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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F15B |
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管理番号 | 1250098 |
審判番号 | 不服2010-5068 |
総通号数 | 147 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-03-08 |
確定日 | 2011-04-18 |
事件の表示 | 特願2008-500349「アクチュエータ、駆動装置、ハンド装置、及び搬送装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月23日国際公開、WO2007/094031〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成18年2月13日を国際出願日とする出願であって、平成21年12月1日に拒絶査定がなされ、平成22年3月8日に拒絶査定に対する不服審判請求がなされたものである。 本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は平成21年3月26日付手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。 「流体が供給されて膨らむ袋体と、該袋体を被覆して前記袋体の変形に伴い伸縮する被覆体とを備えるアクチュエータにおいて、 前記袋体は、非ゴム系の材料で形成してあると共に、最大に膨らんだときの最大外径を前記被覆体が最大に伸張したときの被覆体内部の最大内径に比べて大きく、且つ、最大に膨らんだときの全長寸法を前記被覆体が最大に伸張したときの内部長手寸法に比べて大きくしており、 前記被覆体は、最大に伸張したときに前記袋体の膨らみを抑える締付力を有することを特徴とするアクチュエータ。」 2.引用刊行物 (1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-105262号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、気体・液体・固体の物質またはそれらの混合体を注入すると長手方向は拘束され径方向に膨らむことを特徴とするチューブを持ち、そのチューブの外部に長手方向および径方向に伸縮する円筒型スリーブを配置し、両端を拘束し、片端に注入口を設けたことを特徴とする動力装置、および、それらを複数個配置し気体・液体・固体の物質またはそれらの混合体の注入速度を制御することによってあたかも1つの動力装置かのような振る舞いをすることを特徴とする動力装置システムに関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、空気圧で収縮する動力装置はゴムを用いたものが実用化されているが、その空気の注入の前後での収縮率は最大でも25%であった。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 空気圧で収縮するゴムを用いた動力装置では収縮率を増加させ、ストロークを大きくする方法が求められていた。 【0004】 本発明は、上記のような課題に対処するために提案されたものであって、気体・液体・固体の物質またはそれらの重合体を注入すると長手方向は拘束され径方向に膨らむことを特徴とするチューブを持ち、そのチューブの外部に長手方向および径方向に伸縮する円筒型スリーブを配置し、両端を拘束し、片端に注入口を設けたことを特徴とする動力装置、および、それらを複数個配置し気体・液体・固体の物質またはそれらの混合体の注入速度を制御することによってあたかも1つの動力装置かのような振る舞いをすることを特徴とする動力装置システムを実用化することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】 気体・液体・固体の物質またはそれらの混合体を注入すると長手方向は拘束され径方向に膨らむことを特徴とするチューブを持ち、そのチューブの外部に長手方向および径方向に伸縮する円筒型スリーブを配置し、両端を拘束し、片端に注入口を設け、チューブにポリエステル系・ポリアミド系・ポリエチレン系・ポリイミド系・ポリスチレン系・ポリカーボネート系のいずれか/もしくは混合されたフィルムまたは繊維を用いたことを特徴とする動力装置、および、それらを複数個配置し気体・液体・固体の物質またはそれらの重合体の注入速度を制御することによってあたかも1つの動力装置かのような振る舞いをすることを特徴とする動力装置システムを用いることによって解決することができる。 【0006】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。 図1は本発明の一実施例に係る、気体・液体・固体の物質またはそれらの混合体を注入すると長手方向は拘束され径方向に膨らむことを特徴とするチューブを持ち、そのチューブの外部に長手方向および径方向に伸縮する円筒型スリーブを配置し、両端を拘束し、片端に注入口を設けたことを特徴とする動力装置を表す。動力装置は長手方向には拘束され径方向に広がるチューブ1および長手方向には拘束され径方向に伸縮する円筒型スリーブ2および注入口3および留め金4より構成される。さらに、注入口への気体・液体・固体の物質またはそれらの混合体の注入量を制御する制御部5を備える。」 ・また、【0001】の「あたかも1つの動力装置かのような振る舞いをする」という記載、及び【0006】の「長手方向には拘束され径方向に広がるチューブ1および長手方向には拘束され径方向に伸縮する円筒型スリーブ2」という記載から、円筒型スリーブ2は、チューブ1の変形に伴い伸縮するものといえる。 したがって、引用刊行物1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「気体・液体が供給されて膨らむチューブと、該チューブを被覆して前記チューブの変形に伴い伸縮する円筒型スリーブとを備えるアクチュエータにおいて、 前記チューブは、ポリエステル系・ポリアミド系・ポリエチレン系・ポリイミド系・ポリスチレン系・ポリカーボネート系のいずれか/もしくは混合されたフィルムまたは繊維で形成してあるアクチュエータ。」 (2)同じく原査定の拒絶の理由に引用された、英国特許出願公開第2207702号明細書(以下「引用刊行物2」という。)には、アクチュエータに関して図面と共に次の事項が記載されている。 ・「膨らんだとき、バルーン6は破裂しないようにその周囲を覆う編組体7によって、薄い内部チューブがより強度の高いタイヤにより支持されるのと同様の態様で保護されている。このようにしてバルーンは他の場合よりもはるかに高い圧力に耐えることができる。」(明細書4頁12?17行の当審による翻訳。) ・また、上記記載および図2a,bによれば、アクチュエータは、袋体と、袋体を被覆して前記袋体の変形に伴い伸縮する被覆体とを備えるものであることが認められる。 (3)同じく原査定の拒絶の理由に引用された、米国特許第5351602号明細書(以下「引用刊行物3」という。)には、駆動装置に関して図面と共に次の事項が記載されている。 ・「スリーブ12の強度は(円筒形で径方向に膨張可能な)袋体が数百psiに加圧されたときですら破裂を防止できる程度のものとする。」(第2欄第33?36行の当審による翻訳。) ・また、第2図によれば、袋体と、袋体を被覆して前記袋体の変形に伴い伸縮する被覆体とを備えるアクチュエータにおいて、アクチュエータが膨らんだ状態において、本願発明の袋体に相当する円筒が膨らんだ形状のもの30が、本願発明の被覆体に相当するスリーブ12と、中央部分32および長手方向両端で接触していることが認められる。 3.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「気体・液体」は、前者の「流体」に相当し、以下同様に「チューブ」は「袋体」に、「ポリエステル系・ポリアミド系・ポリエチレン系・ポリイミド系・ポリスチレン系・ポリカーボネート系のいずれか/もしくは混合されたフィルムまたは繊維」は「非ゴム系の材料」に、「円筒型スリーブ」は「被覆体」に、それぞれ相当する。 したがって両者は、 [一致点] 「流体が供給されて膨らむ袋体と、該袋体を被覆して前記袋体の変形に伴い伸縮する被覆体とを備えるアクチュエータにおいて、 前記袋体は、非ゴム系の材料で形成してあるアクチュエータ。」で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 袋体の、被覆体との関係に関して、本願発明が「最大に膨らんだときの最大外径を被覆体が最大に伸張したときの被覆体内部の最大内径に比べて大きく、且つ、最大に膨らんだときの全長寸法を前記被覆体が最大に伸張したときの内部長手寸法に比べて大きくして」いるものと特定しているのに対し、引用発明はそのような特定をしていない点。 [相違点2] 「被覆体」に関して、本願発明が「最大に伸張したときに袋体の膨らみを抑える締付力を有する」ものと特定しているのに対し、引用発明はそのような特定をしていない点。 4.相違点に対する判断 相違点1および2について 引用刊行物2および3には、袋体と、袋体を被覆して前記袋体の変形に伴い伸縮する被覆体とを備えるアクチュエータにおいて、被覆体は袋体の破裂を防止する発明が記載されていることから、その強度はアクチュエータが最大に伸張したときに袋体の膨らみを抑える締付力を有するものとした発明が記載されているといえる。 また、引用刊行物3に記載された発明は、破裂を防止するという課題を有することから、第2図をみれば、袋体が最大に膨らんだときの最大外径は、被覆体の内径がそれより大きければ袋体が破裂することを防止できないことが明らかであることから、被覆体が最大に伸張したときの被覆体内部の最大内径以上であることが明らかであるといえる。同様の理由により、袋体が最大に膨らんだときの全長寸法に関しても被覆体が最大に伸張したときの被覆体の内部長手寸法以上であることが明らかであるといえる。 そして、その寸法は、破裂を防止するという課題を達成できる範囲であれば良いものといえるので、その範囲においてより大きいものとすることも任意に設計し得る事項といえる。 そして、流体が供給されて膨らむ袋体と、該袋体を被覆して前記袋体の変形に伴い伸縮する被覆体とを備えるアクチュエータにおいて、袋体の破裂を防止するべきことは周知の課題といえるので、引用発明において、この周知の課題の下に引用刊行物2および3に記載された上記発明の構成を採用し、その際、この課題を達成できる範囲で外径及び長さを選定することで相違点1および2に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものというべきである。 また、本願発明の全体構成により奏される効果は、引用発明及び引用刊行物2および3に記載された発明から予測し得る程度のものと認められる。 5.むすび したがって、本願発明は、引用発明、並びに引用刊行物2および3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-02-21 |
結審通知日 | 2011-02-22 |
審決日 | 2011-03-07 |
出願番号 | 特願2008-500349(P2008-500349) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F15B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 齊藤 公志郎、田合 弘幸 |
特許庁審判長 |
田良島 潔 |
特許庁審判官 |
冨江 耕太郎 堀川 一郎 |
発明の名称 | アクチュエータ、駆動装置、ハンド装置、及び搬送装置 |
代理人 | 岡本 敏夫 |