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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16B
管理番号 1250438
審判番号 不服2010-19267  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-09 
確定日 2012-01-12 
事件の表示 特願2000-536980「固定及び解除装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月23日国際公開、WO99/47819、平成14年 3月 5日国内公表、特表2002-506955〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯

本願は、1999年3月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 1998年3月18日 (AU)オーストラリア連邦)を国際出願日とする特許出願であって、平成22年4月1日(起案日)付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年8月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明

本願の請求項1ないし20に係る発明は、平成12年9月18日付け特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書、平成21年4月27日付け手続補正及び平成22年2月15日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
第一部材と第二部材を解除可能に固定するように適合された接続手段であって、前記第一部材が前記第二部材にロックされるロック位置と前記第一部材が前記第二部材から解除されるロック解除位置との間に遠隔操作動手段によりチャンネル内を移動可能なロック手段を備えており、前記接続手段と前記遠隔操作手段との間に永久的に材料の接続がない接続手段において、前記チャンネルはベースと変形可能の両側面とを有すること、及びロック位置では前記ロック手段は前記ロック手段の領域への前記両側面の変形を妨げることを特徴とする接続手段。」

なお、請求項1には、「遠隔操作動手段」と「遠隔操作手段」が記載されているが、両者は、技術事項として差異がなく、仮に区別すると「前記遠隔操作手段」は対応する構成がないことになるから、「遠隔操作動手段」は「遠隔操作手段」の誤記として、以下、適宜「遠隔操作手段」に統一して表記する。

3.引用刊行物とその記載事項

これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物及びその記載事項は次のとおりである。

刊行物1 米国特許第5439310号明細書
刊行物2 米国特許第3596958号明細書

(1)刊行物1に記載された発明

刊行物1(米国特許第5439310号明細書)には、「CONNECTOR SYSTEMS FOR STRUCTURES」(構造物の連結システム)に関して図面とともに次の記載がある(日本語訳は、当審による仮訳である)。

(ア)「The trusses are fastened to one another at the comers by a connector system which includes a gripping collet mechanism 30 (See FIG. 3 and 4) with an actuating mechanism 32 located in one of the masses and a floating receptacle 34 to receive the gripping collet member the other truss.
The connector system, as illustrated in further detail in FIG. 3 and FIG. 4, is in a truss or a hollow ann member or housing 36 with a forward wall 38 which has a central opening 40. In the housing 36 is a plate member 42 which defines a rear wall and an enclosure with respect to the forward wall 38. The floating receptacle 34 includes a plate member 39 located for limited movement between the forward, rearward and side walls of the enclosure. The plate member 39 has a socket extension 44 which extends outwardly through the opening 40. Spring members 46 are disposed in the plate member 39 in the enclosure to bring the plate member frictionally into engagement with the forward end wall 38. As can be appreciated, the cross-sectional configuration of the enclosure and the plate member 39 can be cylindrical, square or any other shape which permits a limited "floating" action for the plate member relative to the housing 36.
The socket extension 44 has a centrally located internal cylindrical locking recess 48 which opens to an intermediate smaller bore portion 50 and where the bore portion 50 extends to an outer frusto conical wall surface 52. Between the bore portion 50 and the recess 48 is an inner frusto conical locking wall surface 54. The inner frusto conical wall surface 54 is utilized for latching purposes; the outer frusto conical wall surface 52 is used for guiding purposes.
The gripping collet mechanism 30 for the connector system is mounted within a housing member 60 which has a forward end wall 62 and rearward end wall 64 which define an enclosure in the housing member 60. The forward end wall 62 has an opening 66. A base member 68 with a projecting probe element 70 is attached to the end wall 62 so that the probe element 70 extends outwardly from the end wall 62. The probe element 70 has an outer frusto conical surface 72 at an angle which is complimentary to the outer wall surface 52 of the socket extension 44.
The probe element 70 thus can align itself within the socket extension 44. The probe element 70 has a central bore which has an internally located threaded portion 74 which threaded receives one end of the tubular collet member 30. The tubular collet member 30 has collet fingers 76 which project outwardly from the end of the probe element 70. The collet fingers 76 are normally resiliently biased inwardly toward a central axis 78 and the inner surfaces of the collet fingers 76 have a frusto conical configuration about the central axis 78. The outer surfaces of the collet fingers are recessed to form terminal latch elements with inclined surfaces arranged to cooperate with the inclined frusto conical surface 54 of the socket extension 44.
The collet fingers 76 are actuated by an actuating mechanism which includes a frusto conically shaped actuator head 80 disposed within the collet fingers and which is attached to an actuator member 82. The tubular actuator member 82 is disposed in a tubular guide housing 84 which has ranged ends. One ranged end of the guide housing 84 is attached to the base member 68 and its other ranged end is attached to a tubular bearing housing 86.」(3欄26行?4欄24行)
(ア')「トラスは、集合体の一つに設けられた操作機構32と他のトラスの筒(コレット)状把持体を受け入れるための浮動受部材34を備えた筒(コレット)状把持機構30(図3及び4を参照)を含む連結システムによって部材が互いに連結される。
上記連結システムは、図3及び図4に一層詳細に示されるように、トラスあるいは中空の環状体に設けられるか、あるいは中央開口40を有する前方壁38を有するハウジング36に設けられている。ハウジング36には、後方壁を画定し、前方壁38とともに囲い空間を画定する板状体42がある。浮動受部材34は、上記囲い空間の前後壁と両側壁の間で限定的に動く板状体39を有している。上記板状体39は、開口40を介して外方に延長された拡張ソケット44を有する。板状体39に設けられたバネ部材46は、上記囲い空間において前方壁38端面に上記板状体を摩擦係合させている。十分に理解することができるように、上記囲い空間の横断面と板状体39は、上記板状体がハウジング36に対して限られた浮動作用を許容する円筒状、方形又は他の形状でありうる。
拡張ソケット44は、中間部のより小さな開口部50に開口し、中心に位置する内部円筒状のロック窪み48を有し、開口部50は、外方に向かって円錐台状に拡張する壁面52を有する。開口部50と窪み48の間は、内方に向かう円錐台状のロック壁面54がある。上記内方に向かう円錐台状の壁面54は、ロックするために用いられ、外方に向かう円錐台状壁面52は、ガイドをするために用いられる。
上記連結システムの筒(コレット)状把持機構30は、ハウジング60の囲い空間を画定する前方端壁62と後方端壁64を有するハウジング60の中に取り付けられる。前方端壁62は、開口66を有する。プローブ(探査)要素70を有する基礎部材68は、端壁62に取り付けられているので、上記プローブ要素70は、端壁62から外方へ伸長することができる。プローブ要素70は、拡張ソケット44の外側壁面52に整合する角度の外方に向かう円錐台状表面72を有する。プローブ要素70は、このように拡張ソケット44内にそれ自体を整合させることができる。
プローブ要素70は、中央部に開口を有し、当該開口は、中央部に管状の筒(コレット)状把持機構30の1つの端部を挿通して受け入れる挿通部74が設けられている。管状の筒(コレット)状把持機構30は、プローブ要素70の端部から外方に伸びる筒(コレット)状係止部76を有する。筒状係止部76は、中心軸78に向かって弾性的に変形させられ、筒状係止部76は中心軸78に対して円錐台状の輪郭を有する。上記筒状係止部の外部表面は、拡張ソケット44の傾斜した円錐台状表面54に整合して係合する傾斜面を形成するために、端部係止要素を構成する窪みを有する。
筒状係止部76は、操作部材82に取り付けられ、筒状係止部の中に設けられた円錐台状の操作ヘッド80を備えた操作機構によって操作される。管状の操作部材82は、端部まで伸びた管状のガイドハウジング84の中に設けられている。ガイドハウジング84の一端は、基礎部材68に取り付けられ、その他端は、管状の軸受ハウジング86に取り付けられている。」

(イ)「Referring now to FIG. 6, a paraffin linear actuator 32 is schematically illustrated. This type of actuator is manufactured by Starsys Research of Boulder, Colo. The actuator 32 has an outer housing 130 which contains an inner tubular squeeze boot member 132 which receives a tubular actuator member 134. The boot member 132 and actuator member 134 are in an enclosure containing a solid paraffin material 136 and a heating element 138, when the paraffin is heated it converts from a solid to a liquid phase and incurs a volumetric expansion which provides a hydrostatic pressure on the boot member 132. The hydrostatic pressure produces a linear force of the actuator rod 134 in one direction. The actuator rod 134 has a flange 140 which compresses a spring 142 upon movement of the actuator in the one direction. When the heating is discontinued, the paraffin is cooled and contracts to a solid and the spring 142 returns the actuator rod 134 towards its initial position.
In operation, the truss members 10 and 11 (FIG. 1) are brought into alignment and the pins 20 aligned with the openings 22. The latch mechanism 28 provides a preliminary coupling of the structures while the collet fingers 76 are inserted into extension sockets 44. The heater in the paraffin actuator 32 is turned on and the rod 134 moves the actuator member 82 in a linear direction to latch the fingers 76 in the latching recess 48. The belleville springs 98 are compressed and apply a spring loading force on the latching fingers. Upon cooling of the paraffin, the rod 134 retracts (FIG. 4). The actuator 82 is held in place by the bolt member 102 in the ZIPNUT mechanism 104.
Alternatively, should the actuator 32 malfunction, the worm gear 123 can be manually turned to actuate the actuator member 82.
To release the coupling, the worm gear 123 is rotated manually in an opposite direction which moves the threaded bolt member 102 in a direction which develops a rotational force to move the spacer member 90 and actuator member 82 so that the collet fingers 76 are released from the recess 48.
It will be appreciated that while a paraffin actuator is preferred, a wide variety of actuators such as pneumatic, pyrotechnic or hydraulic systems can be utilized to provide a linear motion.」(5欄18行?61行)
(イ’)「図6を参照すると、パラフィンリニア操作機構32は、概略的に示されている。この種の操作機構は、ボールダー(コロラド)のStarsysResearchによって製造されている。操作機構32は、管状の操作部材134を受容する管状のリニア圧搾ブート部材132を含む外部ハウジング130を有する。ブート部材132と操作部材134は、固体パラフィン材136と加熱要素138によって囲まれており、パラフィンが加熱されて固体から液体に変わるとき、体積膨張が発生してブート部材132に静水圧を供給する。静水圧は、一方向に操作ロッド134のリニアな力を生みだす。操作ロッド134は、操作機構の一方向の動きがバネ142を圧縮するフランジ140を有している。加熱が中断されたとき、パラフィンは、冷えて収縮して固体になり、バネ142は、操作ロッド134をその最初の位置へ戻す。
操作においては、トラス部材10及び11(図1)は、整列させられ、ピン20は、開口22に配列されられる。係止機構28は、上記構造の初期結合を提供し、筒状係止部76は、拡張ソケット44に挿入される。パラフィン操作機構32の中のヒータが点火されると、ロッド134は、筒状係止部76をロック窪み48に係合させるために、操作部材82をリニアに動かす。皿バネワッシャ98は、圧縮されて筒状係止部材にバネ力を作用させる。パラフィンが冷却されると、ロッド134は引き込まれる(図4)。操作部材82は、雌ネジ機構104の中に雄ネジ部材102によって保持される。
あるいは、万一、操作機構32が正常に動かなければ、ウォーム歯車装置123が手動で回転して操作部材82を操作しうる。
結合を解放するためには、ウォーム歯車装置123が反対方向に手動で回転させられることにより、雄ネジ部材102を動かしてスペーサ部材90と操作部材82に回転力を与えて、ロック窪み48から筒状係止部76を解放することができる。
パラフィン操作機構は好ましいが、直線運動を提供するために、空気操作機構、火薬操作機構、又は油圧システムがリニアの駆動に利用できる。」

(ウ)上記記載事項(ア)、(イ)及びFIG.3、FIG.4からみて、刊行物1に記載された構造物の連結システムは、ハウジング36とハウジング60がロックされるロック位置(FIG.4を参照。)と、ハウジング36とハウジング60のロックが解放されるロック解放位置(FIG.3を参照。)を有し、操作機構32の作動によってロック位置とロック解放位置との間で筒状係止部76内を移動可能な操作ヘッド80を有するものであり、筒状係止部76は弾性的に変形させられてロック窪み48に係合する。また、上記ロック位置では操作ヘッド80が操作部材82に保持されて筒状係止部76とロック窪み48の係合を保持するものと解される。

そうすると、上記記載事項(ア)?(ウ)及び図面の記載からみて、上記刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ハウジング36とハウジング60を解放可能に係合する構造物の連結システムであって、ハウジング36とハウジング60がロックされるロック位置と、ハウジング36とハウジング60のロックが解放されるロック解放位置を有し、操作機構32の作動によってロック位置とロック解放位置との間で筒状係止部76内を移動可能な操作ヘッド80を有するものであり、筒状係止部76は弾性的に変形させられてロック窪み48に係合し、上記ロック位置では操作ヘッド80が操作部材82に保持されて筒状係止部76とロック窪み48の係合を保持する、構造物の連結システム。」

(2)刊行物2に記載された発明

刊行物2(米国特許第3596958号明細書)には、「MAGNETIC LOCK」(磁気ロック)に関して、図面とともに次の記載がある。

(エ)「Referring now to FIGS. 1 and 2 of the drawings, there is illustrated a slide bar lock assembly 10 comprised of an elongated bar 12 and a slide 14 mounted for movement therealong. The bar 12 typically is rectangular in cross section and is formed with a plurality of sockets 16 and 18 in spaced pairs along one face thereof. Magnetic locking means are employed for securing the slide member 14 at any selected position along the length of the bar 12 in register with a pair of sockets 16 and 18.」(1欄56行?65行)
(エ’)「図面の図1及び2には、長方形のバー12、及びそれに沿って移動するためにマウントされたスライド14からなるスライドバーロック組立体10が記載されている。バー12は、典型的には断面が長方形であり、その表面に沿って一定間隔で配置された複数のソケット16及び18が形成されている。磁気ロックする手段は、バー12の長手方向に沿った任意の位置において、1組のソケット16及び18によって、スライド14を確実に固定にする。」

(オ)「Referring now to FIG. 3 of the drawings there is illustrated a modification of the invention and in this embodiment members 42 and 44 are movable relative to one another and adapted to be locked in a selected position by means of movable locking magnets 46 and 48 located in cooperating sockets 50 and 22 registerable with sockets 54 and 56. Keeper magnets 58 and 60 are provided as before. In this embodiment, in place of a control bar magnet an inductive coil 62 is provided and extends into operating proximity with the locking magnets 46 and 48 as well as the keeper magnets 58 and 60. The coil 62 is adapted to be connected to a power source such as a battery 63 which will energize the coil and develop a field adapted to drive the magnet 46 and 48 into a locked position. By means of a switch or by reversing the battery 63 the polarity of the coil may be reversed so as to move the magnets into an unlocked position.」(2欄62行?3欄2行)
(オ’)「図面の図3を参照すると、発明の変形例が記載されており、この実施例においては、部材42と44は相互に移動可能であり、選択された位置において、ソケット50と22(審決注:「52」の誤記である。)及びソケット54と56が協働して可動ロック磁石46と48によって固定される。前述のように、保持磁石58及び60が用いられる。この実施例では、制御棒磁石の代わりに、誘導コイル62が用いられ、保持磁石58及び60と同様にロック磁石46及び48に近接して操作がなされる。コイル62は、バッテリー63のような動力源に接続されてコイルにエネルギーを与え、磁石46及び48をロック位置に打ち込むのに適した磁場を発生する。スイッチ又はバッテリー63を逆にすることによって、コイルの極性は反転されて磁石をロック解除の位置に動かすことができる。」

上記記載事項(エ)及び(オ)及び図面の記載からみて、上記刊行物2には次の発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されているものと認められる。

「部材42と44は相互に移動可能であり、バッテリー63に接続された誘導コイル62をスイッチによって操作することにより、磁石46及び48とソケット50,52,54,56によるロックとロック解除をした、磁気ロック。」

4.発明の対比

(1)一致点
本願発明と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「ハウジング36とハウジング60」は、その機能からみて、本願発明の「第一部材と第二部材」に相当し、以下同様に、「構造物の連結システム」は「接続手段」に相当するから、刊行物1発明の「ハウジング36とハウジング60を解放可能に係合する構造物の連結システムであって」は、実質的に、本願発明の「第一部材と第二部材を解除可能に固定するように適合された接続手段であって」に相当する。
刊行物1発明の「ハウジング36とハウジング60がロックされるロック位置」及び「ハウジング36とハウジング60のロックが解放されるロック解放位置」は、その機能からみて、本願発明の「前記第一部材が前記第二部材にロックされるロック位置」及び「前記第一部材が前記第二部材から解除されるロック解除位置」に相当する。
刊行物1発明の「操作機構32」と本願発明の「遠隔操作動手段」又は「遠隔操作手段」とは、「遠隔」か否かについて相違点において検討することとすると、少なくとも「操作手段」である限りにおいて共通するものである。
刊行物1発明の「ロック位置とロック解放位置との間で筒状係止部76内を移動可能な操作ヘッド80を有するものであり」は、「筒状係止部76内」が「チャンネル内」といえるものであり、「操作ヘッド80」が「ロック手段」といえるものであるから、実質的に、本願発明の「チャンネル内を移動可能なロック手段を備えており」に相当する。
刊行物1発明の「筒状係止部76は弾性的に変形させられてロック窪み48に係合し、上記ロック位置では操作ヘッド80が操作部材82に保持されて筒状係止部76とロック窪み48の係合を保持する」は、筒状係止部76がチャンネルを有するものであるから、ベースを有するか否かは別として、少なくとも、本願発明の「前記チャンネルは(ベースと)変形可能の両側面(と)を有すること、及びロック位置では前記ロック手段は前記ロック手段の領域への前記両側面の変形を妨げること」に相当する。

したがって、両者は、本願発明の表記にならえば、
「第一部材と第二部材を解除可能に固定するように適合された接続手段であって、前記第一部材が前記第二部材にロックされるロック位置と前記第一部材が前記第二部材から解除されるロック解除位置との間に操作手段によりチャンネル内を移動可能なロック手段を備えている、接続手段において、前記チャンネルは変形可能の両側面を有すること、及びロック位置では前記ロック手段は前記ロック手段の領域への前記両側面の変形を妨げる、接続手段。」である点において一致している。

(2)相違点
一方、両者の相違点は、以下のとおりである。

[相違点1]
本願発明は、上記チャンネルが「ベース」を有するものであり、上記操作手段が「遠隔」操作手段であって「前記接続手段と前記遠隔操作手段との間に永久的に材料の接続がない」ものであるのに対し、刊行物1発明は、筒状係止部76がチャンネルを有するもののベースといえる構成を有するか否か明らかではなく、また、操作手段が遠隔といえるものかも明らかではなく、操作ヘッド80は操作部材82を有するものである点。

5.当審の判断

(1)相違点1について
本願発明は、「種々様々な製品と用途のための固定及び解除装置」の分野に属する固着手段の一種といえるものであるところ、固着手段の一つとしてチャンネルがベースと変形可能な両側面を有し、チャンネル内を移動可能なロック手段を備えた接続手段は、周知である。例えば、実願昭52-155621号(実開昭54-81061号)のマイクロフィルムの第2図、及び実願昭63-2020号(実開平1-108416号)のマイクロフィルムの第1図に記載された接続手段は、いずれもチャンネルがベースと変形可能な両側面を有し、チャンネル内を移動可能なロック手段を備えたものである。そして、上記接続手段は、固着手段に属する要素技術であって、技術分野を問わず必要に応じて適用されるものであるから、刊行物1発明に、チャンネルがベースと変形可能な両側面を有し、チャンネル内を移動可能なロック手段を備えた上記周知の接続手段を適用することは、当業者に何ら困難性はない。
そうすると、上記相違点1は、一般には手作業や刊行物1に記載されたような操作手段によって行われる上記接続手段のロックとロック解除の操作を、本願発明が「遠隔」操作手段を用いて「前記接続手段と前記遠隔操作手段との間に永久的に材料の接続がない」ものとしたことに基づくものであるところ、本願発明は、上記遠隔操作手段について「前記接続手段と前記遠隔操作手段との間に永久的に材料の接続がない」ものがどのような構成を有するものか特定されたものではなく、本願の明細書を参酌してもさまざまな実施例に対応して上記遠隔操作手段の構成を工夫した点は記載されていない。すなわち、上記遠隔操作手段は、単に「永久的に材料の接続がない」ような磁場や磁気の作用などを利用して被操作部材を遠隔に操作する一般的なものと解さざるを得ないものである。
上記刊行物2には、コイル62と可動ロック磁石46及び48との間に永久的に材料の接続がない磁場又は磁気の作用により、操作対象である可動ロック磁石46及び48をロック位置とロック解除位置に操作する遠隔操作手段の一種が記載されており、上記磁場又は磁気の作用を利用して部材を操作するような遠隔操作手段は分野を問わず適宜用いられている慣用手段であるから、刊行物1発明の操作手段である操作機構32に代えて、上記刊行物2に記載されたような遠隔操作手段を適用することは当業者が容易に推考できたことである。
したがって、刊行物1発明に上記周知の接続手段を適用し、その操作手段として刊行物2に記載されたような遠隔操作手段を適用することにより、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)本願発明の効果について
本願発明が奏する効果は、刊行物1及び2に記載された発明並びに上記周知の接続手段から当業者が予測できるものである。

(3)まとめ
本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明並びに上記周知の接続手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)審判請求人の主張について
審判請求人は、平成22年9月17日付けの審判請求書の手続補正書において、「現実に、引用文献1の技術は宇宙空間での構造物相互の結合及び離脱に関するものでアクチュエーターヘッド80(審決注:上記「操作ヘッド80」に相当する。)は円錐台形状をなしていて、常時先細状態になっているコレットフィンガー76(審決注:上記「筒(コレット)状係止部76」に相当する。)を強力な力でこじあける形式のものであるが、本願発明のロック手段は基本的にはチャンネルの両側面に対して無接触の手段を介してスライドするだけで、それを強力な力でこじあける性質のものではない。更に引用文献1ではアクチュエーターヘッド80の押し込みは、パラフィンアクチュエータ32(審決注:上記「パラフィンリニア操作機構32」に相当する。)によるが、その抜き取りはウオームギヤ123(審決注:上記「ウォーム歯車装置123」に相当する。)経由でネジ付ボルト部材102(審決注:上記「雄ネジ部材102」に相当する。)を回動させないとできないもので(公報第5欄52?57)、アクチュエーターヘッド80がコレットフィンガー76に対していかに強力な押し込み力を働いているものであるかが明確に理解されるものである。
このように引用文献1の発明と、本願発明はまったく技術的思想の異なる発明であり、それから本願発明を作り出すということは、即ち進歩性にほかならない。
一方、引用文献2の発明では本願発明のように構造材相互の完全な結合、離接に係る発明ではなくスライド部材14(審決注:上記「スライド14」に相当する。)をバー12上で位置決めする発明にすぎないこと、そしてその場合マグネット自体が直接位置決めの手段そのものとなるもので他部材を作動させるものではないこと、及び本願発明ではロック手段はチャンネルの両側面の変形を妨げる主体となっているものである点で、引用文献2も本願発明の引用文献にはなりえない。」(審判請求書の手続補正書の「2.ハ」の項参照)と主張するなど、本願は特許されるべき旨主張している。
しかしながら、本願発明は、いわゆる固着手段の技術分野に属するものであり、本願の明細書にもその用途として建築産業のみならず航空機や自動車などを例示して「本発明のリモコン固定及び解除装置は実に広い応用分野がある。」(段落【0016】)と記載されているように、上記固着手段に関する技術は技術分野を問わず用いられる要素技術であるから、上記刊行物1に記載された固着手段のロック手段とロック解除手段の基本的構成が宇宙空間で用いられるものであることが、刊行物1発明に刊行物2発明を適用することを妨げる理由にはならない。また、刊行物1発明は、ロック手段として円錐台形状の操作ヘッド80を用いているが、ロック手段の形状は、チャンネルと変形可能な両側面との関連において設計上の観点から適宜決定されるものであるから、この点に構成上の差異があるとしても型式上の相違に過ぎないが、本願発明はロック手段の形状を特定したものではないから、この点の主張は特許請求の範囲の請求項1に特定された構成に基づくものではない。なお、本願の実施例に記載されたようなロック手段の形状は、上記周知の接続手段も有するとおり、一般的なものである。
刊行物2発明は、審判請求人が主張するとおり、位置決めに関するものであるが、上記刊行物1と上記刊行物2に記載された操作手段は、永久的に材料の接続があるかないかは別として、いずれも操作対象物に対して直線的な前進の操作と後退の操作をするものである点において共通するものであり、刊行物1発明と刊行物2発明に接した当業者であれば、刊行物1発明の操作手段として刊行物2発明の操作手段を適用することを試みる動機は十分にある。
よって、審判請求人の主張は採用できない。

6.むすび

以上のとおり、本願発明、すなわち、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1及び2に記載された発明並びに上記周知の接続手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2ないし請求項20に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。



 
審理終結日 2011-08-15 
結審通知日 2011-08-17 
審決日 2011-08-30 
出願番号 特願2000-536980(P2000-536980)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 立花 啓  
特許庁審判長 川上 溢喜
特許庁審判官 倉田 和博
山岸 利治
発明の名称 固定及び解除装置  
代理人 佐藤 嘉明  

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