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審決分類 |
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 C08L |
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管理番号 | 1250696 |
審判番号 | 不服2008-22305 |
総通号数 | 147 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-09-01 |
確定日 | 2012-01-18 |
事件の表示 | 特願2002-536371「着色可能なエラストマー組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成14年4月25日国際公開、WO2002/32995、平成16年4月15日国内公表、特表2004-511640〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年10月16日(パリ条約による優先権主張 2000年10月18日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、平成16年10月15日に誤訳訂正書が提出され、平成19年1月17日付けで拒絶理由が通知され、同年4月23日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月5日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成20年3月13日に意見書が提出され、同年5月26日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、それに対して、同年9月1日に拒絶査定不服審判が請求され、同年11月20日に手続補正書(方式)が提出されたものである。 2.原査定の拒絶理由の概要 原査定の拒絶の理由は、「平成19年11月5日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって拒絶すべきものである」というものであり、その理由1とは、「平成19年4月23日付けでした手続補正は、外国語書面の翻訳文(又は誤訳訂正書による補正後の明細書若しくは図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。」というものである。 併せて、次の点が述べられている。 「平成19年4月23日付け手続補正により、本願発明のエラストマー組成物について、「ChromaMeter L値が55.2より大きい」なる特徴が追加された。 しかしながら、出願当初明細書をみても、55.2より大きいL値は、ゴム化合物単体のL値として記載されるのみであり、エラストマー組成物について、「ChromaMeter L値が55.2より大きい」なる記載はない。 よって、当該補正は、いわゆる新規事項の追加に該当する。」(平成19年11月5日付け拒絶理由通知書) 「出願人が意見書において主張する、出願当初明細書の表9、12、および13を見ても、エラストマー組成物の「ChromaMeter L値が55.2より大きい」なる事項は記載されておらず、また、当該値は、出願当初明細書の記載から自明な事項でもない。 よって、依然として、当該補正はいわゆる新規事項の追加に該当する。」(平成20年5月26日付け拒絶査定) 3.原査定の拒絶理由の妥当性について (1)特許法第17条の2第3項の規定について 本願は、外国語でされた国際特許出願であり、平成16年10月15日付けで誤訳訂正書が提出されているから、平成19年4月23日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、特許法第17条の2第3項の規定(同法第184条の12第2項の規定により読み替えて適用される。)により、平成15年6月18日提出の翻訳文提出書に添付された明細書(特許請求の範囲を含む。)の翻訳文又は上記誤訳訂正書により補正された明細書(特許請求の範囲を含む。)(以下、「当初明細書」という。)に記載した事項の範囲内においてしなければならない。 (2)本件補正について 本件補正は、特許請求の範囲について、本件補正前の 「【請求項1】 C_(4)乃至C_(7)イソオレフィンから誘導された単位及びp-メチルスチレンから誘導された単位の、少なくとも1つのコポリマー、少なくとも1つの非ブラック充填剤、並びに少なくとも400の数平均分子量を有するポリブテンプロセス油を含有するエラストマー組成物。 【請求項2】 ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム、イソプレン-ブタジエンゴム、高シス-ポリブタジエン又はそれらの組成物から選ばれるゴムをさらに含有する、請求項1に記載の組成物。 …… 【請求項7】 コポリマーが20乃至50phr存在する、請求項1に記載の組成物。 …… 【請求項9】 非ブラック充填剤が組成物中に30乃至80phr存在する、請求項1に記載の組成物。 …… 【請求項13】 加工助剤が400乃至10,000の数平均分子量を有する、請求項1に記載の組成物。 …… 【請求項15】 ポリブテンポリマーの数平均分子量が10,000未満からである、請求項1に記載の組成物。 【請求項16】 ポリブテンが、組成物中に2乃至30phr存在する、請求項1に記載の組成物。 (以下の請求項は省略)」 を 「【請求項1】 0乃至90phrのポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム、イソプレン-ブタジエンゴム、高シス-ポリブタジエン又はそれらの組成物から選ばれるゴムと、 20乃至50phrのC_(4)乃至C_(7)イソオレフィンから誘導された単位とp-メチルスチレンから誘導された単位とのコポリマーであって、前記コポリマーが0.5乃至20モル%までのp-メチルスチレンを含み、且つベンジル環上に存在する60%までのメチル置換基が臭素又は塩素原子を含んでいる少なくとも1つのコポリマーと、 30乃至80phrの少なくとも1つの非ブラック充填剤と、 2乃至30phrの400乃至10,000の数平均分子量を有するポリブテンプロセス油とを含有し、 着色可能であり、 ChromaMeter L値が55.2より大きいことを特徴とする、エラストマー組成物。 (以下の請求項は省略)」 とする補正を含むものである。 なお、本件補正後の請求項1には「0.5乃至20%モル%まで」との記載があるが、これは「0.5乃至20モル%まで」の明らかな誤記と認められるので、そのように認定する。 そうすると、本件補正によって、特許請求の範囲の請求項1に「ChromaMeter L値が55.2より大きい」との発明を特定するために必要と認める事項(以下、「発明特定事項」という。)が追加されている。 (3)当初明細書の記載 当初明細書には、次の記載が認められる。 ア.「実施例2 Minolta CR-100 ChromaMeterを用いて光処理量(透明度の尺度)を最大にし、色を最小にするか又は調整するために硬化された配合物の明度(L^(*))、赤-緑(a^(*))及び黄?青(b^(*))色を定量測定した。それらの硬化されたゴム配合物を通して印刷物を読む能力も、配合物における成分の接触透明度の主観的評価として用いた。成分を変えて統計的に設計された実験並びに配合物硬化、物理的性質及び色特性における効果についての統計的分散分析(ANOVA)を行なった。 p-メチルスチレン含量及びp-ブロモメチルスチレン含量を統計的に変えたEXXPRO^(商標)エラストマーの8つの配合物(G乃至N)を、沈降シリカ及び酸化亜鉛/ステアリン酸亜鉛硬化系とのみ製造された単純な配合物において評価した。臭素及び/又はp-メチルスチレンの低含量は、低いが負ではないa^(*)及びb^(*)値とともに最も高いL^(*)値を与えた。表6を参照。EXXPRO^(商標)MDX89-1(5重量%のpMS、0.75モル%のBrPMS)は、最も高いL^(*)値及び最も低いa^(*)及びb^(*)値を与えた。」(段落0059?0060) イ.「 ![]() 」(段落0080) (4)特許法第17条の2第3項に規定する要件の充足性について 本件当初明細書において、本件補正後の請求項1に係る「ChromaMeter L値」についての説明はまったく記載されていない。唯一実施例2(摘示ア)の記載からみて、「Minolta CR-100 ChromaMeter」を用いて定量測定された明度(L^(*))を意味するものと解される。ただし、本発明の目的の一つである「組成物の着色適性及び透明性の維持」(当初明細書段落0007)と「ChromaMeter L値が55.2より大きい」との関係は不明である。 ところで、本件補正後の請求項1に係る発明における「ChromaMeter L値が55.2より大きい」との発明特定事項は、 「0乃至90phrのポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム、イソプレン-ブタジエンゴム、高シス-ポリブタジエン又はそれらの組成物から選ばれるゴムと、 20乃至50phrのC_(4)乃至C_(7)イソオレフィンから誘導された単位とp-メチルスチレンから誘導された単位とのコポリマーであって、前記コポリマーが0.5乃至20モル%までのp-メチルスチレンを含み、且つベンジル環上に存在する60%までのメチル置換基が臭素又は塩素原子を含んでいる少なくとも1つのコポリマーと、 30乃至80phrの少なくとも1つの非ブラック充填剤と、 2乃至30phrの400乃至10,000の数平均分子量を有するポリブテンプロセス油とを含有」する「エラストマー組成物」の性質であることは明らかである。 そして、この「エラストマー組成物」は、その成分として「0乃至90phrのポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム、イソプレン-ブタジエンゴム、高シス-ポリブタジエン又はそれらの組成物から選ばれるゴムと、 20乃至50phrのC_(4)乃至C_(7)イソオレフィンから誘導された単位とp-メチルスチレンから誘導された単位とのコポリマーであって、前記コポリマーが0.5乃至20モル%までのp-メチルスチレンを含み、且つベンジル環上に存在する60%までのメチル置換基が臭素又は塩素原子を含んでいる少なくとも1つのコポリマーと、 30乃至80phrの少なくとも1つの非ブラック充填剤と、 2乃至30phrの400乃至10,000の数平均分子量を有するポリブテンプロセス油とを含有」することが特定されているのみであり、「硬化剤」については何も特定されていないことから、「硬化剤」を含まないものであり、したがって、硬化されたものではないと認められる。 このことは、請求項7に 「硬化剤をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。」 と特定されているように、別途硬化剤を含めることを明確に特定した請求項があることや、また、請求項15に 「55.2より大きいChromaMeter L値を有し、 且つ、……ゴムと、 ……少なくとも1つのコポリマーと、 ……少なくとも1つの非ブラック充填剤と、 ……ポリブテンプロセス油と、 少なくとも1つの硬化剤とを混合し、 前記混合された成分を硬化させることにより形成される着色可能なタイヤサイドウォール。」 と、そして請求項27に 「55.2より大きいChromaMeter L値を有し、 且つ、……ゴムと、 ……少なくとも1つのコポリマーと、 ……少なくとも1つの非ブラック充填剤と、 ……ポリブテンプロセス油と、 少なくとも1つの硬化剤とを混合し、 前記混合された成分を硬化させることにより形成される靴底を含む着色可能な靴構成部材。」 と記載されているように、硬化されたもの(硬化物)については、硬化剤を混合して硬化させることを明確に特定している請求項があることからも裏付けられる。 一方、実施例2において測定された「ChromaMeter L値」は、摘示アに記載されるように、「硬化された配合物の明度(L^(*))」であって、実際、「p-メチルスチレン含量及びp-ブロモメチルスチレン含量を統計的に変えたEXXPRO^(商標)エラストマー配合物を、沈降シリカ及び酸化亜鉛/ステアリン酸亜鉛硬化系とのみ製造された単純な配合物」(試験組成物G乃至N)について「ChromaMeter L値」を測定したものと認められる。そして、摘示イの表6には、試験組成物G乃至Nについての「ChromaMeter L値」の測定結果が55.2?70.7と記載されている。 さらに、試験組成物G乃至Nには、「EXXPRO^(商標)エラストマー」すなわち「C_(4)乃至C_(7)イソオレフィンから誘導された単位とp-メチルスチレンから誘導された単位とのコポリマーであって、前記コポリマーが0.5乃至20モル%までのp-メチルスチレンを含み、且つベンジル環上に存在する60%までのメチル置換基が臭素又は塩素原子を含んでいる少なくとも1つのコポリマー」及び「沈降シリカ」すなわち「非ブラック充填剤」は配合されているが、「ポリブテンプロセス油」は配合されていない。 そうすると、実施例2における試験組成物G乃至Nは、「ポリブテンプロセス油」を含まない点及び硬化剤系を含み硬化されたものである点において、本件補正後の請求項1の「エラストマー組成物」に該当せず、したがって、この試験組成物G乃至Nの「ChromaMeter L値」の測定結果が55.2?70.7であることをもって、本件補正後の請求項1における「ChromaMeter L値が55.2より大きい」ことが当初明細書に記載された事項の範囲内にあるということはできない。 なお、当初明細書の全実施例について検討しても、「ポリブテンプロセス油」(当初明細書段落0027?0035の記載からみて、「PARAPOL^(商標)プロセス油」がこれに該当するものと認められる。)を含む組成物について記載する実施例6、11及び12(段落0064、0069?0073)並びに表8、13、14及び15A(段落0082、0087?0089)においても、以下のとおりすべて硬化剤/促進剤を配合するものであり、したがって硬化された配合物について「ChromaMeter L値」を測定している。 ・実施例6(表8)の試験組成物O乃至T:〔硬化剤/促進剤〕ステアリン酸亜鉛、Thiate U、〔L値〕80.6?84.9 ・実施例11(表13)の試験組成物K1及びL1:〔硬化剤/促進剤〕ステアリン酸亜鉛、Trigonox 29、DPG、Thiate U、〔L値〕83.7 ・実施例12(表14、表15A)の試験組成物M1乃至P1:〔硬化剤/促進剤〕ステアリン酸亜鉛、Trigonox 29、Thiate U、〔L値〕83.42?85.76 そうすると、これらの実施例における試験組成物も、硬化剤系を含み硬化されたものである点において、本件補正後の請求項1の「エラストマー組成物」に該当せず、したがって、これらの試験組成物の「ChromaMeter L値」の測定結果が80.6?85.76であることをもって、本件補正後の請求項1における「ChromaMeter L値が55.2より大きい」ことが当初明細書に記載された事項の範囲内にあるということはできない。 4.請求人の主張について 請求人は、審判請求書の請求の理由において、 「出願当初明細書28頁、実施例2、[0060]を参照していただきたい。該実施例はChromaMeterを用いた透明度の測定に関するものである。該段落の第一文には、「p-メチルスチレン含量及びp-メチルブロモスチレン含量を統計的に変えたEXXPRO(商標)エラストマーの8つの配合物(G乃至N)を…評価した。」とある。前記配合物は請求項1に記載のコポリマーに相当する。 更に、第二文では、「臭素及び/又はp-メチルスチレンの低含量は…最も高いL^(*)値を与えた。」と記載されている。このことから、前記L値は臭素及び/又はp-メチルスチレン含量に依存して変化することが明らかである。そして、表6にはこのときの最も透明度の劣る値として55.2のL値が記載されており、表9、12、及び13に記載の本願組成物はこれ以上のL値を有している。更に、本願エラストマー組成物の他の成分(請求項1参照)において、透明度を阻害する成分は存在しない。従って、本願のエラストマー組成物が55.2以上のL値を取りうることは自明であるものと思料する。」 と述べている。 しかし、実施例2に関する主張については、上記したとおりであり、採用できない。なお、試験組成物H及びI又はK?Mをみれば、p-メチルスチレン含量が同じであれば、p-ブロモメチルスチレン含量が少なくなるほどL^(*)値が大きくなることは把握できるが、試験組成物G、H、L及びNから、p-ブロモメチルスチレン含量が同じの場合には、p-メチルスチレン含量を少なくしてもL^(*)値は必ずしも大きくならない(H及びL)ことが理解でき、請求人の主張する「L値は臭素及び/又はp-メチルスチレン含量に依存して変化する」というのは実施例2及び表6の記載からは必ずしも読み取れない。 さらに、「表9、12、及び13に記載の本願組成物はこれ以上のL値を有している。」と主張するが、次のとおり、表9、12及び13に記載の組成物は本件補正後の請求項1に係る発明のエラストマー組成物には該当しない。 表9(段落0083)には、「ChromaMeter L」が、69.7?77.1の配合物U乃至Xが記載されているが、これは実施例7に基づくものである。そして、実施例7には 「本実施例における試験組成物U乃至Xは、PARAPOL^(商標)の不存在での、EXXPRO^(商標)エラストマーとNATSYN^(商標)2200との混合物である。透明で硬化されたEXXPRO^(商標)エラストマー配合物を、充填剤として沈降シリカ及びヒュームドシリカ並びに硫黄硬化系を用いて製造した。すべての硬化された配合物は、接触透明性であったが、特定の成分によって、黄乃至茶色を有しており、種々のゴム用途における使用に適切な物理的性質を有する配合物を与えた。試験組成物U乃至Xを表9に示す。高シス-ポリブタジエンが存在しない場合に、ドイツ工業規格(DIN)摩耗指数値は、EXXPRO^(商標)エラストマーが唯一のエラストマー/ゴム成分である場合、表8におけるそれらの値よりも高いが、比較的低い。さらに、PARAPOL^(商標)の不存在下で、例えば表8の組成物O乃至TのL値及びb^(*)値と比較して、より低いL値及びより高いb^(*)値により表わされるように、光学的性質は低下する。」(段落0065) と記載されているように、「EXXPRO^(商標)エラストマー」、「NATSYN^(商標)2200」すなわち「ゴム」、沈降シリカ及びヒュームドシリカ並びに硫黄硬化系を用いて「硬化された配合物」を製造しており、「PARAPOL^(商標)」すなわちポリブテンプロセス油(段落0030)は使用していない。(なお、表9には「FLEXON^(商標)766」を配合することが記載されている。「FLEXON^(商標)766」がどのようなものか明細書中に記載がないため、必ずしも明確ではないが、段落0057に「FLEXON^(商標)785は、ナフテン系石油である。」と記載されていること、及び「PARAPOL^(商標)の不存在」との実施例7の条件からみて、ポリブテンプロセス油ではないものと認められる。) したがって、試験組成物U乃至Xも本件補正後の請求項1に係る発明のエラストマー組成物ではなく、測定された「ChromaMeter L値」は硬化されたものに対する値であって、硬化されていないエラストマー組成物についての測定値ではない。 表12(段落0086)には、「ChromaMeter L」が74.0及び85.7の試験組成物I1及びJ1が記載されているが、これは実施例10に基づくものである。そして、実施例10には、 「伝統的な硫黄硬化系の代わりにアルキルパーオキシド硬化系Varox 231XL(R.T.Vanderbilt)を用いる効果をEXXPRO^(商標)エラストマー、及び複数の他のゴムを用いて研究した。Varox 231XLは、炭酸カルシウム(32%)及び二酸化珪素(28%)の不活性担体上の40%活性物質としての1,1-ビス(t-ブチルパーオキシル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンである。表12における組成物I1(硫黄硬化)及びJ1(アルキルパーオキシド硬化)において行った試験は、加工助剤としてFLEXON^(商標)766を用いる硬化された配合物における硫黄硬化系の使用と比較して、過酸化物系の使用は、透明度(より高いChromaMeter-L値)を増大させ、黄色を低減させる(より低いChromaMeter-b^(*)値)ことを示している。全体として、アルキルパーオキシド系の使用は、I1(硫黄硬化)をJ1(アルキルパーオキシド硬化)と比較したときに、その系の光学的性質を改良するが、NATSYN^(商標)2200の存在のためにドイツ工業規格摩耗指数値は比較的低い。」(段落0068) と記載されているように、試験組成物I1及びJ1とも硬化された配合物についてChromaMeter-L値を測定しており、硬化剤を含有しないエラストマー組成物の「ChromaMeter L値」は記載されていない。そして、加工助剤として「FLEXON^(商標)766」を使用するものであり、これは上記したようにポリブテンプロセス油ではないものと認められる。 したがって、試験組成物I1及びJ1も本件補正後の請求項1に係る発明のエラストマー組成物ではなく、測定された「ChromaMeter L値」は硬化されたものに対する値であって、硬化されていないエラストマー組成物についての測定値ではない。 表13(段落0087)には、「ChromaMeter L」が83.7の試験組成物K1及びL1が記載されているが、これは実施例11に基づくものである。そして、実施例11については上記したとおり、硬化剤系を含み硬化されたものである点において、本件補正後の請求項1の「エラストマー組成物」に該当しない。 したがって、表9、12及び13に「ChromaMeter L値」の測定結果が69.7?85.7と記載されており、55.2以上のL値を有しているとしても、これらの表に記載の試験組成物は、本件補正後の請求項1に係る発明のエラストマー組成物とは直接関係しないものであるから、そのことをもって本件補正後の請求項1における「ChromaMeter L値が55.2より大きい」ことが当初明細書に記載された事項の範囲内にあるということはできない。 また、「本願エラストマー組成物の他の成分(請求項1参照)において、透明度を阻害する成分は存在しない。従って、本願のエラストマー組成物が55.2以上のL値を取りうることは自明であるものと思料する。」と主張するが、「ChromaMeter L値」の最低値としての「55.2」との数値が当初明細書に記載された事項の範囲内にないのであるから、この主張に意味がないことは明らかである。 そうすると、請求人の上記主張は採用できない。 5.むすび 以上のとおりであるから、平成19年4月23日付けでした補正は、特許法第184条の12第2項の規定により読み替えて適用される同法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないので、本願は特許を受けることができない。 したがって、原査定の拒絶の理由は妥当であり、本願は原査定のとおり拒絶すべきものである。 よって、上記結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-08-12 |
結審通知日 | 2011-08-16 |
審決日 | 2011-09-05 |
出願番号 | 特願2002-536371(P2002-536371) |
審決分類 |
P
1
8・
55-
Z
(C08L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中川 淳子 |
特許庁審判長 |
松浦 新司 |
特許庁審判官 |
小野寺 務 近藤 政克 |
発明の名称 | 着色可能なエラストマー組成物 |
代理人 | 山崎 行造 |