• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1250665
審判番号 不服2011-7568  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-11 
確定日 2012-01-19 
事件の表示 特願2008- 23582「半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月15日出願公開、特開2008-113045〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年10月6日に出願した特願2005-293509号の一部を平成20年2月4日に新たな特許出願としたものであって、平成23年1月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲を対象とする手続補正がなされたものである。

第2 原査定
原査定における拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
「この出願の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開2001-217267号公報
2.特開平9-260432号公報
3.特開2005-217006号公報
4.特開2005-19504号公報
5.特開平8-264587号公報
6.特開2005-136187号公報
7.特開2001-127215号公報
8.特開2002-50652号公報
9.特開平11-204556号公報」

上記刊行物のうち、特開2001-217267号公報、特開2005-217006号公報、特開2005-19504号公報を、それぞれ以下「引用例1」、「引用例2」、「引用例3」という。

第3 平成23年4月11日付け手続補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年4月11日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正後の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
(a)予熱された基板を用意するステップと、
(b)前記基板に半導体チップをフリップチップ実装するステップであって、前記基板をフリップチップ実装に必要な温度に加熱、保持し、前記半導体チップの一方の主面に2次元状に形成された複数の電極を、前記基板上の対応する導電性領域に接合するステップと、
(c)アンダーフィル用樹脂の粘性が最小となる変曲点の温度を含む所定の範囲内の温度に保たれた真空雰囲気中で、前記基板に実装された半導体チップの側面近傍に液状化されたアンダーフィル用樹脂を供給するステップと、
(d)上記所定の範囲内の温度が保たれた状態でアンダーフィル用樹脂が供給された半導体チップおよび基板を大気中に露出するステップと、
を有する半導体装置の製造方法。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明について、半導体チップの実装方式を「フリップチップ実装」と限定するとともに、補正前の「基板を実装に適した温度に保持し」との事項を「基板をフリップチップ実装に必要な温度に加熱、保持し」と限定し、また、アンダーフィル用樹脂を供給するステップにおける真空雰囲気の温度について、補正前に「アンダーフィル用樹脂の充填に適した所定の温度に保たれた」とあったのを「アンダーフィル用樹脂の粘性が最小となる変曲点の温度を含む所定の範囲内の温度に保たれた」と限定するものであり、産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではないことは明らかである。
したがって、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物
(1)本願の出願前に頒布された刊行物である引用例1には、真空アンダーフィル装置及び方法に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はプリント基板にフリップチップで実装されたベアチップやCSP,BGA等とプリント基板との間隙にアンダーフィルする真空アンダーフィル装置及び方法に関するものである。」

(1b)「【0009】この発明に係る真空アンダーフィル方法は、プリント基板にアレイ状に並んだバンプやハンダボールで接続されたベアチップやCSP,BGAなどのLSIパッケージとプリント基板の間隙に補強のため樹脂を注入する真空アンダーフィル方法であって、一部が開放されたセルによりLSIパッケージを局部的に覆い、セル内を減圧した状態でセル内に設けられた樹脂塗布用のシリンジによりLSIパッケージの周囲に樹脂を塗布してからセル内を大気圧に開放することを特徴とする。」

(1c)「【0015】この真空アンダーフィル装置1でプリント基板10に複数の電気部品11とともに装着されたCSP12を補強するためにプリント基板10とCSP12の間隙に樹脂を注入するときは、まず、セル2の開口端をプリント基板10に装着したCSP12を囲むように配置し、セル2の開口端に設けたシールリング3をプリント基板10に押し当ててCSP12の装着部周囲を局部的に密封する。この状態で吸引装置9を駆動し、セル2内の空気を減圧吸引管7を介して吸引してセル2内を減圧する。・・・
【0016】セル2内があらかじめ定めた一定圧力まで減圧すると、樹脂供給装置8の加減圧手段の樹脂送給圧をセル2の内圧より一定圧力だけ高くしてディスペンスシリンジ6の樹脂供給管5からCSP12の周囲に樹脂13を塗布する。・・・
【0017】CSP12の周囲に樹脂13を塗布した後、吸引装置9の動作を停止してセル2の内圧を大気圧に戻す。このとき、周囲に樹脂13が塗布されたCSP12とプリント基板10の間隙はセル2内を減圧したときの一定圧力に減圧されており、このCSP12とプリント基板10の間隙の内圧と大気圧との差圧によりCSP12の周囲に塗布され樹脂13がCSP12とプリント基板10の間隙に高速で浸透して間隙に充填させて間隙内のボイドを低減し、CSP12を確実に補強することができる。」

(1d)図1の記載より、プリント基板に実装されたCSP12の側面近傍に樹脂を供給する点が看取できる。ここで、上記記載事項1a及び1bを参照すると、プリント基板に実装される部品としてCSPの他にベアチップも挙げられているから、図1においてCSP12をベアチップに置き換えることにより、同図から、プリント基板に実装されたベアチップの側面近傍に樹脂を供給する点をも看取することができる。

上記記載事項1a?1d及び図面の記載によれば、引用例には次の発明が記載されているといえる(以下「引用発明」という。)。

「プリント基板10にアレイ状に並んだバンプやハンダボールでフリップチップ実装されたベアチップとプリント基板との間隙に補強のため樹脂13を注入する真空アンダーフィル方法であって、その開口端をプリント基板10に装着したベアチップを囲むように配置したセル2の内部を吸引装置9を駆動して減圧し、ディスペンスシリンジ6の樹脂供給管5からベアチップの周囲の側面近傍に樹脂13を塗布し、その後、吸引装置9の動作を停止してセル2の内圧を大気圧に戻し、ベアチップの周囲の側面近傍に塗布された樹脂13がベアチップとプリント基板10の間隙に高速で浸透して間隙に充填される真空アンダーフィル方法。」

(2)同じく本願の出願前に頒布された刊行物である引用例2には、真空成形装置及び真空成形方法に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

(2a)「【0003】
フリップチップタイプのパッケージを効率良くアンダーフィルモールドする方法として、基板にフリップチップ接続されたチップの周囲にチップ-基板間の隙間を囲んで液状樹脂を吐出した後、減圧下において液状樹脂の脱泡及び隙間内を真空状態にし、減圧を解除して大気圧に戻すことにより周囲の空気との圧力差を利用して隙間内に液状樹脂を強制的に吸引充填させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許3220739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
・・・生産性を重視するあまり、ワークを液状樹脂がゲル化する温度以上に加熱するため、液状樹脂がチップ-基板間の隙間に進入して半導体チップの中心部に届く前に硬化が始まりボイドが発生するおそれがある。」

(2b)「【0008】
本発明に係る第1の手段に係る真空成形装置及び方法を用いれば、真空室内で樹脂吐出部より液状樹脂がワークに塗布されるので、液状樹脂とワークの界面で気泡を巻き込んで封止されることがない。また、真空室内で樹脂吐出部よりワークへゲル化温度未満の所定温度に加温される液状樹脂が塗布され、真空室を真空破壊して流体圧を加えてワークを封止し、真空室を真空破壊し液状樹脂に流体圧を加えながら封止するので、液状樹脂の粘度を下げて流動性を維持したたまま毛細管現象に加えて大気圧+流体圧を液状樹脂に作用させることで、チップと基板との間やワイヤ配線とチップに囲まれた狭い封止空間へボイドを生ずることなく液状樹脂を充填することができる。」

(2c)「【0010】
・・・真空ポンプ9を作動させると配管を通じて真空吸引されて真空ベルジャ7内に真空室8が形成されるようになっている。・・・真空室8内には、可動テーブル10上のワーク4を加温することが可能なヒータ24(図3参照)が設けられている。このヒータ24は、液状樹脂13及びワーク4をゲル化温度未満の所定温度(液状樹脂によって異なるが半硬化温度若しくは硬化温度(およそ120℃?130℃)に至らない温度で発泡し難い温度、好ましくは45℃?50℃)で加温して流動性を高めるために設けられている。」

(3)同じく本願の出願前に頒布された刊行物である引用例3には、電子部品の樹脂封止方法およびその装置に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

(3a)「【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来のディスペンサによる電子部品の樹脂封止およびアンダーフィル形成方法では、フィラー含有率の高い封止樹脂4を使用した能動部品2および受動部品3と回路基板1との空隙への浸透充填においては、封止樹脂4が高粘度で低流動性の物性であり、かつ真空圧と大気圧との差圧力による浸透充填であるため、未充填部分が発生するという課題を有していた。」

(3b)「【0025】
本発明の請求項12に記載の発明は、特に、真空加圧チャンバの内部に、昇温体と冷却体が内蔵され、中央部に封止樹脂が注入充填される面積の開口部を有する孔版と、回路基板を固定し保持する移動自在な基板保持台を設置してなるという構成を有しており、これにより、封止樹脂を低粘度で流動化させて注入充填することができるという作用効果が得られる。」

(3c)「【0030】
封止樹脂4は、孔版9の上面の一端に予め供給され蓄積されている。10は孔版9に内蔵され、加熱および温度調整機構(図示せず)により温度制御が自在で、水やオイルなど加熱媒体でなる昇温体・・・である。」

(3d)「【0051】
図6において、5は水平および垂直に移動自在に内部に封止樹脂4が封入されおり、エアやオイルなどの圧力により封止樹脂4を供給し注入充填するためのディスペンサである。
【0052】
21はステンレスなどの金属材でなる分割孔版であり、厚みを所定の樹脂封止の充填(すなわち実施の形態1における印刷)厚みとし、中央部分に個片分割される封止回路基板の完成製品寸法サイズにて、桟で区分けされた複数の開口部を設けている。そして22は、分割孔版21の上面から分割孔版21の開口部側面に貫通した封止樹脂4の注入管口である。
【0053】
以上のように構成された電子部品の樹脂封止およびアンダーフィル形成用の樹脂封止装置の動作について、図面を参照しながら説明する。図7?11は、本発明の実施の形態2における樹脂封止およびアンダーフィル形成の製造工程断面図である。
【0054】
まず図7に示すように、真空加圧チャンバ14の供給扉15を開放し、能動部品2および受動部品3を搭載し実装した回路基板1を基板保持台8に載置して固定し保持する。
【0055】
その後、供給扉15を閉じ分割孔版21の下面に設置されたゴムパッキン12が圧縮し密着するまで基板保持台8を上昇させる。そして、分割孔版21を昇温体10の駆動により、30℃?50℃程度に加熱する。
【0056】
能動部品2および受動部品3と回路基板1との空隙と、封止樹脂4の脱気をするために、操作弁を操作してリークバルブ19を閉じると共に、切替え弁18を操作して真空ポンプ7側に接続して開放した後、真空ポンプ7を作動させて真空加圧チャンバ14内を200Pa以下の高真空圧の雰囲気に設定する。
【0057】
また、分割孔版21の上部におけるディスペンサ5を、注入管口22の直上まで移動させた後、ディスペンサ5の先端を上面の注入管口22へ挿入する。
【0058】
次に図8に示すように、ディスペンサ5を作動させることにより、能動部品2および受動部品3と回路基板1との空隙に、封止樹脂4を脱気しつつ注入管口22を経由して注入充填する。
【0059】
封止用樹脂4は注入管口22を通過する際に、分割孔版21による加熱にて低粘度となり流動化する。このディスペンサ5の作動による封止樹脂4の注入充填を、個片分割される完成製品寸法サイズにて、桟で区分けされた複数の各開口部に対して同じ動作にて繰り返す。」

3 対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「プリント基板10」、「ベアチップ」、「樹脂13」は、それぞれ本願補正発明の「基板」、「半導体チップ」、「アンダーフィル用樹脂」に相当する。また、引用発明の「樹脂13」は、「塗布された樹脂13がベアチップとプリント基板10の間隙に高速で浸透して間隙に充填される」ものであるから、液状化された状態で塗布されるものであるといえ、したがって、引用発明において塗布される「樹脂13」は、本願補正発明における「液状化されたアンダーフィル用樹脂」との要件を備えるものである。
引用発明の「アレイ状に並んだバンプやハンダボール」は、ベアチップ上に形成されており、該ベアチップをプリント基板に対してフリップチップ実装するための電極に相当する部分であることは明らかであるから、引用発明は、本願補正発明における「半導体チップの一方の主面に2次元状に形成された複数の電極を、前記基板上の対応する導電性領域に接合するステップ」との要件を備える。
引用発明において「吸引装置9の動作を停止してセル2の内圧を大気圧に戻」す工程は、本願補正発明における「アンダーフィル用樹脂が供給された半導体チップおよび基板を大気中に露出するステップ」に相当する。
引用発明の「真空アンダーフィル方法」は、半導体装置を製造する方法であるということができるから、引用発明は、本願補正発明の「半導体装置の製造方法」との要件を備える。

したがって、本願補正発明と引用発明は、本願補正発明の表記にできるだけしたがえば、
「基板に半導体チップをフリップチップ実装するステップであって、前記半導体チップの一方の主面に2次元状に形成された複数の電極を、前記基板上の対応する導電性領域に接合するステップと、
真空雰囲気中で、前記基板に実装された半導体チップの側面近傍に液状化されたアンダーフィル用樹脂を供給するステップと、
アンダーフィル用樹脂が供給された半導体チップおよび基板を大気中に露出するステップと、
を有する半導体装置の製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明は、予熱された基板を用意するステップを有し、また、基板に半導体チップをフリップチップ実装するステップにおいて基板をフリップチップ実装に必要な温度に加熱、保持するものであるのに対し、引用発明は、基板の予熱や実装のための加熱、保持についての構成を有しない点。

[相違点2]
本願補正発明は、アンダーフィル用樹脂の粘性が最小となる変曲点の温度を含む所定の範囲内の温度に保たれた真空雰囲気中でアンダーフィル用樹脂を供給し、上記所定の範囲内の温度が保たれた状態で半導体チップおよび基板を大気中に露出するものであるのに対し、引用発明は、セル内の真空雰囲気の温度やその温度を所定の範囲内に保つことについての構成を有しない点。

相違点1について検討する。
原審において拒絶査定時に周知技術を示す文献として提示された特開2004-6650号公報(段落【0002】?【0003】、図8参照)には、回路基板に半導体チップを実装するリフロー工程において、急激な高温加熱を避けるためにまず基板を予熱し、その後、ピーク熱を与えるようにしたことが記載されている。また同じく周知技術を示す文献として提示された特開平7-303000号公報(段落【0061】、図1参照)には、フリップチップを回路基板に直接実装する工程において、まず基板を予熱し、その後、温度検出手段で温度検出しながらヒータで基板を所定温度に維持することが記載されている。このように、半導体部品の回路基板への実装の際に、予め基板を予熱し、その後、実装に必要な温度に加熱、保持することは、半導体装置の技術分野における周知技術と解することができる。そうすると、引用発明において上記周知技術を採用し、フリップチップ実装の際に基板の予熱や加熱、保持を行うよう構成して上記相違点1に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことといえる。

相違点2について検討する。
引用発明の真空アンダーフィル方法と同様の製造方法に関して、引用例2には、ワークを所定温度以上に加熱することによる液状樹脂(本願補正発明の「アンダーフィル用樹脂」に相当)の流動性の悪化を防ぐために、該液状樹脂の温度をその半硬化温度若しくは硬化温度に至らない温度で加温し、該液状樹脂の粘度を下げて流動性を維持したまま液状樹脂による充填を行う技術が開示されている(記載事項2a?2c参照)。また、引用例3には、高粘度で低流動性の封止樹脂(本願補正発明の「アンダーフィル用樹脂」に相当)でも良好な注入充填を行えるように、封止樹脂を所定の温度範囲に加熱し、低粘度にして流動化させる技術が開示されている(記載事項3a?3d参照)。引用例2、3に開示された技術はいずれも、粘度を低くして流動性を向上させるために樹脂の温度を管理するものであるところ、引用発明も、樹脂の流動性を利用してアンダーフィルを行うものであるから、引用発明に上記技術を採用することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。そして、その際に、樹脂の温度が、樹脂の粘性が最小となる変曲点の温度を含む所定の範囲内の温度、例えば実際的には該変曲点の温度近傍の温度となるよう調整する程度のことは、得ようとする樹脂の流動性の程度等に応じて当業者であれば適宜なし得たことといえる。
なお、引用例2、3に開示された技術は樹脂の温度を所定範囲に保つものであるが、直接的に樹脂の温度を管理することに代えて、真空雰囲気の温度を所定範囲に保つことによって間接的に樹脂の温度を管理し、所望の流動性を得ようとすることは、当業者であれば特段困難なくなし得る程度の事項と考えられる。
したがって、引用発明において引用例2、3の記載事項を参酌し上記相違点2に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことといえる。

そして、本願補正発明により得られる作用効果も、引用発明、引用例2、3の記載事項および周知技術から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。

以上のことから、本願補正発明は、引用発明、引用例2、3の記載事項および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第4 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成22年10月18日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。

「【請求項1】
(a)予熱された基板を用意するステップと、
(b)前記基板に半導体チップを実装するステップであって、前記基板を実装に適した温度に保持し、前記半導体チップの一方の主面に2次元状に形成された複数の電極を、前記基板上の対応する導電性領域に接合するステップと、
(c)アンダーフィル用樹脂の充填に適した所定の温度に保たれた真空雰囲気中で、前記基板に実装された半導体チップの側面近傍に液状化されたアンダーフィル用樹脂を供給するステップと、
(d)上記所定の温度が保たれた状態でアンダーフィル用樹脂が供給された半導体チップおよび基板を大気中に露出するステップと、
を有する半導体装置の製造方法。」

第5 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記第3の2に記載したとおりである。

第6 対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、前記第3の1に記載した限定を外したものである。
してみると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第3の3に記載したとおり、引用発明、引用例2、3の記載事項および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由で当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2、3の記載事項および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
したがって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-16 
結審通知日 2011-11-22 
審決日 2011-12-05 
出願番号 特願2008-23582(P2008-23582)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 日比野 隆治  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 小関 峰夫
栗山 卓也
発明の名称 半導体装置の製造方法  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ