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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F |
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管理番号 | 1250105 |
審判番号 | 不服2009-22941 |
総通号数 | 147 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-11-24 |
確定日 | 2011-04-28 |
事件の表示 | 特願2005-506836「簡易保温体及び保温布」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月16日国際公開、WO2004/108031〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成16年6月4日(優先権主張、平成15年6月4日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成20年6月16日付けで拒絶理由が通知され、平成20年8月20日に特許請求の範囲を含む補正がなされ、さらに、平成21年3月16日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成21年5月25日付けで特許請求の範囲を含む補正がなされたものの、平成21年5月25日付けの補正は平成21年8月26日付けで却下され、同日付けで拒絶査定されたものであり、それに対して平成21年11月24日付けで拒絶査定不服審判が請求され、同時に特許請求の範囲を含む補正がなされたものである。 第2.平成21年11月24日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年11月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正 本件補正により、平成20年8月20日付けの特許請求の範囲の請求項1 「断熱材とカバー材との間に、空気の存在下で発熱する発熱体が挿入されてなる簡易保温体から構成される保温布であって、該断熱材が、厚み0.2?20.0mm、目付け30?700g/m^(2)、空隙率が40?95%の不織布または樹脂発泡体であり、該カバー材が、厚み0.05?0.5mm、目付け20?100g/m^(2)の不織布または布帛であり、該簡易保温体が、複数個、平面状に連結されてなる保温布であって、脱気状態または脱酸素状態で、非通気性のフイルム外袋により包装されシールされてなることを特徴とする救護用保温布。」が 「断熱材とカバー材との間に、空気の存在下で発熱する発熱体が挿入されてなる簡易保温体から構成される保温布であって、該断熱材が厚み0.2?20.0mm、目付け50?700g/m^(2)、空隙率が40?95%の不織布または樹脂発泡体であり、該カバー材が厚み0.05?0.5mm、目付け20?100g/m^(2)の不織布または布帛であり、該簡易保温体が、複数個、平面状に連結されてなる保温布であり、該発熱体が包装袋に収納されており、該包装袋が連続した基盤の目状の仕切りを有しており、該仕切りは、一辺が5?10cm、他辺が7?15cmの四角形状に仕切られた区画であり、その仕切られた1区画当り5?60gの粉体上の発熱体が収納されており、該保温布がブランケット状であり、幅60?160cm、長さ70?220cmであり、該保温布を折り畳むかまたはロール状にしてから、非通気性のフイルム外袋に入れ、脱気状態または脱酸素状態でコンパクトに包装シールされていることを特徴とする人体の半身または全身の保温が可能な救護用保温布。」と補正された。(下線部分が補正により加わった個所を示す。) なお、本件補正後の請求項1における「基盤」は、「碁盤」の誤記であり、「粉体上」は「粉体状」の誤記であると認定し、以下の記載は誤記を訂正して記載する。 2.補正の目的の適否 本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「断熱材の目付」について、「30?700g/m^(2)」を「50?700g/m^(2)」と補正し、「発熱体」について、「発熱体が包装袋に収納されており、該包装袋が連続した碁盤の目状の仕切りを有しており、該仕切りは、一辺が5?10cm、他辺が7?15cmの四角形状に仕切られた区画であり、その仕切られた1区画当り5?60gの粉体状の発熱体が収納されており」と補正し、「保温布」について、「ブランケット状であり、幅60?160cm、長さ70?220cmであり、該保温布を折り畳むかまたはロール状にしてから、」「コンパクトに」包装シールされていると補正し、さらに、「救護用保温布」について、「人体の半身または全身の保温が可能な」救護用保温布と補正するものであって、これらはすべて、発明を特定するために必要な事項に限定を付加するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3.独立特許要件 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 3-1.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、特開平11-309045号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 (a)「【請求項2】空気中の酸素と接触して発熱する発熱組成物が収納された通気性の偏平状内袋と、厚みが3?15mm・・・(中略)・・・の発泡ウレタンシートと、厚みが2?20mmの発泡合成樹脂シートを、偏平状内袋が内側となるように貼り合せた発熱座布団が、非通気性の外袋に収納されて成ることを特徴とする発熱座布団袋。」 (b)「【請求項5】偏平状内袋が、・・・(中略)・・・4室に仕切られている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発熱座布団袋。」 (c)「【0010】・・・(中略)・・・発熱組成物を適宜の大きさと分布の通気孔を有する偏平状内袋に収納し、・・・(中略)・・・発熱組成物の粉末が外部に漏れたり水分がにじみ出たりすることがなく、」 (d)「【0016】・・・(中略)・・・発熱組成物の充填量は、発熱座布団の大きさ等によって異なるが、通常は100?400g程度である。」(e)「【0027】偏平状内袋あるいは連続気泡を有する発泡ウレタンシートの大きさは、通常は・・・(中略)・・・500mm×500mm程度である。また、発泡合成樹脂シートは、偏平状内袋、連続気泡を有する発泡ウレタンシートと同程度の大きさのシートあるいはそれより少し大きいシートである。また、発熱座布団の形状としては矩形状」 (f)「【0028】以上のような発熱座布団は、使用時までさらに非通気性の外袋に入れられて密封保存される。・・・発熱座布団袋は、・・・(中略)・・・周辺を加熱融着して袋状に成形するとともに、発熱座布団を密封して発熱座布団袋とされる。」 (g)「【0029】・・・(中略)・・・図7は、発熱座布団を折り曲げて外袋に収納している」 (h)「【0030】図8は、本発明において、偏平状内袋と連続気泡を有する発泡ウレタンシートと発泡合成樹脂シートを組み合せた発熱座布団の例を示す斜視図、図9は、図8におけるA-A’線断面図である。・・・(中略)・・・。図10は、この発熱座布団を外袋に収納した発熱座布団袋の一部切断の斜視図である。発熱座布団は使用時に外袋より取り出され、・・・(中略)・・・発泡合成樹脂シートが下側となるように使用される。」 ここで、上記摘示記載(b)にあるように、発熱組成物が収納された偏平状内袋を、4室に仕切る場合に、仕切りを十字状に直交させること、すなわち碁盤の目状に仕切ることは通常行うことである。 その際には、上記摘示記載(e)にあるような、500mm×500mm程度の大きさの偏平状内袋を、仕切りを十字状に直交させて4室に仕切ると、一辺が250mm×250mm程度の大きさの矩形状つまり四角形状に仕切られた区画となる。そうすると、その仕切られた1区画あたりの発熱組成物の量は、上記摘示記載(d)から算出して、100?400g程度/4つまり25?100g程度となる。 そして、上記摘示記載(a)及び(e)から、発熱座布団の大きさは、500mm×500mm程度と同程度の大きさかあるいはそれより少し大きいものである。 そうすると、上記記載及び【図8】ないし【図10】から、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「発泡合成樹脂シートと発泡ウレタンシートとを、その間に、空気中の酸素と接触して発熱する発熱組成物が位置するように貼り合せた発熱座布団であって、該発泡合成樹脂シートが厚み2?20mmの樹脂発泡体であり、該発泡ウレタンシートが厚み3?15mmであり、該発熱組成物が偏平状内袋に収納されており、該偏平状内袋が連続した碁盤の目状の仕切りを有しており、該仕切りは、一辺が25cm程度、他辺が25cm程度の四角形状に仕切られた区画であり、その仕切られた1区画当り25?100g程度の粉末の発熱組成物が収納されており、該発熱座布団が500mm×500mm程度より少し大きいものであり、該発熱座布団を折り曲げてから、非通気性の外袋に入れ、密封状態で周辺を加熱融着して袋状に成形されている発熱座布団。」 3-2.対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、 引用発明の「発泡合成樹脂シート」は、本願補正発明の「断熱材」に相当し 、以下同様に、「発泡ウレタンシート」は「カバー材」に、「空気中の酸素 と接触して発熱する発熱組成物」は「空気の存在下で発熱する発熱体」に、 「粉末の発熱組成物」は「粉体状の発熱体」に、「偏平状内袋」は「包装袋」に、「発熱座布団」は「簡易保温体」かつ「保温布」に、「折り曲げて」は「折り畳む」に、「非通気性の外袋」は「非通気性のフイルム外袋」にそれぞれ相当している。 そして、「ブランケット状」とは、一般に「毛布状」を意味するものであって[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]、引用例1に記載された発熱座布団もブランケット状であるといえる。 また、引用発明の発熱座布団は、折り曲げて非通気性の外袋に入れて周辺を加熱融着して袋状に密封していることから、コンパクトに包装シールされているといえるし、保存中に発熱するのを防ぐために、前記外袋内は脱気状態または脱酸素状態であることは明らかである。 そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。 (一致点) 「断熱材とカバー材との間に、空気の存在下で発熱する発熱体が挿入されてなる簡易保温体から構成される保温布であって、該断熱材が厚み2?20mmの樹脂発泡体であり、該発熱体が包装袋に収納されており、該包装袋が連続した碁盤の目状の仕切りを有しており、その仕切られた1区画当り25?60gの粉体状の発熱体が収納されており、該保温布がブランケット状であり、該保温布を折り畳んでから、非通気性のフイルム外袋に入れ、脱気状態または脱酸素状態でコンパクトに包装シールされている保温布。」 そして、両者は次の点で相違する。 (相違点1)本願補正発明においては、断熱材の目付けが50?700g/m^(2)、空隙率が40?95%のものであるのに対して、引用発明においては、その値が特定されていない点。 (相違点2)本願補正発明においては、カバー材が厚み0.05?0.5mm、目付け20?100g/m^(2)の不織布または布帛であるのに対して、引用発明においては、厚み3?15mmの発泡ウレタンシートである点。 (相違点3)本願補正発明は、簡易保温体が複数個、平面状に連結されてなる保温布であるのに対して、引用発明は、簡易保温体が一個からなる保温布である点。 (相違点4)本願補正発明においては、包装袋の仕切りは、一辺が5?10cm、他辺が7?15cmであるのに対して、引用発明においては、該仕切りは、一辺が25cm程度、他辺が25cm程度である点。 (相違点5)本願補正発明においては、保温布が、幅60?160cm、長さ70?220cmであり、人体の半身または全身の保温が可能な救護用保温布であるのに対して、引用発明においては、幅50cm程度、長さ50cm程度より少し大きいものであり、救護用との特定はない点。 3-3.上記相違点について検討する。 (相違点1について) 引用発明において、断熱材の目付け、空隙率の値については、求められる保温性能等を考慮して当業者が適宜定め得ることと認める。 (相違点2について) 保温用品において、その外被として不織布を用いることは、本願出願前周知のもの(例えば、実願昭61-86151号(実開昭62-197955号)のマイクロフィルム、特開2002-200709号公報)であるから、引用発明において、カバー材を不織布とすることは当業者が適宜行えることであり、その際に、該カバー材の厚み、目付けの値について、求められる保温性能等を考慮して当業者が適宜定め得ることと認める。 (相違点3について) 保温用品において、保温体が、複数個、平面状に連結されてなるものは、本願出願前周知のもの(例えば、登録実用新案第3015597号公報、特開平10-229997号公報、登録実用新案第3001170号公報)であるから、引用発明において、保温体が、複数個、平面状に連結されてなるものとすることは、当業者が適宜行えることであると認める。 (相違点4について) 包装袋の仕切りの間隔等は適宜選択できるものであるから、一辺が5?10cm、他辺が7?15cmの仕切りとすることは当業者が適宜なし得ることである。 (相違点5について) 保温用品が救護用に用いられることは、本願出願前周知の事項(例えば、登録実用新案第3015597号公報、特開昭64-25853号公報)であるから、引用発明の用途として、救護用に用いることは当業者が適宜行えることであるし、引用発明である保温布も、その大きさは幅500mm、長さ500mm程度より少し大きいものであるから、体の大きくない人体、例えば幼児などであれば、その半身は充分保温が可能なものであると認められ、また引用発明である保温布の大きさを変更し、幅60?160cm、長さ70?220cmとすることは当業者が必要に応じて適宜行えるものと認める。 そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3-4.むすび したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、拒絶査定された、平成20年8月20日付けの手続補正書により補正された請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「断熱材とカバー材との間に、空気の存在下で発熱する発熱体が挿入されてなる簡易保温体から構成される保温布であって、該断熱材が、厚み0.2?20.0mm、目付け30?700g/m^(2)、空隙率が40?95%の不織布または樹脂発泡体であり、該カバー材が、厚み0.05?0.5mm、目付け20?100g/m^(2)の不織布または布帛であり、該簡易保温体が、複数個、平面状に連結されてなる保温布であって、脱気状態または脱酸素状態で、非通気性のフイルム外袋により包装されシールされてなることを特徴とする救護用保温布。」 第4.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記第2 .3-1に記載したとおりである。 第5.対比・判断 本願発明は、前記第2.1の本願補正発明から、「断熱材の目付」を「30?700g/m^(2)」から「50?700g/m^(2)」に限定する構成を省き、「発熱体」について、「発熱体が包装袋に収納されており、該包装袋が連続した碁盤の目状の仕切りを有しており、該仕切りは、一辺が5?10cm、他辺が7?15cmの四角形状に仕切られた区画であり、その仕切られた1区画当り5?60gの粉体状の発熱体が収納されており」に限定する構成を省き、「保温布」について、「ブランケット状であり、幅60?160cm、長さ70?220cmであり、該保温布を折り畳むかまたはロール状にしてから、」「コンパクトに」包装シールされていると限定し、さらに、「救護用保温布」について、「人体の半身または全身の保温が可能な救護用」保温布であるとの限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2.3-3に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-02-23 |
結審通知日 | 2011-03-01 |
審決日 | 2011-03-17 |
出願番号 | 特願2005-506836(P2005-506836) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石川 好文、和田 雄二 |
特許庁審判長 |
鈴木 由紀夫 |
特許庁審判官 |
佐野 健治 鳥居 稔 |
発明の名称 | 簡易保温体及び保温布 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 齋藤 都子 |
代理人 | 小野田 浩之 |
代理人 | 中村 和広 |
代理人 | 古賀 哲次 |
代理人 | 青木 篤 |