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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) A61M
管理番号 1249735
判定請求番号 判定2011-600030  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2012-02-24 
種別 判定 
判定請求日 2011-07-05 
確定日 2011-12-22 
事件の表示 上記当事者間の特許第3594032号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 甲第2号証の1に示される「旭ホローファイバー人工腎臓APS ポリスルホンダイアライザー APS-15EL」は、特許第3594032号の技術的範囲に属しない。 
理由 第1.請求の趣旨・手続の経緯
本件判定の請求は、平成23年7月5日になされたものであり、同年8月1日付け(発送日 同年8月3日)の請求人への審尋に対して、同年8月12日付けで回答書が提出され、同年8月17日付け(発送日 同年8月19日)で被請求人に判定請求書副本及び回答書副本を送達するとともに、期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたところ、同年9月20日付けで答弁書が提出され、同年10月17日付け(発送日 同年10月19日)で請求人に答弁書の副本を送達するとともに、期間を指定して弁駁書を提出する機会を与えたところ、同年11月17日付けで弁駁書が提出されたものである。

そして、本件判定請求の趣旨は、判定請求書及び当審の審尋に対する請求人の回答書の記載からみて、「甲第2号証の1に示される『旭ホローファイバー人工腎臓APS ポリスルホンダイアライザー APS-15EL』(以下、「イ号物品」という。)は、特許第3594032号の技術的範囲に属する」との判定を求めるものである。

第2.本件特許発明
本件特許3594032号の請求項1?5に係る発明(以下、「本件特許発明1?5」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
なお、本件特許発明1については、便宜上判定請求書における分説に従って示す。

「【請求項1】
(I)親水性高分子を含有するポリスルホン系疎水性高分子中空糸膜において、
(II)該親水性高分子の中空糸膜よりの溶出が10ppm以下であり、かつ
(III)該親水性高分子の中空糸膜の外表面における存在割合が25?50質量%であり、
(IV)膜厚が10?50μmであり、
(V)外表面の開孔率が8?25%であり、
(VI)中空糸膜の偏肉度が0.6以上であり、さらに
(VII)バースト圧が0.5MPa以上、2.0MPa未満であって、しかも
(VIII)血液接触面に緻密層を有する中空糸膜よりなる血液浄化器であり、
(IX)該血液浄化器の透水率が150ml/m^(2)/hr/mmHg以上、2000ml/m^(2)/hr/mmHg以下である
(X)ことを特徴とする高透水性中空糸膜型血液浄化器。
【請求項2】
前記中空糸膜外表面における平均孔面積が0.3?1.0μm^(2)であることを特徴とする請求項1に記載の高透水性中空糸型血液浄化器。
【請求項3】
前記疎水性高分子に対する親水性高分子の質量割合が1?20質量%であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の高透水性中空糸膜型血液浄化器。
【請求項4】
前記親水性高分子がポリビニルピロリドンであることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の高透水性中空糸膜型血液浄化器。
【請求項5】
前記親水性高分子は架橋され水に不溶化していることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の高透水性中空糸膜型血液浄化器。」

第3.当事者の主張
1.請求人の主張の概要
(1)イ号物品の構成及び本件特許発明1とイ号物品の対比について
請求人は、イ号物品の分析データが記載された甲第3号証を提出しており、甲第3号証の記載内容からみて、請求人はイ号物品の構成を次のとおりのものであると主張していると認められる。
「親水性高分子を含有するポリスルホン系疎水性高分子中空糸膜において、
該親水性高分子の中空糸膜よりの溶出が8ppmであり、かつ
該親水性高分子の中空糸膜の外表面における存在割合が45%であり、
膜厚が45μmであり、
外表面の開孔率が23%であり、
中空糸膜の偏肉度が0.8であり、さらに
バースト圧が0.6MPaであって、しかも
血液接触面に緻密層を有する中空糸膜よりなる血液浄化器であり、
該血液浄化器の透水率が210ml/m^(2)/hr/mmHgである
ことを特徴とする高透水性中空糸膜型血液浄化器。」

そして、請求人は「イ号物品は、本件特許発明の構成要件(I)?(X)を全て満足するので、本件特許発明の技術的範囲に属する。」(判定請求書第14頁第15?16行)と主張している。

(2)イ号物品の「外表面の開孔率」について
請求人は、イ号物品の中空糸膜における「外表面の開孔率」について、甲第3号証を提出し、請求人自身の分析データでは23%であると主張している。
また、第三者機関の分析データとして甲第4、9及び10号証を提出し、「これらの結果を総合すれば、イ号品である「APS-15EL ロット番号 00161E」の表面開孔率は、いずれの分析結果から見ても、本件特許発明の要件である「8?25%」を十分に満足しているとの結論を導くことができる。」(判定請求書第10頁第1?3行)と主張している。

2.被請求人の主張の概要
(1)本件特許発明1とイ号物品の対比について
被請求人は、「甲第3号証は,実質的には請求人の主張を記載したものに過ぎず,データとしての客観性を欠いている上に,その分析方法や条件等すら明らかにされていないものであるから,甲第3号証をもって上記各構成要件の充足性が立証されたなどとは到底言えない。」(答弁書第3頁第7?10行)と主張している。
また、被請求人は、「イ号製品が本件特許発明の構成要件(V)を充足せず,また請求人はイ号製品が構成要件(II),(III),(V),(VI),(VII),(VIII),及び(IX)を充足することについて何ら立証をしていないことから,イ号製品は,特許第3594032号の請求項1にかかる発明(本件特許発明)の技術的範囲に属しない。」(答弁書第25頁第27行?第26頁第2行)と主張している。

(2)イ号物品の「外表面の開孔率」について
被請求人は、甲第4、9及び10号証の分析データについて、「甲第4,9及び10号証に添付された孔識別前後の画像を見ると,孔の識別に一貫性を欠く箇所が複数認められる。」(答弁書第19頁第18?19行)、「甲第4,9号証及び10号証の測定方法が「外表面の開孔率」の測定方法として誤っている」(答弁書第22頁第2?3行)と主張している。
また、被請求人は、イ号物品の中空糸膜における「外表面の開孔率」について、第三者機関の分析データとして乙第4号証を提出し、「このように,イ号製品における「外表面の開孔率」は,優に25%を越えている。」(答弁書第25頁第21?22行)と主張している。

第4.当審の判断
イ号物品の構成について、及び、イ号物品の構成が本件特許発明1の構成要件を充足するか否かについて、請求人提出の、イ号物品が掲載されている被請求人発行の広告リーフレットである甲第2号証の1、イ号物品に添付された文書である甲第2号証の2、並びに、イ号物品の分析データが記載された甲第3、4、9及び10号証の記載に基づき、検討する。

1.構成要件(I)、(IV)、(VIII)及び(X)について
(1)甲第2号証の1の記載について
甲第2号証の1の第2頁「仕様」の項には、イ号物品のホローファイバーが、材質がポリスルホンであり、膜厚が45μmであることが記載されている。

(2)甲第2号証の2の記載及び甲第3号証のG欄の記載について
甲第2号証の2の第1頁左欄「ダイアライザーの外観図」の図示内容からみて、イ号物品の中空糸膜は、内腔側の面が血液接触面となるものといえる。
また、甲第3号証のG欄のSEM像によれば、イ号物品の中空糸膜の内腔側の面に緻密層が形成されているといえる。
よって、甲第2号証の2の記載及び甲第3号証のG欄の記載を参酌すると、イ号物品は、血液接触面に緻密層を有する中空糸膜よりなる血液浄化器であるといえる。

(3)構成要件(I)、(IV)、(VIII)及び(X)に対応するイ号物品の構成について
上記(1)及び(2)から、イ号物品は、本件特許発明1の構成要件(I)、(IV)、(VIII)及び(X)に対応する以下の構成を備えているといえる。
「(I’)親水性高分子を含有するポリスルホン系疎水性高分子中空糸膜において、
(IV’)膜厚が45μmであり
(VIII’)血液接触面に緻密層を有する中空糸膜よりなる血液浄化器である
(X’)高透水性中空糸膜型血液浄化器。」

(4)構成要件(I)、(IV)、(VIII)及び(X)についてのまとめ
イ号物品の構成(I’)、(IV’)、(VIII’)及び(X’)は、本件特許発明1の構成要件(I)、(IV)、(VIII)及び(X)をそれぞれ充足する。
なお、イ号物品が構成(I’)、(IV’)及び(X’)を備えること、並びに、イ号物品の構成(I’)、(IV’)及び(X’)が本件特許発明1の構成要件(I)、(IV)及び(X)をそれぞれ充足することについては、当事者間に争いがないものと認められる。

2.構成要件(V)について
(1)「外表面の開孔率」について
イ号物品の中空糸膜が、所定の範囲の「外表面の開孔率」をもって特定できるものであることは、当事者間に争いがないものと認められるが、その数値が「8?25%」であるか否かについては争いがある。
そして、上記当事者間の争いは、「外表面の開孔率」がどのように測定されるものであるかに起因すると認められるので、まず、本件特許明細書における「外表面の開孔率」及び「外表面の開孔率」の測定方法に関する記載についてみる。

(1-1)本件特許明細書の記載
本件特許明細書には、以下の事項が記載されている。
(ア)「上記したもう一つの課題である中空糸膜同士の固着を回避する方法としては、膜の外表面の開孔率を25%以上にする方法が開示されている。(例えば、特許文献5参照)。確かに、該方法は固着を回避する方法としては好ましい方法であるが、開孔率が高いために膜強度が低くなり前記した血液リークの課題につながるという問題を有している。また、膜の外表面の開孔率や孔面積を特定値化した方法が開示されている。(例えば、特許文献6参照)。該方法は透水率が低いという課題を有している。」(段落【0008】)
(イ)「また、本発明においては、請求項1に記載のごとく、中空糸膜外表面の開孔率が8?25%であることや、中空糸膜外表面における開孔部の平均孔面積が0.3?1.0μm^(2)であることが前記した特性を付与するために有効であり、好ましい実施態様である。開孔率が8%未満や平均孔面積は0.3μm^(2)の場合には、透水率が低下する可能性がある。そのため、開孔率は9%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましい。平均孔面積は0.4μm^(2)がより好ましく、0.5μm^(2)がさらに好ましく、0.6μm^(2)がよりさらに好ましい。また、膜を乾燥させた時に膜外表面に存在する親水性高分子が介在し中空糸膜同士が固着し、モジュール組み立て性が悪化する等の課題を引き起こす。逆に開孔率が25%を超えたり、平均孔面積が1.0μm^(2)を超える場合には、バースト圧が低下することがある。そのため、開孔率は23%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましく、17%以下がよりさらに好ましく、特に好ましくは15%以下である。平均孔面積は0.95μm^(2)以下がより好ましく、0.90μm^(2)以下がさらに好ましい。」(段落【0035】)
(ウ)「8.中空糸膜外表面の開孔率
中空糸膜外表面を10,000倍の電子顕微鏡で観察し写真(SEM写真)を撮影する。その画像を画像解析処理ソフトで処理して中空糸膜外表面の開孔率を求めた。画像解析処理ソフトは、例えばImage Pro Plus(Media Cybernetics,Inc.)を使用して測定する。取り込んだ画像を孔部と閉塞部が識別されるように強調・フィルタ操作を実施する。その後、孔部をカウントし、孔内部に下層のポリマー鎖が見て取れる場合には孔を結合して一孔とみなしてカウントする。測定範囲の面積(A)、および測定範囲内の孔の面積の累計(B)を求めて開孔率(%)=B/A×100で求めた。これを10視野実施してその平均を求めた。初期操作としてスケール設定を実施するものとし、また、カウント時には測定範囲境界上の孔は除外しないものとする。」(段落【0048】)

(1-2)「外表面の開孔率」を所定範囲とすることの技術的意義について
上記摘記事項(ウ)の記載事項からみて、本件特許発明における「外表面の開孔率」は、「外表面の開孔」の面積の累計と、外表面の面積の比を表すものであって、上記摘記事項(ア)及び(イ)の記載事項からみて、「外表面の開孔率」を所定範囲とすることの技術的意義は、中空糸膜同士の固着を回避し、かつ、バースト圧が低下しないようにすることと解される。

(1-3)「外表面の開孔率」の測定方法について
本件特許明細書には、「外表面の開孔率」の測定方法として、上記摘記事項(ウ)のとおりの、複数の工程を備えた測定方法が記載されているところ、これらの工程のうち、「その後、孔部をカウントし、孔内部に下層のポリマー鎖が見て取れる場合には孔を結合して一孔とみなしてカウントする。」工程は、その前に行われる「取り込んだ画像を孔部と閉塞部が識別されるように強調・フィルタ操作を実施する。」工程において、「外表面の開孔」の中に「輪郭の少なくとも一部が下層のポリマー鎖によって形成される孔」が観察される構造のものについて、本来の「外表面の開孔」が認識されず「輪郭の少なくとも一部が下層のポリマー鎖によって形成される孔」だけが認識されてしまった場合に、「輪郭の少なくとも一部が下層のポリマー鎖によって形成される孔」と下層のポリマー鎖とを結合した領域を一孔とみなし、本来の「外表面の開孔」が認識されるようにするための工程と解される。
そして、このような理解は、請求人の「本来の「孔」の下に下層のポリマー鎖が見られる場合には下層のポリマー鎖上の孔をカウントするのではなく、本来の孔部をカウントするために結合させて「一孔とみなす」操作を含めて「孔部」と表現している。・・・ここで「二値化処理」とは、孔部と閉塞部が示す濃淡のある画像を、閾値を設定して白と黒の二階調に変換させて孔部と閉塞部を分ける操作であるが、この時点で、上記に示した下層の孔だけを拾ってしまっているような場合は、4(注:原文では○の中に4)に示したような「一孔とみなしてカウント」する操作が行われる。」(判定請求書第13頁第38行?第14頁第9行)との見解、及び、「「3」(注:答弁書第13頁【表2】の3欄を指す)はそもそも本件特許明細書の段落(0048)において、まず開孔の存在を認定し、次にこの開孔の内部に下層のポリマー鎖が見て取れる場合には孔を結合して一孔とみなしカウントする、という解析手法の対象となるような典型的SEM像である。」(弁駁書第12頁第15?18行)との見解とも合致する。

(2)甲第3号証に記載された分析データについて
上記(1)で検討した事項を踏まえ、甲第3号証に記載された分析データについて検討する。
甲第3号証は、イ号物品の中空糸膜における「外表面の開孔率」は23%であるとするものであるが、甲第3号証のD欄に記載された分析データが、本件特許明細書に記載された「外表面の開孔率」の測定方法に従って測定されたものであるのか否かが不明である。
よって、イ号物品の中空糸膜における「外表面の開孔率」が、甲第3号証から23%であるとはいえない。
したがって、甲第3号証から、イ号物品の中空糸膜における「外表面の開孔率」が8?25%であるとはいえない。

(3)甲第4、9及び10号証に記載された分析データについて
次に、上記(1)で検討した事項を踏まえ、甲第4、9及び10号証に記載された分析データについて検討する。

(3-1)甲第4号証に記載された分析データについて
甲第4号証は、イ号物品の中空糸膜における「外表面の開孔率」は18.64%であるとするものである。
これについて検討すると、甲第4号証の「添付資料2-1 中空糸膜外表面の開孔率」に示される「図1-3と同視野」の画像、及び、これと同じ画像に基づくものと認められる甲第5号証に示される「図1-3と同視野」の画像についてみると、「外表面の開孔」の中に「輪郭の少なくとも一部が下層のポリマー鎖によって形成される孔」が観察される構造のものについて、本来の「外表面の開孔」全体が赤く色付けされたものと、「輪郭の少なくとも一部が下層のポリマー鎖によって形成される孔」だけが赤く色付けされたものとの両者が混在している様子が見て取れる(例えば、甲第5号証「図1-3と同視野」の写真において、矢印Aで示されるものが前者であり、矢印Bで示されるものが後者である。)。
そして、前者については、「取り込んだ画像を孔部と閉塞部が識別されるように強調・フィルタ操作を実施する。」工程において、本来の「外表面の開孔」を認識することができたか、又は、当該工程においては、本来の「外表面の開孔」が認識されず「輪郭の少なくとも一部が下層のポリマー鎖によって形成される孔」だけが認識されてしまったものについて、「その後、孔部をカウントし、孔内部に下層のポリマー鎖が見て取れる場合には孔を結合して一孔とみなしてカウントする。」工程が行われたもの、と解されるのに対し、後者については、「その後、孔部をカウントし、孔内部に下層のポリマー鎖が見て取れる場合には孔を結合して一孔とみなしてカウントする。」工程が行われていないと解される。
そうすると、甲第4号証に記載された分析データは、その測定において「外表面の開孔」の認識に一貫性がないといわざるを得ず、また、本来の「外表面の開孔」が認識されず「輪郭の少なくとも一部が下層のポリマー鎖によって形成される孔」だけが認識されてしまったものであって、「輪郭の少なくとも一部が下層のポリマー鎖によって形成される孔」だけが赤く色付けされたものについては、本件特許明細書に記載されたとおりに処理されていないといわざるを得ない。
よって、イ号物品の中空糸膜における「外表面の開孔率」が、甲第4号証から18.64%であるとはいえない。

(3-2)甲第9及び10号証に記載された分析データについて
甲第9号証は、イ号物品の中空糸膜における「外表面の開孔率」は18.6%であるとするものであり、甲第10号証は、イ号物品の中空糸膜における「外表面の開孔率」は18.2%であるとするものであるが、甲第9号証の画像及び甲第10号証の画像についてみても、「外表面の開孔」の中に「輪郭の少なくとも一部が下層のポリマー鎖によって形成される孔」が観察される構造のものについて、本来の「外表面の開孔」全体が緑に色付け又は白抜きされたものと、「輪郭の少なくとも一部が下層のポリマー鎖によって形成される孔」だけが緑に色付け又は白抜きされたものとの両者が混在している様子が見て取れる(答弁書第21頁、第22頁の図参照)。
よって、イ号物品の中空糸膜における「外表面の開孔率」が、甲第9号証から18.6%、甲第10号証から約18.2%であるとはいえない。

(3-3)甲第4、9及び10号証に記載された分析データに関する請求人の主張について
請求人は、甲第4、9及び10号証に記載された分析データの妥当性について、「分析対象とした10,000本に及ぶ膨大な数の中空糸膜の一つ一つを見れば、製造条件の「場」としての均質性が常に担保されている訳ではないから、そのような実情から受ける多様性・複雑性を内包する限り、ある程度の相違が生ずるのは当然のことである。その上、甲4,9,10の観察対象として抜き取られた夫々の中空糸膜の個体差、そこで受けた撮像の為の予備処理、そうして得られたSEM像自体は、種々異なるものであり、また、測定担当技術者によって夫々の評価が変動し得るものである。しかも、自動判別後の修正操作が入るため、部分的には若干の差異が生じることは止むを得ないことであり、むしろ自然でさえあり、よって甲4,9,10の各SEM像における処理および観察は基本的には一貫していると評価すべきである。
そうであるからこそ請求人は、甲4,9,10作成各社の測定担当の技術者に対して、本件特許明細書を提示する以上の誘導的説明は一切行わず、明細書の記載を参照した上で、専門家としての自主性を尊重するという立場で測定されたい旨、依頼したものであり、・・・」(弁駁書第17頁第27行?18頁第12行)と主張している。

しかしながら、第三者機関が作成した分析データであっても、分析データの妥当性についての検証、分析データが本件特許明細書に記載された分析方法に従って測定された分析データであるか否かという観点での検証が必要であることは当然であるところ、甲第4、9及び10号証に記載された分析データが、その測定において「外表面の開孔」の認識に一貫性がなく、また、本件特許明細書に記載された「外表面の開孔率」の測定方法に従って測定されたものでないと判断されることは、上記のとおりである。
よって、請求人の主張を採用することはできない。

(3-4)甲第4、9及び10号証に記載された分析データについてのまとめ
甲第4、9及び10号証に記載された分析データは、その測定において「外表面の開孔」の認識に一貫性がなく、また、本件特許明細書に記載された「外表面の開孔率」の測定方法に従って測定されたものでない。
よって、甲第4、9及び10号証から、イ号物品の中空糸膜における「外表面の開孔率」が8?25%であるとはいえない。

(4)構成要件(V)についてのまとめ
以上のとおりであるから、請求人提出の分析データから、イ号物品の中空糸膜における「外表面の開孔率」が8?25%であるとはいえない。
よって、イ号物品は、本件特許発明1の構成要件(V)を充足しない。

第5.むすび
以上のとおり、イ号物品は、本件特許発明1の構成要件(V)を充足しないから、本件特許発明1の構成要件(II)、(III)、(VI)、(VII)及び(IX)について判断するまでもなく、本件特許発明1の技術的範囲に属しない。
また、本件特許発明2?5は、本件特許発明1を引用するものであるから、イ号物品が本件特許発明1の技術的範囲に属しない以上、本件特許発明2?5の技術的範囲にも属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2011-12-13 
出願番号 特願2003-209839(P2003-209839)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲村 正義  
特許庁審判長 横林 秀治郎
特許庁審判官 寺澤 忠司
関谷 一夫
登録日 2004-09-10 
登録番号 特許第3594032号(P3594032)
発明の名称 高透水性中空糸膜型血液浄化器  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 柴田 有佳理  
代理人 植木 久彦  
代理人 内藤 和彦  
代理人 根本 浩  
代理人 菅河 忠志  
代理人 上野 さやか  
代理人 植木 久一  
代理人 山田 拓  
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