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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1249706
審判番号 不服2010-5012  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-08 
確定日 2012-01-04 
事件の表示 特願2006- 99654「光通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月18日出願公開、特開2007-274534〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯と本願発明
1.手続の経緯
本願は、平成18年3月31日の出願であって、平成21年6月26日付けで手続補正がなされたものの、同年12月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年3月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項8に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年3月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その請求項8に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項8】
複数の子機局との間で光通信回線を介して所定の通信データを送受信する親機局にあって、前記子機局との間で実行されるユーザデータ等のデータのやり取りを制御するデータ制御手段、
この親機局側にあって、前記いずれかの子機局からユーザデータが無い状態である旨を示す登録抹消申請メッセージが送り込まれた場合に当該登録抹消申請メッセージを受信する登録抹消申請受信手段、
この受信した登録抹消申請メッセージに対応する前記子機局の登録を抹消する登録抹消手段、
前記登録抹消された子機局を除く他の子機局の数に対応して前記親機局ではその通信帯域の割り当てを設定する帯域割り当て設定手段、
をコンピュータに機能させるようにしたことを特徴とする光通信用制御プログラム。」

第2.引用発明
(A)原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-356893号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0008】
【発明の実施の形態】
この発明のPONシステムに係る実施の一形態について説明する。
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係るPONシステムについて図1および図2を参照して説明する。なお、図1は実施の形態1に係るIPパケット対応可能なPONシステムの構成を示す図であり、図2はこのPONシステムにおける上り帯域制御方法のシーケンスの概略を示す図である。
【0009】
実施の形態1に係るPONシステムは、OLT1、ONU2、1台のOLT1と複数のONU2を接続するスターカプラ3、接続する媒体である光ファイバ4を備えて構成される。
【0010】
OLT1は、電気信号を光信号に、また、光信号を電気信号に変換するO/E・E/O回路5、物理層を制御するPHYの回路6、OAM(Operation,Administration and Maintenance)パケットにより構成される下りフレーム信号を生成するOAMパケット/フレーム生成回路7、ONU2からのパケット信号を終端するIPパケット終端回路8、ONU2からのパケット信号の受信を検出する信号検出回路9、信号検出回路9からの信号を受けて受信したパケット信号中にユーザデータが含まれるか否かを検出するユーザデータ検出回路10、任意のONU2に対して下りOAMパケットの送信許可情報領域にONU2を特定する識別子を設定することでONU2に対して上りパケットの送信を許可する送信許可順次割り当て制御回路11、信号検出回路9でユーザデータ有りを検出したONU2の情報を一括管理し、送信許可順次割り当て
制御回路11と連携して上り方向の帯域を有効に使用する制御を実行するONU管理テーブル12を備えて構成される。
このONU管理テーブル12とその作用が本発明のPONシステムの特徴を成すものである。
【0011】
ONU2は、光信号を電気信号に、また、電気信号を光信号に変換するO/E・E/O回路13、OAMパケットにより構成される下りフレーム信号を終端するフレーム終端回路14、下りOAMパケットの送信許可情報領域に設定されているONU2を特定する識別子と自ONU2が保持する識別子とを比較する送信許可検出回路15、上りパケットの先頭に付加するオーバヘッドに関する情報であるOAMパケットのオーバヘッド情報を検出するオーバヘッド情報検出回路16、ONU外部から入力される上りIPパケット信号を蓄積するパケットバッファ17、パケット送信許可信号に従いパケット信号および上りOAMパケットにオーバヘッドを付加してヘッダ付き上りパケット信号を生成するパケット生成/送出回路18、UTP(Unshielded Twisted Pair)側の回線情報を監視するリンク検出回路19を備えて構成される。
【0012】
パケットバッファ17は、ONU2のブロックにおいてユーザデータの到着の有無をパケットバッファ17の使用量をモニタすることで制御される。また、バッファ使用量の情報は送信許可検出回路15に通知され、送信許可情報の一部としてパケット中に埋め込まれるものである。
【0013】
つぎに、実施の形態1のPONシステムにおける上り帯域制御方法について、図2を参照して説明する。図2はIPパケット対応可能なPONシステムにおける上り帯域制御方法のアルゴリズムの概略のシーケンスであって、同図でF1はOLT1に登録されている全てのONU2に対して順次、帯域を割り当てていくための送信許可信号であり、F2は各ONU2がF1の信号を検出し、自分宛の送信許可であることを確認した後、加入者から送られてきたデータがあった場合、OLT1に対して送られる上り方向のユーザデータであり、F3は各ONU2が送信許可を受けた際にデータの有無にかかわらず応答として返信するONU情報信号である。
【0014】
この発明のPONシステムの特徴は、上り領域の制御方式において空き帯域を有効的に利用するために2つのポーリングシステムを具備することにある。この空き帯域は、ユーザデータ検出回路10により信号検出回路9から受信したパケット信号中にユーザデータが含まれるか否かの検出結果に基づいて行われる。
【0015】
図2中のF4は第一のポーリングシステムであって、OLT1に登録されているすべてのONU2に対して順番にF1の信号を送ることにより、送るデータのあるONU2はF2+F3の信号を返信し、また送るデータのないONU2はF3のみを返信する基本ポーリングシーケンスである。登録ONU2に対して平等なシーケンスである。
【0016】
また、図2中のF5は第二のポーリングシーケンスであって、F4の基本ポーリングシーケンスで更新したONU情報に基づいて、ユーザデータ有りONU2にのみ優先的に送信権を与える帯域アップシーケンスである。
【0017】
例えば、F4の基本ポーリングシーケンスにおいて、ONU(1)からONU(32)まで、順次、送信許可信号(F1)が送信され、受信したONU(1)?(32)から順次、応答があるとすると、ONU(1)は上りデータ(F2)があるのでこれを送り、さらにONU情報信号(F3)を送る。つぎにONU(2)は上りデータがないのでONU情報信号(F3)だけを送る。つぎにONU(3)は上りデータ(F2)があるのでこれを送り、さらにONU情報信号(F3)を送る。
【0018】
このシーケンスをONU(32)まで行った後、つぎのF5の帯域アップシーケンスでは、上りデータのあるONU2(この場合はONU(3)だけ)に対して、順次、送信許可信号(F1)を送り、そのONU2からのデータを受信することになる。そして、F4の基本ポーリングシーケンスとF5の帯域アップシーケンスを繰り返すことになる。
【0019】
F4の基本ポーリングシーケンスのみで帯域制御を実施した場合、ONU2の上りユーザデータが常時均等にある場合は有効に機能するが、実際にはトラヒック自体はランダムであり、且つ、ONU2の状態(例えば、電源断、ケーブル未接続等)は種々あるため、全ての登録されているONU2に対して、順次送信許可信号を送り、その応答を得ることは帯域的にロスのあるものであった。この実施の形態1によると、上り方向への送信データが無い、或いは送る準備のないONU2に対してOLT1からの送信許可信号を抑制することで、それに対応する帯域を他のユーザデータ有りのONU2に割り当てることが可能となり、帯域を有効に使用することが可能となる。」(第3頁第28行目?第5頁第14行目)

ロ.「【0029】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係るPONシステムについて図1および図2を参照して説明する。この実施の形態3は、ユーザデータの有無をUTP側の回線情報を使用することによって実現できるものである。なお、PONシステムの構成とそれら構成要素の動作は実施の形態1で説明したことと同様であり、省略する。
【0030】
図1に示すように、リンク検出回路19を備えた加入者との接続状況(例えばケーブル未接続、断線等)を、送信許可検出回路15に通知し、ONU情報パケット上にマッピングすることによってその情報をOLT1に通知する。例えば、UTPケーブルが未接続の場合、その情報を通知するタイミングは図2に示すF3のパケット上で示し、ONU2が登録状態であること、OLT1はONU2のUTP側の回線状況が未接続であることをONU管理テーブル12に追加し、帯域アップシーケンス時にはそのONU2を対象から除外すものである。これにより、省かれた帯域を他のONU2に割り当てることができる。」(第6頁第28?41行目)

ここで、上記摘記事項イ.によれば、引用例には、複数のONUとの間で光ファイバを介して所定の通信データを送受信するOLTが開示されていると認められる。
また、上記摘記事項ロ.段落【0030】を参照すると、引用例のOLTは、いずれかのONUからUTPケーブルが未接続との情報がマッピングされたONU情報パケットを受信する手段を有しているが、上記摘記事項ロ.段落【0029】に「ユーザデータの有無をUTP側の回線情報を使用することによって実現できる」と記載されていることから、「UTPケーブルが未接続との情報」は「ユーザデータが無い状態である旨」を意味していると認められ、したがって、引用例のOLTは、いずれかのONUからユーザデータが無い状態である旨を示すONU情報パケットを受信する手段を有しており、そして、このような受信する手段は「受信手段」と称することができる。
また、上記摘記事項ロ.段落【0030】を参照すると、引用例のOLTは、受信したONU情報パケットに対応するONUのユーザデータが無い状態である旨をONU管理テーブルに追加する手段を有していると認められ、そして、このような追加する手段は「追加手段」と称することができる。
また、上記摘記事項ロ.段落【0030】に「そのONU2を対象から除外するものである。これにより、省かれた帯域を他のONU2に割り当てることができる。」と記載されていることから、引用例OLTは、ユーザデータが無い状態である旨をONU管理テーブルに追加されたONUの帯域を他のONUに割り当てる手段を有していると認められ、そして、このような割り当てる手段は「割当手段」と称することができる。

したがって、上記の摘記事項、及びこの分野の技術常識より、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「複数のONUとの間で光ファイバを介して所定のデータを送受信するOLTにあって、
このOLTにあって、前記いずれかのONUからユーザーデータが無い状態である旨を示すONU情報パケットを受信する受信手段、
この受信したONU情報パケットに対応する前記ONUのユーザデータが無い状態である旨をONU管理テーブルに追加する追加手段、
前記ユーザデータが無い状態である旨をONU管理テーブルに追加されたONUの帯域を他のONUに割り当てる割当手段、
を備えるOLT。」

(B)また、特開2004-356892号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに以下の事項(イ.)が記載されており、また、特開2004-214758号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面とともに以下の事項(ロ.)が開示されており、また、国際公開第2004/062197号には、図面とともに以下の事項(ハ.?ニ.)が開示されている。

イ.「【0045】
まず、すでに親局装置101に登録済みの子局装置106から電源断通知が親局装置101に送信され(ステップST501)、前述したように親局装置101の制御部109は、子局自動登録情報DB114に登録されている子局装置106の登録情報をT1時間保持する。T1時間を保持している間は、他の子局装置105,107の登録を行うことも可能である(ステップST502?ステップST505)。
【0046】
つぎに、T1時間が経過しても子局装置106から電源回復通知が親局装置101に送信されなければ(本来、ステップST506において通知がなされる)、制御部109に格納されている子局装置106の登録情報を削除する。親局装置101は、子局装置106から電源回復通知が送信されないので、親局装置101から子局装置にシリアル番号の問い合わせは行わない。親局装置101は、電源断になっている子局装置106から電源回復通知が送信された後、実施の形態1で説明した手順に従い、自動登録を開始する。移設時等についても同様である。従って、無駄なポーリングを抑止し、PONの使用帯域を抑えることができる。」(周知例1、第9頁第12?26行目)

ロ.「【0027】
マルチキャストグループが登録されているにもかかわらず、OLTからのIGMPクエリーメッセージに応答しないマルチキャストグループがある場合には、OLT-PON処理部(#1)4aおよびOLT-PON処理部(#2)4b(転送部2が行ってもよい)では図2のマルチキャスト用FDB30から該当するMACアドレス20のエントリを削除し、ONU-ID検索テーブル34から該当するONU-IDのエントリを削除すると共に、OLT暗号キー検索テーブル35から該当するONU-IDのエントリを削除する。該当するONUではONU暗号キー検索テーブル43から該当するONU-IDのエントリを削除する。」(周知例2、第9頁第16?24行目)

ハ.「図9(f)(g)(h)は、親機11が子機IDを開放し、その後子機12が参入してきた場合の例である。親機11が子機IDを開放する場合としては、親機11が、ユーザからの指示で子機12との通信を終了する場合や、子機12との通信が一定時間以上途切れることによりその子機12との通信を終了する場合が挙げられ、子機12が、ユーザからの指示で親機11との通信を終了する場合や、子機IDを破棄して再接続するなどのために、アンバインドパケットを親機11に送信する場合が挙げられる。」(周知例3、第17頁第19?24行目)

ニ.「さらに、本発明に係る親機の通信制御方法は、上記の方法において、上記通信ステップは、或る子機との通信が不要または不能となった場合には、該子機に付与した子機IDを上記子機管理リストから削除する方法である。
ところで、親機が子機の情報を所定期間送信していない場合や、親機が子機からの情報を所定期間受信していない場合には、親機と子機との間の通信が不要または不能となったと考えられる。そこで、上記の方法によると、親機と子機との間の通信が不要または不能となった子機IDを子機管理リストから削除することにより、子機管理リストにおけるリソースの無駄を防止することができる。特に、ポーリングを行う場合には、前記子機IDのポーリングを省略できるから、ポーリングを効率的に行うことができる。」(周知例3、第23頁第5?13行目)

ここで、周知例1の「親局装置」、周知例2の「OLT」、周知例3の「親機」は、いずれも「親機局」と呼べるものであり、また、周知例1の「子局装置」、周知例2の「ONU」、周知例3の「子機」は、いずれも「子機局」と呼べるものである。
また、周知例1において子機局の電源が断になっている状態、周知例2において応答がない状態、周知例3において親機局との通信を終わらせた状態とは、いずれも「子機局からのユーザデータがない状態」であると認められる。
また、周知例1において子機局の登録情報を削除すること、周知例2においてONU-IDのエントリを削除すること、周知例3において子機IDを子機管理リストから削除することは、いずれも、子機局の登録を抹消することであるといえる。
したがって、例えば周知例1?3に開示されるように、「親機局と子機局との間で通信をするものにおいて、子機局からのユーザデータがない状態である場合には、親機局では対応する子機局の登録を抹消すること」は周知事項(以下、「周知事項1」という。)である。

(C)また、特開2002-223225号公報(以下、「周知例4」という。)には、図面とともに以下の事項(ホ.?ヘ.)が記載されており、また、特開2004-7178号公報(以下、「周知例5」という。)には、図面とともに以下の事項(ト.)が開示されている。

ホ.「【0031】本発明の第12の実施態様によれば、コンピュータを、パッシブ光ネットワークシステムを構成する、パッシブ光ネットワーク(PON)に接続された光加入者線終端装置及び光伝送路終端装置としてそれぞれ機能させるプログラムが提供される。」(周知例4、第7頁第12欄第22?26行目)

ヘ.「【0036】OLT10やONT20は、上記通信を実現可能なコンピュータであり、これを目的として作成された専用装置の他、パーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実現することも可能である。このコンピュータの構成については、後で図4を参照して詳細に説明する。」(周知例4、第8頁第13欄第25?30行目)

ト.「【請求項1】
1台の局装置と、光カップラを介して該局装置に接続される複数台の加入者端末を有するPONシステムにおける動的帯域割り当て制御方法であって、
各加入者端末に、最低限の帯域を保障する最低限保障帯域を割り当てるステップと、
加入者端末から、上り方向セルバッファの蓄積セル数が該上り方向セルバッファの容量オーバーが起こり得るセル数の閾値を越えたFULL状態の発生または前記上り方向セルバッファの蓄積セル数が容量オーバーとなる閾値を越えたBOF状態の発生による帯域増加要求を受信するたびに、当該加入者端末に未使用帯域の追加割り当てを行う段階的帯域割り当てステップを有する動的帯域割り当て制御方法。
・・・(中略)・・・
【請求項7】
PONシステムを構成する局装置において、
各加入者端末に、最低限の帯域を保障する最低限保障帯域を割り当て、加入者端末から、上り方向セルバッファの蓄積セル数が該上り方向セルバッファの容量オーバーが起こり得るセル数の閾値を越えたFULL状態の発生または前記上り方向セルバッファの蓄積セル数が容量オーバー発生の閾値を越えたBOF状態の発生による帯域増加要求を受信するたびに、当該加入者端末に未使用帯域の追加割り当てを行う帯域制御手段を有することを特徴とする局装置。
・・・(中略)・・・
【請求項12】
請求項1から5のいずれか1項に記載の動的帯域割り当て制御方法をコンピュータに実行させるための動的帯域割り当て制御プログラム。」(周知例5、第2頁第2行目?第3頁第47行目)

ここで、周知例4の「光伝送路終端装置」及び「OLT」、周知例の5の「局装置」は、いずれも「親機局」とよべるものである。
また、周知例4及び周知例5の親機局は、親機局としての各機能を実施するための各手段を当然に有していると認められる。
また、周知例4及び周知例5の「プログラム」は、パッシブ光ネットワークの親機の通信を制御するためのものであるから、「光通信制御用プログラム」であるといえる。
したがって、例えば周知例4、5に開示されるように、「親機局の各手段を光通信用制御プログラムによってコンピュータに機能させるようにすること」は周知事項(以下、「周知事項2」という。)である。

第3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(a)引用発明の「OLT」、「ONU」、及び「光ファイバ」は、それぞれ本願発明の「親機局」、「子機局」、及び「光通信回線」に相当する。
(b)引用発明において、親機局におけるONU情報パケットの受信は、ONU情報パケットが、子機局から親機局に送り込まれた場合に行われることは自明であり、
また、引用発明の「ONU情報パケット」は何らかの情報を含むメッセージ信号といえるから、引用発明の「ONU情報パケット」と、本願発明の「登録抹消申請メッセージ」とは、少なくとも「メッセージ」である点で一致し、
また、引用発明の「受信手段」と、本願発明の「登録抹消申請受信手段」とは、少なくとも「受信手段」である点で一致し、
したがって、引用発明の「前記いずれかのONUからユーザーデータが無い状態である旨を示すONU情報パケットを受信する受信手段」と、本願発明の「前記いずれかの子機局からユーザデータが無い状態である旨を示す登録抹消申請メッセージが送り込まれた場合に当該登録抹消申請メッセージを受信する登録抹消申請受信手段」とは、少なくとも「前記いずれかの子機局からユーザデータが無い状態である旨を示すメッセージが送り込まれた場合に当該メッセージを受信する受信手段」という点で一致する。
(c)引用発明の「前記ユーザデータが無い状態である旨をONU管理テーブルに追加されたONU」も、本願発明の「前記登録抹消された子機局」も、子機局から親機局への前記メッセージを送った子機局を指し示している点で共通しており、
また、引用発明の「ONUの帯域を他のONUに割り当てる」ことは、「他の子機局の数に対応して通信帯域の割り当てを設定する」ことと技術的に同義であり、
また、引用発明の「割当手段」は、通信帯域の割り当てを設定するわけであるから「帯域割り当て設定手段」とよべるものであり、
したがって、引用発明の「前記ユーザデータが無い状態である旨をONU管理テーブルに追加されたONUの帯域を他のONUに割り当てる割当手段」と、本願発明の「前記登録抹消された子機局を除く他の子機局の数に対応して前記親機局ではその通信帯域の割り当てを設定する帯域割り当て設定手段」とは、「前記メッセージを送った子機局を除く他の子機局の数に対応して前記親機局ではその通信帯域の割り当てを設定する帯域割り当て設定手段」という点で一致する。
(d)本願発明は「光通信用制御プログラム」との物の発明であるが、「光通信用制御プログラム」を実行することによって親機局としての各手段が実現されるものであるから、「光通信用制御プログラム」は、親機局としての各手段「を実現する物」の発明であるといえる。一方、引用発明の親機局も、親機局としての各手段を備えていることから、結局のところ、各手段「を実現する物」であるといえる。したがって、引用発明と本願発明とは、各手段「を実現する物」の発明であるという点で共通している。

よって、両者は以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
「複数の子機局との間で光通信回線を介して所定の通信データを送受信する親機局にあって、
この親機局側にあって、前記いずれかの子機局からユーザデータが無い状態である旨を示すメッセージが送り込まれた場合に当該メッセージを受信する受信手段、
前記メッセージを送った子機局を除く他の子機局の数に対応して前記親機局ではその通信帯域の割り当てを設定する帯域割り当て設定手段、
を実現する物。」

(相違点1)
本願発明は「前記子機局との間で実行されるユーザデータ等のデータのやり取りを制御するデータ制御手段」を有するのに対して、引用発明にはそのようなデータ制御手段が明記されていない点。
(相違点2)
「メッセージ」について、本願発明は「登録抹消申請メッセージ」であるのに対して、引用発明はONU情報パケットである点。
(相違点3)
「受信手段」について、本願発明は「登録抹消申請受信手段」であるのに対して、引用発明は単に受信手段である点。
(相違点4)
本願発明は「この受信した登録抹消申請メッセージに対応する前記子機局の登録を抹消する登録抹消手段」を有するのに対して、引用発明はそのような登録抹消手段は有さない点。
(相違点5)
「通信帯域の割り当てを設定する帯域割り当て設定手段」に関して、本願発明では「登録抹消された子機局を除く」他の子機局の通信帯域の割り当てを設定するのに対して、引用発明ではそのような登録抹消された子機局を除く子機局を対象としていない点。
(相違点6)
各手段を「実現する物」について、本願発明は、親機局における各手段を「コンピュータに機能させるようにした」「光通信用制御プログラム」によって実現しているのに対して、引用発明は、各手段を備える親機局そのものによって実現しており、各手段をコンピュータに機能させるようにしたプログラムについては記載がない点。

第4.当審の判断
まず、相違点1について検討する。
引用発明は親機局と子機局との間でユーザデータ等のデータをやり取りするものであるから、当然、そのようなデータのやり取りを制御するための手段を有していると認められ、また、そのような手段を「データ制御手段」と称することは任意である。したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。
次に、相違点2?4について検討する。
「親機局と子機局との間で通信をするものにおいて、子機局からのデータがない場合には、親機局では対応する子機局の登録を抹消すること」は、周知事項1として示したとおり周知事項であるから、当該周知事項を考慮すれば、引用発明において、登録抹消手段を設け、ユーザデータが無い状態である子機局の登録を抹消する構成を得ることは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、その場合、「メッセージ」は子機局の登録を抹消するために送り込まれるものであるから「登録抹消申請メッセージ」と称することができるものであり、また、当該メッセージを受信する「受信手段」は「登録抹消申請受信手段」と称することができるものである。
次に、相違点5について検討する。
引用発明において、ユーザデータが無い状態である子機局の登録を抹消する構成を採用する場合、「前記ユーザデータが無い状態である旨をONU管理テーブルに追加されたONU」は、「登録抹消された子機局」と同義のものであるから、結局のところ、通信帯域の割り当ては、「登録抹消された子機局を除く」他の子機局を対象に行っているといえる。したがって、相違点5は格別の相違点ではない。
最後に、相違点6について検討する。
「親機局の各手段を光通信制御用プログラムによってコンピュータに機能させるようにすること」は、上記周知事項2として示したように周知事項であるから、当該周知事項を考慮すれば、引用発明における親機局の各手段を、プログラムによってコンピュータに機能させるよう構成することは当業者が容易になし得たものである。

そして、本願発明が奏する効果も引用発明、及び周知事項から容易に予測出来る範囲内のものである。

第5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-26 
結審通知日 2011-11-01 
審決日 2011-11-16 
出願番号 特願2006-99654(P2006-99654)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中木 努  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 新川 圭二
宮田 繁仁
発明の名称 光通信システム  
代理人 高橋 勇  

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