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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1250387
審判番号 不服2009-15318  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-21 
確定日 2012-01-11 
事件の表示 特願2006-547417「画像を自動的に捕捉し、管理する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月21日国際公開、WO2005/065283、平成19年 7月26日国内公表、特表2007-520934〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一 経緯
1 手続
本願は、平成16年12月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年12月24日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成20年9月9日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成20年12月12日付けで手続補正がなされたが、平成21年4月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年8月21日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2 査定
原査定の理由は、概略、以下のとおりである。

補正後の各請求項にかかる発明は、下記の引用文献及び周知技術から容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


1.特開2000-209483号公報
2.特開平11-136557号公報
3.特開2001-282699号公報(拒絶査定時に周知例として引用)

第二 本願発明
本願の請求項1から38までに係る各発明は、本願明細書、特許請求の範囲及び図面(平成20年12月12日付けの手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面)の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1から38までに記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「画像を取得する手段と、
前記取得画像を1次メモリに記憶する手段と、
前記取得画像の等級を決定する手段と、
前記等級に基づいて、前記取得画像を2次メモリに記憶する手段と、
前記取得画像を第2の装置に送信する手段と、を含むカメラ。」

第三 当審の判断
1 刊行物
1-1 引用刊行物の記載
原査定の拒絶理由で引用された特開2000-209483号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次に掲げる事項が記載されている。

(1)「【発明の属する技術分野】本発明は、撮影状態や画質の良好な画像データを選別保存する電子カメラ、およびプログラムを記録した記録媒体に関する。」(0001段落)

(2)「【従来の技術】一般に、手持ちでカメラ撮影を行うようなケースでは、往々にして手ブレを生じてしまう。このような手ブレが生じると、被写界が流れて露光されるため、全体にぼやけた画像が撮影される。このようにぼやけてしまった画像は、画面全体の細かなディテールが失われる上に、くっきり写るべきエッジ部分がだれてしまう。そのため、非常に印象の良くない画像となる。」(0002段落)

(3)「そこで、本発明では、上述の問題点を解決しつつ、かつ手ブレなどの少ない良好な画像データを確実に得る電子カメラを提供することを目的とする。特に、請求項1に記載の発明では、背景画像のボケなどに左右されずに、被写体画像の良否に応じて、画像データを良否選別することが可能な電子カメラを提供することを目的とする。」(0006段落)

(4)「この撮像素子14の画像出力は、色信号処理やA/D変換やγ補正などを行う画像処理部15を介して、画像メモリ16に記憶される。その他、画像メモリ16のデータバスには、画像圧縮部17および画像表示回路24がそれぞれ接続される。この画像圧縮部17は、マイクロプロセッサ18に接続される。このマイクロプロセッサ18には、カードインターフェース19を介してメモリカード20が着脱自在に接続される。」(0037段落)

(5)「マイクロプロセッサ18は、これらの動作を、レリーズ釦30が押されるまで繰り返す(ステップS3のNO側)。この状態で、操作者によってレリーズ釦30が押されると(ステップS3のYES側)、マイクロプロセッサ18は、CCD駆動回路21を介して撮像素子14を駆動し、1コマ分の撮像を実行する(ステップS4)。」(0042段落)

(6)「一方、停止フラグがセット状態の場合(ステップS6のYES側)、マイクロプロセッサ18は、良否評価ルーチン(後述)を実行し、連続撮像された画像データの良否評価をまとめて実行する(ステップS7)。次に、マイクロプロセッサ18は、良否評価結果の少なくとも一つが、予め定めた許容値を上回っているか否かを判定する(ステップS8)。」(0044段落)

(7)「一方、ステップS9において、画像を自動選別する動作条件が選択されていた場合(ステップS9のNO側)、マイクロプロセッサ18は、良否評価の順位1番目の画像データを良画像として選別する(ステップS12)。」(0047段落)

(8)「このようして、ステップS11またはステップS12で選別された良画像を、マイクロプロセッサ18は、カードインターフェース19を介してメモリカード20に圧縮記録する。以上のような一連の動作により、良否選別モードの撮影動作が完了する。次に、上述した各種サブルーチンの内容について個々に説明する。」(0048段落)

(9)「(良否評価ルーチンの説明)次に、良否評価ルーチンについて説明する。図7は、マイクロプロセッサ18が実行する良否評価ルーチンを示す図である。まず、メインルーチンから良否評価ルーチンが起動されると、マイクロプロセッサ18は、未評価の画像データを一つ選び、その画像データから評価エリア内のデータを抽出する(ステップS60)。マイクロプロセッサ18は、このように抽出した評価エリア内のデータを、画像圧縮部17を用いて次の手順で処理する(ステップS61)。」(0067段落)

(10)「(1)画像圧縮部17は、評価エリア内のデータを8×8の画素ブロックに分割する。」(0068段落)

(11)「(2)画像圧縮部17は、各画素ブロックごとに、DCT変換(離散コサイン変換)を実行する。」(0069段落)

(12)「(3)画像圧縮部17は、各画素ブロックごとに、DCT変換係数を加重加算する。このとき、DCT変換係数に、ジグザグスキャン順(空間周波数の高い順番)の重みを付けることにより、空間周波数の高域成分がどれほど含まれているかを示す評価値が得られる。
このように求めた各画素ブロックごとの評価値をさらに加重加算することにより、評価エリア全体の評価値を得る(ステップS62)。なお、このとき、図5(c)に示すように、評価エリアを周辺部C1,中間部C2,中央部C3の三領域に分け、下式のように、エリア中央に近い画素ブロックほど、評価の重みを大きく設定する。」(0070段落)

(13)「[C1の評価重み]=0.3
[C2の評価重み]=0.6
[C3の評価重み]=1.0
ここで、マイクロプロセッサ18は、評価エリアが複数か否かを判定する(ステップS63)。」(0071段落)

(14)「もしも、評価エリアが単数の場合、マイクロプロセッサ18は、評価値の算出を完了したと判断して良否評価ルーチンを終了して、メインルーチンに動作を戻す。一方、評価エリアが複数の場合、マイクロプロセッサ18は、各評価エリアの評価値について、(1)加重加算(2)多数決演算(3)最大値演算(4)最小値演算などを実行し、総合的な評価値を求める(ステップS64)。このような一連の処理を、撮像済みの画像データ全てについて実施する(ステップS65)。」(0072段落)

1-2 刊行物1に記載された発明

ア カメラについて
上記(1)の「画像データを選別保存する電子カメラ」、(3)の「画像データを確実に得る電子カメラを提供することを目的とする。」、「可能な電子カメラを提供することを目的とする。」の記載からみて、刊行物1には、「カメラ」の発明が記載されているといえる。

イ 撮像素子について
上記(4)の「この撮像素子14の画像出力は、色信号処理やA/D変換やγ補正などを行う画像処理部15を介して、画像メモリ16に記憶される。」、(5)の「撮像素子14を駆動し、1コマ分の撮像を実行する。」の記載によれば、刊行物1の撮像素子14は、撮像し画像を出力する手段であるといえる。

ウ 撮像した画像の記憶について
上記(4)の「この撮像素子14の画像出力は、色信号処理やA/D変換やγ補正などを行う画像処理部15を介して、画像メモリ16に記憶される。」の記載によれば、当該撮像素子14で撮像された画像は、画像メモリ16に記憶されているから、刊行物1に記載されたカメラは、撮像素子14で撮像された画像を画像メモリ16に記憶する手段を有しているといえる。

エ 撮像した画像の評価について
上記(6)の「マイクロプロセッサ18は、良否評価ルーチン(後述)を実行し、連続撮像された画像データの良否評価をまとめて実行する」の記載によると、マイクロプロセッサ18は、撮像された画像データの良否評価ルーチンを実行するものといえる。
また、上記(9)-(14)の「メインルーチンから良否評価ルーチンが起動されると、マイクロプロセッサ18は、未評価の画像データを一つ選び、その画像データから評価エリア内のデータを抽出」、「評価エリア内のデータを8×8の画素ブロックに分割」、「各画素ブロックごとに、DCT変換(離散コサイン変換)を実行」、「各画素ブロックごとに、DCT変換係数を加重加算・・・、DCT変換係数に、ジグザグスキャン順(空間周波数の高い順番)の重みを付けることにより、空間周波数の高域成分がどれほど含まれているかを示す評価値が得られ・・・各画素ブロックごとの評価値をさらに加重加算することにより、評価エリア全体の評価値を得る」の記載によると、上記良否評価ルーチンにおいては、画像に対して、ブロック毎に、空間周波数の高域成分がどれほど含まれているかを示す評価値が得られ、その評価値について演算を施すことによって、総合的な評価値が求められているものといえる。
したがって、刊行物1に記載されたカメラは、撮像した画像の総合的な評価値を決定する手段を有しているものと言える。

オ 評価値に基づいて画像をメモリに記憶する点について
上記(7)の「マイクロプロセッサ18は、良否評価の順位1番目の画像データを良画像として選別」、(8)の「選別された良画像を、マイクロプロセッサ18は、カードインターフェース19を介してメモリカード20に圧縮記録する。」によると、マイクロプロセッサ18は、上記良否評価の順位1番目の画像データを良画像として選別し、メモリカード20に記録する手段といえる。
ここで、良否評価(ルーチン)とは、前述したように、各画像に対して総合的な評価値を求めることをいうのであるから、「良否評価の順位1番目の画像データ」とは、当該総合的な評価値が一番高い値を示す画像データを意味していると解される。すなわち、良画像であるかどうかの判断は、上記総合的な評価値に基づいているのであるから、メモリカード20に画像データを記録するかどうかも、総合的な評価値に基づいているものであるといい得るものである。
したがって、刊行物1に記載されたカメラは、総合的な評価値に基づいて、前記撮像した画像をメモリカードに記録する手段を有しているものと言える。

カ まとめ
上記ア-オによると、刊行物1に記載された発明(以下「刊行物1発明」という)として、以下のとおりのものを認定することができる。

「撮像し画像を出力する手段(撮像素子14)と、
撮像素子14で撮像された画像を画像メモリ16に記憶する手段と、
撮像した画像の総合的な評価値を決定する手段と、
総合的な評価値に基づいて、撮像した画像をメモリカードに記録する手段と、
を含むカメラ。」

2 対比
(1)画像を取得する手段について
刊行物1発明の「撮像素子」が行う、画像の「撮像」とは、画像を取得することであるから、刊行物1発明における「撮像し画像を出力する手段(撮像素子14)」は、本願発明における「画像を取得する手段」に対応する。

(2)前記取得画像を1次メモリに記憶する手段について
上述したとおり、刊行物1発明における画像の「撮像」とは、本願発明における画像の「取得」に対応するものであるから、刊行物1発明における「撮像された画像」は、本願発明における「取得画像」に対応するものである。
また、刊行物1発明における撮像された画像は、撮像された後「画像メモリ16」に記憶され、後述する「総合的な評価」を行った後、「メモリカード」に記憶される。
すなわち、刊行物1発明では、取得画像は、「画像メモリ16」に記憶され、その後当該画像を処理し、次のメモリに記憶されるものであるといえる。
これに対して、本願発明では、取得画像は、取得された後、「1次メモリ」に記憶され、後述する「等級の決定」を行った後、「2次メモリ」に記憶されるのであるから、本願発明の取得画像は「1次メモリ」に記憶され、その後当該画像を処理し、次のメモリに記憶されるものである。
以上のことから、刊行物1発明の「画像メモリ16」は、取得画像を処理し、次のメモリに記憶される前に、上記取得画像を記憶するものである点で、本願発明の「1次メモリ」に対応する。
本願発明の「等級の決定」、「2次メモリ」と、刊行物1発明の「総合的な評価」、「メモリカード」との対応については、下記の(3)、(4)参照。

(3)前記取得画像の等級を決定する手段について
本願発明における「等級」とは、本願明細書の0030段落の記載「等級 - 画像の品質を示す情報。一例では、等級は、画像の品質の尺度を含むことができる。」、0129段落「鮮明さの等級915は、画像の焦点の相対的鮮明さまたはレベルを示すことが好ましい。例えば、画像が鮮明な方が、不明瞭または焦点が甘い画像より高い鮮明さの等級を有する。」等によると、「画像の品質を示す情報」であって、例えば、画像が鮮明であることも一つの尺度となっている。
これに対して、刊行物1発明における「総合的な評価値」とは、0002段落の「このような手ブレが生じると、被写界が流れて露光されるため、全体にぼやけた画像が撮影される。このようにぼやけてしまった画像は、画面全体の細かなディテールが失われる上に、くっきり写るべきエッジ部分がだれてしまう。そのため、非常に印象の良くない画像となる。」、0006段落の「かつ手ブレなどの少ない良好な画像データを確実に得る電子カメラを提供することを目的とする。」等の記載からみて、「ブレがない」、「ぼやけてしまっていない」画像を得るための評価値であるということができる。すなわち、ぼやけていないのであるから、鮮明な画像を選択しているということができる。
このことからみて、本願発明の等級と、刊行物1発明の評価値とは、ともに、画像が鮮明であることを尺度の一つとして、画像を選択している点で対応している。
したがって、刊行物1発明における「前記撮像した画像の総合的な評価値を決定する手段」は、本願発明における「前記取得画像の等級を決定する手段」に対応する。

(4)前記等級に基づいて、前記取得画像を2次メモリに記憶する手段について
上記(1)、(3)で検討したとおり、本願発明の「取得画像」、「等級」と刊行物1発明の「撮像した画像」、「総合的な評価値」とは、それぞれ、対応している。
また、刊行物1発明の「メモリカード」は、「撮像素子14で撮像された画像を画像メモリ16に記憶する手段」の画像メモリとは異なるから、これを「2次メモリ」と称してもよいことは明らかである。
したがって、刊行物1発明の「総合的な評価値に基づいて、撮像した画像をメモリカードに記録する手段」は、本願発明の「等級に基づいて、前記取得画像を2次メモリに記憶する手段」と対応する。

(5)前記取得画像を第2の装置に送信する手段について
刊行物1発明は「取得画像を第2の装置に送信する手段」を有していない。

(6)カメラについて
刊行物1発明と本願発明とは、ともにカメラに関する発明である点で一致する。

3 一致点、相違点
本願発明と刊行物1発明との以上の対比によれば、本願発明と刊行物1発明とは、

[一致点]
「画像を取得する手段と、
前記取得画像を1次メモリに記憶する手段と、
前記取得画像の等級を決定する手段と、
前記等級に基づいて、前記取得画像を2次メモリに記憶する手段と、
を含むカメラ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願発明は、「前記取得画像を第2の装置に送信する手段」を有しているのに対し、刊行物1発明は、そのような手段を備えていない点。

4 判断
上記相違点について検討する。

一般に、カメラにおいて、取得した画像を第2の装置に送信することは、以下の周知例1-3に示されるように、普通に行われていることであって、刊行物1発明に係るカメラも、カメラで取得した画像を他の装置に出力したいという要望があることは当然予測し得たことであるから、刊行物1発明において、撮像(すなわち、取得)された画像を第2の装置に送信することは、当業者が容易になし得ることである。

<周知例1>
特開2001-282699号公報には、以下の記載がある。

(A)「本発明は、デジタルボイスレコーダやデジタルスチルカメラなどの不揮発性メモリを搭載した機器とパーソナルコンピュータ間で通信を行うためのパーソナルコンピュータ・インターフェース装置及びこれに接続する機器に関する。」(0001段落)

(B)「【従来の技術】従来は、パーソナルコンピュータ(以下、PCという)と、不揮発性メモリを内蔵若しくは搭載可能な機器(以下、不揮発性メモリを搭載した機器という)との通信方法として、機器側の制御装置(例えばCPU又はMPU)が機器内の不揮発メモリからデータを読み出し、機器内の通信手段へ転送し、さらにPCへ転送する(アップロード)ことが行われていた。その逆にPCからのデータをダウンロードする場合は、PC側のデータを機器内の通信手段に転送し、該データを機器側の制御装置が機器内の通信手段から読み取って不揮発性メモリに書き込むという方法で行われていた。」(0002段落)

デジタルスチルカメラが、撮像、すなわち、取得した画像を不揮発性メモリに記憶するものであることは、当業者にとって明らかであるところ、周知例1には、上記(A)(B)からすると、デジタルスチルカメラの不揮発性メモリに記憶されたデータ、すなわち、取得した画像を、第2の装置であるパーソナルコンピュータに転送、すなわち、送信することが記載されていると言える。

<周知例2>
特開2002-16865号公報には、以下の記載がある。

(A)「【0017】また、電子カメラ10には、情報や画像データを着脱可能な記録媒体54に記録したり読み出したりするために変換するとともに、記録媒体54に記録されている情報の消去禁止又は許可に関する情報を記録媒体54の所定の位置に記録する記録媒体インターフェース56が設けられている。記録媒体54はメモリーカードやMO等の半導体、磁気記録、光記録に代表される着脱可能な記録媒体である。
【0018】他の通信装置と画像データ等を送受信する場合に用いる電子カメラ10の無線通信手段は、情報処理手段44からの指令により画像データ等の情報を符号化、複合化して送信又は受信する送受信手段60(通信手段)と、搬送波及びデータを送受信するアンテナ62と、お互いの通信装置どうしをケーブルで接続して有線にて通信を行うための通信コネクタ64とから構成されている。
【0019】このように構成された通信手段を介して、画像ファイルや、記録媒体54、RAM、ROM、フレームメモリ48、に記憶されている情報を他の通信装置に送信したり、他の通信装置から情報を受信して前記各記憶手段に記憶することが可能となる。なお、上記の電波による無線通信手段に代えて、赤外線等の光を用いた無線通信手段を利用してもよいし、ケーブルで各装置間を接続して通信を行う有線通信手段を利用してもよい。」(0017-0019段落)

(B)「撮像した画像データを手動で他の通信装置に送信する際には、例えばモード切替ダイヤル22を送信モードに設定して撮像を実施する。そして、撮像が終了してから入力手段50に設定されている送信ボタンを押して、情報処理手段44は指定された画像データを順次記録媒体54又はフレームメモリ48から読み出し、所定のデータ形式に変換したのちに送受信手段60とアンテナ62又は通信コネクタ64とを介して外部に送信する処理を実行する方法を用いてもよい。」(0038段落)

周知例2には、上記(A)(B)からすると、電子カメラにおいて、記録媒体54に記憶された撮像した画像データ、すなわち、取得画像を、第2の装置である他の通信装置に送信することが記載されていると言える。

<周知例3>
特開平10-243329号公報には、以下の記載がある。

(A)「本発明は、デジタルスチルカメラおよび画像転送方法、並びに記録媒体に関し、特に、撮像した画像のうちの任意の画像を、簡単に外部機器に転送することができるようにした、デジタルスチルカメラおよび画像転送方法、並びに記録媒体に関する。」(0001段落)

(B)「最初にステップS51において、使用者は、パーソナルコンピュータ31を操作して、撮像画像の転送を指令する。この指令は、I/Oポート25を介してCPU21に入力される。CPU21は、この指令が入力されてきたとき、フラッシュメモリ14に記憶されている管理テーブル(図6)を参照して、最初の1つ(例えば番号1)の撮像画像を選択する。そして、ステップS53(制御手段)に進み、その番号の撮像画像の転送フラグがオンされているか否か(論理1であるか否か)を判定する。図6に示すように、例えば、番号1の転送フラグは論理1とされている。従って、この場合には、ステップS54(制御手段)に進み、CPU21は、番号1の画像データをフラッシュメモリ14から読み出し、I/Oポート25を介して、パーソナルコンピュータ31に画像データP1を転送させる。」(0036段落)

周知例3には、上記(A)(B)からすると、デジタルスチルカメラにおいて、フラッシュメモリ14に記憶された撮像画像、すなわち、取得画像を、第2の装置であるパーソナルコンピュータ31に転送、すなわち、送信することが記載されていると言える。

5 効果等
以上のように、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものと認められ、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

6 請求人の主張
請求人は、請求の理由(平成21年10月15日付けの手続補正書)において、「本願の請求項1は、……と規定しております。つまり、取得画像の等級を決定して、その等級に基づいて一次メモリに記憶した取得画像を2次メモリに記憶し、(その等級に基づいて記憶された)取得画像を第2の装置に送信するものです。また、請求項2においても同様です。」、「本願発明は、取得画像という特殊なデータに対して、その等級を判断し、その等級に基づいて、2次メモリに記憶して、それを第2の装置に送信するものであり、周知技術には、等級に基づいて、2次メモリへの記憶と第2の装置への送信という考えはありません。したがいまして、単に周知技術としてとらえて引用例に適用することは、無理があるように思います。」と主張している。

しかし、本願の請求項2には、「前記取得画像を第2の装置に送信する手段」としか記載されておらず、第2の装置への送信の処理と画像の等級の関係や、第2の装置への送信の処理と画像を2次メモリに記憶することの関係などは何ら特定されていないのであるから、請求人が主張の点は、請求項の記載に基づくものではなく、採用することができない。
7 まとめ
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第四 むすび
以上のとおり、本願の請求項2に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、残る請求項1、3ないし38に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-18 
結審通知日 2011-08-19 
審決日 2011-08-31 
出願番号 特願2006-547417(P2006-547417)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関谷 隆一日下 善之  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 奥村 元宏
▲徳▼田 賢二
発明の名称 画像を自動的に捕捉し、管理する方法および装置  
代理人 浅村 肇  
代理人 浅村 皓  
代理人 林 鉐三  
代理人 畑中 孝之  

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