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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02N |
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管理番号 | 1250439 |
審判番号 | 不服2010-22411 |
総通号数 | 147 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-10-05 |
確定日 | 2012-01-12 |
事件の表示 | 平成11年特許願第 49963号「超音波モータ」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月14日出願公開、特開2000-253681〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願の発明 本願は,平成11年 2月26日の特許出願であって,平成22年 6月29日付けで拒絶査定がなされ,この査定を不服として,同年10月 5日に本件審判請求がなされるとともに,手続補正(前置補正)がなされた。 一方,当審において,平成23年 6月27日付けで拒絶理由を通知し,これに対して,応答期間内である同年 8月29日に意見書とともに手続補正書が提出されたところである。 そして,この出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成23年 8月29日に提出された手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。 「【請求項1】 4つの電界効果トランジスタのそれぞれのドレインに第1の抵抗を介して直流電源を接続するとともに,前記4つの電界効果トランジスタのそれぞれのドレインに第1のトランジスタのベースがそれぞれ接続され,該第1のトランジスタのそれぞれのコレクタと第2のトランジスタのそれぞれのコレクタが前記直流電源に接続され,前記第1のトランジスタのそれぞれのエミッタと前記第2のトランジスタのそれぞれのベースが接続され,前記4つの電界効果トランジスタのそれぞれのソースをアースし,前記4つの電界効果トランジスタのそれぞれのゲートに第2の抵抗を介して信号端子を接続し,かつ第3の抵抗を介してアースすることにより4つの出力回路を構成し,1つの円環型圧電体振動子の一方の面に装着した電極をほぼ4等分割し,該4等分割した電極のそれぞれに前記4つの前記出力回路の前記第2のトランジスタのエミッタを接続するとともに,前記円環型圧電体振動子の他方の面の全面に装着した電極をアースに接続し,前記4つの出力回路の信号端子に互いに90度位相がずれた予め決められた周波数の信号を順次印加し,前記1つの円環型圧電体振動子の端面に被駆動体を圧接することを特徴とする超音波モータ。」 2.引用例とその記載事項 当審における拒絶の理由で引用された特開平3-297747号公報(以下,「引用例1」という。)には,「圧電アクチュエータを利用したカード送り装置」に関し,図面とともに次の事項が記載又は示されている。 (ア)「〔産業上の利用分野〕 本発明は,自動販売機等のカードリーダに用いるカード送り装置に関するもので,圧電アクチュエータを利用したカード送り装置に関するものである。」(公報第1ページ右下欄第18行?第2ページ左上欄第2行) (イ)「〔作用〕 圧電セラミック円板に形成した,複数に分割された電極に電圧を印加することによって,圧電セラミック円板の端面に変位が生じる。この楕円形の変位を回転運動として取り出すことによって圧電アクチュエータが得られる。 この圧電アクチュエータの外周面の弾性体でカードを挟み,回転運動によって水平方向に移動させるものである。」(公報第2ページ右上欄第15行?左下欄第3行) (ウ)「第1図は,本発明の実施例を示す正面断面図である。主要部のみを示したものであり,支持構造等は省略しである。二枚の圧電セラミック円板10,11は圧電セラミックを円板形に成型したものであり,中心に外周と同心円状に孔が形成されたものである。 この圧電セラミック円板の上下の平坦面には,分割された電極が形成され,電源に接続されている。 圧電セラミック円板10,11の外周面にロータ12,13が接触している。このロータ12,13は金属片等の剛体が圧電セラミック円板10,11の外周面に圧着するように配置されている。ロータ12,13の周囲にゴムローラ14,15が嵌め込まれている。このゴムローラ14,15によってロータ12,13を圧電セラミック円板10,11の外周面に圧着するようにしてもよい。 圧電セラミック円板10,11,ロータ12,13とゴムローラ14,15からそれぞれ成る二つの圧電アクチュエータを,水平方向に移動させるカードの寸法に応じた間隔を置いて配置する。 この例では,ゴムローラ14,15の外周にV字形の溝を形成してある。送られるカード16の対向する端面がこの溝内に位置するようにして,両側からカード16を挟む。圧電セラミック円板10,11の電極に電圧を印加すると,外周面に生じる変位がロータの回転運動に変換され,ゴムローラ14,15が回転する。これによって,カード16は所定の方向に移動する。 ゴムローラ14,15は反対方向にも回転するようにしておく。また,両方向に送ることができるように,回転方向を切り換えるようにしておく必要もある。回転方向の切り換えは,電極への接続を切り換えるか,印加する電圧の位相差を変えることによって可能である。」(公報第2ページ左下欄第7行?右下欄第20行) (エ)「第2図は,本発明によるカード送り装置に用いる圧電セラミック円板の一例を示す斜視図で,中心に孔を形成し,上下の平坦面に電極を形成したものである。寸法は外径が20mm,内径が9mmで厚みが5mmに成型した圧電セラミック円板20を用いて,上面に電極27a?27dを焼き付けたものである。下面にも電極が同様に形成されている。なお,下面の電極は分割しない電極とすることもできる。 電極の構造は上記のものに限られず,二分割,四分割,六分割等任意に選ぶことができる。また上下の電極の位置を適当にずらすことによって,単一の電源によって回転運動を生じさせることも可能である。 駆動方法は,隣接する電極に位相差を有する電圧を印加する方法が最も効率が良い。位相差を変えることによって,逆方向へ回転させることも可能である。 圧電セラミック円板の端面に接触するロータは金属片等の剛体で形成し,弾性的に端面に接触するように配置する必要がある。」(公報第3ページ左上欄第1行?右上欄第1行) (オ)摘記事項(ウ),(エ)からみて,第1図には,「1つの圧電セラミック円板10,11のそれぞれの端面にはロータ12,13がそれぞれ圧着して接触するもの」が示されている また,摘記事項(エ)からみて,第2図には,「1つの圧電セラミック円板20の上面に焼き付けた電極をほぼ4等分割したもの」が示されている。 これらの摘記事項及び図示内容を総合すると,上記引用例1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「1つの圧電セラミック円板の上面に焼き付けた電極をほぼ4等分割して電源に接続し,圧電セラミック円板の下面を分割しない電極を電源に接続し,電極への接続を切り換えるか,ほぼ4等分割した隣接する電極に位相差を有する電圧を印加し,前記1つの圧電セラミック円板の端面にロータを圧着して接触する,圧電アクチュエータを利用したカード送り装置。」 当審における拒絶の理由で引用された特開平7-241089号公報(以下,「引用例2」という。)には,「棒状超音波振動子及び棒状超音波モータ並びに装置」に関し,以下の事項が示されている。 「円盤状圧電素子の一面を4分割する電極とし,他方の面を分割しない電極としてアースに接続した超音波モータ」(特に,段落【0002】?【0006】,図8,図9を参照のこと) 3.発明の対比 本願発明と引用発明とを対比すると,後者の「圧電セラミック円板」は前者の「円環型圧電体振動子」に相当し,以下同様に,「上面」は「一方の面」に,「下面」は「他方の面」に,「焼き付けた」態様は「装着した」態様に,「ロータ」は「被駆動体」に,「圧着して接触する」態様は「圧接する」態様にそれぞれ相当する。 また,後者の「圧電セラミック円板の下面を分割しない電極を電源に接続し」た態様と,前者の「円環型圧電体振動子の他方の面の全面に装着した電極をアースに接続し」た態様とは,「円環型圧電体振動子の他方の面の全面に装着した電極を何かに接続し」た概念において共通し,後者の「ほぼ4等分割した隣接する電極に位相差を有する電圧を印加し」た態様と,前者の「4等分割した電極のそれぞれに4つの出力回路の第2のトランジスタのエミッタを接続するとともに,」「4つの出力回路の信号端子に互いに90度位相がずれた予め決められた周波数の信号を順次印加し」た態様とは,「(ほぼ4等分割した電極に結果的に)互いに位相がずれた予め決められた信号を印加した」概念において共通する。 そして,後者の「圧電アクチュエータを利用したカード送り装置」と,前者の「超音波モータ」とは,「超音波モータ」は円環型圧電体振動子(圧電アクチュエータ)を利用するものであるから,「圧電アクチュエータを利用した装置」である点で共通する。 そうすると,両者は, 「1つの円環型圧電体振動子の一方の面に装着した電極をほぼ4等分割し,前記円環型圧電体振動子の他方の面の全面に装着した電極を何かに接続し,(ほぼ4等分割した電極に結果的に)互いに位相がずれた予め決められた信号を印加し,前記1つの円環型圧電体振動子の端面に被駆動体を圧接する,圧電アクチュエータを利用した装置。」 の点で一致し,以下の各点で相違すると認められる。 <相違点1> 本願発明では,「4つの電界効果トランジスタのそれぞれのドレインに第1の抵抗を介して直流電源を接続するとともに,前記4つの電界効果トランジスタのそれぞれのドレインに第1のトランジスタのベースがそれぞれ接続され,該第1のトランジスタのそれぞれのコレクタと第2のトランジスタのそれぞれのコレクタが前記直流電源に接続され,前記第1のトランジスタのそれぞれのエミッタと前記第2のトランジスタのそれぞれのベースが接続され,前記4つの電界効果トランジスタのそれぞれのソースをアースし,前記4つの電界効果トランジスタのそれぞれのゲートに第2の抵抗を介して信号端子を接続し,かつ第3の抵抗を介してアースすることにより4つの出力回路を構成し,」「該4等分割した電極のそれぞれに前記4つの前記出力回路の第2のトランジスタのエミッタを接続するとともに,」「前記4つの出力回路の信号端子に互いに90度位相がずれた予め決められた周波数の信号を順次印加し」たのに対して,引用発明では,ほぼ4等分割した電極を電源に接続し,電極への接続を切り換えるか,隣接する電極に位相差を有する電圧を印加したものの,それ以上の特定がされていない点。 <相違点2> 円環型圧電体振動子の他方の面の全面に装着した電極を何かに接続するものにおいて,本願発明では,「アース」に接続するのに対して,引用発明では,「電源」に接続する点。 <相違点3> 圧電アクチュエータを利用した装置が,本願発明では,「超音波モータ」であるのに対して,引用発明では,「カード送り装置」である点。 4.相違点の検討・当審の判断 <相違点1について> まず,引用発明には,電極への接続を切り換えることや,隣接する電極に位相差を有する電圧を印加することが記載されているから,何らかの出力回路を構成することが示唆されているといえる。 次に,円板状の圧電素子を有する超音波モータにおいて,円板状の圧電素子に装着され4分割された電極に90度の位相差をもつ交流電圧を印加することは慣用手段であり(必要があれば,特開昭64-77483号公報の第1ページ左下欄第9行?右下欄第15行,第2図(a),(b)を参照のこと。),また,棒状の超音波モータという形式のものではあるが「超音波モータの圧電素子の4分割した電極に90度位相の異なる4相の交流電圧(周波数の信号)を順次印加すること」は周知技術(必要があれば,実願平4-53823号(実開平6-9389号)のCD-ROMの段落【0070】,図14(B)を参照のこと。)に過ぎないから,上記周知技術を引用発明の円板状の圧電素子に適用することに困難性はない。 そして,「直流電源をトランジスタと電界効果トランジスタ(FET)の組み合わせで振動モータに印加すること」(特に,特開平9-140166号公報の図1を参照のこと。)及び「モータの駆動回路において,1つのトランジスタのオフに応じて,直流電源をダーリントン接続された2つのトランジスタを介してモータに接続すること」は,常套手段であるから(必要があれば,実願昭55-118345号(実開昭57-40158号)のマイクロフィルムの第4図,第6図,特開昭57-15248号公報の第3図を参照のこと。),上記相違点1に係る本願発明の具体的な回路構成については,増幅率,応答性並びに消費電力等を考慮することにより,当業者が適宜採用可能な設計的事項にすぎないものである。 <相違点2について> 上記引用例2には,棒状の超音波モータではあるが,「円盤状圧電素子の一面を4分割する電極とし,他方の面を分割しない電極としてアースに接続した超音波モータ」が開示されていることから,引用発明の他方の面の電極の接続先として「アース」を選択することに格別の困難性はない。 <相違点3について> カード送り装置においても,圧電アクチュエータを利用した超音波モータは慣用されており(必要があれば,特開平4-129942号公報,特開平5-116787号公報を参照のこと。),引用発明の「圧電アクチュエータを利用したカード送り装置」には「超音波モータ」との明記はないものの,上記相違点3については,実質的な相違点とは認められない。 そして,上記相違点を併せ備える本願発明により奏される作用効果も,引用発明,上記引用例2に開示された事項,上記周知技術,上記慣用手段,及び,上記常套手段から当業者が予測し得る範囲内のものである。 したがって,本願発明は,引用発明,上記引用例2に開示された事項,上記周知技術,上記慣用手段,及び,上記常套手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおりであるから,本願発明(請求項1に係る発明)は,引用発明,上記引用例2に開示された事項,上記周知技術,上記慣用手段,及び,上記常套手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-11-08 |
結審通知日 | 2011-11-15 |
審決日 | 2011-11-30 |
出願番号 | 特願平11-49963 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H02N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 河村 勝也 |
特許庁審判長 |
仁木 浩 |
特許庁審判官 |
藤井 昇 神山 茂樹 |
発明の名称 | 超音波モータ |
代理人 | 鈴木 和夫 |