• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1250213
審判番号 不服2009-17205  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-15 
確定日 2011-12-02 
事件の表示 特願2004-554929「半導体処理装置用縦型電気ヒータ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月10日国際公開、WO2004/049414〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年11月25日の国際出願であって、平成20年6月16日に手続補正書が提出され、その後、同年10月29日付けの拒絶理由通知に対して、平成21年1月8日に手続補正書が提出されたが、同年6月18日付けで補正却下されるとともに、拒絶査定がされ、それに対して、平成21年9月15日に審判が請求されるとともに、同年10月20日に手続補正書が提出され、その後、平成23年1月19日付けで審尋がされ、平成23年4月5日に回答書が提出されたものである。


第2 平成21年10月20日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正の却下の決定

【補正の却下の決定の結論】

本件補正を却下する。

【理由】
1 補正の内容
本件補正のうち、特許請求の範囲についてする補正は、次のとおりである。(下線を付した部分は、補正個所を示す。)

ア 請求項1について、同項中に、「可撓性を有するセラミックファイバ製マット」とあるのを、「可撓性を有する緩衝用セラミック製ファイバマット」とすること。

イ 請求項1について、同項中に、「前記非金属抵抗発熱体は、波形に形成された二珪化モリブデン発熱体とされ、前記主断熱体の内周面の周方向沿いに波頭の列が揃うように装着されたもの」とあるのを、「前記非金属抵抗発熱体は、波形に形成された二珪化モリブデン発熱体とされ、前記主断熱体の内周面上に周方向沿いに波頭の列が揃うとともに、該発熱体の各直線部が縦方向に向くように装着されたもの」とすること。

ウ 請求項6について、同項中に、「金属抵抗発熱体は、ライト・ゲージの素線をオーバーベント形状に加工されたもの」とあるのを、「金属抵抗発熱体はライトゲージの素線をオーバーベント形状に加工されたもの」とすること。

2 補正の目的の適否
上記補正ア、イは、いずれも、補正前の請求項に規定されている技術的事項をより限定するものであり、平成18年法律55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、上記補正ウは、同法17条の2第4項第4号の明瞭でない記載の釈明に該当するから、同特許法第17条の2第4項柱書きに規定する目的要件を満たす。

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、更に検討する。

3 独立特許要件(容易想到性)についての検討
(1)本願補正発明
本件補正による補正後の請求項1?6に係る発明のうち、請求項1に係る発明は、次のとおりである。

「【請求項1】複数のゾーンからなる筒状の半導体処理装置用縦型電気ヒータであって、金属抵抗発熱体が筒状主断熱体の内周面に装着されたトップゾーン及び中間ゾーンと、非金属抵抗発熱体が筒状主断熱体の内周面に装着されたボトムゾーンとを備え、各ゾーンは、主断熱体の外周面を、可撓性を有する緩衝用セラミック製ファイバマットを介して被覆する層状の内断熱材および外断熱材と、外断熱材の外周面を被覆する金属シェルとを有しており、前記非金属抵抗発熱体は、波形に形成された二珪化モリブデン発熱体とされ、前記主断熱体の内周面上に周方向沿いに波頭の列が揃うとともに、該発熱体の各直線部が縦方向に向くように装着されたものとされており、前記各ゾーンの主断熱体は、1または複数のブロックから構成され、ブロック単位での交換が可能とされていることを特徴とする半導体処理装置用縦型電気ヒータ。」

(2)引用例の記載と引用発明
(2-1)引用例1とその記載内容
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-223483号公報(以下「引用例1」という。)には、「基板処理装置」(発明の名称)について、図1とともに、次の記載がある(下線は当審で付加。以下同じ。)。

ア 発明の属する技術分野
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体ウェーハやガラス基板等の基板に熱処理などを行う基板処理装置に係り、特にヒータ断熱部の断熱性能の均一化が図れる基板処理装置に関する。」

イ 発明の実施の形態
「【0010】
【発明の実施の形態】以下に、本発明に係る基板処理装置の実施形態を図面を用いて説明する。この実施形態は、本発明の基板処理装置を縦型の半導体製造装置(CVD装置、拡散装置、酸化装置など)に適用した例であり、図1には、縦型半導体製造装置に用いられるヒータの一部破断した斜視図を示す。
【0011】図1において、1は円筒形のヒータであり、図示省略するが、ヒータ1内部には反応容器(処理容器)が設けられ、反応容器内には処理ガスが供給されると共に、反応容器内のボート上に設置されたウェーハは、ヒータ1で加熱されて成膜、拡散、酸化などの処理が行われる。
【0012】ヒータ1の発熱線2は、金属系(FeCrAl合金)のものと非金属系(MoSi_(2))のものとからなり、発熱線2は、成型断熱材3の内周表面部に蛇行して形成された溝に埋め込まれて配線されている。成型断熱材3の外側には、Al_(2)O_(3)?SiO_(2)系の繊維状の断熱材からなるブランケット断熱材4が巻き付けられており、成型断熱材3及びブランケット断熱材4は、ステンレス合金もしくはアルミニウム(アルマイト処理)製のケース5内に収納されている。なお、6は環状の底板である。」

ウ 図1について
図1は、本発明の基板処理装置を縦型の半導体製造装置に適用した一実施例を示すものであって、縦型半導体製造装置に用いられるヒータの斜視図である。
図1から、底板6が設けられた側が開放されていることが分かる。また、上記イも参酌すれば、該ヒータは、発熱線が筒状の成型断熱材3の内周面に分割して装着された、底板6に最も近い部分と、底板6から最も遠い部分と、それらの中間の部分とを備え、前記発熱線は、波形に形成され、前記主断熱体の内周面上に周方向沿いに波頭の列が揃うとともに、該発熱線の各直線部が縦方向に向くように装着されたものであることが見てとれる。

(2-2)引用発明
上記ア?ウによれば、引用例1には、次の発明が記載されている(以下、この発明を「引用発明」という。)。

「縦型半導体製造装置に用いられる円筒形のヒータ1であって、ヒータ1の配線された発熱線2は、金属系のものと非金属系(MoSi_(2))のものとからなり、筒状の成型断熱材3の内周面に分割して装着された、底板6から最も遠い部分と、底板6に最も近い部分と、それらの中間の部分とを備え、各部分は、成型断熱材3の外側には、ブランケット断熱材4が巻き付けられ、ステンレス合金もしくはアルミニウム(アルマイト処理)製のケース5内に収納されており、発熱線2は、波形に形成され、前記成型断熱材3の内周面上に周方向沿いに波頭の列が揃うとともに、該発熱線の各直線部が縦方向に向くように装着されている、縦型半導体製造装置に用いられるヒータ1。」

(2-3)引用例2とその記載内容
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭63-161609号公報(以下「引用例2」という。)には、「拡散炉」(発明の名称)について、次の記載がある。
ア 産業上の利用分野等
「産業上の利用分野
この発明は、拡散炉に関し特に高温で動作される高温拡散炉に関するものである。
従来の技術
拡散炉は、例えば半導体製品の製造において拡散酸化処理を行なうのに使用される。
従来の拡散炉では、拡散炉の長さ方向にカートリッジヒータがコイル状に配置されている。このヒータは、金属製ヒータ、たとえばFe-Crヒータ(商品名:カンタルA-1、が用いられている。
拡散炉では、処理物を加熱する均熱長が長ければ長いほど処理量が多くなり効率が良く拡散処理ができる。
発明が解決しようとする問題点
ところが、拡散炉のエンドゾーン(端部領域)では、センターゾーン〈中央領域)より炉内温度が下がるので、エンドゾーンとセンターゾーンにおけるそれぞれの炉内温度をできるだけ均一にしなければならない。
・・・
そこで従来では、エンドゾーンに位置するヒータの部分を、センターゾーンに位置するヒータ部分より密に配置して、エンドゾーンの加熱温度を上げてエンドゾーンとセンターゾーンにおける温度をなるべく均一にして、拡散炉の均熱長を長くとることが試みられた。
しかしエンドゾーンの加熱温度を上げると、高負荷となりヒータの寿命がセンターゾーンのヒータの寿命に比べてかなり短くなり、しかも密に配置するのには限界があった。
発明の目的
この発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、エンドゾーンでのヒータ寿命が長く、センターゾーンの占める割合を多くして、均熱長を長くとることができ、処理物を効率よく拡散処理できる拡散炉を提供することを目的としている。
発明の要旨
この発明はヒータにより加熱される拡散炉において、エンドゾーンに非金属製のヒータを配置することを特徴とする拡散炉を要旨としている。」(1頁左下欄9行?2頁右上欄5行)

イ 実施例
「実施例
第1図はこの発明の拡散炉の好適な実施例を示している。
拡散炉1は断熱材2を有している。断熱材2は入口20を有している。断熱材2の中には両端開口型のプロセスチューブ3が設けられている。・・・ プロセスチューブ3の周囲には、カートリッジ型のヒータ5、6、7がそれぞれコイル状に配置されている。このヒータ5、6、7は、それぞれ別個のヒータである。
ヒータ5は、拡散炉1のセンターゾーンCZ、言いかえればプロセスチューブ3のセンターゾーンCZに配置されている。ヒータ6は、拡散炉1のエンドゾーンEZ1、言いかえれば、プロセスチューブ3のエンドゾーンEZ1に配置されている。ヒータ7は、拡散炉1のエンドゾーンEZ2、言いかえればプロセスチューブ3のエンドゾーンEZ2に配置されている。
ヒータ5は、金属材料例えばFe-Crにより作られている。ヒータ6、7は非金属製の材料、例えばMoSi_(2)により作られている。このMoSi_(2)製のヒータ6、7は、高負荷、高温用のものである。」(2頁右上欄下から7行?右下欄6行)
「第1図と第2図に示すようにエンドゾーンEZ1とEZ2において非金属製のヒータ6、7を用いており、高負荷および高温に耐えることができる。」(3頁右上欄4行?7行)

(2-4)引用例2に記載の技術
上記ア及びイによれば、引用例2には、次の技術が記載されている。

「金属材料により作られたヒータと、非金属製の材料であるMoSi_(2)により作られているヒータとを有する加熱炉において、加熱炉のエンドゾーンでのヒータ寿命を長くするために、高負荷、高温用の前記非金属製のヒータを前記エンドゾーンに配置する技術。」

(2-5)引用例3とその記載内容
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2001-267261号公報(以下「引用例3」という。)には、「半導体熱処理装置用電気ヒータ」(発明の名称)について、次の記載がある。

ア 発明の属する技術分野等
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、半導体に拡散処理などの熱処理を施す装置に用いられる電気ヒータに関する。」

イ 発明の実施の形態
「【0010】
【発明の実施形態】以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0011】図1および図2は半導体処理装置用電気ヒータの全体構成を示し、図3は微孔質断熱材製微小中空球体が封入されたパウチを示す。
【0012】図1?図3において、この発明による半導体熱処理装置用電気ヒータ(1)は、セラミックス製断熱材からなる筒状ヒータ本体(2)と、ヒータ本体(2)の外周面を被覆する内外2つの筒状断熱層(3A)(3B)と、外側の筒状断熱層(3B)の外周を被覆するセラミックスファイバ製マット(4)と、マット(4)の外周を被覆するアルミニウム製(アルミニウム合金製も含む)シェル(5)とを備えている。」

(2-6)引用例3に記載の技術
上記ア及びイによれば、引用例3には、次の技術が記載されている。

「半導体熱処理装置用電気ヒータにおいて、筒状ヒータ本体の外周面を被覆する内外2つの筒状断熱層と、外側の筒状断熱層の外周を被覆するセラミックスファイバ製マットと、マットの外周を被覆するアルミニウム製(アルミニウム合金製も含む)シェルとを備える技術。」

(2-7)引用例4とその記載内容
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平11-195610号公報(以下「引用例4」という。)には、「半導体製造装置」(発明の名称)について、次の記載がある。

ア 特許請求の範囲
「【特許請求の範囲】
【請求項1】基板を処理する容器の外周に、2以上の発熱ゾーンを有する加熱ヒータを備えた半導体製造装置において、前記加熱ヒータが、少なくとも前記発熱ゾーンを単位として区分された複数の分割可能なブロックで構成されていることを特徴とする半導体製造装置。」

イ 従来技術等
「【0002】
【従来の技術】熱CVD装置や熱拡散装置などの半導体製造装置の縦型反応炉(電気炉)には、従来、図6(a)に示すような、加熱ヒータ30が用いられている。加熱ヒータ30は、ウェーハ等の基板の処理を行う縦配置の反応管(図示せず)の外周及び上方を包囲する断熱材からなる本体31を有し、本体31の内周面部には、ヒータ素線32が配設されると共に、本体31の外周面には金属板33が巻き付けられている。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、反応管にその下方より、ウェーハが載置されたボートを搬入・搬出するために、加熱ヒータ30の本体31下方は開口部34となっており、この開口部34からの熱放出が多く、開口部34付近のヒータの電気消費量が増大するため、断線の発生箇所は、ほとんどは最下部の発熱ゾーンZ_(4)のヒータ素線32に集中している。
【0005】ところが、従来の加熱ヒータ30は複数の発熱ゾーンを有するもののヒータ全体が一体の構造であるため、上述したように、たとえ1つの発熱ゾーンだけの断線であっても、加熱ヒータ30全体を交換しなければならなかった。このため、交換のコストがかさむばかりでなく、交換に対応するために予備の加熱ヒータ用の広い保管スペースを確保する必要があり、また、加熱ヒータ30は重量物であり、交換時の取り扱いが難しく手数が掛かった。
【0006】本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、断線などに対応して部分交換が可能な加熱ヒータを備えた半導体製造装置を提供することにある。」

ウ 発明の実施の形態等
「【0012】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、熱CVD装置、熱拡散装置、熱酸化装置、アニール装置などの半導体製造装置に使用される縦型反応炉(電気炉)を示す縦断面図である。
【0013】図1において、1はウェーハ2に対する種々の処理がなされる反応管(容器)であり、反応管1は石英管などで作製され、図示のように、縦に配置される。ウェーハ2はボート3に上下に多段に載置され、ボート3とともに、反応管1下部の炉口より、搬入・搬出されるようになっている。
【0014】反応管1には、その外周側及び上方を包囲するように、加熱ヒータ4が設けられる。加熱ヒータ4は、断熱材からなる円筒状の本体5と、本体5の内周部に配設されるヒータ素線6と、本体5の外周面に巻き付けられる金属板7とを有する。ヒータ素線6は、図1ないし図2(b)、(c)に示すように、上下方向に4つの発熱ゾーンZ_(1)、Z_(2)、Z_(3)、Z_(4)に電気的に区分されており、図示省略の制御手段によって各発熱ゾーンZ_(1)、Z_(2)、Z_(3)、Z_(4)毎に温度制御ができるようになっている。」
「【0018】下部ブロック9の下部開口部分からは放熱が多く電気消費量が多くなるため、下部ブロック9の発熱ゾーンZ_(4)のヒータ素線6は断線しやすい。そこで、発熱ゾーンZ_(4)で断線が起こった場合のヒータ交換作業について述べると、・・・
【0019】・・・ブロック単位の交換なので、軽量化が図れ、交換作業も容易且つ迅速に行うことができる。」

(2-8)引用例4に記載の技術
上記ア?ウによれば、引用例4には、次の技術が記載されている。

「断熱材の本体からなり、2以上の発熱ゾーンを有する、加熱ヒータを備えた半導体製造装置の縦型反応炉(電気炉)において、下部の発熱ゾーンのヒータ素線が断線した場合に、交換作業を容易にする、発熱ゾーンを単位として区分された複数の分割可能なブロックで構成する技術。」

(3)対比
(3-1)本願補正発明と引用発明とを対比すると、
ア 引用発明の「ヒータ1」は、「円筒形」のものであって、「底板6から最も遠い部分と、底板6に最も近い部分と、それらの中間の部分とを備え」、「半導体製造装置に用いられ」ることから、「複数のゾーンからなる筒状の半導体処理装置用」のヒータといえる。
そして、引用発明の「配線された発熱線2」は、「配線され」ていることから、電気ヒータであることが分かる。
そうすると、引用発明の「縦型半導体製造装置に用いられる円筒形のヒータ1」は、本願補正発明の「複数のゾーンからなる筒状の半導体処理装置用縦型電気ヒータ」に相当する。

イ 引用発明の「底板6から最も遠い部分」と、「底板6に最も近い部分」と、「それらの中間の部分」は、それぞれ、本願補正発明の「トップゾーン」、「ボトムゾーン」、「中間ゾーン」に対応する。

ウ 引用発明の「成型断熱材3」、「ステンレス合金もしくはアルミニウム(アルマイト処理)製のケース5」は、それぞれ、本願補正発明の「主断熱体」、「金属シェル」に相当する。

エ 引用発明の「ブランケット断熱材4」と、本願補正発明の「層状の内断熱材および外断熱材」は、「主断熱体の外周面」を被覆する「層状」の「断熱材」という点で共通する。

オ 引用発明の「発熱線2」は「非金属系(MoSi_(2))」を含むから、「非金属抵抗発熱体」であって、「二珪化モリブデン発熱体」である。
そうすると、引用発明の「発熱線2は、波形に形成され、前記成型断熱材3の内周面上に周方向沿いに波頭の列が揃うとともに、該発熱線の各直線部が縦方向に向くように装着され」ることは、本願補正発明の「非金属抵抗発熱体は、波形に形成された二珪化モリブデン発熱体とされ、前記主断熱体の内周面上に周方向沿いに波頭の列が揃うとともに、該発熱体の各直線部が縦方向に向くように装着され」ることに相当する。

(3-2)したがって、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりとなる。

〈一致点〉
「複数のゾーンからなる筒状の半導体処理装置用縦型電気ヒータであって、抵抗発熱体が筒状主断熱体の内周面に装着されたトップゾーン及び中間ゾーンと、ボトムゾーンとを備え、各ゾーンは、主断熱体の外周面を、被覆する層状の断熱材と、該断熱材の外周面を被覆する金属シェルとを有しており、前記非金属抵抗発熱体は、波形に形成された二珪化モリブデン発熱体とされ、前記主断熱体の内周面上に周方向沿いに波頭の列が揃うとともに、該発熱体の各直線部が縦方向に向くように装着されたものとされている半導体処理装置用縦型電気ヒータ。」

〈相違点〉
相違点1について
本願補正発明は、「金属抵抗発熱体が筒状主断熱体の内周面に装着されたトップゾーン及び中間ゾーンと、非金属抵抗発熱体が筒状主断熱体の内周面に装着されたボトムゾーンとを備え」るのに対し、引用発明の「金属系」及び「非金属系(MoSi_(2))」は、いずれも、「筒状の成型断熱材3」の内周面に装着されるゾーンの特定がされていない点。

相違点2について
本願補正発明では、「可撓性を有する緩衝用セラミック製ファイバマットを介して被覆する層状の内断熱材および外断熱材」を有するのに対し、引用発明では、「ブランケット断熱材4」が、内断熱材及び外断熱材とを区別しておらず、また、「可撓性を有する緩衝用セラミック製ファイバマット」を介していない点。

相違点3について
本願補正発明の「主断熱体」は、「1または複数のブロックから構成され、ブロック単位での交換が可能とされている」のに対し、引用発明の「成型断熱材3」には、そのような構成がない点。

(4)相違点についての検討
(4-1)相違点1及び相違点3
ア 一般に、縦型の円筒形のヒータにおいて、ボトムゾーンの発熱線(ヒータ)の寿命が問題であることは、例えば、引用例2に「エンドゾーンの加熱温度を上げると、高負荷となりヒータの寿命がセンターゾーンのヒータの寿命に比べてかなり短くなり、・・・」(2頁左上欄8行?10行)、引用例4の「開口部34からの熱放出が多く、開口部34付近のヒータの電気消費量が増大するため、断線の発生箇所は、ほとんどは最下部の発熱ゾーンZ_(4)のヒータ素線32に集中している。」(段落【0004】)と記載されているように、本願の国際出願の日前において周知の技術課題である。

イ 引用発明も、「縦型」の「円筒形のヒータ1」であるから、加熱温度を上げる(ヒータの電気消費量が増大する)ことによる、発熱線(ヒータ)の寿命についての上記技術課題を有することは、当業者に自明である。

ウ そして、上記技術課題の解決のための手段として、非金属系(MoSi_(2))をボトムゾーンに配置する引用例2に記載の技術と、発熱ゾーンを単位として区分された複数の分割可能なブロックで構成する引用例4に記載の技術が公知であり、両技術が併用可能なものであることは明らかであるから、当該技術課題をより効果的に解決するために、両技術を併用して採用することは、当業者にとって容易であったといえる。

エ したがって、引用発明において、上記技術課題の解決のために、引用例2に記載の技術と、引用例4に記載の技術を併用し、相違点1及び相違点3の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

(4-2)相違点2
ア 引用発明で採用されているヒータは、縦型半導体製造装置に用いられる円筒形のヒータ1であって、「成型断熱材3の外側には、ブランケット断熱材4が巻き付けられ、ステンレス合金もしくはアルミニウム(アルマイト処理)製のケース5内に収納され」た構成を有しているが、引用発明において、ヒータの構成がこのとおりのものである必然性はないことは明らかである。

イ 他方、引用例3には、半導体熱処理装置用電気ヒータの構成として、「断熱主体」、「内外2つの筒状断熱層」、「セラミックスファイバ製マット」、「シェル」を備えたものが記載されている。そうすると、引用発明において、「ブランケット断熱材4」に代えて、引用例3に記載の構成を採用し、相違点2の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことといえる。

(5)小括
以上検討したとおり、本願補正発明と引用発明との相違点1?3は、引用発明及び引用例2?4に記載の技術を適用することにより、当業者が容易に想到し得たものである。

(6)独立特許要件についてのまとめと補正却下の結び
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2?4に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明

1 以上のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年6月16日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の次のとおりのものである。

「【請求項1】複数のゾーンからなる筒状の半導体処理装置用縦型電気ヒータであって、金属抵抗発熱体が筒状主断熱体の内周面に装着されたトップゾーン及び中間ゾーンと、非金属抵抗発熱体が筒状主断熱体の内周面に装着されたボトムゾーンとを備え、各ゾーンは、主断熱体の外周面を、可撓性を有するセラミックファイバ製マットを介して被覆する層状の内断熱材および外断熱材と、外断熱材の外周面を被覆する金属シェルとを有しており、前記非金属抵抗発熱体は、波形に形成された二珪化モリブデン発熱体とされ、前記主断熱体の内周面の周方向沿いに波頭の列が揃うように装着されたものとされており、前記各ゾーンの主断熱体は、1または複数のブロックから構成され、ブロック単位での交換が可能とされていることを特徴とする半導体処理装置用縦型電気ヒータ。」

2 引用例の記載と引用発明
引用例の記載と引用発明については、前記第2の3(2)で認定したとおりである。

3 対比・判断
前記第2の1及び2で検討したように、本願補正発明は、補正前の請求項1の規定をより技術的に限定するものである。逆に言えば、本願発明(補正前の請求項1に係る発明)は、本願補正発明から、このような限定をなくしたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、これより限定したものである本願補正発明が、前記第2の3で検討したとおり、引用発明及び引用例2?4に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明することができたということができる。

第4 結言

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2?4に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-04 
結審通知日 2011-08-30 
審決日 2011-09-26 
出願番号 特願2004-554929(P2004-554929)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和瀬田 芳正  
特許庁審判長 齋藤 恭一
特許庁審判官 近藤 幸浩
松田 成正

発明の名称 半導体処理装置用縦型電気ヒータ  
代理人 渡邊 彰  
代理人 松村 直都  
代理人 岸本 瑛之助  
代理人 日比 紀彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ