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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1250267 |
審判番号 | 不服2010-11340 |
総通号数 | 147 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-05-26 |
確定日 | 2011-12-28 |
事件の表示 | 特願2008-508689「垂直磁気記録媒体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月11日国際公開、WO2007/114400〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成19年3月31日(優先権主張 平成18年3月31日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成21年8月24日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年12月1日付けで手続補正がなされたが、平成22年1月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月26日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成21年12月1日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 基体上にFe系軟磁性材料又はFeCo系合金軟磁性材料による軟磁性層を形成する軟磁性層形成工程と、 前記軟磁性層の上層としてCoCrPt及び酸化物を含むグラニュラー構造の強磁性層である磁気記録層を形成する磁気記録層形成工程と、 前記磁気記録層の上層又は下層として垂直磁気異方性を有する連続層を形成する連続層形成工程と、 前記連続層形成工程において前記連続層を形成することにより得られた媒体を、逆磁区核形成磁界の値を向上させるために恒温槽で150℃?230℃の範囲の温度で加熱する加熱工程とを備えることを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。」 3.引用例 これに対して、原査定の拒絶理由において引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2003-168207号公報(以下、「引用例1」という。)には図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。 ア) 「【請求項4】非加熱の非磁性基体上に軟磁性裏打ち層を成膜する工程と、該軟磁性裏打ち層上に中間層を成膜する工程と、該中間層上にグラニュラ構造を有するCoCr系合金層の第1の磁性層をスパッタ法により成膜する工程と、該第1の磁性層上に非グラニュラ構造を有するCoCr系合金層の第2の磁性層をスパッタ法により成膜する工程と、該第2の磁性層上に保護層を成膜する工程と、該保護層上に液体潤滑剤層を成膜する工程とを少なくとも備え、 前記第1の磁性層の成膜時のガス圧が10mTorr以上で、かつ、前記第2の磁性層の成膜時のガス圧が15mTorr以下であることを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。 【請求項5】前記第2の磁性層の成膜後に、成膜装置内において前記非磁性基体を加熱処理する工程を備えることを特徴とする請求項4に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。」 イ) 「【0028】(実施例1)非磁性基体として、表面が平滑な化学強化ガラス基板(例えばHOYA社製N-5ガラス基板)を用い、これを洗浄後スパッタ装置内に導入し、CoZrNb非晶質軟磁性裏打ち層を200nm、Ru中間層を30nm積層させた後、CoCrPt-SiO_(2)ターゲットを用いたRFスパッタ法により第1の磁性層を20nm成膜し、更に、CoCrPtBターゲットを用いて第2の磁性層を10nm成膜させた。ここで、第1の磁性層及び第2の磁性層は、ガス圧を種々変化させた条件で成膜している。最後にカーボンからなる保護層5nmを成膜後、真空装置から取り出し、その後、パーフルオロポリエーテルからなる液体潤滑剤層2nmをディップ法により形成して垂直磁気記録媒体とした。なお、成膜に先立つ基板加熱、並びに、磁性層成膜後の加熱・急冷処理は行なっていない。」 ウ) 「【0037】(実施例2)成膜に先立つ基板加熱(前加熱)、及び、第2の磁性層成膜後の加熱(後加熱)、並びに、急冷処理を同一装置内で行って作製したこと以外は上述した実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製した。但し、第1の磁性層成膜時のガス圧を50mTorr、第2の磁性層成膜時のガス圧を5mTorr一定とした。 【0038】表3は、前加熱温度を200℃、後加熱温度200℃、後加熱処理に連続して行う冷却処理工程は10秒後の基板温度が100℃となるように調整を行い、それぞれの処理の有無による保磁力(Hc)並びにSNR値の値を纏めた結果である。」 エ) 「【0040】この表から分かるとおり、前加熱処理を行うことにより、磁気特性並びにSNRが急激に低下しており、第1の磁性層であるグラニュラ磁性層を成膜する際は、事前に加熱せずに成膜プロセスを行なう必要がある。また、後加熱処理を行った場合には磁気特性とSNRの値が大幅に増加している。これは、後加熱処理により第2の磁性層であるCoCr系合金結晶質膜の特性が改善されたためである。更に、後加熱処理に連続して急冷処理を行うことにより、さらに特性が向上していることが分かる。」 オ) 【0039】表3には、前加熱を「なし」、後加熱を「あり」、急冷を「なし」とした実施例の保磁力(Hc)並びにSNR値の値が記載されており、前加熱「なし」、後加熱「なし」、急冷「なし」の場合に比べ、保磁力(Hc)並びにSNR値が大幅に向上することが示されている。 前掲ア)ないしオ)の記載事項及び図面からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「非磁性基体上に軟磁性裏打ち層を成膜する工程と、該軟磁性裏打ち層上に中間層を成膜する工程と、該中間層上にグラニュラ構造を有するCoCr系合金層の第1の磁性層をスパッタ法により成膜する工程と、該第1の磁性層上に非グラニュラ構造を有するCoCr系合金層の第2の磁性層をスパッタ法により成膜する工程と、 該第2の磁性層の成膜後に、成膜装置内において該非磁性基体を加熱処理する工程とを備えた垂直磁気記録媒体の製造方法であって、 該軟磁性裏打ち層は、CoZrNb非晶質軟磁性裏打ち層であり、 該第1の磁性層は、CoCrPt-SiO_(2)ターゲットを用いてRFスパッタ法により成膜され、 該第2の磁性層は、CoCrPtBターゲットを用いて成膜され、 該第2の磁性層成膜後の加熱(後加熱)は200℃である垂直磁気記録媒体の製造方法。」 また、同じく原査定の拒絶理由において引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2004-310910号公報(以下、「引用例2」という。)には図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。 カ) 「【0048】 軟磁性下地層2は、磁気ヘッドから発生する磁束の基板に対する垂直方向成分を大きくするために、また情報が記録される垂直磁性層4の磁化の方向をより強固に非磁性基板1と垂直な方向に固定するために設けられているものである。この作用は特に記録再生用の磁気ヘッドとして垂直記録用の単磁極ヘッドを用いる場合に、より顕著なものとなるので好ましい。 【0049】 上記軟磁性下地層2は、軟磁性材料からなるもので、この材料としては、Fe、Ni、Coを含む材料を用いることができる。 【0050】 この材料としては、FeCo系合金(FeCo、FeCoVなど)、FeNi系合金(FeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSiなど)、FeAl系合金(FeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlOなど)、FeCr系合金(FeCr、FeCrTi、FeCrCuなど)、FeTa系合金(FeTa、FeTaC、FeTaNなど)、FeMg系合金(FeMgOなど)、FeZr系合金(FeZrNなど)、FeC系合金、FeN系合金、FeSi系合金、FeP系合金、FeNb系合金、FeHf系合金、FeB系合金などを挙げることができる。」 4.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)本願発明と引用発明とは、ともに「垂直磁気記録媒体の製造方法」である点で共通している。 (2)引用発明の「非磁性基体」、「軟磁性裏打ち層」は、それぞれ本願発明の「基体」、「軟磁性層」に相当するから、引用発明の「非磁性基体上に軟磁性裏打ち層を成膜する工程」は、本願発明の「基体上に軟磁性層を形成する軟磁性層形成工程」に相当する。 (3)引用発明の「第1の磁性層」は、軟磁性裏打ち層上に中間層を介して成膜されるものであるから、「軟磁性層の上層」であるといえ、さらに、CoCrPt-SiO_(2)ターゲットを用いて成膜されグラニュラ構造を有するものであるから、「CoCrPt及び酸化物を含むグラニュラー構造」であるといえ、また、強磁性の磁気記録層であることは明らかである。 よって、引用発明の「第1の磁性層」は、本願発明の「軟磁性層の上層としてCoCrPt及び酸化物を含むグラニュラー構造の強磁性層である磁気記録層」に相当し、引用発明の「第1の磁性層をスパッタ法により成膜する工程」は、本願発明の「軟磁性層の上層としてCoCrPt及び酸化物を含むグラニュラー構造の強磁性層である磁気記録層を形成する磁気記録層形成工程」に相当する。 (4)引用発明の「第2の磁性層」は、第1の磁性層上に連続して形成されるものであるから「連続層」であるといえ、CoCrPtBターゲットを用いて成膜されることにより、第1の磁性層とともに垂直磁気記録媒体の磁性層を形成するものであるから、垂直磁気異方性を有していることは明らかである。 よって、引用発明の「第2の磁性層」は、本願発明の「磁気記録層の上層又は下層として垂直磁気異方性を有する連続層」のうち、「磁気記録層の上層として垂直磁気異方性を有する連続層」に相当し、引用発明の「第2の磁性層をスパッタ法により成膜する工程」は、本願発明の「磁気記録層の上層として垂直磁気異方性を有する連続層を形成する連続層形成工程」に相当する。 (5)引用発明の「第2の磁性層の成膜後に」「非磁性基体を加熱処理する工程」は、本願発明の「連続層形成工程において連続層を形成することにより得られた媒体を」「加熱する加熱工程」に相当する。 そして、引用発明の加熱処理における加熱温度は200℃であることから、本願発明の「加熱工程」と引用発明の「加熱処理する工程」とは、「150℃?230℃の範囲の温度」のうち、「200℃の温度で加熱する加熱工程」である点で共通している。 以上のことからすると、本願発明と引用発明とは、 「基体上に軟磁性層を形成する軟磁性層形成工程と、 前記軟磁性層の上層としてCoCrPt及び酸化物を含むグラニュラー構造の強磁性層である磁気記録層を形成する磁気記録層形成工程と、 前記磁気記録層の上層として垂直磁気異方性を有する連続層を形成する連続層形成工程と、 前記連続層形成工程において前記連続層を形成することにより得られた媒体を、200℃の温度で加熱する加熱工程とを備える垂直磁気記録媒体の製造方法。」 である点で一致し、次の相違点で相違する。 <相違点1> 軟磁性層の材料に関して、本願発明では、「Fe系軟磁性材料又はFeCo系合金軟磁性材料」であるのに対して、引用発明では、CoZrNbである点。 <相違点2> 加熱工程の作用効果に関して、本願発明では、「逆磁区核形成磁界の値を向上させるため」としているのに対して、引用発明では、前掲エ)の記載を参酌すると、磁気特性とSNRの値を向上させるという作用効果を期待していることは明らかであるものの、本願発明のように「逆磁区核形成磁界の値を向上させるため」とは特定していない点。 <相違点3> 加熱工程の手段に関して、本願発明では、「恒温槽」を用いるのに対して、引用発明では、恒温槽を用いず、成膜装置内において加熱工程を行っている点。 5.当審の判断 上記相違点について検討する。 <相違点1>について 引用例2には、垂直磁気記録媒体に設けられる軟磁性下地層の材料として、Feを含む軟磁性材料、例えばFeCo系合金を用いることが記載されている。また、引用例2には、Feを含む軟磁性材料として、FeCo系合金のほかに、FeNi系合金、FeTa系合金(FeTaC、FeTaN)も記載されており、これらは本願の発明の詳細な説明【0012】に記載されているFe系軟磁性材料と同一である。 引用発明も引用例2に記載の発明も、ともに軟磁性下地層を有する垂直磁気記録媒体という同一の技術分野に属するものであり、かかる軟磁性下地層が果たす機能も共通していることは明らかであるから、引用発明のCoZrNbからなる軟磁性下地層に代えて、引用例2に記載のFeを含む軟磁性材料、例えばFeCo系合金からなる軟磁性下地層を用いること、すなわち「Fe系軟磁性材料又はFeCo系合金軟磁性材料」を用いるとすることは、当業者であれば容易になし得る事項である。 <相違点2>について 本願発明の加熱工程も引用発明の加熱工程も、磁気特性の向上を図るという点において、その作用効果は共通するものであって、さらに、基板上に軟磁性層、CoCrPt及び酸化物を含むグラニュラー構造の強磁性層、連続層を順に形成した後に、200℃の温度で加熱するという具体的工程も一致しているものである。してみると、磁気特性を向上させるために行われる引用発明の加熱工程も、当然、逆磁区核形成磁界の値を向上させるという本願発明の加熱工程と同等の作用効果を奏していると解するのが相当であり、上記相違点2が、両者の加熱工程に実質的な差異をもたらしているとはいえない。 <相違点3>について 磁気記録媒体の製造における加熱工程を、恒温槽を用いて行うことは、特開2003-168206号公報(特に、第8欄第11行-同欄第15行参照。)、特開昭63-213116号公報(特に、第2頁左下欄第11行-同頁右下欄第5行参照。)に示されるように周知技術であるから、引用発明の加熱工程を、成膜装置内ではなく周知技術の「恒温槽」を用いて実施することは、熱処理手段の単なる置き換えに過ぎず、当業者であれば適宜実施しうる程度の事項である。 なお、出願人は、平成22年6月15日付けの手続補正書(審判請求書 請求の理由の補正)において、本願発明と引用文献2(引用発明)との差異に関して、 「引用文献2には、非グラニュラ構造の第2の磁性層の成膜後に、成膜装置内において加熱処理することが記載されています(請求項5、実施例2等)。さらに、成膜装置内において急冷することが記載されています(請求項6、実施例2等)。 なお、急冷ことは記載されていますが、徐冷することについては記載がありません。これは、成膜装置内で冷却する以上、プロセスタイム内で冷却する必要があるためであり、冷却のための時間に制限があるためと考えられます。 しかし、急激な加熱や冷却は熱衝撃(熱伝達速度と膨張率の違いによって生じる歪み)を生じ、基板に割れを生じたり、磁性層等の金属皮膜の剥がれを誘発するおそれがあります。また加熱による結晶化促進の効果を十分に得ようとする場合、徐冷した方がよいことは自明です。 これに対し本発明のように、成膜装置から取り出して恒温槽で加熱処理することにより、加熱処理に要する処理が成膜装置のプロセスタイムに与える影響を排除することができます。例えば成膜装置のプロセスタイムよりも加熱処理に要する時間が長かったとしても、恒温槽でそれに応じた多い枚数をバッチ処理することにより、単位時間あたりの処理枚数を一致させることができます。従ってプロセスタイムの制限を受けることなく、また生産性を落とすことなく、所望の時間をかけて加熱と冷却を行うことができます。この点において、引用文献2と本発明の構成は大きく異なっています。」 と主張している。 出願人の前記主張は、要するに、加熱後の冷却に関して、引用発明は急冷するのに対して、本願発明は徐冷する点で相違するというものである。 しかしながら、本願発明(本願の請求項1)には徐冷することは一切記載されておらず、さらに、本願の発明の詳細な説明の記載を参酌しても、加熱工程を恒温槽で行うことは開示されているものの、徐冷することは一切開示されていない。よって、本願発明は徐冷するという出願人の前記主張は、請求項1の記載に基づかない主張であり、さらに、発明の詳細な説明に開示されていない技術事項を主張するものであって、採用することはできない。 仮に、本願発明が徐冷するものであったとしても、本願発明の徐冷とは、具体的に、どの程度の冷却速度を意図しているのか不明である。 一方、引用発明では、加熱後の冷却に関して、前掲エ)の「後加熱処理を行った場合には磁気特性とSNRの値が大幅に増加している。これは、後加熱処理により第2の磁性層であるCoCr系合金結晶質膜の特性が改善されたためである。更に、後加熱処理に連続して急冷処理を行うことにより、さらに特性が向上していることが分かる。」としていることから、引用発明の急冷は磁気特性をさらに向上させるために行っているものであり、後加熱処理で磁気特性が改善されるところ、急冷を必須としているものではなく、急冷しない場合も磁気特性が向上する実施例として想定していることは明らかである。 このことは、前掲オ)の【0039】表3において、保磁力(Hc)並びにSNR値の値が、前加熱「なし」、後加熱「あり」、急冷「なし」とした場合が、前加熱「なし」、後加熱「なし」、急冷「なし」の場合に比べて大幅に向上することが示されていることからも自明である。 してみると、仮に、本願発明が徐冷するものであったとしても、本願発明の徐冷とは、具体的に、どの程度の冷却速度を意図しているのか不明であるところ、引用発明の急冷「なし」とした場合に比べて、本願発明と引用発明とはどの程度冷却速度が異なるのか明らかではなく、引用発明の急冷「なし」の場合と実質的な差異を有するものとは認めらない。 以上のとおりであるから、引用発明は急冷するのに対して本願発明は徐冷する点で相違するという出願人の前記主張は、請求項1の記載に基づかない主張であり、さらに、発明の詳細な説明に開示されていない技術事項を主張するものであって、かつ、その意図する技術事項も不明であり引用発明との実質的な差異が認められるものではないことから、採用することができない。 また、出願人は、前記主張において、本願発明は、「加熱処理に要する処理が成膜装置のプロセスタイムに与える影響を排除することができます。例えば成膜装置のプロセスタイムよりも加熱処理に要する時間が長かったとしても、恒温槽でそれに応じた多い枚数をバッチ処理することにより、単位時間あたりの処理枚数を一致させることができます」と主張するが、かかる効果は恒温槽を用いることによって当然奏される効果というべきものであって格別のものではない。 そして、引用発明の加熱工程に恒温槽を用いることは、前掲「<相違点3>について」で説示したように、周知の熱処理手段の単なる置き換えにすぎず、当業者であれば適宜実施しうる程度の事項であることから、出願人が主張する前記効果も、周知の熱処理手段に置き換えた結果として当然奏される効果であって、当業者が予測しえないものとはいえない。 そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明の効果は、引用発明、引用例2に記載された発明及び周知技術から当業者が十分に予測しうる程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとはいえない。 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6. むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-07-26 |
結審通知日 | 2011-08-02 |
審決日 | 2011-08-16 |
出願番号 | 特願2008-508689(P2008-508689) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 馬場 慎 |
特許庁審判長 |
小松 正 |
特許庁審判官 |
月野 洋一郎 関谷 隆一 |
発明の名称 | 垂直磁気記録媒体の製造方法 |
代理人 | 特許業務法人 アクア特許事務所 |