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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A23K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A23K
管理番号 1250831
審判番号 不服2010-20034  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-06 
確定日 2012-01-16 
事件の表示 特願2006-509552「ペットフード組成物及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月21日国際公開、WO2004/089107、平成18年 9月28日国内公表、特表2006-521822〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成16年4月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2003年4月2日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成22年4月28日付けで拒絶査定がなされこれに対し,同年9月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同時に請求項2ないし6を削除する手続補正がなされたものである。
その後,平成23年2月23日付けで,審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったが,何らの応答もなかった。

2 本願の特許請求の範囲
本願の特許請求の範囲は,請求項の削除を目的とする平成22年9月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「寸法安定性を有する押出しペットフードの個別の粒子を含み、該ペットフードはゼロ?約15重量%未満の炭水化物を有する、組成物。」

3 拒絶理由の概要
原査定の拒絶理由は,「この出願については、平成21年11月17日付け拒絶理由通知書に記載した理由1?3によって、拒絶をすべきものです。」というものである。
そして,平成21年11月17日付け拒絶理由通知書に記載された理由1,2は,次のようなものである。
「<理由1>
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項1における「寸法安定性を有する」・・・という記載は、比較の対象、程度が不明であるため、かかる記載によって特定される発明の範囲が不明確となっている。
(2)(3)(省略)

<理由2>
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1,4,5に対して、引用文献1
・・・
引 用 文 献 等 一 覧
1.国際公開第01/47370号 」

4 拒絶の理由1(1)についての判断
請求項1に記載の「寸法安定性」について,本願明細書には次のように記載されている。
「寸法安定性とは、物理的健全性を有すること、すなわち、特にフードが材料を充填した袋中の個別の粒子の例えばキブル、ビッツ及びその他同様なものである場合、容易にその形状を失わず、かなりの量の微粉が剥がれ落ちることもないことを意味する。」(段落【0011】)
「製造の後に砕けにくく、かなりのレベルの微粉を形成しにくいという点で物理的に寸法安定性である。」(段落【0012】)
「切断した個々のキブルを・・・乾燥機中に移動させ、湿ったキブルを通常約11重量%未満の所望の水分レベルにまで乾燥させる。乾燥機の後に、乾燥したキブルをふるいにかけて微粉及びキブルを除去し、・・・追加の液体(脂肪)及び乾燥成分でコーティングする。」(段落【0018】)
「実施例1
比較例2におけるものと同じペットフードを同じ稼働条件下で製造したが、0.35インチの開口部及び総直径5.65インチを有するベンチュリ板(ウェンガー、部品No.28299-3)が存在する状態で加工された。強いキブルが製造され、5%未満の微粉を有した。」(段落【0019】)

これらの記載によれば,「寸法安定性を有する」とは,粒子が、容易にその形状を失わず、かなりの量の微粉が剥がれ落ちることもない状態を示すと認められるが,「かなりの量」とは,どのようにした場合に,微粉の剥がれ落ちがどの程度であるのか明確でない。
また,実施例1に「5%未満の微粉を有した。」と記載されているが,どのようにした場合に生じた微粉なのか,例えば,乾燥したキブルをふるいにかけた場合に生じたものか,追加の液体(脂肪)及び乾燥成分でコーティングした後に生じたものか不明であるし,微粉が5%未満が「寸法安定性を有する」ものであり,5%を越えると「寸法安定性を有しない」ものとされるのかも不明である。
したがって,請求項1に記載の「寸法安定性を有する・・・個別の粒子」の内容が明確でないから,特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

5 拒絶の理由2についての判断
(1)刊行物 の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され,本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第01/47370号パンフレットには,次の事項が記載されている(( )内は,当審訳)。
(1a)「Background of the Invention
Pet diets, particularly dog and cat food diets, strive to be highly nutritional. ・・・Generally the meat content of these pet foods, particularly in dry diets, is no more than about 25 to 30 wt% of the diet. Diets having more meat are potentially advantageous due to such parameters as appearance, palatability and overall acceptability to the pet. However, such meat quantities are not normally found in pet diets because the standard method of manufacturing these diets, extrusions followed by cutting into chunks and/or particles with standard knife blades, cannot prepare a diet with substantially higher meat content, for example, a meat content minimum of about 40 or 45 wt% of the composition. Although not wishing to be bound by this theory, it is thought that the higher water content accompanying the higher meat content makes the diet difficult to form in the extruder as well as essentially noncuttable at an economically attractive rate by the standard knives post extruder.
It has now been discovered that the problems can be seriously ameliorated or solved by adding cellulose or cellulose-like material to the diet. 」(1頁4行?2頁3行)
(発明の背景
ペット用の食餌,特にイヌおよびネコの食餌は高い栄養価であるように試みられている。・・・一般的にこれらのペット食餌の肉含有量は,特に乾燥食餌の場合は当該食餌の約25から30重量%に過ぎない。より多くの肉を含む食餌は外観,味およびペットに全体的に受け入れられやすいなどのパラメータにより優位にたつ可能性が高い。しかしながら,そのような肉の量は,これらの食餌を製造する標準的方法が押出しに続いて標準的ナイフ刃で大きな塊および/または粒子若しくは小片に切断するので,実質的により高い肉含量,例えば肉含量が最低で当該組成物の約40または45重量%では調製できなくなり,通常ペット用食餌では見られない。この見解にこだわるわけではないが,高い水分含量であると共に高い肉含量であると,食餌を押出機で成形することが難しいだけでなく,押出機出口の標準的なナイフによっては経済的に見合った速度で切断するが本質的にできない。
当該問題は,セルロースまたはセルロース様材料を食餌に添加することでかなり改善されるか解決されることが見出された。)

(1b)「Detailed Description of the Invention
The usual method of making pet foods, particularly for dogs and cats, is generally well-known. For dry diets, components are combined in a preconditioner and then fed into an extruder where they are mixed, heated(cooked) and expanded. The extrudate is then emitted from the extruder and cut using standard knife blades, into the proper sized particles for packaging.」
(本発明の詳細な説明
ペット食餌製造の通常の方法,特にイヌおよびネコ用については一般的に良く知られている。乾燥食餌については、組成物を前処理機で一体としてから,押出機に供給され,そこでそれらは混合され,加熱(調理)され,引伸ばされる。それから,押出機の内容物は押出され、標準ナイフ刃を用いて切断され,包装するのに適切な大きさの粒子とされる。)(3頁5?12行)

(1c)「The quantity of cellulosic fiber content is an amount sufficient to bring about extrudability of a formed composition and cutting of that composition post extruder with standard knife equipment, the composition having a minimum of about 40 wt% meat content. Generally the minimum of cellulosic fiber is about 5 or 6 wt% of the diet composition, desirably a minimum of about 7, 8 or 9 wt%. 」(4頁22行?5頁4行)
(セルロース繊維含有量は,形成された組成物の押出し可能性および最小限約40重量%の肉含量を有するその組成物を押出機の出口において標準的ナイフ刃にて切断するのに充分な量である。一般的に,セルロース性繊維の最低量は当該食餌の約5または6重量%で,望ましい最低量は約7,8または9重量%である。)

(1d)「In general, using a regular extruder such as a Wenger X20 single screw extruder - a meat protein source and a grain mix with vitamins and minerals are incorporated into a preconditioner of the extruder to provide mixing and preconditioning (for example, to slightly steam and moisturize) the formulated meat emulsion. The extruder barrels and screw therein then further mix, heat, coagulate, expand and shear the formulated meat emulsion into meat-like mass which is then formed with different types of die plates for different shape and cut by standard knives for different thickness at the extruder exit.」(6頁14?22行)
(一般的に,Wenger X20シングルスクリュー押出機のような通常の押出機を用い,肉タンパク質源と,ビタミンとミネラルを混合した穀粒とを押出機の前調整機に投入して混合及び処方された肉乳化物の前調整(例えば,僅かに蒸気および水分を加える)を行う。押出機のバレルおよびスクリューで更に処方された肉乳化物を混合,加熱,凝集,引伸ばし及びせん断して肉様塊とし,それを様々なタイプのダイ板で成形し,押出機出口で標準ナイフにより様々な厚みに切断する。)

(1e)「Example 2
(Dried Kibbles for Dogs and Cats)
A meat protein source is prepared similar to Example 1 using emulsified meats and meat by-products from mammals or fish. The meat mix consists of 45% emulsified chicken and 5% emulsified beef liver. The meat mix is further emulsified to reduce particle size and bone fragments. The meat mix is heated to about 28℃ to be indexed into the "throat" of a preconditioner of the extruder (Wenger X-20). The final meat mix is about 50% of the total formula on an "as is" basis.
The grain mix consists of 18% wheat gluten, 4% soy protein concentrate, 7% dried blood plasma, 4% dried egg, 4% potato starch, 7% cellulose as wt.% of the total formulation. Mineral and vitamin premixes make up the balance of the formula.
The meat mix and the grain mix are indexed into the throat of the preconditioner of the extruder at the following processing conditions:
・・・
The extrudate is eventually pressed through a die-plate with a hole of 0.32" diameter, and cut into kibbles with 2 to 3 flying knives at the end of the extruder.
The extrudates are then vacuum-delivered onto a conveyer belt to a dryer, drying to a final moisture about 8 to 10% moisture to maintain product stability. The final kibbles are fed freely to dogs or cats as regular dry pet food.」(11頁1行?12頁14行)
(【実施例2】
(イヌおよびネコ用の乾燥キブル)
肉タンパク質源は実施例1と同じようにして,哺乳類又は魚からの乳化肉及び肉副産物を用いて調製する。当該肉混合物は45%の乳化鶏肉および5%の乳化牛肝臓からなる。肉混合物は更に乳化して粒子又は小片の大きさを小さくし,骨断片を減らす。当該肉混合物は約28℃に加温することを押出機(Wenger X-20)の前処理機頂部の“スロート”に割り付ける。最終の肉混合物は,元の量のままを基準として全処方物の約50%である。
穀粒混合物は全処方物に対する重量%で,18%の小麦グルテン,4%の大豆タンパク質濃縮物,7%の乾燥血液血漿,4%の乾燥鶏卵,4%のジャガイモ澱粉,7%のセルロースからなる。ミネラルとビタミンプレミックスは処方物のバランスを整える。
当該肉混合物および当該穀粒混合物は以下の製造条件において押出機の前調整機のスロートに割り付ける。
・・・
押出物は最後に直径0.32”(インチ)の穴のダイ板を通して圧縮され,押出機の出口で2?3のフライングナイフでキブルに切断される。
押出成型物は,それから運搬ベルトで乾燥機へ真空配送され,製品の安定性を維持するために,最終水分が8から10%となるように乾燥する。当該最終キブルは通常の乾燥ペットフードとして自由にイヌまたはネコに与えられる。)

(1f)「1. A pet diet composition comprising:
(a) at least 40wt.% meat, and
(b) cellulosic material in quantities effective to allow extrusion and cutting of the composition post extruder.
2. The composition in accordance with claim 1 wherin the composition is dry.
3. The composition in accordance with claim 2 wherein the meat is at least about 45wt.% of the composition.
4. The composition in accordance with claim 4 wherein the cellulosic material is at least about 5wt.% of the composition.
5. The composition in accordance with claim 2 wherein the composition is in the form of a kibble.」(16頁特許請求の範囲の請求項1?5)
(1.(a)少なくとも約40重量%の肉,及び
(b)当該組成物の押出し及び押出機通過後に切断するのに効果的
な量のセルロース性材料,
を含むペット用食餌組成物。
2.当該組成物が乾燥物である,請求項1に記載の組成物。
3.当該肉が当該組成物の少なくとも約45重量%である,請求項2に記載の組成物。
4. 当該セルロース性材料が当該組成物の少なくとも約5重量%である請求項4に記載の組成物(当審注:請求項4は誤記と認められる)。
5. 当該組成物がキブルである,請求項2に記載の組成物。)

これらの記載,特に実施例2の記載によれば,刊行物1には,次の発明が記載されていると認められる。
「肉混合物および穀粒混合物を含み,45%の肉含有量,4%のジャガイモ澱粉,7%のセルロースを有する処方物からなる,押出し成型されたキブルからなるペットフード。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

(2)対比・判断
本願の請求項1に係る発明において,「・・・ペットフードの個別の粒子を含み、該ペットフードはゼロ?約15重量%未満の炭水化物を有する、組成物。」との記載は,必ずしも明確ではないが,ペットフードはゼロ?約15重量%未満の炭水化物を有する組成物からなり,かつ個別の粒子で形成されているものと解される。
このように解釈した上で請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明を対比すると,刊行物1記載の発明における「処方物」,「キブル」は,それぞれ,本願発明の「組成物」,「個別の粒子」に相当する。
また,刊行物1記載の発明の処方物は,4%のジャガイモ澱粉,7%のセルロースを有するから,炭水化物の含有量は約11%であり,ゼロ?約15重量%未満の範囲といえる。
したがって,両者は,
「押出しペットフードの個別の粒子を含み,該ペットフードはゼロ?約15重量%未満の炭水化物を有する,組成物。」の点で一致し,次の点で一応相違する。
[相違点]
個別の粒子が,請求項1に係る発明は,「寸法安定性を有する」のに対し,刊行物1記載の発明は,寸法安定性を有しているか不明な点。

上記相違点について検討する。
上記「3」で検討したとおり,請求項1における「寸法安定性を有する」とは,粒子が,容易にその形状を失わず,かなりの量の微粉が剥がれ落ちることもない状態を示すと認められるが,その程度は不明である。
一方,刊行物1の記載事項(1e)には,刊行物1記載の発明の製品の安定性を維持させる旨の記載があり,刊行物1記載の発明の粒子も,容易にその形状を失わないものであって,微粉の剥がれ落ちも少ないものと認められ,刊行物1記載の発明は,本願の請求項1に係る発明でいうところの「寸法安定性」を有するものと認められるから,上記相違点は実質的な差異とはいえない。
したがって,請求項1に係る発明は,刊行物1記載の発明であり,特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。

6 むすび
以上のとおりであるから,本願の特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず,また,請求項1に係る発明は,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないものであるから,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-23 
結審通知日 2011-08-24 
審決日 2011-09-06 
出願番号 特願2006-509552(P2006-509552)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A23K)
P 1 8・ 537- Z (A23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 隆一  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 宮崎 恭
土屋 真理子
発明の名称 ペットフード組成物及び方法  
代理人 富田 博行  
代理人 泉谷 玲子  
代理人 千葉 昭男  
代理人 小野 新次郎  
代理人 辻本 典子  
代理人 小林 泰  
代理人 社本 一夫  

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