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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1250422
審判番号 不服2009-17819  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-24 
確定日 2012-01-12 
事件の表示 特願2004-556843「電気二重層コンデンサ用の分極性電極の製造方法並びに電気二重層コンデンサの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年6月17日国際公開、WO2004/051680〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2003年11月26日(優先権主張 2002年11月29日、日本国)を国際出願日とする特許出願であって、平成20年10月17日付けの拒絶理由通知に対して同年12月19日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成21年6月16日付けで拒絶査定がなされた。
これに対して、同年9月24日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、その後、平成23年6月15日付けで審尋がなされ、同年8月22日に回答書が提出された。

第2.補正の却下の決定
【結論】
平成21年9月24日に提出された手続補正書による補正を却下する。

【理由】
1.補正の内容
平成21年9月24日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1?4を、補正後の特許請求の範囲の請求項1及び2と補正するとともに、明細書の補正を行うものであり、補正前の請求項1及び2、並びに補正後の請求項1は各々以下のとおりである。
(補正前)
「【請求項1】
活性炭粉末と結着材と潤滑用有機溶媒とを混練してシート状に成形する電極成形工程を具備してなる電気二重層コンデンサ用の分極性電極の製造方法であり、
前記電極成形工程後に、前記電極中に残留する有機化合物を真空乾燥により分極性電極の質量に対し150(ppm)以上300(ppm)以下の濃度になるまで除去する真空乾燥工程を備えたことを特徴とする電気二重層コンデンサ用の分極性電極の製造方法。」
「【請求項2】
前記有機化合物には、前記電極成形工程後に残留する前記潤滑用有機溶媒と、前記真空乾燥工程において前記潤滑用有機溶媒が加熱されて生じた熱変性物とが少なくとも含まれることを特徴とする請求項1記載の電気二重層コンデンサ用の分極性電極の製造方法。」

(補正後)
「【請求項1】
96?50質量部の活性炭粉末と2?20質量部のポリ弗化エチレンと2?8質量部のイソプロピルアルコールと0?20質量部のカーボンブラックとを混練して130?160μm厚のシート状に成形する電極成形工程と、残留する有機化合物が800ppm以下になるまでイソプロピルアルコールの沸点以上の温度で加熱乾燥する電極乾燥工程と、
前記電極中に残留する有機化合物を真空乾燥により分極性電極の質量に対し150(ppm)以上300(ppm)以下の濃度になるまで除去する真空乾燥工程とを備え、
前記真空乾燥工程において除去する前記有機化合物には、前記電極成形工程後に残留する前記潤滑用有機溶媒と、前記真空乾燥工程において前記潤滑用有機溶媒が加熱されて生じた熱変性物とが少なくとも含まれることを特徴とする電気二重層コンデンサ用の分極性電極の製造方法。」

2.補正事項の整理
本件補正による補正事項を整理すると次のとおりである。
(1)補正事項1
補正前の請求項1及び3を削除すること。

(2)補正事項2
補正前の請求項2を、独立請求項形式とするとともに、内容に修正を加え、補正後の請求項1とすること。

(3)補正事項3
補正前の請求項4を、独立請求項形式とするとともに、内容に修正を加え、補正後の請求項2とすること。

(4)補正事項4
補正前の明細書の0013段落及び0017段落を削除するとともに、補正前の明細書の0006段落、0011段落、0014段落、0015段落及び0018段落を補正して、補正後の明細書の0006段落、0011段落、0014段落、0015段落及び0018段落とすること。

3.新規事項の追加の有無についての検討
(1)補正事項1について
補正事項1が、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第17条の2第3項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項をいう。以下同じ。)に規定する要件を満たすことは明らかである。

(2)補正事項2について
(2-1)補正事項2による補正後の請求項1に記載された「96?50質量部の活性炭粉末と2?20質量部のポリ弗化エチレンと2?8質量部のイソプロピルアルコールと0?20質量部のカーボンブラックとを混練して130?160μm厚のシート状に成形する電極成形工程」(審決注:下線は当合議体にて付加。以下同じ。)という工程における「2?8質量部のイソプロピルアルコール」を混練するという部分が、当初明細書等に記載されたものであるか否かについて検討する。
当初明細書等において、混練する「イソプロピルアルコール」の量について記載されている事項は、次のとおりである。

a.「まず、図1Aに示すように、原料混合工程ST1では、分極性電極の原料を攪拌機31に投入して混合することにより混合粉末5を得る。投入する原料は、活性炭粉末1とポリフッ化エチレン2(以下、PTFE2と表記する)とイソプロピルアルコール3(以下、IPA3と表記する)とカーボンブラック4(以下、CB4と表記する)である。攪拌機31としては例えば、一般的な一軸羽付き攪拌機等を用いることができる。
活性炭1は、例えばフェノール樹脂等の難黒鉛性材料を焼成して炭化した後、水蒸気等による賦活処理(活性化処理)を行い、更に粉砕して得られたものを用いることができる。またPTFE2(結着材)は、後の混練工程ST2にて繊維化されることにより活性炭粉末1等を結着するものである。またIPA3(潤滑用有機溶媒)は本工程ST1と次の混練工程ST2において原料同士の混合等を円滑に行うものである。また、CB4は分極性電極に導電性を付与する為のものである。尚、潤滑用有機溶媒はIPAに限るものではなく、他のアルコール類やケトン類等を用いても良い。またCB4には、アセチレンブラックやケッチェンブラック等を用いても良い。
各原料の混合比は例えば、活性炭1を96?50重量部、PTFE2を2?20重量部、IPA3を2?80重量部、CB4を0?20重量部とすることが好ましい。
次に図1Bに示すように、混練工程ST2では、原料混合工程ST1で得た混合粉末5を混練機32に投入して混練することにより、混合粉末にせん断力を加えてPTFE2を繊維化させて混合粉末を塊状物6とする。混練機32としては、例えば、一般的な二軸混練機を用いることができる。」(明細書7ページ25行?8ページ14行)

b.「(実施例1の電気二重層コンデンサの製造)
まず、活性炭粉末を次のようにして製造した。まず、フェノール樹脂を窒素気流中で900℃、2時間保持することで炭化処理を行った。次に得られた原料炭素を窒素気流中で再度昇温し、800℃に到達した時点で5%水蒸気と5%二酸化炭素を含む窒素混合ガスを流通させて、900℃で2時間保持することで賦活処理を行った。そして得られた活性炭を、ボールミル粉砕器で平均粒径が2?15μm程度になるまで粉砕することにより、活性炭粉末とした。
次に、得られた活性炭粉末と結着材(ポリ四フッ化エチレン)と潤滑用有機溶媒(イソプロピルアルコール(IPA))とを混練してシート状に成形する電極成形工程を行った。即ち、得られた活性炭粉末84重量部に対して、8重量部のポリ四フッ化エチレン粉末(例えば三井デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン6J(登録商標))と、8重量部のアセチレンブラック(例えば、電気化学工業(株)製のデンカブラック(登録商標))を混合した。この混合物に更に10重量部のIPAを加えて混合し(原料混合工程)、更に二軸混練機で加圧混練を8分間行うことにより(混練工程)、ポリ四フッ化エチレンをフィブリル化させて塊状物とした。この塊状物をせん断型粉砕機で粉砕して平均粒径が約1mm程度の粒状物を得た(粉砕工程)。得られた粒状物を用いて、シート化を行い、更に圧延を行うことにより、幅110mmの長尺の電極用シートを得た(シート化・圧延工程)。」(同13ページ18行?14ページ6行)

(2-2)したがって、混練する「イソプロピルアルコール」の量に関して当初明細書等に記載されているのは、「2?80質量部」及び「10重量部」のみであり、「2?8質量部のイソプロピルアルコール」を「混練」することについては当初明細書等に記載も示唆もされていない。
また、当初明細書等全体を精査しても、「2?8質量部のイソプロピルアルコール」を混練することを当業者が認識できる記載は見いだせない。
よって、補正事項2は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものではないから、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものではない。
以上のとおりであるから、補正事項2は、特許法第17条の2第3項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項をいう。以下同じ。)に規定する要件を満たしていない。

(3)補正事項3について
補正事項3による補正後の請求項3も「96?50質量部の活性炭粉末と2?20質量部のポリ弗化エチレンと2?8質量部のイソプロピルアルコールと0?20質量部のカーボンブラックとを混練して130?160μm厚のシート状に成形する電極成形工程」という工程を含んでいるから、補正事項3は、補正事項2と同様に当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものではない。
よって、補正事項3は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(4)補正事項4について
補正事項4のうち、補正前の0011段落及び0015段落についての補正は、補正事項2及び3と同様の理由で、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものではない。
したがって、補正事項4は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(5)新規事項の追加の有無についてのまとめ
以上検討したとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

4.補正の目的の適否についての検討
(1)はじめに
上記3.において検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないが、仮に、平成23年8月22日に提出された回答書(以下、単に「回答書」という。)の「(2)第17条の2第3項について (2-1)」において審判請求人が主張しているとおり、本件補正後の請求項1及び2、並びに明細書の0011段落及び0015段落に記載された「2?8質量部のイソプロピルアルコール」が、「2?80質量部のイソプロピルアルコール」の誤記であり、本件補正が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないとまではいえないものであった場合において、本件補正の目的が適法であるか否かについて検討する。

(2)補正事項1について
補正事項1は、特許法第17条の2第4項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項をいう。以下同じ。)第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当するから、同法同条同項に規定する要件を満たす。

(3)補正事項2について
(3-1)補正事項2により、本件補正前の請求項2に対して、「残留する有機化合物が800ppm以下になるまでイソプロピルアルコールの沸点以上の温度で加熱乾燥する電極乾燥工程」を備えることが追加されている。
一方、本願の本件補正前の明細書には、「残留する有機化合物が800ppm以下になるまでイソプロピルアルコールの沸点以上の温度で加熱乾燥する電極乾燥工程」に関連して、次の記載がある。

「【0022】
本発明の電気二重層コンデンサの製造方法は、活性炭粉末と結着材と潤滑用有機溶媒とを混練してシート状に成形する電極成形工程と、前記電極とセパレータとを重ねて捲回して捲回体を得る捲回工程と、前記捲回体をコンデンサ容器に挿入した後に前記捲回体中に残留する有機化合物を真空乾燥により分極性電極の質量に対し300(ppm)以下の濃度になるまで除去する真空乾燥工程と、前記コンデンサ容器に電解液を注液する注液工程と主体として構成されている。尚、電極成形工程と捲回工程の間に、前記潤滑用有機溶媒を加熱除去する電極乾燥工程を行っても良い。図1?図3に、各工程の内容を説明する工程図を示している。以下、図1?図3を参照して各工程を順次説明する。
【0023】
図1には、活性炭粉末と結着材と潤滑用有機溶媒とを混練してシート状に成形する電極成形工程の工程図を示す。電極成形工程は、図1Aに示す原料混合工程ST1と、図1Bに示す混練工程ST2と、図1Cに示す粉砕工程ST3と、図1Dに示すシート化・圧延工程ST4とから構成されている。」
「【0030】
次に図2には、IPA3(潤滑用有機溶媒)を加熱除去して分極性電極とする電極乾燥工程の工程図を示す。電極乾燥工程は、図2Aに示す集電体接着工程ST5と、図2Bに示す連続乾燥工程ST6とから構成されている。また、図2Cには電極体の斜視図を示している。尚、連続乾燥工程ST6は本発明において必須の工程ではないが、この工程を行うことで、分極用電極の有機化合物の濃度を予め低減して、真空乾燥工程における乾燥時間を短縮することが可能になる。」
「【0035】
また、連続乾燥工程ST6を行う場合は、電極体シート10に含まれるIPA3の大部分が加熱除去され、ごく一部が残留IPAとして電極体シート10に残留する。また、連続乾燥工程ST6によって、残留IPAの一部が、活性炭粉末表面でエーテル化してジイソプロピルエーテル(以後、DIPEと表記する)に変化したり、残留IPAが分子内脱水してプロピレンに変化し、これら熱変性物も電極体シート10に残留する。以後の本明細書では、「残留IPA」及び「DIPE(熱変性物)」及び「プロピレン(熱変性物)」を「有機化合物」と総称する。
【0036】
尚、連続乾燥工程ST6を行った後の電極体シート10に残留する有機化合物量は、800(ppm)以下にすることが好ましい。800(ppm)以下にすることで、真空乾燥工程の乾燥時間を短くしても、分極性電極に残留する有機化合物量を確実に300(ppm)以下にすることができる。
その後、電極体シート10を所定の長さに切断することにより、図2Cに示すように、集電体19の両面に分極性電極11が貼り合わされてなる電極体12が得られる。」

(3-2)そして、本件補正前の請求項2に記載された、「電気二重層コンデンサ用の分極性電極の製造方法」という発明を特定するために必要な事項(以下「発明特定事項」という。)は、「活性炭粉末と結着材と潤滑用有機溶媒とを混練してシート状に成形する電極成形工程」及び「前記電極成形工程後に、前記電極中に残留する有機化合物を真空乾燥により分極性電極の質量に対し150(ppm)以上300(ppm)以下の濃度になるまで除去する真空乾燥工程」を備えること、並びに「前記有機化合物には、前記電極成形工程後に残留する前記潤滑用有機溶媒と、前記真空乾燥工程において前記潤滑用有機溶媒が加熱されて生じた熱変性物とが少なくとも含まれること」であると認められるところ、上記0023段落の記載から、「活性炭粉末と結着材と潤滑用有機溶媒とを混練してシート状に成形する電極成形工程」とは、本願の本件補正前の図面の図1Aに記載された「原料混合工程」、同図1Bに記載された「混練工程」及び同図1Cに記載された「粉砕工程」からなる工程であって、本件補正後の請求項1に記載された「残留する有機化合物が800ppm以下になるまでイソプロピルアルコールの沸点以上の温度で加熱乾燥する電極乾燥工程」とは別の工程であることが明らかである。
したがって、本件補正前の請求項2に対して、「残留する有機化合物が800ppm以下になるまでイソプロピルアルコールの沸点以上の温度で加熱乾燥する電極乾燥工程」を備えることを追加する補正は、本件補正前の請求項2に記載された「活性炭粉末と結着材と潤滑用有機溶媒とを混練してシート状に成形する電極成形工程」を備えるという発明特定事項を限定するものではない。
また、本件補正前の請求項2に対して、「残留する有機化合物が800ppm以下になるまでイソプロピルアルコールの沸点以上の温度で加熱乾燥する電極乾燥工程」を備えることを追加する補正が、本件補正前の請求項2に記載されたその他のいずれの発明特定事項を限定するものでもないことは明らかである。
したがって、補正事項2は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。
また、補正事項2が、特許法第17条の2第4項のその他のいずれの号に掲げる事項を目的とするものにも該当しないことは明らかである。
よって、補正事項2は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。

(3-3)なお、これに関連して、審判請求人は、回答書の「(2)第17条の2第3項について (2-2)」において、次のように主張している。
「平成21年9月24日付け手続補正において請求項1に追加した電極乾燥工程は、実質的に電極形成工程に含まれる。その根拠は、明細書の段落0035?0036である。段落0035において、連続乾燥工程を行うことでIPAの大部分が除去されることが記載され、更に段落0036において、連続乾燥工程後の電極体シートを所定の長さに切断することで、図2Cに示されるような電極体12が得られることが記載されている。このように、連続乾燥工程を経た電極シートを切断することではじめて電極体が得られるのである。ここで、請求項1における電極形成工程は、電極を形成する工程であると解されるところ、連続乾燥工程を経て電極体が得られることは上述の段落0035及び0036の記載事項から明らかであるから、連続乾燥工程は、実質的に電極形成工程に含まれると思料される。従って、上記手続補正において請求項1に電極乾燥工程を追加する補正は、実質的に電極形成工程を減縮する補正であるものと思料する。」

なお、ここにおいて、「電極形成工程」は、「電極成形工程」の誤記と認められるから(本件補正前のいずれの請求項にも、「電極形成工程」という記載はない。)、以下においては、そのように読み換える。

(3-4)そこで、これについて検討すると、審判請求人の主張は、「請求項1における電極成形工程は、電極を形成する工程である」という解釈を前提としているものと認められるが、上記(3-2)において検討したとおり、「電極成形工程」とは、本願の本件補正前の図面の図1Aに記載された「原料混合工程」、同図1Bに記載された「混練工程」及び同図1Cに記載された「粉砕工程」からなる工程を意味するものであることが明らかであり、「請求項1における電極成形工程は、電極を形成する工程である」という審判請求人の解釈は誤りであるから、当該誤った解釈を前提とした「上記手続補正において請求項1に電極乾燥工程を追加する補正は、実質的に電極形成工程を減縮する補正である」という結論も当然に誤りである。
したがって、審判請求人の主張は採用できず、補正事項2は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。

(4)補正事項3について
補正事項3により、本件補正前の請求項4に対して、「残留する有機化合物が800ppm以下になるまでイソプロピルアルコールの沸点以上の温度で加熱乾燥する電極乾燥工程」という工程が追加されている。
そして、そのように工程を追加することは、上記(3)において検討したとおりの理由で、特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。
したがって、補正事項3は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。

(5)補正の目的の適否についてのまとめ
以上検討したとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。

5.補正の却下のむすび
以上検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項に規定するいずれの要件をも満たしていないから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明
平成21年9月24日に提出された手続補正書による補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成20年12月19日に提出された手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項1に記載されている事項により特定される、上記第2.1.に補正前の請求項1として記載したとおりのものであり、再掲すると次のとおりである。

「【請求項1】
活性炭粉末と結着材と潤滑用有機溶媒とを混練してシート状に成形する電極成形工程を具備してなる電気二重層コンデンサ用の分極性電極の製造方法であり、
前記電極成形工程後に、前記電極中に残留する有機化合物を真空乾燥により分極性電極の質量に対し150(ppm)以上300(ppm)以下の濃度になるまで除去する真空乾燥工程を備えたことを特徴とする電気二重層コンデンサ用の分極性電極の製造方法。」

第4.引用刊行物に記載された発明
1.本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布され、原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された刊行物である特開平11-317332号公報には、図1と共に次の記載がある。

a.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電気二重層キャパシタ、特に高出力用途に適する電気二重層キャパシタに関する。
【0002】
【従来の技術】電気二重層キャパシタは、分極性電極と電解液との界面に形成される電気二重層に電荷を蓄積することを原理としており、電池より大電流による急速充放電ができることからエネルギ分野への応用が近年活発に検討され、例えば特開平8-45793には大容量かつ高出力のキャパシタが提案されている。具体的用途としては、電気自動車又はハイブリッド自動車への応用が注目されている。これらの用途は、米国エネルギ省の目標値として、近未来に500W/kg、最終的には1500W/kgの高出力密度で作動する電源の開発が要求されている(A.F.Burke et. al., Material Characteristics and the Performance of Electrochemical Capacitors for Electric/hybrid Vehicle Applications, Materials Research Society Spring Meeting, San Francisco, CA, 1995.4.17-21)。」

b.「【0040】
【実施例】[例1(実施例)]比表面積1500m^(2)/g、平均粒径10μmの高純度活性炭粉末80重量%、カーボンブラック10重量%、PTFE(本例ではテトラフルオロエチレン単独重合体を指す)粉末10重量%からなる混合物に、プロピレングリコールを加え混合した。この混合物を一軸押出機にて、スクリュー押出しを行った後ロール圧延し、熱風乾燥してプロピレングリコールを除去して厚さ120μm、密度0.64g/cm^(3)の電極シートを作製した。
【0041】この電極シートの表面をSEMで倍率1万倍で観察したところ、PTFE繊維が占める体積の80%以上のPTFE繊維が長さ5?15μmかつ繊維径0.03?0.05μmであり、幅10μmあたりに約10本の繊維が存在した。この電極シートから面積4cm×6cmの電極を切り出した。
【0042】リード端子を有する幅4cm、長さ6cm、厚さ50μmの矩形の純アルミニウム箔の片面に、ポリアミドイミド樹脂をバインダとする導電性接着剤を介して上記電極を接合し、加熱して接着剤を熱硬化させて電極体を形成した。この電極体を2枚作製し、2枚の電極体の電極面を対向させ、セルロース繊維製セパレータ(密度0.40g/cm^(3)、空隙率74%、厚さ40μm)を挟んで厚さ2mmの2枚のガラス製挟持板で挟持し、素子を形成した。2枚の電極体とセパレータとの合計の厚さは0.39mmであった。
【0043】電解液としてはプロピレンカーボネートに1.5mol/lの(C_(2)H_(5))_(3)(CH_(3))NBF_(4)を溶解した溶液を用いた。上記素子を200℃で3時間真空加熱することにより素子の不純分を除去し、電解液を真空含浸させてポリプロピレン製の角型有底筒状容器に収容し、密封して電気二重層キャパシタを作製した。」

c.「【0049】[例11(実施例)]高純度活性炭粉末として比表面積1800m^(2)/g、平均粒径10μmのものを用いた以外は例1と同様にして厚さ130μm、密度0.67g/cm^(3)の電極シートを作製した。これを厚さ40μmのアルミニウム箔集電体の両面に、ポリアミドイミド樹脂をバインダとする導電性接着剤を用いて接合し、導電性接着剤を熱硬化させて電極シートと集電体を一体化させたシートを得た後、このシートから有効電極面積6.3cm×12.3cmの34枚の電極体を得た。このうち17枚を正極体、残りの17枚を負極体とし、ガラス繊維マット製のセパレータ(最大繊維径10μm以下のガラス繊維からなり、厚さ160μm、空隙率92%)を介して交互に積層して素子を形成した。
【0050】上記積層体素子を高さ15cm、幅7cm、厚さ2.2cmの有底角型アルミニウムケースに収容し、正極端子と負極端子を備えたアルミニウム上蓋を用いてレーザー溶接封口し、注液口を開けた状態で200℃で5時間真空乾燥して不純物を除去した。
【0051】次いで、1.5mol/lの(C_(2)H_(5))_(3)(CH_(3))NPF_(6)のプロピレンカーボネート溶液を電解液として素子に真空含浸させた後、注液口に安全弁を配置して幅7cm、高さ15cm、厚さ2.2cm、重量380gの角型電気二重層キャパシタとした。」

2.ここにおいて、0049段落以降に記載された「例11」についてみると、0049段落の「高純度活性炭粉末として比表面積1800m^(2)/g、平均粒径10μmのものを用いた以外は例1と同様にして厚さ130μm、密度0.67g/cm^(3)の電極シートを作製した。」という記載から、当該「例11」における「電極シート」は、「高純度活性炭粉末として比表面積1800m^(2)/g、平均粒径10μmのものを用いた以外」は、0040段落に記載された方法により製造されていることが明らかである。

3.そして、上記「例11」として記載されている「電気二重層キャパシタ」の製造方法のうちの電極の製造方法に注目すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「比表面積1800m^(2)/g、平均粒径10μmの高純度活性炭粉末80重量%、カーボンブラック10重量%、PTFE粉末10重量%からなる混合物に、プロピレングリコールを加え混合して電極シートを作製する工程を備える電気二重層キャパシタ用の電極の製造方法であり、
前記電極シートを作製する工程後に、真空乾燥して不純物を除去する工程を備える電気二重層キャパシタ用の電極の製造方法。」

第5.本願発明と引用発明との対比
1.引用発明の「高純度活性炭粉末」、「PTFE粉末」及び「プロピレングリコール」は、各々本願発明の「活性炭粉末」、「結着材」及び「潤滑用有機溶媒」に相当する。
したがって、引用発明の「比表面積1800m^(2)/g、平均粒径10μmの高純度活性炭粉末80重量%、カーボンブラック10重量%、PTFE粉末10重量%からなる混合物に、プロピレングリコールを加え混合して電極シートを作製する工程」は、本願発明の「活性炭粉末と結着材と潤滑用有機溶媒とを混練してシート状に成形する電極成形工程」に相当する。
そして、一般に、「電気二重層キャパシタ」に用いる電極が分極性電極として機能することは、例えば、引用例における従来の技術についての「電気二重層キャパシタは、分極性電極と電解液との界面に形成される電気二重層に電荷を蓄積することを原理としており、・・・」(0002段落)という記載からも分かるように、当業者の技術常識であるから、本願発明と引用発明とは、「活性炭粉末と結着材と潤滑用有機溶媒とを混練してシート状に成形する電極成形工程を具備してなる電気二重層コンデンサ用の分極性電極の製造方法」である点で一致する。

2.引用発明の「真空乾燥して不純物を除去する工程」は、本願発明の「真空乾燥工程」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記電極成形工程後に、」「真空乾燥工程を備え」ている点で一致する。

3.以上を総合すると、本願発明と引用発明とは、
「活性炭粉末と結着材と潤滑用有機溶媒とを混練してシート状に成形する電極成形工程を具備してなる電気二重層コンデンサ用の分極性電極の製造方法であり、
前記電極成形工程後に、真空乾燥工程を備えたことを特徴とする電気二重層コンデンサ用の分極性電極の製造方法。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
「真空乾燥工程」に関する相違点であって、本願発明は、「真空乾燥工程」により、「前記電極中に残留する有機化合物を真空乾燥により分極性電極の質量に対し150(ppm)以上300(ppm)以下の濃度になるまで除去」しているのに対して、引用発明は、「真空乾燥して不純物を除去する工程」により、「不純物を除去する」ことが特定されているにとどまる点。

第6.相違点についての当審の判断
1.引用発明の「真空乾燥して不純物を除去する工程」において除去する「不純物」には、「電極」中に残留する不純物も含まれることは自明である。
また、当該「不純物」は、初めから含まれていた、あるいは電気二重層コンデンサを製造する過程で生じた様々な物質から構成されるものであるところ、その中に、原料として加えた「プロピレングリコール」及び当該「プロピレングリコール」の化学反応により生じた変性物をはじめとする種々の有機化合物が含まれることは、当業者にとって明らかである。
したがって、引用発明の「真空乾燥して不純物を除去する工程」も本願発明の「真空乾燥工程」と同様に、「前記電極中に残留する有機化合物を除去」しているものと認められる。

2.ところで、一般に、不純物を除去するに際して、不純物の残留量が少なければ少ないほど良いことは自明である一方、不純物を完全に除去することは現実的に極めて困難(殆ど不可能)であるから、不純物をどの程度まで除去するかは、当該不純物が与える悪影響と、不純物を除去するために必要な時間やコスト等を考慮しつつ当業者が適宜選択し得る設計的事項である。
したがって、引用発明の「真空乾燥して不純物を除去する工程」において、「有機化合物」を含めた「不純物」をどの程度除去するかも、当該「不純物」による悪影響と、不純物を除去するために必要な時間やコスト等を考慮しつつ当業者が適宜選択し得る設計的事項である。
そこで、本願発明の「真空乾燥工程」において限定されている「前記電極中に残留する有機化合物」の濃度のついての「300(ppm)」という上限値及び「150(ppm)」という下限値が臨界的意義を有するものであるか否かについて検討する。

3.まず、「300(ppm)」という上限値について検討すると、本願の明細書及び図面には、本願の明細書(第6.の章に限り、以下、単に「明細書」という。)の0048段落?0055段落に記載された材料及び製造方法によって製造された「実施例1」?「実施例3」について、「比較例1」?「比較例3」との比較実験結果により、「分極性電極に残留する有機化合物の濃度が300(ppm)以下になれば、コンデンサの初期抵抗値及び1000時間後の抵抗上昇率を大幅に低減できる」(明細書の0067段落)と記載されている。また、明細書の0070段落?0071段落に記載された材料及び製造方法によって製造された「実施例4」についても、上記0067段落の記載を前提に、「図9に示すように、連続乾燥工程を行った場合は48時間の真空乾燥で有機化合物の量が300(ppm)以下となり、一方、図8に示すように連続乾燥工程を行なわない場合は72時間の真空乾燥で有機化合物の量が300(ppm)以下となっている。このように、連続乾燥工程を行った場合は真空乾燥時間を短縮できることが分かる。」と記載されている。
しかしながら、「分極性電極に残留する有機化合物」が悪影響を与える理由は、明細書の0005段落にも記載されているように、当該「有機化合物」が電気二重層コンデンサの電極を構成する活性炭の細孔内に残留することにより、電解質イオンの吸着集合による電気二重層の形成が妨げられることによるものであるから、残留する「有機化合物」がどの程度の悪影響をもたらすかは、分極性電極における活性炭の量(活性炭と結着材との比率)や活性炭の物性(粒径、比表面積、又は細孔の数、形状、大きさ若しくは分布等)、さらには結着剤として何を用いるかや製造プロセス等に応じて当然変わるものと認められる。
したがって、本願の明細書に記載されている「分極性電極に残留する有機化合物の濃度が300(ppm)以下になれば、コンデンサの初期抵抗値及び1000時間後の抵抗上昇率を大幅に低減できる」という実験結果は、飽くまでも明細書の0048段落?0055段落又は、0070段落?0071段落に記載された材料及び製造方法により製造された「電気二重層コンデンサ用の分極性電極」に当てはまるものにすぎず、それとは材料や製造方法が異なる(例えば、分極性電極における活性炭の量(活性炭と結着材との比率)、活性炭の物性(粒径、比表面積、又は細孔の数、形状、大きさ若しくは分布等)、結着剤、製造プロセス等が異なる)「電気二重層コンデンサ用の分極性電極」にそのまま当てはめることはできないことが明らかである。
以上のとおりであるから、「前記電極中に残留する有機化合物」の濃度の上限値である「300(ppm)」という値は、材料及び製造方法を、明細書の0048段落?0055段落又は、0070段落?0071段落に記載されたものに限定して初めて意義を有するものである。
一方、本願の請求項1には、「活性炭粉末と結着材と潤滑用有機溶媒とを混練してシート状に成形する電極成形工程を具備してなる電気二重層コンデンサ用の分極性電極の製造方法」と記載されているにすぎず、明細書の0048段落?0055段落又は、0070段落?0071段落に記載された材料及び製造方法であるという限定はなされていない。
したがって、本願発明の真空乾燥工程における「前記電極中に残留する有機化合物」の濃度の上限値である「300(ppm)」という値は臨界的意義を有しないものと認められる。

4.次に、「150(ppm)」という下限値について検討すると、本願発明において、「150(ppm)」という下限値について、本願の明細書及び図面には、明細書の0048段落?0055段落に記載された材料及び製造方法によって製造された「実施例1」?「実施例3」についての実験結果から、「また、乾燥時間が120時間以上になると、全有機化合物量が150(ppm)程度でほぼ一定になることがわかる。これは、活性炭の吸着性により、これ以上の有機化合物の低減は困難であることを示している。」(明細書の0063段落)及び「尚、乾燥時間が120時間以上では全有機化合物量が150(ppm)程度となり、初期抵抗並びに抵抗上昇率も120時間でほぼ一定になることから、全有機化合物量が150(ppm)程度まで低減すれば、ほぼ満足できる結果が得られることがわかる。」(0068段落)と記載されている。
しかしながら、上記3.において検討したとおり、残留する「有機化合物」がどの程度の悪影響をもたらすかは、分極性電極における活性炭の量(活性炭と結着材との比率)や活性炭の物性(粒径、比表面積、又は細孔の数、形状、大きさ若しくは分布等)、さらには結着剤として何を用いるかや製造プロセス等に応じて当然変わるものと認められるから、上記0068段落に記載された実験結果は、飽くまでも明細書の0048段落?0055段落に記載された材料及び製造方法、又は、それと類似する0070段落?0071段落に記載された材料及び製造方法により製造された「電気二重層コンデンサ用の分極性電極」に当てはまるものにすぎず、それとは材料や製造方法が異なる(例えば、分極性電極における活性炭の量(活性炭と結着材との比率)、活性炭の物性(粒径、比表面積、又は細孔の数、形状、大きさ若しくは分布等)、結着剤、製造プロセス等が異なる)「電気二重層コンデンサ用の分極性電極」にそのまま当てはめることはできないことが明らかである。
また、明細書の0063段落に「これは、活性炭の吸着性により、これ以上の有機化合物の低減は困難であることを示している。」と記載されているように、有機化合物の除去が困難な理由は、活性炭の吸着性に起因するものであるから、有機化合物の除去がどの程度困難であるかも、極性電極における活性炭の量(活性炭と結着材との比率)や活性炭の物性(粒径、比表面積、又は細孔の数、形状、大きさ若しくは分布等)、さらには結着剤として何を用いるかや製造プロセス等に応じて当然変わるものと認められる。
したがって、上記0063段落に記載された実験結果も、飽くまでも明細書の0048段落?0055段落に記載された材料及び製造方法、又は、それと類似する0070段落?0071段落に記載された材料及び製造方法により製造された「電気二重層コンデンサ用の分極性電極」に当てはまるものにすぎず、それとは材料や製造方法が異なる「電気二重層コンデンサ用の分極性電極」にそのまま当てはめることはできないものと認められる。
以上のとおりであるから、「前記電極中に残留する有機化合物」の濃度の下限値である「150(ppm)」という値は、材料及び製造方法を、明細書の0048段落?0055段落又は、0070段落?0071段落に記載されたものに限定して初めて意義を有するものである。
一方、本願の請求項1には、「活性炭粉末と結着材と潤滑用有機溶媒とを混練してシート状に成形する電極成形工程を具備してなる電気二重層コンデンサ用の分極性電極の製造方法」と記載されているにすぎず、明細書の0048段落?0055段落又は、0070段落?0071段落に記載された材料及び製造方法であるという限定はなされていない。
したがって、本願発明の真空乾燥工程における「前記電極中に残留する有機化合物」の濃度の下限値である「150(ppm)」という値は臨界的意義を有しないものと認められる。

5.以上検討したとおり、引用発明の「真空乾燥して不純物を除去する工程」において、「有機化合物」を含めた「不純物」をどの程度除去するかは、当該「不純物」による悪影響と、不純物を除去するために必要な時間やコスト等を考慮しつつ当業者が適宜選択し得る設計的事項であり、かつ、本願発明の「真空乾燥工程」において限定されている「前記電極中に残留する有機化合物」の濃度のついての「300(ppm)」という上限値及び「150(ppm)」という下限値は臨界的意義を有しないものであるから、引用発明の「真空乾燥して不純物を除去する工程」において、本願発明のように、「前記電極中に残留する有機化合物を真空乾燥により分極性電極の質量に対し150(ppm)以上300(ppm)以下の濃度になるまで除去」することは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、本願発明と引用発明との相違点は、当業者が適宜なし得た範囲に含まれる程度のものであるから、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7.むすび
以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-11 
結審通知日 2011-11-15 
審決日 2011-11-29 
出願番号 特願2004-556843(P2004-556843)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (H01G)
P 1 8・ 121- Z (H01G)
P 1 8・ 561- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 弘亘竹口 泰裕  
特許庁審判長 北島 健次
特許庁審判官 小川 将之
小野田 誠
発明の名称 電気二重層コンデンサ用の分極性電極の製造方法並びに電気二重層コンデンサの製造方法  
代理人 西 和哉  
代理人 志賀 正武  
代理人 佐伯 義文  
代理人 村山 靖彦  
代理人 鈴木 三義  
代理人 高橋 詔男  

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