てられ、そして、 複数の伝送チャネル内のシグナリングチャネルとを含み、なおこのシグナリングチャネルは、メッセージ伝送に割り当てられ、ここで各メッセージはパケットデータの目標受信者を識別するシステム。 とする変更を含むものである。 (当審注 下線は請求人が付与。) そして,上記の変更は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)本願補正発明 以上のとおりであるから,本願の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は,平成21年7月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】 音声情報などの低遅延データとともに高速パケットデータ情報を送信するための、複数の伝送チャネル上へのパケットデータおよび低遅延データの伝送のために動作する組み合わせ無線通信システムであって、システムは、 複数の伝送チャネル内の第1のチャネル組み合わせと、なおこの第1のチャネル組み合わせは、パケットデータ伝送に対し割り当てられており、そしてパケットデータはフレーム内で伝送され、 複数の伝送チャネル内の第2のチャネル組み合わせと、なおこの第2のチャネル組み合わせは、低遅延データ伝送に対し割り当てられ、そして、 複数の伝送チャネル内のシグナリングチャネルとを含み、なおこのシグナリングチャネルは、メッセージ伝送に割り当てられ、ここで各メッセージはパケットデータの目標受信者を識別するシステム。 そこで,本願補正発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるか(本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するか)について検討する。 2.引用例 原査定の理由に引用された特開2000-224231号公報(以下「引用例」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。 (1) 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、CDMA(Code Divison Mutiple Access)移動通信システム上での予約型アクセス制御を行うパケットデータ送信方法に関する。 (2) 【0033】(2)無線チャネルの構成 次に、本実施例で使用する無線チャネルの構成例を図3に示す。CDMA通信では1キャリア(周波数)を拡散符号、直交符号などを用いてチャネルを分割しコードチャネルを生成する。 【0034】1つの基地局から各移動局への信号を送信するための下りチャネル301は、ウオルシュ符号に代表される直交符号により符号分割され、それぞれ基地局識別信号を送信するためのパイロットチャネル302、システムの同期をとりシステム情報を伝送するための同期チャネル303、移動局の呼び出しを行うためのページングチャネル304、移動局へパケットの送信指示または受信指示を与えるためのパケット制御チャネル305、音声やパケットデータを移動局へ送信するためのトラフィックチャネル306に割り当てられる。 【0035】これらチャネルにて送信される情報には基地局毎に異なるオフセットをもつPN(疑似雑音)符号(いわゆるショートコード)が乗算される他、トラフィックチャネルにて送信される各移動局宛ての情報は、さらに相手移動局毎に固有のPN符号(いわゆるロングコード)の乗算によりスクランブルされる。 【0036】複数の移動局へパケットの送信または受信指示を与える際の効率向上のためパケット制御チャネルはパケットのトラフィック量に応じ一つ以上のチャネルが確保される。この場合、各移動局が受信すべきパケット制御チャネルはページングチャネルにて基地局より各移動局へ通知される。 【0037】移動局から基地局へ信号を送信するための上りチャネル311も同様に直交符号、あるいはチャネル番号および相手基地局毎に固有のオフセットを持つPN符号により符号分割され、移動局から発呼を行うためのアクセスチャネル312、移動局からのパケット送信要求を基地局へ通知するためのパケット予約チャネル313、音声やパケットデータを伝送するトラフィックチャネル314として割り当てられる。 【0038】複数の移動局からのパケット予約メッセージが衝突する確率を抑えるため、パケット予約チャネルはパケットのトラフィック量に応じ一つ以上のチャネルが確保される。各移動局の使用すべきパケット予約チャネルはページングチャネルにて基地局より各移動局へ通知される。 【0039】トラフィックチャネルは音声用またはパケットデータ通信用として使用されるが、本実施例では音声通信用チャネルの確保を優先し、トラフィックチャネルのうち音声通信用に使用されていない残りをパケットチャネルとして使用する。トラフィックチャネルの数及びトラヒックチャネル内のパケットチャネルの割合はトラフィック量及びトラヒックの内容に応じ動的に変更可能である。 【0040】以上のキャリア分割方法、パケット制御チャネル及びパケット予約チャネル以外の各種チャネルは、米国CDMA方式のセルラ無線通信システム規格であるTIA/EIA/IS-95でも知られている。 【0041】上述のように1キャリアあたりのチャネル数は直行符号の数によって制限され、ウォルシュ符号の場合は64である。本実施例ではトラヒックチャネルを時分割で複数の接続中の移動局に割当て限られた数のトラヒックチャネルを有効に利用する。 (3) 【0061】図12に基地局より移動局へパケットを送信する際のシーケンスを示す。 【0062】外部のデータ通信ネットワークより届いたパケットを移動局へ送信する基地局は、パケット受信指示メッセージ1201をパケット制御チャネル上で当該移動局へ通知し、これによって移動局がパケットを受信すべきパケットチャネルと割当て時間を指示する。 【0063】基地局はパケットを図5の511に示すようにブロックに分割し、移動局へ指示した時間内に指示したパケットチャネル上で送信する。移動局はパケット受信指示メッセージに従い、指定されたチャネル上で割り当て時間の間パケットデータブロック群1202を受信する。割当てられた時間内に基地局からのパケットの送信が完了しなかった場合、再度パケット受信指示メッセージ1203が基地局より移動局へ通知され、以後、分割されたパケットの最終ブロックを移動局が受信するまで図12に示す手順1205が繰り返される。図11、図12双方の場合とも、あらかじめ定められた時間以上、パケットの送信が行われないと基地局-移動局間の接続が既存の切断シーケンスにより切られる。 【0064】上述の無線チャネル上で伝送される各種メッセージのフォーマットを図4に示す。 【0065】パケット予約メッセージ411には基地局においての同期捕捉のためのプリアンブル412、発信元移動局を示す識別子413、送信しようとするパケットの識別子414、そのパケットに対し発信元移動局が希望する優先度415、パケットのサイズ416、およびこのパケット予約メッセージが正常に受信できた事を基地局にて確認するための誤り検出用CRCコード417が含まれる。移動局は新たなパケットを送信しようとしパケット予約メッセージ411を送信する都度、パケット識別子を更新する。 【0066】パケット送信指示メッセージ421には同期捕捉のためのプリアンブル422、このメッセージの宛先を示す移動局識別子423、移動局へ送信させるパケットを識別するパケット識別子424、移動局がパケットの送信を開始すべき時刻の指定425とチャネル割り当て時間の指定426、使用すべきパケットチャネルの指定427、およびこのパケット送信指示が正常に受信できた事を移動局にて確認するための誤り検出用CRCコード428が含まれる。移動局識別子423、パケット識別子424には、このメッセージに対応するパケット予約メッセージに設定されていた移動局識別子413およびパケット識別子414と同一の値が設定される。 【0067】パケット受信指示メッセージ431にはパケット送信指示メッセージ421と同様、同期捕捉のためのプリアンブル432、メッセージの宛先を示す移動局識別子433、移動局に受信させるパケットの識別子434、パケットサイズ435、移動局がパケットデータの受信を開始すべき時刻436とチャネル割り当て時間437、使用すべきパケットチャネル438、およびこのパケット受信指示が正常に受信できた事を移動局にて確認するための誤り検出用CRCコード439が含まれる。基地局は移動局へ送信すべきパケットが生じパケット受信指示メッセージを移動局へ送信する都度パケット識別子434を更新する。 【0068】(6)パケットチャネルの割当て 図1にて、移動局よりパケットデータを送信を送信する際の各チャネルの使用例を示す。 【0069】接続された携帯情報端末よりパケットを渡された移動局101は、パケット予約チャネル112にて基地局へパケット予約メッセージ121を通知する。基地局は各移動局からのパケット予約メッセージを受信してチャネルの割当てスケジュールを作成し、当該移動局の使用すべきパケットチャネル115、送信タイミング161およびチャネル割り当て時間151を決定し、パケット制御チャネル113上で送信指示メッセージ131により移動局101へこのパケットチャネル、タイミング、割り当て時間を指示する。移動局101はこの指示に従いパケットを分割されたブロック群として送信するが、割り当て時間151内にすべてのパケットブロックの送信を完了できなかった場合、基地局は移動局へ再度の送信指示メッセージ136によりチャネル115と送信時刻166、チャネル割当て時間156での送信を指示する。 【0070】一方、パケットデータブロックは、図6に示すようにパケットチャネル上で同期捕捉用のプリアンブル(特定の信号の並び)611に続いて、チャネルを割当てられた時間601に収まる数だけ送信される。 【0071】一つのパケットチャネル(114又は115)は複数の移動局に共有されるが、パケットチャネル上の情報は送信されるときに、各移動局ごとに異なるPN符号によりスクランブルされる。したがって、同じパケットチャネルを共有する移動局間で情報漏れや混信が起こることはない。 【0072】基地局は各パケット個別に優先度を決定し、当該パケット送信のための各移動局へのパケットチャネルの割当てにおいて基地局はこれを考慮する。まず複数の移動局よりほぼ同時にパケット送信要求があったがチャネルに空きが無い場合、優先度の高いパケットを送信しようとする移動局へ先にチャネルが割り当てられる。図1において移動局102、、103よりパケット予約メッセージ122、、123がほぼ同時に発せられたが、移動局102の送信しようとするパケットの優先度が移動局103が送信しようとしているパケットの優先度より高かった場合、移動局102へ先にパケットチャネル114を割当て、移動局103の送信はそれより後のチャネルが空きとなる時刻163からとする。また、移動局へのチャネルの割当て時間の長さもこの優先度に比例する。例えば移動局102のパケットの優先度がP_A、、移動局103のパケットの優先度がP_Bであれば、図1においてそれぞれの移動局に対するチャネルの割当て時間152と割り当て時間153の比はP_A:P_Bとなる(P_A,P_Bは優先度が高いほど大きな値を持つ。)。 【0073】これら優先度の決定方法詳細については後述する。 【0074】基地局より移動局へパケットを送信する場合も同様の処理を行う。その例を図13に示す。基地局は外部のデータ通信ネットワークより届いたパケットそれぞれの優先度を決定し、その優先度により宛先移動局がこのパケットデータを受信するためのパケットチャネルの割当て時間と割当ての順番を決定し、パケット制御チャネルにてパケットの宛先移動局へチャネルと受信タイミング、チャネルの割り当て時間を指示する。 【0075】図13において基地局はパケット制御チャネル1301上で受信指示メッセージ1311、1312、1313にて、各移動局へパケットデータが送信される時刻1331、1332、1333と、それぞれへの割当時間1321、1322、1323、および使用するパケットチャネル1302または1303を通知した後、各移動局へ指示したチャネルでパケットデータを送信している。 【0076】また、応用例として、即時性の必要なパケット等で高い優先度を要求される場合、そのパケットの送信に要する時間を短縮するため一つの移動局へ複数のチャネルの同時使用を認め、分割されたパケットをそれぞれ異なるチャネルに振り分けて同時送信させる事もできる。 【0077】図14に示す例では移動局からのパケット予約メッセージ1411に対し基地局は複数の送信指示メッセージ1421および1422を返し、パケットチャネル1403とパケットチャネル1404を同時に用いてのパケットデータ送信を指示している。 【0078】図4に示したように、パケットはそれぞれにパケットデータ識別子とシーケンス番号が付加されたブロックに分割されて送信されるため、送信側にて一つのパケットを複数のチャネルに分けて送信しても、受信側で元のパケットに再構成する事ができる。 【0079】複数チャネルの同時利用については、上述のように一つのパケットを複数のチャネルへ分割して振り分け同時送信させる使用法の他に、チャネル毎にそれぞれ文字データ、画像データ等用途の異なるデータを一移動局が同時送信する使用法も可能である。但し、移動端末側に2チャンネル以上を同時に受信できる能力をが必要である。 (当審注 下線は当審が付与。) 上記の記載によれば,引用例には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 1つの基地局から各移動局への信号を送信するための下りチャネル301は,それぞれ基地局識別信号を送信するためのパイロットチャネル302,システムの同期をとりシステム情報を伝送するための同期チャネル303,移動局の呼び出しを行うためのページングチャネル304,移動局へパケットの送信指示または受信指示を与えるためのパケット制御チャネル305,音声やパケットデータを移動局へ送信するためのトラフィックチャネル306に割り当てられ, トラフィックチャネルは音声用またはパケットデータ通信用として使用されるが,音声通信用チャネルの確保を優先し,トラフィックチャネルのうち音声通信用に使用されていない残りをパケットチャネルとして使用し,トラフィックチャネルの数及びトラヒックチャネル内のパケットチャネルの割合はトラフィック量及びトラヒックの内容に応じ動的に変更可能であり, 外部のデータ通信ネットワークより届いたパケットを移動局へ送信する基地局は,パケット受信指示メッセージ1201をパケット制御チャネル上で当該移動局へ通知し,これによって移動局がパケットを受信すべきパケットチャネルと割当て時間を指示し, パケット受信指示メッセージ431には,同期捕捉のためのプリアンブル432,メッセージの宛先を示す移動局識別子433,移動局に受信させるパケットの識別子434,パケットサイズ435,移動局がパケットデータの受信を開始すべき時刻436とチャネル割り当て時間437,使用すべきパケットチャネル438,およびこのパケット受信指示が正常に受信できた事を移動局にて確認するための誤り検出用CRCコード439が含まれる CDMA通信。 3.対比・判断 (1)対比 ・引用発明の「CDMA通信」は無線通信であることは明らかであるから,引用発明には「無線通信システム」が開示されているといえる。 ・引用発明の「音声通信用チャネル」,「パケットチャネル」,「パケット制御チャネル」,「ページングチャネル」は,それぞれ基地局から移動局へ送信され受信されるデータのためのチャネル,すなわち「伝送チャネル」といえ,該「チャネル」が複数であることは明らかである。 そして,上記パケットチャネルでパケットデータ情報が送信されることは明らかであるから,前記パケットチャネルは,本願補正発明の「パケットデータ」に割り当てられた「複数の伝送チャネル内の第1のチャネル」に相当する。 一方,上記音声通信用チャネルで音声,すなわち音声情報が送信されることは明らかである。また,音声情報が低遅延データであることは音声通信において技術常識である。してみると,前記音声通信用チャネルは,本願補正発明の「低遅延データ」に割り当てられた「複数の伝送チャネル内の第2のチャネル」に相当する。 さらに,引用発明は,音声やパケットデータを移動局へ送信するためのトラフィックチャネルに,音声通信用チャネルの確保を優先し,トラフィックチャネルのうち音声通信用に使用されていない残りをパケットチャネルとして使用するのであるから,音声情報とともにパケットデータ情報を送信することは明らかである。そうすると,引用発明の「CDMA通信」も,トラフィックチャネルで,音声情報とパケットデータ情報を伝送のための「組み合わせシステム」であるといえる。よって,引用発明は本願補正発明の「複数の伝送チャネル上へのパケットデータおよび低遅延データの伝送のために動作する組み合わせ無線通信システム」の構成を備えていることは明白である。 また,引用発明が,1つの基地局から各移動局へ信号を送信するものであるから,各移動局へ,パケットデータ情報を送信するためのパケットチャネルの組み合わせ,音声情報を送信するための音声通信用チャネルの組み合わせを有することは明白である。 ・引用発明の「パケット受信指示メッセージ」は本願補正発明の「メッセージ」に相当する。 そして,引用発明では,「パケット制御チャネル」上で通知される「パケット受信指示メッセージ」に含まれる「メッセージの宛先を示す移動局識別子」を基に移動局を識別し,該移動局がパケットデータを受信することは明らかである。してみると,「移動局」は本願補正発明のパケットデータの「目標受信者」に相当する。そうすると,引用発明の「パケット制御チャネル」は,「メッセージ伝送に割り当てられ,ここで各メッセージはパケットデータの目標受信者を識別する」構成を備えているといえ,前記パケット制御チャネルは前記構成を備える点において本願補正発明の「複数の伝送チャネル内のシグナリングチャネル」と共通する。 なお,引用発明において「パケット受信指示メッセージ1201」と「パケット受信指示メッセージ431」が同一の「パケット受信指示メッセージ」であることは,明らかである。 以上から,本願補正発明と引用発明は次の点で一致・相違する。 <一致点> 音声情報などの低遅延データとともにパケットデータ情報を送信するための、複数の伝送チャネル上へのパケットデータおよび低遅延データの伝送のために動作する組み合わせ無線通信システムであって、システムは、 複数の伝送チャネル内の第1のチャネル組み合わせと、なおこの第1のチャネル組み合わせは、パケットデータ伝送に対し割り当てられており、そしてパケットデータは伝送され、 複数の伝送チャネル内の第2のチャネル組み合わせと、なおこの第2のチャネル組み合わせは、低遅延データ伝送に対し割り当てられ、そして、 複数の伝送チャネル内のシグナリングチャネルとを含み、なおこのシグナリングチャネルは、メッセージ伝送に割り当てられ、ここで各メッセージはパケットデータの目標受信者を識別するシステム。 <相違点1> 本願補正発明も引用発明もともに「音声情報などの低遅延データとともにパケットデータ情報を送信する」点で一致するが,本願補正発明は「高速パケットデータ情報」であるのに対して,引用発明のパケットデータ情報が高速であるかが不明な点。 <相違点2> 本願補正発明では「パケットデータはフレーム内で伝送され」るのに対して,引用発明にはパケットデータの伝送を「フレーム内」とする記載がない点。 (2)判断 上記相違点について検討する。 ・<相違点1>について 通信において,パケットデータ情報を高速で伝送しようとすることは,引用例を示すまでもなく周知であるから,引用発明のパケットデータ情報を「高速パケットデータ情報」とすることは,当業者が適宜なし得る事項に過ぎない。 ・<相違点2>について 通信において,パケットデータの伝送をフレーム内で行うことは,引用例を示すまでもなく周知であるから,引用発明において「パケットデータはフレーム内で伝送され」るようにすることは,当業者が適宜なし得る事項に過ぎない。 そして,本願補正発明(平成21年7月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明)のように構成したことによる効果も,引用発明及び周知技術から予測できる程度のものである。 したがって,本願補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.まとめ 以上のとおりであるから,本願補正発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。 したがって,本件補正(平成21年7月29日付け手続補正)は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 上記のとおり,平成21年7月29日付けの手続補正は却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成20年6月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 複数の伝送チャネル上へのパケットデータおよび低遅延データの伝送のために動作する無線通信システムであって、システムは、 複数の伝送チャネル内の第1のチャネル組み合わせと、なおこの第1のチャネル組み合わせは、パケットデータ伝送に対し割り当てられており、そしてパケットデータはフレーム内で伝送され、 複数の伝送チャネル内の第2のチャネル組み合わせと、なおこの第2のチャネル組み合わせは、低遅延データ伝送に対し割り当てられ、そして、 複数の伝送チャネル内のシグナリングチャネルとを含み、なおこのシグナリングチャネルは、メッセージ伝送に割り当てられ、ここで各メッセージはパケットデータの目標受信者を識別するシステム。 第4 当審の判断 1.引用例及び引用発明 引用例及びその記載事項,並びに引用発明は,上記の第2 2.引用例 に記載したとおりである。 2.対比・判断 本願発明は,上記第2 補正却下の決定 で検討した本願補正発明から,本願発明に付された限定を省いたものである。 そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに,限定を付したものに相当する本願補正発明が,上記の第2 3.対比・判断 に記載したとおり,上記引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるのだから,本願発明も,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり,本願発明(平成20年6月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明)は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は,他の請求項について論及するまでもなく,拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-08-05 |
結審通知日 | 2011-08-09 |
審決日 | 2011-08-23 |
出願番号 | 特願2002-543799(P2002-543799) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 倉本 敦史 |
特許庁審判長 |
水野 恵雄 |
特許庁審判官 |
青木 健 近藤 聡 |
発明の名称 | 高レートパケットデータおよび低遅延データ伝送のための方法および装置 |
代理人 | 河野 直樹 |
代理人 | 砂川 克 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 白根 俊郎 |
代理人 | 堀内 美保子 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 河井 将次 |
代理人 | 野河 信久 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 風間 鉄也 |
代理人 | 佐藤 立志 |
代理人 | 山下 元 |
代理人 | 幸長 保次郎 |
代理人 | 岡田 貴志 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 市原 卓三 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 勝村 紘 |
代理人 | 竹内 将訓 |