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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F04D
管理番号 1250446
審判番号 不服2010-27578  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-06 
確定日 2012-01-12 
事件の表示 特願2004-169117「高速送風機を搭載した小型ボイラ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月15日出願公開,特開2005-344695〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は,平成16年 6月 7日の特許出願であって,平成22年 9月 1日付けで拒絶査定がなされ,この査定を不服として,同年12月 6日に本件審判請求がなされた。
一方,当審において,平成23年 7月19日付けで拒絶理由を通知し,これに対して,応答期間内である同年 9月16日に意見書が提出されたところである。
そして,この出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成22年 8月20日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりものと認められる。

「【請求項1】
回転羽根を備えたインペラが駆動モータに直結し,回転数の最大定格値が10000rpm以上である高速送風機を搭載し,前記高速送風機がボイラ本体に設置されたバーナに直接接続するか,または前記ボイラ本体及び前記バーナを収容する筐体内に収容され前記ボイラ本体に近接した状態で前記バーナに連結していることを特徴とする小型ボイラ。」

2.引用例とその記載事項
当審における拒絶の理由で引用された特開2001-82383号公報(以下,「引用例1」という。)には,「羽根車,遠心送風機および遠心ポンプ」に関し,図面とともに次の事項が記載又は示されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,給湯器,ボイラー,冷暖房器および複写機などに用いられて空気を圧送する遠心送風機に用いられる羽根車およびその遠心送風機と,揚水装置などに用いられて液体を圧送する遠心ポンプに用いられる羽根車およびその遠心ポンプとに関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えばボイラーに燃焼用の空気を圧送する遠心送風機(以下,「送風機」ともいう)は,燃料の霧化および燃焼に必要な空気を適切な静圧で適量だけ圧送する必要がある。この場合,羽根車の回転数を一定にした場合,圧送される空気の静圧は,送風機に用いられる羽根車の直径にほぼ比例して増減し,その風量は回転方向に対する羽根車の羽根幅にほぼ比例して増減することが知られている。したがって,この種の送風機では,送風対象体としてのボイラーにおいて必要とされる静圧および風量に応じた直径および羽根幅の羽根車が用いられている。
【0003】この種の送風機として,図7に示す送風機31が従来から知られている。この送風機31は,いわゆるターボファンであって,ケーシング32,羽根車33,および羽根車33を回転させるためのモータMを備えている。また,ケーシング32は,鉄板を所定形状に打ち抜いた底板41と,底板41の外周に沿って折り曲げられて固定された周板42と,ケーシング32の外部から空気を吸気するための吸入口45が中心部位に形成されると共に底板41に対向配置されて底板41と相俟って周板42を固定する天板43とを備えている。この場合,周板42の一部が開口されることにより,羽根車33から排出される空気を吐出するための吐出口47が形成されている。また,図10に示すように,ケーシング32の内部に羽根車33を収納した状態では,羽根車33から排出される空気を吐出口47に向けて案内する案内路46が羽根車33の外周および周板42によって形成されている。
【0004】一方,図8,9に示すように,羽根車33は,いわゆる後傾き翼型の羽根車であって,円盤状の主板51と,主板51の中心部位から外縁部に向けて放射状に配設された複数の羽根52,52・・と,主板51に対向配置されて主板51と相俟って羽根52,52・・を固定する側板53とを備えている。この羽根車33は,送風対象体のボイラーにおいて必要とされる静圧および風量(以下,両者を総称して「圧送能力」ともいう)を満足するように,例えば,その直径L11が134mm,その羽根幅W11が18mmで形成されている。この場合,各羽根52,52・・は,図10に示すように,主板51のの外縁部寄りが矢印Aで示す羽根車33の回転方向に対して後傾するように,全体として湾曲状態で固定されている。さらに,図8,9に示すように,側板53の中央部には,圧送する空気を羽根車33の内部空間Sに吸気するための吸入口54が形成されている。
【0005】この送風機31では,図10に示す矢印Aの向きで羽根車33を回転させると,羽根車33の内部空間S内の空気は,回転に伴って生じる遠心力によって所定の静圧に加圧されつつ,矢印D,D・・で示すように,各羽根52,52・・の間隙からケーシング32内の案内路46に排出される。この際に,羽根車33から排出される空気の向きは,遠心力によって案内路46側に排出される際のベクトルと,羽根車33の回転速度に応じた大きさでその回転の向きのベクトルとの合成ベクトルで表される向きとなる。このため,羽根車33から排出される空気は,矢印Cで示す向きで案内路46を移動して吐出口47から吐出される。これに伴い,ケーシング32の外側の空気は,吸入口45を介してケーシング32の内部に吸気され,さらに,吸入口54を介して羽根車33の内部空間Sに吸気される。」

・「【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが,従来の送風機31には以下の問題点がある。すなわち,従来の送風機31では,送風対象体のボイラーで必要とされる圧送能力を満足するように羽根車33の直径L11および羽根幅W11が規定されている。したがって,小型化が要求されている今日にあって,送風機31をただ単に小型化するだけでは,羽根車33の直径L11または羽根幅W11が小さくなるため,圧送能力の低下を招いてしまう。このため,送風機31の小形化が困難であるという問題が存在する。一方,供給電圧を高電圧にして羽根車33の回転数を上げれば,風量の低下を招くことなく小型化することは可能である。しかし,かかる場合には,静圧が低下すると共に消費電力が増大し,加えて,騒音が大きくなるという他の問題が生じる。
【0007】本発明は,かかる問題点に鑑みてなされたものであり,流体の圧送能力を維持しつつ小形化を図ることが可能な羽根車,遠心送風機および遠心ポンプを提供することを主目的とする。」

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,上記引用例1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ボイラーに燃焼用空気を圧送する遠心送風機において,羽根52を備えた羽根車33を回転させるためのモータMを備え,羽根車の回転数を上げることにより遠心送風機の小型化を図ることが可能であるボイラー用の遠心送風機。」

3.発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると,後者の「羽根52」は前者の「回転羽根」に相当し,以下同様に,「羽根車33」は「インペラ」に相当し,「モータM」は「駆動モータ」に,「ボイラー」は「ボイラ」にそれぞれ相当する。
また,後者の「羽根52を備えた羽根車33を回転させるためのモータMを備え」る「遠心送風機」と,前者の「回転羽根を備えたインペラが駆動モータに直結」する「高速送風機」とは,「回転羽根を備えたインペラが駆動モータに連係される送風機」において共通し,後者の「ボイラーに燃焼用空気を圧送する遠心送風機において,」「羽根車の回転数を上げることにより遠心送風機の小型化を図ることが可能であるボイラー用の遠心送風機」と,前者の「回転数の最大定格値が10000rpm以上である高速送風機を搭載し,前記高速送風機がボイラ本体に設置されたバーナに直接接続する」「小型ボイラ」とは,「送風機を有するボイラ」との概念において共通する。
そうすると,両者は,
「回転羽根を備えたインペラが駆動モータに連係される送風機を有するボイラ。」
の点で一致し,以下の各点で相違すると認められる。

<相違点1>
回転羽根を備えたインペラが駆動モータに連係される送風機に関し,本願発明では,「インペラが駆動モータに直結し」た「送風機」であるのに対して,引用発明では,「羽根車33(インペラ)を回転させるためのモータM(駆動モータ)を備え」た「遠心送風機」である点。

<相違点2>
本願発明では,「回転数の最大定格値が10000rpm以上である高速送風機を搭載し」た「小型ボイラ」であるのに対して,引用発明では,「羽根車(インペラ)の回転数を上げることにより遠心送風機の小型化を図ることが可能である遠心送風機」を有する「ボイラ」である点。

<相違点3>
本願発明では,「高速送風機がボイラ本体に設置されたバーナに直接接続するか,または前記ボイラ本体及び前記バーナを収容する筐体内に収容され前記ボイラ本体に近接した状態で前記バーナに連結している」のに対して,引用発明では,そのような特定がなされていない点。

4.相違点の検討・当審の判断
まず,本願発明の課題である「小型化」については,引用発明にも示唆がある。

<相違点1について>
回転羽根を備えたインペラを駆動モータに直結した,ボイラーに外部空気を供給するファンは,出願前周知であり(以下「周知技術1」という。必要があれば,特開平10-252691号公報の段落【0014】,【0019】,図1,図4,特開平11-257295号公報3の図1,図4を参照のこと。),直結することが小型化に寄与することは自明である。
そうすると,小型化という課題についての示唆のある引用発明の遠心送風機に上記周知技術1を適用して,上記相違点1に係る本願発明を構成することは,引用発明及び周知技術1がいずれもボイラーに燃焼用空気を供給する送風機である点で共通していることから,当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点2について>
電動送風機の回転数を10000rpm以上とすること(つまり,回転数の最大定格値が10000rpm以上の高速送風機とすること)は,様々な用途(発熱体あるいは熱源を有する機器及び素子,工業用集塵装置,産業用ブロア,手乾燥装置,電動掃除機等)において慣用されており(以下「慣用手段」という。必要があれば特開平1-167500号公報の第1ページ左下欄下から4行?最下行,第2ページ左下欄第6行?第8行,特開平5-137383号公報の段落【0001】,【0002】,特開2001-252217号公報の段落【0001】,【0084】,特開2002-349485号公報の段落【0001】,【0004】,特開2003-204902号公報の段落【0034】?【0036】,図1,図2を参照のこと。),ボイラー用の遠心送風機の小型化(結果的にボイラーの小型化につながる。)のために回転数を上げるという技術思想が開示された引用発明に,上記慣用手段を適用して,上記相違点2に係る本願発明を構成することは,当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点3について>
ボイラ(ボイラ本体)に設けられた燃焼装置(バーナ)に送風機モータを有する送風機を直接接続した点は,出願前周知であり(以下「周知技術2」という。必要があれば,特開平9-210349号公報の図1,特開2003-336835号公報の図2を参照のこと。),直接接続することが小型化に寄与することは自明であるから,小型化という課題についての示唆のある引用発明に上記周知技術2を適用して,上記相違点3に係る本願発明を構成することは,当業者が容易に想到し得たものである。

そして,上記相違点を併せ備える本願発明により奏される作用効果も,引用発明,上記周知技術1及び2,並びに上記慣用手段から当業者が予測し得る範囲内のものである。

したがって,本願発明は,引用発明,上記周知技術1及び2,並びに上記慣用手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから,本願発明(請求項1に係る発明)は,引用発明,上記周知技術1及び2,並びに上記慣用手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-10 
結審通知日 2011-11-15 
審決日 2011-11-28 
出願番号 特願2004-169117(P2004-169117)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 種子 浩明  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 藤井 昇
神山 茂樹
発明の名称 高速送風機を搭載した小型ボイラ  
代理人 政木 良文  

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