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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1250719 |
審判番号 | 不服2010-17500 |
総通号数 | 147 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-08-05 |
確定日 | 2012-01-18 |
事件の表示 | 特願2006-160697「カラーフィルター基板及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月18日出願公開、特開2007- 11325〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成18年6月9日(パリ条約による優先権主張 平成17年6月29日 大韓民国)の出願であって、平成21年7月17日付けで手続補正がなされ、同年8月26日付けで拒絶理由が通知され、平成22年3月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年8月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。 その後、前置報告書の内容について、審判請求人の意見を求めるために平成23年4月28日付けで審尋がなされ、同年8月2日付けで当該審尋に対する回答書が提出された。 2.補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成22年 8月5日付け手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。 [理由] 2-1.本願補正発明 本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を以下のとおり補正することを含むものである。 「 基板; 前記基板上に形成された第1カラーフィルター層と第2カラーフィルター層を含み、 前記第1カラーフィルター層の厚さは前記第2カラーフィルター層の厚さと異り、 前記第1カラーフィルター層と第2カラーフィルター層は1つの単位画素内の透過領域に形成され、前記第1カラーフィルター層と第2カラーフィルター層は1つのカラーが形成された単位カラーフィルター部を形成し、前記単位カラーフィルター部は1つのカラーが形成され、 前記第1カラーフィルター層は前記透過領域の垂直基準線を中心に左側に形成され、前記第2カラーフィルター層は前記透過領域の垂直基準線を中心に右側に形成されることを特徴とするカラーフィルター基板。」(下線は補正箇所を示す) 上記の請求項1に係る補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するための事項である「第1カラーフィルター層」が「透過領域の垂直基準線を中心に左側に形成され」ると限定し、同じく、「第2カラーフィルター層」が「透過領域の垂直基準線を中心に右側に形成される」と限定するものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明(以下「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかについて以下に検討する。 2-2.引用発明 2-2-1.刊行物の記載事項 本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である、特開平10-048620号(以下「引用例」という)には、以下の技術事項が記載されている(後述の「2-2-2.引用発明の認定」において引用した記載に下線を付した)。 記載事項a.【0014】 「【0014】本発明において、カラーフィルターの膜厚及び表面粗さの異なる1画素中の各領域の区分けは任意に設定することができる。例えば上記フォトマスク3に設ける開口部3の形状・大きさや、フォトマスクのシフト量等を設定することにより、容易に各領域の区分けを行うことができ、また露光時間及び露光強度を設定することにより各領域のカラーフィルターの膜厚及び表面粗さを所望の値に設定することができる。」 記載事項b.【0025】 「【0025】その後、現像処理により不要部分を除去し、基板1上に図6に示すような赤(R)フィルター5を形成した。各画素における色単位である赤(R)フィルター5は、膜厚の異なる3つの領域5a,5b,5cを有し、領域5aは膜厚1.31μm,表面粗さ約770Å、領域5bは膜厚1.43μm,表面粗さ約580Å、領域5cは膜厚1.50μm,表面粗さ約400Åであった。」 記載事項c.【0026】 「【0026】他の色フィルターも上記と同様の手法で形成し、1色画素(色単位)中で膜厚及び表面粗さの異なる複数の領域を有するカラーフィルターを形成した図2に示したような電極基板を得た。この電極基板を用いて液晶パネルを作製したところ、1単位(色画素)内の各領域の液晶の閾値の差による多値階調を実現でき、その制御性は良好であった。」 記載事項d.【符号の説明】 「【符号の説明】 1 ガラス基板 2 感光性樹脂層 3 フォトマスク 4 開口部 5 1画素に対応するカラーフィルター 5a,5b,5c 1色画素に対応するカラーフィルター内の各領域図6」 記載事項e.図6 「 」 2-2-2.引用発明の認定 記載事項b(【0025】)、記載事項d(【符号の説明】)及び記載事項e(図6)から、引用例の「フィルター5」の「領域5a」,「領域5b」及び「領域5c」が、それぞれ「基板1」上に形成されていることが分かる。 上記事項及び記載事項a乃至記載事項eから、引用例には、 「 基板1を有し、 各画素における色単位であるフィルター5は、膜厚の異なる3つの領域5a,5b,5cを有し、 領域5a、領域5b及び領域5cが、それぞれ基板1上に形成された、 カラーフィルターを形成した電極基板。」 (以下「引用発明」という)が記載されていると認められる。 2-3.対比 本願補正発明と引用発明を対比する。 引用発明の「各画素における色単位であるフィルター5は、膜厚の異なる3つの領域5a,5b,5cを有し」ていることと、本願補正発明の「前記基板上に形成された第1カラーフィルター層と第2カラーフィルター層を含み、前記第1カラーフィルター層の厚さは前記第2カラーフィルター層の厚さと異」なっていることとは、「前記基板上に形成された複数のカラーフィルター層を含み、前記カラーフィルター層は各カラーフィルター層の厚さが異」なる点で一致する。 引用発明の「カラーフィルターを形成した電極基板」は「カラーフィルター基板」に相当する。 引用発明の「各画素における色単位であるフィルター5」が、「領域5a,5b,5cを有し」ていることと、本願補正発明の「前記第1カラーフィルター層と第2カラーフィルター層は1つの単位画素内の透過領域に形成され、前記第1カラーフィルター層と第2カラーフィルター層は1つのカラーが形成された単位カラーフィルター部を形成し、前記単位カラーフィルター部は1つのカラーが形成され」ていることとは、「複数のカラーフィルター層は1つの単位画素内の透過領域に形成され、前記複数のカラーフィルター層は1つのカラーが形成された単位カラーフィルター部を形成し、前記単位カラーフィルター部は1つのカラーが形成され」ている点で一致する。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、 「 基板; 前記基板上に形成された複数のカラーフィルター層を含み、 前記複数のカラーフィルターは各カラーフィルター層の厚さが異り、 前記複数のカラーフィルター層は1つの単位画素内の透過領域に形成され、前記複数のカラーフィルター層は1つのカラーが形成された単位カラーフィルター部を形成し、前記単位カラーフィルター部は1つのカラーが形成された、 カラーフィルター基板。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) 本願補正発明では、「前記第1カラーフィルター層は前記透過領域の垂直基準線を中心に左側に形成され、前記第2カラーフィルター層は前記透過領域の垂直基準線を中心に右側に形成される」ものであるのに対し、引用発明では、「フィルター5は」「3つの領域5a,5b,5cを有し」ており、本願補正発明における上記配置関係を有していない点。 2-4.判断 本願明細書の【0074】には、以下のように記載されている。 「 すなわち、一つのカラーフィルター層全体がh2の厚さ(薄い)を持つ場合より低い輝度を持って、単位カラーフィルター層全体がh1の厚さ(厚い)を持つ場合よりは高い輝度を持つようになって透過される光量を調節することができるようになる。」 当該記載内容から、本願補正発明において上記相違点に係る構成とした技術的意義は、単位カラーフィルター層における透過光量を調節するためであるといえる。また、第1カラーフィルター層と第2カラーフィルター層との境界線及び配置関係(どちらのカラーフィルター層を左右のどちらに配置するか)には、特段の技術的意義は見出せない。 なお、本願明細書の【0076】及び図6cから、本願補正発明における「垂直基準線」とは、単位画素領域を中央で左右に分割する線であると認められる。 一方、引用発明において、「膜厚の異なる3つの領域5a,5b,5cを有し」ているのは、膜厚による透過光量の差により多値階調を実現するためである(例えば、記載事項c(【0026】)参照)。 また、引用発明において、各領域の区分けは任意に設定することができる(例えば、記載事項a(【0014】)参照)。 してみれば、引用発明において、設定する階調の数は当業者が適宜選択し得るものであるところ、2値の階調を実現するために、例えば、フィルター5を領域5a及び領域5bのみからなるものとして、「各画素における色単位であるフィルター」の領域を中央で左右に分割する線を中心にして、「領域5a」を左側に形成し、「領域5b」を右側に形成することにより、上記相違点に係る本願補正発明の構成を得ることは、当業者であれば容易に想到し得ることであり、その作用効果も当業者が予測し得るものに過ぎない。 2-5.補正の却下の決定のむすび 以上のとおり、本願補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 なお、回答書には補正案が記載されているが、当該補正案を参照しても、上記判断に変わりはない。 3.本願発明について 3-1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、平成21年7月17日付け手続補正により補正された以下のとおりのものと認める。 「 基板; 前記基板上に形成された第1カラーフィルター層と第2カラーフィルター層を含み、 前記第1カラーフィルター層の厚さは前記第2カラーフィルター層の厚さと異り、 前記第1カラーフィルター層と第2カラーフィルター層は1つの単位画素内の透過領域に形成され、前記第1カラーフィルター層と第2カラーフィルター層は1つのカラーが形成された単位カラーフィルター部を形成し、前記単位カラーフィルター部は1つのカラーが形成されることを特徴とするカラーフィルター基板。」 3-2.引用発明 引用例及びその記載事項は、前記「2-2.引用発明」に記載したとおりである。 3-3.対比・判断 本願発明は、本願補正発明において、「前記第1カラーフィルター層は前記透過領域の垂直基準線を中心に左側に形成され、前記第2カラーフィルター層は前記透過領域の垂直基準線を中心に右側に形成される」と限定のある ところを削除したものに相当する。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が前記「2.補正の却下の決定」で述べた理由により、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3-4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受ける事ができない。 したがって、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-08-18 |
結審通知日 | 2011-08-22 |
審決日 | 2011-09-05 |
出願番号 | 特願2006-160697(P2006-160697) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川村 大輔、渡邉 勇 |
特許庁審判長 |
神 悦彦 |
特許庁審判官 |
森林 克郎 吉川 陽吾 |
発明の名称 | カラーフィルター基板及びその製造方法 |
代理人 | 岡部 正夫 |
代理人 | 岡部 讓 |
代理人 | 加藤 伸晃 |
代理人 | 朝日 伸光 |