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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1250432
審判番号 不服2010-11432  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-27 
確定日 2012-01-12 
事件の表示 特願2004-306008「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月11日出願公開、特開2006-116016〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成16年10月20日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成22年3月2日に手続補正書が提出され、同年4月20日付けでなされた拒絶査定に対し、同年5月27日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正がなされた。
審判合議体は、同年10月19日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から同年11月25日に回答書が提出された。
その後、審判合議体は、平成23年5月17日付けで拒絶理由を通知し、これに対して同年7月15日に手続補正がなされた。
さらに、審判合議体は、同年8月22日付けで拒絶理由を通知し、これに対して同年10月18日に手続補正がなされた。

第二.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年10月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 通常遊技状態での遊技の進行の下で、遊技盤面に設けられた始動口への遊技球の入賞を契機に、所定の確率で複数種類の役に当選可能な当/外抽選が実行される遊技機であって、
前記当/外抽選と同時、或いは当/外抽選に当選した後に実行され、前記当/外抽選の確率を前記所定の確率よりも高確率に変動するか否かの確変抽選を実行する確変抽選実行手段と、
前記当/外抽選及び確変抽選の結果を報知する報知手段と、
前記当/外抽選により当選した場合に、当選した役並びに確変抽選実行手段による確変抽選の結果に基づいて、特別遊技、及び当該特別遊技終了後の通常遊技のそれぞれの遊技仕様を設定する遊技仕様設定手段と、
前記遊技仕様設定手段で設定された遊技仕様に基づいて遊技を進行する遊技進行制御手段とを有し、
前記報知手段は、特別図柄を表示する特別図柄表示手段と、演出図柄を表示する演出図柄表示手段とからなり、
前記複数種類の役には、前記特別遊技として短期間で多くの賞球払出を得ることができる大当たりと、該大当たりとは異なる複数の特定の役を含み、
前記複数の特定の役には、前記当/外抽選により当選する遊技者に実益のある真の特定の役に対して、遊技者に実益のない偽の特定の役を設定しておき、一方、前記大当たりには前記偽の特定の役を設定せず、
前記報知手段は、前記真の特定の役、及び前記偽の特定の役のそれぞれに対して、前記特別図柄表示手段では、表示される特別図柄を当該真又は偽が区別できるような異なる形態とし、且つ、演出図柄表示手段では、前記当/外抽選で前記大当たりに当選しない外れのときの演出図柄変動パターンによる報知形態にて報知し、
前記真の特定の役が、前記特別遊技では遊技者に対して短期間で多くの賞球払出を受けることがなく、かつ当該特別遊技終了後の通常遊技の進行の下で、前記当/外抽選の当選確率を高確率とする実益のある遊技仕様であり、偽の特定の役が、前記特別遊技では遊技者に対して短期間で多くの賞球払出を受けることがなく、かつ当該特別遊技終了後の通常遊技の進行の下で、前記当/外抽選の当選確率が前記所定の確率を維持した実益のない遊技仕様であることを特徴とする遊技機。」

第三.特許要件(特許法第29条第2項)の検討
1.引用刊行物記載事項
審判合議体が通知した拒絶理由に引用された特開平10-43380号公報(以下「引用文献A」という。)には以下の事項が記載されている。

【0011】図1は、本発明に係る弾球遊技機の一例のパチンコ遊技機を示す全体正面図である。
【0012】パチンコ遊技機Pの下方右隅には、パチンコ玉を弾発発射するための操作ハンドル1が設けられており、遊技者がこの操作ハンドル1を回動操作することによりパチンコ玉が遊技領域3内に打込まれる。遊技領域3には、可変表示装置4,可変入賞球装置5、始動入賞口6a?6c等が設けられている。遊技領域3内に打込まれたパチンコ玉が始動入賞口6a,6b,6cのいずれかに入賞すれば、前記可変表示装置4のそれぞれの識別情報表示器7a,7b,7cが一斉に可変表示を開始する。この可変表示は一定時間の経過により停止し、停止時の識別情報が予め定める所定の組合せ(たとえば777)になれば特定遊技状態が発生し、可変入賞球装置5の開閉板18を開成してパチンコ玉が可変入賞球装置5に入賞しやすい第1の状態となる大当り制御が行なわれる。この可変入賞球装置の第1の状態は、可変入賞球装置内に所定個数(たとえば10個)のパチンコ玉が入賞するかまたは開成時間が所定時間(たとえば30秒間)に達するかのうちいずれか早い方の条件が成立することにより終了する。可変入賞球装置内へのパチンコ玉の入賞個数が入賞個数表示器11により表示される。さらに、この可変入賞球装置5内には、特定入賞口10が設けられており、第1の状態になっている可変入賞球装置5内に進入したパチンコ玉が特定入賞口10内に入賞すれば、その回の可変入賞球装置の第1の状態が終了した後再び可変入賞球装置の第1の状態が繰返し継続制御される。その繰返し継続制御の回数が開成回数表示器9により表示される。また、繰返し継続制御の上限回数はたとえば10回に定められている。この可変入賞球装置5の構成は前述したものに限定されず、たとえば、左右一対の開閉翼片や一対の摺動片が設けられているもの、さらには、駆動源としてモータを用いたもの等でもよい。
【0013】前記可変表示装置4の可変表示の最中または前記大当り状態の制御が行なわれている最中にパチンコ玉が始動入賞口6a?6cのいずれかに入賞すれば、その始動入賞が記憶されてその始動入賞記憶に基づいて可変表示停止後あるいは現在の大当り制御が終了した後に再び可変表示装置4が可変表示を開始する。その始動入賞の記憶値が可変表示装置4に設けられている始動入賞記憶表示器8a?8dにより表示される。なおこの始動入賞記憶の上限値はたとえば「4」に定められている。
【0014】前記可変表示装置4は、可変表示の開始から所定時間の経過により停止するものを説明したが、本発明はこれに限らず、パチンコ遊技機Pの所定箇所に設けられた停止ボタンの押圧操作により可変表示が停止するものであってもよく、または、所定時間の経過または所定時間以前における前記停止ボタンの押圧操作により停止制御されるものであってもよい。さらに、可変表示装置4を常時可変表示させておき始動入賞により改めて可変表示するものであってもよい。この場合には、始動入賞に基づいて可変表示の明るさや速さを切換えて可変開始を報知することが望ましい。本実施の形態における可変表示装置4の識別情報表示器7a?7cは、セグメントLEDで構成されている。しかし、本発明は、これに限らず、液晶表示,EL,LCDあるいはドットマトリクス等により表示するものであってもよく、または、ドラムが回転して可変表示を行なうドラム式,複数のランプが走行点灯するルーレット式,リーフ式,ベルト式あるいはディスク式(いわゆるロタミント)であってもよく、これらのものを組合せたものであってもよい。また、識別情報表示部の数は3個に限らず1個,2個あるいは4個以上であってもよい。本実施の形態における可変表示装置4の可変表示の停止順序は、向かって左,中,右の順に停止する。しかし、本発明はこれに限らず、左,中,右以外の順序で停止してもよく同時あるいはほぼ同時に停止してもよい。
【0015】大当りが発生する識別情報の組合せは、「777」「FFF」「333」「555」「999」が定められている。さらに、前記大当り制御に比べて付与される遊技価値が比較的小さい第1中当りが発生する識別情報の組合せは、「000」「222」「444」「666」「888」と定められており、この第1中当りの識別情報が成立することにより、前記可変入賞球装置5をたとえば5.9秒間開成させる。次に、前記第1中当りよりも付与される遊技価値が小さい第2中当りは、停止時の識別情報表示器が「77X」(Xは0?9までの図柄で任意の値で7を除く)になれば発生し、可変入賞球装置5をたとえば1.4秒間開成制御する。さらに、前記第2中当りよりもさらに付与される遊技価値が小さい小当りは、停止時の識別情報が「7XX」(Xは0?9までの図柄で任意の値で7を除く)になれば発生し、可変入賞球装置5をたとえば0.48秒間開成制御する。
【0027】図4は、図3に示した制御回路の動作のうち大当りや中当りや小当りを発生させるための動作を説明するためのフローチャートである。
【0028】この図4に示すフローチャートのプログラムは、たとえば2msec毎に1回行なわれる。まずステップS(以下単にSという)1において乱数発生ルーチンの処理が行なわれる。この乱数は0から999まであり、0からカウントを開始し、999に達するとまた0からカウントアップし直すように動作する。そしてS2に進み、始動入賞時の乱数がどのような数値となっているかをチェックする。この乱数チェックの結果、乱数がたとえば10?22の範囲内であった場合にはS3に進み、中・小当り集中フラグがセットされているか否かを判断する。この中・小当り集中フラグは後述するS10によりセットされS16により解除されるものである。中・小当り集中フラグがセットされていない場合にはS4に進み、大当り,中当り,小当り以外の図柄がセットされる。その結果、可変表示装置4(図1参照)は、識別情報表示器7a,7b,7cが大当り,中当り,小当り以外の識別情報の組合せになるように停止制御される。一方、前記S2によるチェックの結果、始動入賞時の乱数が23?63の範囲内であった場合にはS5に進み、さらに64?899の範囲内であった場合にはS6に進む。S5,S6では中・小当り集中フラグがセットされているか否かの判断が行なわれ、セットしていない場合にはS4に進み前述と同様の制御が行なわれる。
【0029】一方、前記S2によるチェックの結果、始動入賞時の乱数が5?9の範囲内であった場合にはS10に進み、中・小当り集中フラグがセットされてS11に進み、小当りの図柄がセットされる。その結果、可変表示装置の識別情報表示器7a?7c(図1参照)が小当りの識別情報の組合せになるように停止制御される。このS10による中・小当り集中フラグがセットされる確率は、乱数が0?999の1000種類でそのうちの5?9の5種類の乱数の場合にS10に進むこととなるために、5/1000=1/200となる。なお、中・小当り集中フラグがセットされた後S11により中当りや外れの図柄をセットしてもよい。
【0030】前記S10により中・小当り集中フラグがセットされた場合には、この図4に示すフローチャートのプログラムが次回実行されるに際し、S2による乱数チェックの結果その乱数が10?22の場合にはS3によりYESの判断がなされ、S12に進み、第1中当りの図柄がセットされることになる。その結果、可変表示装置の停止時の表示結果が第1中当りの組合せになるように制御される。このS12による第1中当りの発生確率は、乱数が10?22の13種類の場合にS3に進むこととなるために、13/1000≒1/76.9となる。一方、S2による乱数チェックの結果、乱数が23?63の場合には前述と同様にS5によりYESの判断がなされ、S13に進み、第2中当りの図柄がセットされることとなる。このS13による第2中当りの発生確率は、41/1000≒1/24.4となる。さらに、S2による乱数チェックの結果、乱数が64?899の場合にはS6に進み、S6によりYESの判断がなされ、S14に進み、小当りの図柄がセットされることになる。このS14による小当りの図柄がセットされる確率は、836/1000≒1/1.2となる。
【0031】一方、前記S2による乱数チェックの結果、乱数が0?4の範囲内のものであった場合にはS15に進み大当りの図柄がセットされる。その結果、可変表示装置の停止時の表示結果が大当りの図柄の組合せとなるように制御される。次にS16に進み、中・小当り集中フラグが解除される。そのS15により大当りの図柄がセットされる確率およびS16による中・小当り集中フラグの解除が行なわれる確率は、5/1000=1/200となる。S16によるフラグ解除が行なわれた結果、前記S3,S5,S6ではNOの判断がなされることとなる。なお、S16により中・小当り集中フラグが解除された後にある特定の図柄がセットされるように制御してもよい。
【0032】一方、始動入賞時の乱数が900?901であった場合には、中・小当り集中フラグがセットされているか否かにかかわらずS7により第1中当りの図柄がセットされる。このS7による第1中当りのセットの確率は、2/1000=1/500である。また、始動入賞時の乱数が902?906であった場合には、中・小当り集中フラグがセットされているか否かにかかわらずS8により第2中当りの図柄がセットされる。このS8による第2中当りの図柄のセットの確率は、5/1000=1/200である。さらに、始動入賞時の乱数が907?999であった場合には、中・小当り集中フラグがセットされているか否かにかかわらずS9により小当りの図柄がセットされる。このS9による小当りの図柄のセットの確率は、93/1000≒1/10.8となる。
【0033】以上説明したように、始動入賞時の乱数が10?899の範囲のものであった場合に、中・小当り集中フラグがセットされていない場合には大当り,中当り,小当り以外の図柄すなわち外れ図柄がセットされるのであるが、前記S10により中・小当り集中フラグがセットされた場合には、それ以降中・小当り集中フラグが解除されるまでの間、始動入賞時の乱数が10?22,23?63,64?899の場合にそれぞれ第1中当り,第2中当り,小当りの図柄がセットされ、遊技者に集中して遊技価値が付与されるようになる。前記S15により、遊技者にとって利益となる比較的大きな第1の遊技価値が付与され、前記S11,S12,S13,S14,S7,S8ならびにS9により、前記第1の遊技価値よりも小さな第2の遊技価値が付与される。前記S1およびS2により、遊技者にとって利益となる比較的大きな第1の遊技価値が付与できるように定められた第1の価値付与条件が成立したことを検出する第1の価値付与条件検出手段が構成されている。さらに、S1およびS2により、前記第1の遊技価値よりも小さな第2の遊技価値を付与できるように定められた第2の価値付与条件が成立したことを検出する第2の価値付与条件検出手段が兼用構成されている。また、このS1およびS2のステップの処理の結果、始動入賞時の乱数が10?899の場合には前記第2の価値付与条件の成立確率が向上し、一旦向上した後は始動入賞時の乱数が0?4になった場合に前記第2の価値付与条件の成立確率が低下する。ゆえに、S1およびS2により、前記第2の価値付与条件の成立確率が変化するように定められた変化条件が成立したことを判定する変化条件判定手段も兼用構成されている。さらに、このS1およびS2によって構成されている変化条件判定手段は、始動入賞時の乱数が所定の値であった場合に前記変化条件が成立した旨の判定を行なうものである。ゆえに、S1およびS2によって構成されている変化条件判定手段は、乱数発生手段を含み、該乱数発生手段から発っせられた乱数が所定の値であった場合に前記変化条件が成立した旨の判定を行なう乱数抽出判定手段を含む。なお、この乱数は必ずしも10進数でなくてもよく、たとえば、0?9,A,B,C,D,E,Fからなる16進数等のものであってもよい。さらに、前記S15,S11,S12,S13,S14,S7,S8およびS9により、前記第1の価値付与条件検出手段の検出出力に基づいて前記第1の遊技価値を付与し、前記第2の価値付与条件検出手段の検出出力に基づいて前記第2の遊技価値を付与する遊技価値付与手段が構成されている。さらに、S10,S16,S3,S5,S6により、前記変化条件判定手段の判定出力に基づいて前記第価値付与条件の成立確率を変化させる成立確率変化手段が構成されている。なお、本実施の形態では、前記第1の価値付与条件検出手段と第2の価値付与条件検出手段とを共通のステップにより兼用構成したものを示したが、本発明はこれに限らず、別々のステップにより前記第1の価値付与条件検出手段と第2の価値付与検出手段とを構成してもよい。
【0034】次に、本発明の別実施の形態を説明する。・・・
【0047】(3) 大当りの発生に基づいた前記可変入賞球装置5の開成時間,入賞個数,繰返し継続回数の条件は前述した実施の形態以外であってもよい。また、第2の遊技価値として中当りのみあるいは小当りのみを設けるようにしてもよい。さらに、中当りや小当り発生時の可変入賞球装置の開成時間も前述した実施の形態に限定されない。さらに、大当りや中,小当りの発生により、所定数の景品玉や得点を直接遊技者に付与するようにしてもよい。
【0048】(4) 大,中,小当りのそれぞれの発生確率は前述した実施の形態に限定されない。また、確率の変動幅も前述した実施の形態に限定されない。さらに、中当りや小当りの発生確率が向上する確率や向上時の中当り,小当りの発生確率や向上状態が終了する確率さらにそれら確率の変動幅等を遊技店側において選択設定(たとえば6段階の確率の中からいずれかを選んで設定)できるようにしてもよい。その際に、弾球遊技機個々に選択設定部を設けてもよく、また、遊技場に設置された複数台の弾球遊技機を集中管理する集中管理装置に選択設定部を設けてもよい。
【0049】(5) 中当り,小当りの発生確率が向上したことをランプ等で遊技者に報知するように構成してもよい。
【0050】(6) 中当り,小当りの発生確率の変化に対応させて大当りの発生確率が変化するように構成する。たとえば、中当り,小当りの発生確率が向上しているときには大当りの発生確率を低下させたり、中当り,小当りの発生確率が低下しているときには大当りの発生確率を向上させるようにする。

ここで、引用文献Aに記載されている発明の認定にあたっては、引用文献Aの段落【0047】に「第2の遊技価値として中当りのみあるいは小当りのみを設けるようにしてもよい。」と記載されていることから、小当りのみを設けるものとし、段落【0049】【0050】の記載との整合も考慮して、「第2の遊技価値」及び「第2の価値付与条件の成立確率」を、それぞれ「小当り」及び「小当りの発生確率」と読み替えた。

引用文献Aにおける記載事項、図面及び上記用語の読み替えに基づけば、引用文献Aには、次の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。
「 始動入賞時の乱数(0から999まで)がどのような数値となっているかをチェックし、該乱数が0?4の範囲内のものであった場合には大当りの図柄がセットされ、前記乱数が5?9の範囲内及び907?999であった場合には小当りの図柄がセットされるパチンコ遊技機であって、
前記乱数が5?9の範囲内であった場合には、小当り集中フラグをセットし小当りの発生確率を向上させる変化条件判定手段と、
小当りの発生確率が向上したことを報知するランプ等とを有し、
大当りの図柄がセットされると可変表示装置の停止時の表示結果が大当りの図柄の組合せとなるように制御され、小当りの図柄がセットされると前記可変表示装置の識別情報表示器7a?7cが小当りの識別情報の組合せになるように停止制御され、
前記可変表示装置の停止時の表示結果が大当りの図柄の組合せになれば特定遊技状態が発生し、可変入賞球装置5の開閉板18を開成してパチンコ玉が可変入賞球装置5に入賞しやすい第1の状態となる大当り制御が行なわれ、前記可変表示装置の識別情報表示器7a?7cが小当りの識別情報の組合せになれば小当りが発生し、前記可変入賞球装置5を0.48秒間開成制御し、
前記第1の状態は、前記可変入賞球装置5の開閉板18を開成し、10個のパチンコ玉が入賞するかまたは開成時間が30秒間に達するかのうちいずれか早い方の条件が成立することにより終了するものであり、
前記小当りの識別情報の組合せは7XX(Xは0?9までの図柄で任意の値で7を除く)であるパチンコ遊技機。」

2.引用発明Aと本願発明との対比
本願発明と引用発明Aとを比較すると、引用発明Aの「始動入賞」は、本願発明の「遊技盤面に設けられた始動口への遊技球の入賞」に相当し、以下同様に、
「パチンコ遊技機」は「遊技機」に、
「大当り」は「大当たり」に、それぞれ相当する。
さらに、引用文献Aの記載や図面等からみて、以下のことがいえる。

a.引用発明Aにおいては、始動入賞時の乱数がどのような数値となっているかをチェックし、その乱数によって大当りの図柄や小当りの図柄がセットされるのであるから、引用発明Aの「大当り」及び「小当り」は本願発明の「複数種類の役」に相当するとともに、所定の確率で当選可能なものということができる。
また、引用文献Aの段落【0028】等からみて、乱数によっては大当りの図柄や小当りの図柄以外の図柄がセットされるのであるから、引用発明Aは本願発明の「遊技盤面に設けられた始動口への遊技球の入賞を契機に、所定の確率で複数種類の役に当選可能な当/外抽選が実行される」に相当する機能を有するものといえる。
さらに、引用文献Aの段落【0013】の記載によれば、引用発明Aにおいては、可変表示の最中及び大当り状態の制御が行なわれている最中以外(本願発明の「通常遊技状態での遊技の進行の下」に相当)で、始動入賞時の乱数チェックや図柄のセットが行われることも明らかであるから、引用発明Aと本願発明は「通常遊技状態での遊技の進行の下で、遊技盤面に設けられた始動口への遊技球の入賞を契機に、所定の確率で複数種類の役に当選可能な当/外抽選が実行される遊技機」である点では一致している。

b.引用発明Aにおいて小当りの発生確率を向上させることと、本願発明において前記当/外抽選の確率を前記所定の確率よりも高確率に変動することを対比してみると、“当/外抽選の確率の少なくとも一部を前記所定の確率よりも高確率に変動する”点で共通している。
また、引用発明Aにおいて、小当りの発生確率を向上させるか否かは、乱数が5?9の範囲内であるか否かによって判定しているから、図柄のセットと同時、すなわち本願発明における「当/外抽選と同時」に相当する時期に行われているといえる。
そうしてみると、引用発明Aの「変化条件判定手段」と本願発明の「確変抽選実行手段」とは、“当/外抽選と同時に実行され、前記当/外抽選の確率の少なくとも一部を前記所定の確率よりも高確率に変動するか否かの確変抽選を実行する手段”である点で共通しているといえる。

c.引用発明Aにおいては、大当りの図柄がセットされると可変表示装置に大当りの図柄の組合せが停止表示され、小当りの図柄がセットされると可変表示装置に小当りの識別情報の組合せが停止表示され、その停止表示により遊技者は大当りか小当りかが分かるようになっているから、上記a.で述べたことを考え合わせると、引用発明Aの「可変表示装置」は、本願発明の「前記当/外抽選の結果を報知する報知手段」及び「演出図柄を表示する演出図柄表示手段」に相当するものといえる。
また、引用発明Aの「小当りの発生確率が向上したことを遊技者に報知するランプ等」は、本願発明の「確変抽選の結果を報知する報知手段」に相当するとともに、本願発明の「特別図柄を表示する特別図柄表示手段」とは“確変抽選の結果を報知する表示手段”である点で共通する。

d.引用発明Aにおいては、可変表示装置に大当りの図柄の組合せや小当りの識別情報の組合せが停止表示されれば(本願発明の「当/外抽選により当選した場合」に相当)、可変入賞球装置5の開閉板18を開成してパチンコ玉が可変入賞球装置5に入賞しやすい第1の状態となる大当り制御や可変入賞球装置5の0.48秒間開成制御が行われ、これらの制御は本願発明の特別遊技を進行することに相当する。
また、引用文献Aの段落【0027】?【0033】及び上記a.で述べたことを参酌すれば、引用発明Aにおいて、小当りの発生確率が向上したとき、次の始動入賞に伴う乱数チェックは、本願発明の「特別遊技終了後の通常遊技」に相当する状態において異なる条件で行われることとなる。
そうしてみると、引用発明Aは本願発明の「前記当/外抽選により当選した場合に、当選した役並びに確変抽選実行手段による確変抽選の結果に基づいて、特別遊技、及び当該特別遊技終了後の通常遊技のそれぞれの遊技仕様を設定する遊技仕様設定手段」及び「前記遊技仕様設定手段で設定された遊技仕様に基づいて遊技を進行する遊技進行制御手段」に相当する手段を有しているということができる。

e.引用発明Aにおいて、「大当り」の場合には第1の状態となり、可変入賞球装置5の開閉板18を開成し、10個のパチンコ玉が入賞するかまたは開成時間が30秒間に達するかのうちいずれか早い方の条件が成立するまで継続しており、パチンコ玉が入賞するごとに賞球の払出しがあることはいうまでもないことであるから、引用発明Aの「大当り」は、本願発明の「前記特別遊技として短期間で多くの賞球払出を得ることができる大当たり」に相当する。
また、引用発明Aの「小当り」には、可変入賞球装置5を0.48秒間開成制御するとともに小当りの発生確率を向上させるものと、可変入賞球装置5を0.48秒間開成制御するだけで小当りの発生確率が変化しないものとがあるから、引用発明Aの「小当り」は、本願発明の「大当たりとは異なる複数の特定の役」に相当する。

f.引用発明Aの「小当り」における可変入賞球装置5を0.48秒間開成制御すること(本願発明の「特別遊技」に相当)では遊技者が短期間で多くの賞球払出を受けることがないのは明らかである。ただし、遊技者が賞球払出を受ける可能性はあるので、小当りの発生確率を向上させることは、小当りの発生確率を向上させない場合よりは遊技者に実益のあるものといえる。
そうしてみると、引用発明Aの「小当り」のうちの前者は、小当りの発生確率を向上させるので、本願発明の「前記当/外抽選により当選する遊技者に実益のある真の特定の役」に相当するということができ、上記b.で述べたことを考え合わせると、引用発明Aの「小当り」のうちの前者と本願発明の「真の特定の役」は、“特別遊技では遊技者に対して短期間で多くの賞球払出を受けることがなく、かつ当該特別遊技終了後の通常遊技の進行の下で、前記当/外抽選の当選確率の少なくとも一部を高確率とする実益のある遊技仕様”である点で共通している。
そして、引用発明Aの「小当り」のうちの後者は、遊技者に実益のある小当りの発生確率が変化しないので、本願発明の「遊技者に対して実益のない偽の特定の役」及び「特別遊技では遊技者に対して短期間で多くの賞球払出を受けることがなく、かつ当該特別遊技終了後の通常遊技の進行の下で、前記当/外抽選の当選確率が前記所定の確率を維持した実益のない遊技仕様」のものに相当しているといえる。
また、上記e.に記載したとおり、引用発明Aの「大当り」は、本願発明の「前記特別遊技として短期間で多くの賞球払出を得ることができる大当たり」に相当するから、引用発明Aの「大当り」に、本願発明の「前記特別遊技では遊技者に対して短期間で多くの賞球払出を受けることがなく、かつ当該特別遊技終了後の通常遊技の進行の下で、前記当/外抽選の当選確率が前記所定の確率を維持した実益のない遊技仕様である」ところの偽の特定の役に相当する役が設定されることは有り得ないので、引用発明Aは、本願発明の「一方、前記大当たりには前記偽の特定の役を設定せず、」という構成において一致しているといえる。

以上を総合すると、両者は、
「 通常遊技状態での遊技の進行の下で、遊技盤面に設けられた始動口への遊技球の入賞を契機に、所定の確率で複数種類の役に当選可能な当/外抽選が実行される遊技機であって、
前記当/外抽選と同時、或いは当/外抽選に当選した後に実行され、前記当/外抽選の確率を前記所定の確率よりも高確率に変動するか否かの確変抽選を実行する確変抽選実行手段と、
前記当/外抽選の結果を報知する報知手段と、
前記当/外抽選により当選した場合に、当選した役並びに確変抽選実行手段による確変抽選の結果に基づいて、特別遊技、及び当該特別遊技終了後の通常遊技のそれぞれの遊技仕様を設定する遊技仕様設定手段と、
前記遊技仕様設定手段で設定された遊技仕様に基づいて遊技を進行する遊技進行制御手段とを有し、
前記報知手段は、演出図柄を表示する演出図柄表示手段とからなり、
前記複数種類の役には、前記特別遊技として短期間で多くの賞球払出を得ることができる大当たりと、該大当たりとは異なる複数の特定の役を含み、
前記複数の特定の役には、前記当/外抽選により当選する遊技者に実益のある真の特定の役に対して、遊技者に実益のない偽の特定の役を設定しておき、一方、前記大当たりには前記偽の特定の役を設定せず、
前記真の特定の役が、前記特別遊技では遊技者に対して短期間で多くの賞球払出を受けることがなく、かつ当該特別遊技終了後の通常遊技の進行の下で、前記当/外抽選の当選確率を高確率とする実益のある遊技仕様であり、偽の特定の役が、前記特別遊技では遊技者に対して短期間で多くの賞球払出を受けることがなく、かつ当該特別遊技終了後の通常遊技の進行の下で、前記当/外抽選の当選確率が前記所定の確率を維持した実益のない遊技仕様である遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願発明の「確変抽選実行手段」は、当/外抽選の確率を前記所定の確率よりも高確率に変動するか否かの対象が明らかでないのに対し、引用発明Aの「変化条件判定手段」は、発生確率を向上させるか否か(本願発明の「当/外抽選の確率を前記所定の確率よりも高確率に変動するか否か」に相当)の対象が「小当り」である点。

[相違点2]本願発明の「特別図柄を表示する特別図柄表示手段」は真の特定の役及び偽の特定の役のそれぞれを、表示される特別図柄を当該真又は偽が区別できるような異なる形態として報知しているのに対し、引用発明Aの「ランプ等」はそのような報知形態のものではない点。

[相違点3]本願発明の「演出図柄表示手段」は、真の特定の役、及び前記偽の特定の役を「前記当/外抽選で前記大当たりに当選しない外れのときの演出図柄変動パターンによる報知形態にて報知」しているのに対し、引用発明Aの「識別情報表示器7a?7c」は、小当りの識別情報の組合せになるように停止表示する際にどのような変動パターンによる報知形態であるか明らかでない点。

3.当審の判断
[相違点1について]
まず、本願発明の「確変抽選実行手段」による当/外抽選の確率を前記所定の確率よりも高確率に変動するか否かの対象が、「複数種類の役」全てであるとして判断する。
パチンコ遊技機の分野において、大当り以外の図柄がセットされるときに大当りの発生確率を向上させるようにすることは、例えば、特開2001-62096号公報(特に段落【0127】)及び特開2004-229955号公報(特に段落【0056】、【0057】)に記載されるように、従来周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。
そして、引用文献Aには、大当りと小当りだけでなく中当りを設けた場合において、中当り以外の図柄がセットされるときに中当りの発生確率を併せて向上させるようにすることも記載されているから(特に、段落【0029】、【0031】及び図4を参照。)、引用発明Aの「変化条件判定手段」が、発生確率を向上させるか否かの対象としている「小当り」に「大当り」を加えて、上記相違点1に係る本願発明のような構成とすることは、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)にとって想到容易である。
また、本願発明の「確変抽選実行手段」による当/外抽選の確率を前記所定の確率よりも高確率に変動するか否かの対象が、「複数種類の役」のうちの「大当たり」であるとしても、引用発明Aに周知技術1を適用し、引用発明Aの「変化条件判定手段」が、発生確率を向上させるか否かの対象としている「小当り」を「大当り」に代えて、上記相違点1に係る本願発明のような構成とすることは、当業者にとって想到容易である。

[相違点2について]
特開2004-230104号公報(拒絶査定時の引用文献2、以下「引用文献B」という。)には以下の事項が記載されている。
a.可変表示装置9の装飾図柄可変表示部11に左装飾図柄表示領域8a、中装飾図柄表示領域8b及び右装飾図柄表示領域8cが設けられると共に、右装飾図柄表示領域8cの右下方に、方形状の特別図柄表示領域24が装飾図柄表示領域に対して相対的に小さく設けられる点(特に、段落【0181】及び図36を参照)。
b.通常大当りを表示する場合として、確変大当りとされないとき(ステップS871)と、確変大当りだが演出フラグが偽演出に設定されているとき(ステップS878)の2つがある点(特に、段落【0177】?【0179】及び図35を参照)。
c.確変大当りとされないときに通常大当りを表示する場合、左・中・右装飾図柄表示領域8a・8b・8cに「0」及び偶数図柄のいずれかを確定表示するとともに、特別図柄表示領域24にも「0」及び偶数図柄のいずれかを表示し(特に、段落【0189】及び図39参照)、確変大当りだが演出フラグが偽演出に設定されているときに通常大当りを表示する場合、左・中・右装飾図柄表示領域8a・8b・8cに「0」及び偶数図柄のいずれかを確定表示するとともに、特別図柄表示領域24には「7」を表示する(特に、【0177】?【0179】及び図41参照)点。
すなわち、引用文献Bには、可変表示装置9に左・中・右装飾図柄表示領域8a・8b・8cと特別図柄表示領域24を設け、遊技者には左・中・右装飾図柄表示領域8a・8b・8cに確定表示された装飾図柄だけによっては確変か否かわからず、特別図柄表示領域24に表示された特別図柄によって確変か否かが報知される場合があるパチンコ遊技機(以下「引用発明B」という。)が記載されていると認められる。
そして、引用発明A及び引用発明Bともに、パチンコ遊技機の図柄表示に関する発明である点で共通しているから、引用発明Aに引用発明Bの可変表示装置9の構成を適用して、「ランプ等」による小当りの発生確率が向上したことの報知を「可変表示装置」で行うようにし、可変入賞球装置5を0.48秒間開成制御するとともに小当りの発生確率を向上させる小当りを報知するときには左・中・右装飾図柄表示領域8a・8b・8cに7XX(Xは0?9までの図柄で任意の値で7を除く)を確定表示するとともに特別図柄表示領域24に「7」を表示し、可変入賞球装置5を0.48秒間開成制御するだけで小当りの発生確率が変化しない小当りを表示するときには左・中・右装飾図柄表示領域8a・8b・8cに7XX(Xは0?9までの図柄で任意の値で7を除く)を確定表示するとともに特別図柄表示領域24に「0」及び偶数図柄のいずれかを表示するようにして、上記相違点2に係る本願発明のような構成とすることは、当業者にとって想到容易である。

請求人は、平成23年7月15日付けの意見書における「・・・その内、第1中当たり、第2中当たりは、本願発明の真の特定の役(前記当/外抽選により当選する遊技者に短期間で多くの実益のある真の特定の役)に相当します」という内容が誤植であったとして、平成23年10月18日付けの意見書において、「この引用文献Aにおいて、大当たりは可変入賞装置5を30秒開成し、第1中当たりは可変入賞球装置5を5.9秒間開成し、第2中当たりは可変入賞球装置5を1.4秒間開成し、小当たりは可変入賞装置5を0.48秒間開成する構成となっています。
ここで、引用文献1の大当たりを除く、第1中当たりと第2中当たり、並びに小当たりは、本願発明の複数の特定の役に属するものと考えられます。
その内、第1中当たり、第2中当たりは、本願発明の真の特定の役(特別遊技では遊技者に対して短期間で多くの賞球払出を受けることがなく、かつ当該特別遊技終了後の通常遊技の進行の下で、当/外抽選の当選確率を高確率とする実益のある遊技仕様で遊技が進行する真の特定の役)に相当します。
一方、小当たりは、本願発明における、偽の特定の役(前記真の特定の役に対して、遊技者に対して多くの実益のない偽の特定の役)に相当します。
本願発明は、真の特定の役、偽の特定の役、共に演出図柄表示手段では前記当/外抽選で大当たりに当選しない外れのときの演出図柄変動パターンによる報知形態にて報知しているのに対し、引用文献Aでは、第1中当たり、第2中当たり、小当たりをそれぞれ明確に区別して報知しています。」(3頁14?28行)及び「引用文献Bは、大当たり報知において、本願発明における演出図柄表示手段に相当する左中右装飾図柄表示領域8a、8b、8cで偽報知(確変当たりであるのに非確変当たりを示す報知)をし、本願発明における特別図柄表示手段に相当する特別図柄表示24で真報知をすることが記載されています。
しかしながら、この引用文献Bは、大当たり確定後の特典(確変)有無の報知であり、これに対して本願発明では、この大当たり以外に、真の特定の役と偽の特定の役が存在することを言及し、かつこの真の特定の役と偽の特定の役のいずれに当選しているかをあいまいにするために、演出図柄表示手段と特別図柄表示手段とを使いわけています。」(3頁41?48行)と主張し直している。
しかし、本拒絶理由においては、引用発明Aを引用文献Aの段落【0047】の記載に基づき、「小当り」のみを設けるものとして認定し、「小当り」のうち、小当りの発生確率を向上させるものを本願発明の「真の特定の役」に相当させ、小当りの発生確率が変化しないものを本願発明の「偽の特定の役」に相当させ、それら2種類の小当りの識別情報の組合せは7XX(Xは0?9までの図柄で任意の値で7を除く)であって、識別情報を遊技者が見ただけでは区別できないのであるから、その点では一致しているということができる。
そうしてみると、引用発明A及び引用発明Bは確定表示された一つの図柄組合せだけによっては確変か否か区別できない点で一致し、かつ、確変か否かを報知する手段を備えている点でも共通しているから、引用発明Aの可変表示装置の識別情報表示器7a?7cによる識別情報の組合せだけでは区別できない確変か否かについての報知構成に引用発明Bを適用することは当業者にとって格別困難なことではない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。
なお、請求人は、第1中当り、第2中当りは、本願発明の真の特定の役(特別遊技では遊技者に対して短期間で多くの賞球払出を受けることがなく、かつ当該特別遊技終了後の通常遊技の進行の下で、当/外抽選の当選確率を高確率とする実益のある遊技仕様で遊技が進行する真の特定の役)に相当する旨主張しているが、第2中当りはともかく、第1中当りは可変入賞球装置5を5.9秒間開成するのであるから、第1中当りの特別遊技では遊技者に対して短期間で多くの賞球払出を受けることがないという主張にも疑問がある。

[相違点3について]
パチンコ遊技機において、リーチにならずに外れるときの変動パターンをすべて同じとすることは、例えば、特開平9-262348号公報(特に段落【0025】及び図8)及び特開2000-5393号公報(特に段落【0038】)に記載されるように、従来周知の技術(以下「周知技術2」という。)であり、引用発明Aの小当りを表示する時の7XX(Xは0?9までの図柄で任意の値で7を除く)は、リーチにならずに外れるときの識別情報の組合せであるから、引用発明Aに周知技術2を適用し小当りを表示する際の変動パターンをリーチにならずに外れるときのものとして、上記相違点3に係る本願発明のような構成とすることは、当業者にとって想到容易である。

[相違点についての判断のまとめ]
本願発明の作用効果も、引用発明A、引用発明B及び周知技術1,2から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明A、引用発明B及び周知技術1,2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第四.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明A、引用発明B及び周知技術1,2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項(請求項2)について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-09 
結審通知日 2011-11-15 
審決日 2011-11-28 
出願番号 特願2004-306008(P2004-306008)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 納口 慶太  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 澤田 真治
伊藤 陽
発明の名称 遊技機  
代理人 福田 浩志  
代理人 加藤 和詳  
代理人 中島 淳  

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