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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A41B
管理番号 1250316
審判番号 不服2010-25561  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-12 
確定日 2012-01-10 
事件の表示 特願2004-329915「吸収性物品」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 1日出願公開、特開2006-136583〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成16年11月15日の出願であって、平成22年8月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月12日に拒絶査定を不服として審判請求がなされたものである。そして、平成23年8月26日付けで当審から拒絶理由が通知され、同年10月26日付けで手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成23年10月26日付け手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「着用者の腹側に当接する部位と背側に当接する部位とを腰回りで止着して着用され、前記着用者からの排泄物を受けるオープンタイプの吸収性物品であって、
本体部と、
前記本体部の長手方向に垂直な幅方向の両側に設けられた一対の側壁部と、
を備え、
前記本体部が、
広げた状態において前記一対の側壁部と重なる吸収体と、
前記吸収体の着用者側の主面を覆うトップシートと、
前記吸収体のもう一方の主面を覆うバックシートと、
を備え、
前記吸収体が、前記トップシートを介して視認可能な目印を備え、
前記目印が、前記トップシートの着用者側に取り付けられる補助吸収具の位置決めに利用され、前記補助吸収具を取り付けた際に、前記目印全体が、前記補助吸収具の前記長手方向の両端よりも中央側に位置することを特徴とする吸収性物品。」

3 引用発明
これに対して、当審における、平成23年8月26日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2002-632号公報(以下、「引用例1」という。)、特開平8-280725号公報(以下、「引用例2」という。)及び特開2003-93438号公報(以下、「引用例3」という。)には、それぞれ以下の事項が記載されている。

[引用例1]
(1)「【0005】
【発明の実施の形態】・・・。本発明の第1実施形態の補助吸収具1は、図3に示すように、使い捨ておむつ10の内表面P上に配されて、その使い捨ておむつ10と共に着用される使い捨ての補助吸収具である。」

(2)「【0012】・・・補助吸収具1は、着用者の排尿部に、その中央部が当接するように配置することが好ましく、また、交換の前後で補助吸収具1の配置位置を変更しないことが好ましい。」

(3)図3には、本体部と、前記本体部の長手方向に垂直な幅方向の両側に設けられた一対の側壁部と、を備え、前記本体部が、広げた状態において前記一対の側壁部と重なるおむつの吸収体(14)と、前記吸収体の着用者側の主面を覆うおむつの表面シート(12)と、前記吸収体のもう一方の主面を覆うおむつの裏面シート(13)と、を備えたオープンタイプの使い捨ておむつ(10)の内表面(P)上長手方向のほぼ中央部に補助吸収具(1)が配されることが示されている。

以上の記載事項によると、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「本体部と、
前記本体部の長手方向に垂直な幅方向の両側に設けられた一対の側壁部と、
を備え、
前記本体部が、
広げた状態において前記一対の側壁部と重なるおむつの吸収体と、
前記吸収体の着用者側の主面を覆うおむつの表面シートと、
前記吸収体のもう一方の主面を覆うおむつの裏面シートと、
を備えた、オープンタイプの使い捨ておむつ。」

[引用例2]
(1)「【0016】而して、本実施例の使い捨ておむつ1は、上記トップシート2側における上記背側部Aの幅方向略中央部に、おむつの長手方向に沿って目安線10が設けられている。更に詳述すると、上記目安線10は、上記トップシート10に線を記入して、上記背側部Aのみに設けられている。
【0017】そして、上記使い捨ておむつ1を使用するには、図2に示すように、使用者を横伏させた後、使用者のお尻側に上記使い捨ておむつ1のトップシート2側を上にして敷設し、図3に示すように、使用者を仰向けに転動させ、上位腹側部Cを使用者の腹側に位置させ、上記ファスニングテープ20を上記ランディングテープ21に粘着させておむつを止着することによりおむつを装着させて使用することができる。また、上記使い捨ておむつ1は、図4に示すように、上記目安線10を使用者の背骨に当接させるようにして位置決めをし、次いで、使用者を転動させることにより、図3に示すような状態としておむつを装着させることもできる。・・・。
【0018】上述の如く、上記使い捨ておむつ1には、上記目安線10が設けられているので、上記目安線10の位置と使用者の背骨の位置とを確認することにより、おむつを該おむつの吸収性能を最大限に発揮し得る適正位置に容易に配することができる。」

[引用例3]
(1)「【0017】・・・吸収体5は、形状保持と透液性トップシート3を透過した体液の拡散性向上のためにクレープ紙(図示せず)によって囲繞されている。」

(2)「【0024】・・・紙おむつ1A側に設けられた装着位置決め用目印9a?9e、すなわち紙おむつの表面側であってかつ背側寄り位置に、おむつ長手方向に所定間隔で描かれた1または複数の装着位置目印(横ライン)は、前記インナーパッド2Aの紙おむつ1A上における長手方向の位置決めを成す長手方向位置決め用目印となるものであり、前後端部の中央位置に縦ラインとして表現された前記装着位置決め用目印10a、10bは、紙おむつ1A上における幅方向の位置決めを成す幅方向位置決め用目印となるものである。これらの目印は、紙おむつの表面側から視認できれば、紙おむつ1Aの構成要素となる不透液性バックシート4,透液性トップシート3、クレープ紙およびギャザーシート6のいずれかへの印刷であってもよいし、・・・。」

(3)「【0027】前記インナーパッド2Aを紙おむつ1Aへ装着するに際しては、インナーパッド2Aの種類やサイズ等に合わせて、或いは装着位置決め用目印9a?9eの内、常用している線位置に合わせてインナーパッド2Aの上部側端縁2aを合わせるようにするとともに、インナーパッド2Aの位置合わせ用目印18a、18bを紙おむつ1Aの位置決め用目印10a、10bに合わせるようにしながら装着する。」

4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「展開型の使い捨ておむつ」、「おむつの吸収体」、「おむつの表面シート」及び「おむつの裏面シート」は、それぞれ本願発明における「着用者の腹側に当接する部位と背側に当接する部位とを腰回りで止着して着用され、前記着用者からの排泄物を受けるオープンタイプの吸収性物品」、「吸収体」、「トップシート」及び「バックシート」に対応する。
したがって、両者は

「着用者の腹側に当接する部位と背側に当接する部位とを腰回りで止着して着用され、前記着用者からの排泄物を受けるオープンタイプの吸収性物品であって、
本体部と、
前記本体部の長手方向に垂直な幅方向の両側に設けられた一対の側壁部と、
を備え、
前記本体部が、
広げた状態において前記一対の側壁部と重なる吸収体と、
前記吸収体の着用者側の主面を覆うトップシートと、
前記吸収体のもう一方の主面を覆うバックシートと、
を備える吸収性物品」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願発明に係る使い捨ておむつは、吸収体が、トップシートを介して視認可能な目印を備え、前記目印が、前記トップシートの着用者側に取り付けられる補助吸収具の位置決めに利用され、前記補助吸収具を取り付けた際に、前記目印全体が、前記補助吸収具の前記長手方向の両端よりも中央側に位置するのに対し、引用発明に係る使い捨ておむつは、補助吸収具の位置決めに利用される目印を備えていない点。

5 判断
上記相違点について検討する。
本願発明は、明細書の段落【0006】等に記載があるように、吸収体の位置(または範囲)を容易に特定し、補助吸収具を吸収体に対する適切な相対位置に正確に取り付けることを目的としたものである。
引用例1には、補助吸収具を、オープンタイプのおむつの内表面上の長手方向のほぼ中央部において、着用者の排尿部に、その中央部が当接するように配置する、すなわち適正位置に配置するという、本願発明の目的と共通する事項が記載されている。
そして、オープンタイプのおむつの吸収体に、インナーパッド、すなわち補助吸収具の位置合わせ用の目印を、表面シート側から視認可能に設けることは、例えば引用例3にも記載があるように、本願出願前に周知の技術手段である。
さらに、引用例2に記載された、背側部Aのみに設けられている目安線は、おむつに対して使用者を位置合わせするために設けられたものであるが、対象物である使用者をおむつに配置したときにその全体が視認不能となる位置に設けられたものである。
したがって、引用発明における「吸収体」に、補助吸収具を適正位置に配置するために、上記周知の表面シート側から視認可能である補助吸収具の位置合わせ用の目印を採用し、また、それを設ける位置としては、引用例2に記載されているように、対象物である補助吸収具をおむつに配置したときにその全体が視認不能となる位置、すなわち補助吸収具を取り付けた際に、前記目印全体が、前記補助吸収具の長手方向の両端よりも中央側に位置する位置とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことであり、その効果も当業者が予測できる範囲のものである。

なお、請求人は、平成23年10月26日付け意見書の2ページ下から10行?3ページ8行において、本願請求項1に係る吸収性物品は、吸収性物品に補助吸収具を取り付けた後に、補助吸収具の位置を目印に合わせて微調整しようと考えることを防止することができ、作業者による装着作業の迅速性を実現するという効果を奏する旨主張している。しかし、当該効果は本願の明細書又は図面に記載されたものではないし、仮に、当該効果について本願の明細書又は図面に記載されていたとしても、当該効果は当業者であれば予測できる範囲のものであって、格別なものではない。したがって、請求人の上記主張は採用できない。

6 むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-15 
結審通知日 2011-11-18 
審決日 2011-11-29 
出願番号 特願2004-329915(P2004-329915)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 直  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 熊倉 強
一ノ瀬 薫
発明の名称 吸収性物品  
代理人 松阪 正弘  

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