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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1250980
審判番号 不服2010-12168  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-04 
確定日 2012-01-26 
事件の表示 特願2007- 68995「遊技機、演出基板および演出基板に実行させるプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月 2日出願公開、特開2008-228798〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は平成19年3月16日の出願であって、平成22年3月2日付け(発送:3月9日)で拒絶査定され、これに対し、同年6月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成21年11月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認める。
そして、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「主基板と、演出基板と、遊技中に遊技者が押下可能な所定ボタンと、を備えた遊技機の前記演出基板であって、
前記主基板からの大当たり情報を受信する大当たり情報受信手段と、
遊技者によって前記所定ボタンが押下されると、ボタン押下信号を受信するボタン押下信号受信手段と、
前記大当たり情報受信手段によって受信された前記大当たり情報に基づいて、リーチ演出を実行するとともに、実行されているリーチ演出中に前記遊技者に対して前記所定ボタンの押下を促す告知をおこなう演出実行手段と、
を備え、
前記演出実行手段は、
前記所定ボタンの押下を促す告知がおこなわれている間に前記ボタン押下信号受信手段によって前記ボタン押下信号が所定回数受信された場合に、前記ボタン押下信号の受信に連動して大当たり移行演出を実行し、その後、前記大当たり情報に対応する大当たり演出を実行するとともに、
前記所定ボタンの押下を促す告知がおこなわれている間に前記ボタン押下信号受信手段によって前記ボタン押下信号が前記所定回数受信されなかった場合に、前記所定ボタンの押下を促す告知が終了した後に、はずれ演出を実行し、前記はずれ演出が実行された後に、前記大当たり情報に対応する大当たり演出を実行することを特徴とする演出基板。」

3.引用文献に記載された発明
原査定の拒絶の理由(平成21年10月13日付け拒絶理由通知)において引用文献1として引用された特開2005-143819号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0030】
図2(a)に示すように、遊技ボタン24は遊技者によって押し下げ操作されるスイッチである。遊技ボタン24は押し下げられてから押し下げ力を開放されると上昇復帰し、1回の押し下げ?復帰に伴ってオン、オフ変化する。なお、遊技ボタン24に代えて、図2(b)に示すような球体回転操作タイプの操作受付手段24aを用いることも可能である。
【0031】
パチンコ機10の制御系は図3に示す通り、主制御装置30を中心にして構成されている。詳細の図示は省略するが、主制御装置30、払出制御装置32、発射制御装置34、サブ統合基板90及び図柄制御装置40は、いずれもCPU、ROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備えている。」

(イ)「【0033】
主制御装置30は搭載しているプログラムに従って動作して、上述の検出信号などに基づいて遊技の進行に関わる各種のコマンドを生成して払出制御装置32、発射制御装置34、サブ統合基板90及び図柄制御装置40に出力したり(図柄制御装置40へはサブ統合基板90経由)、また大入賞口を開閉するための大入賞口ソレノイド、大入賞口内の特定領域を開閉するVソレノイド、普通電動役物を開閉する普通役物ソレノイド等の動作を制御する。」

(ウ)「【0037】
図柄制御装置40は特別図柄表示装置25に組み込まれており、特別図柄表示装置25は、図柄制御装置40、LCDパネルユニット42及び付属ユニットにて構成されている。図柄制御装置40は、サブ統合基板90(主制御装置30)から送られてくるコマンドに応じてLCDパネルユニット42の表示を制御する。特別図柄表示装置25は表示手段に該当し、図柄制御装置40は表示制御手段として機能する。
【0038】
また、遊技ボタン24が操作された際に出力される操作信号も図柄制御装置40に入力され、図柄制御装置40は変化選択手段としても機能するが、その詳細は後述する。
サブ統合基板90の機能的な構成は図4に示すとおりである。サブ統合基板90は、主制御装置30から送信されてくるデータ及びコマンドを受信し、それらを図柄制御装置40、音制御用及びランプ制御用のデータに振り分けて、各制御部位に送信する。そして、音制御用のデータに基づいて音LSIを作動させることによってスピーカからの音声出力を制御し、同様にランプ制御用のデータに基づいてランプドライバを作動させることによって各種LED、各種ランプ等のランプ類を制御する。このように構成することで、例えば図柄変動における音、ランプ、特別図柄表示装置25の演出タイミングの同調をはかることができる。」

(エ)「【0040】
主制御装置30は、普通電動役物に入球(始動入賞が発生)して第1種始動口スイッチの始動検出信号が入力されると、保留記憶の個数が上限個数に達していない限り、当否抽選用乱数と大当たり図柄決定用乱数、リーチ決定用乱数、変動パターン決定用乱数などの各種乱数を該当のカウンタから読み込んで、それらを保留データとして保留記憶エリアに記憶する。」

(オ)「【0042】
当否抽選では保留データの当否抽選用乱数が判定テーブルに記録されている当たり判定値のいずれかと一致すれば大当たり、そうでなければ外れと判定する。なお、当たり判定値の個数が少ない通常テーブルと同個数が多い確変テーブルとを切り換え使用(確率変動)する構成とされることもある。
【0043】
当否抽選が大当たりなら、保留データ中の大当たり図柄決定用乱数に基づいて大当たり図柄を決定し、保留データ中の変動パターン決定用乱数に基づいて変動パターン(変動時間)を決定する。外れのときは、外れ図柄と変動パターンを決定する。
【0044】
そして、大当たり図柄又は外れ図柄を指定するデータが含まれた変動開始コマンドをサブ統合基板90に送信する。
サブ統合基板90は変動開始コマンドを図柄制御装置40に転送し、また変動開始コマンドに従って音声やLED類を制御する。
【0045】
図柄制御装置40は、変動開始コマンドを受信するとLCDパネルユニット42を制御して図柄の変動表示を開始させる。
図柄制御装置40は、変動開始コマンドに含まれている変動パターンに基づいてLCDパネルユニット42を制御して図柄の変動表示を行わせ、主制御装置30からの確定コマンドを受信すると変動開始コマンドで指定されていた確定図柄(大当たり図柄又は外れ図柄)を確定表示させる。すなわち、特別図柄表示装置25は当否抽選の結果を表示する表示手段となる。
【0046】
このようにして、大当たりか否かの当否抽選が行われ、その抽選結果を示す特別図柄(大当たり図柄又は外れ図柄)が特別図柄表示装置25に表示される。
また、大当たり図柄が特別図柄表示装置25に表示されると、主制御装置30は大当たり遊技処理を実行して大入賞口を開放させる(特別遊技実行手段)。大当たり遊技の内容は、公知の第1種パチンコ機における特別遊技と同様であるので、詳細の説明は省略する。
【0047】
次に、特別図柄表示装置25の表示と遊技ボタン24の関係を説明する。
変動開始コマンドの受信から図柄の確定までの概略は上述の通りであるが、本実施例においては、例えばリーチ表示になったときに遊技ボタン24を用いる連打ゲームが行われる。その流れを図5に従って説明する。
【0048】
リーチになると(或いはリーチ状態で変動表示中の特定の場面になると)、図柄制御装置40の制御により、図5(a)に示すように特別図柄表示装置25に連打ゲーム開始の表示がなされる。この表示は操作有効期間の開始を遊技者に報知するものであり、ここから操作有効期間が始まる。
【0049】
連打ゲームの開始報知に応じて遊技者が遊技ボタン24を連打操作すると(必ずしも連打でなくてよいが、連打の方が好ましい。図5(b))、図柄制御装置40が、連打(すなわち操作信号の入力)に合わせて、LCDパネルユニット42のキャラクタCや図柄Nの表示を制御する(図5(c))。詳細は後述するが、遊技ボタン24の操作に対応してキャラクタCが蹴り等の動作を行う場合と行わない場合とがあり、その動作回数が設定値(例えば10回)になると(図5(d))キャラクタCの動作は終了し、その後に大当たり図柄(図5(e))又は外れ図柄(図5(f))が表示される。
【0050】
なお、遊技ボタン24が操作されなかった場合や操作されたがキャラクタCの蹴り等の動作回数が設定値(ここでは10回)に至らなかった場合も、外れ図柄(図5(f))が表示される。ただし、このような場合でも抽選が大当たりであれば、一旦は外れ図柄が表示されるが(図5(f))、その後に図柄が変動して(図5(g))、大当たり図柄が表示される(図5(h))。
【0051】
遊技ボタン24の連打(操作信号の入力)に対応するキャラクタCや図柄Nの画像の制御は、図柄制御装置40が連打ゲームシナリオに基づいて「進行」、「後退」、「待機」(「中立」に該当)のいずれかを択一的に選択し、その選択に従ってキャラクタCや図柄Nの画像の制御することによる。つまり、シナリオには、遊技ボタン24の操作信号が入力したときに「進行」、「後退」、「待機」を選択するための規則が記述されている。」

(カ)「【0058】
シナリオが複数パートの組合せによって構成されるので、変化に富んだものになる。
[ボタン遊技処理例1]
図5で説明した表示を実現するための図柄制御装置40の処理例として、図10のボタン遊技処理例1を説明する。この例においては、例えば図7や図8に示したシナリオを(a)、(b)、(c)の順に循環的に使用するというように、ボタン遊技処理1を実行するときにはシナリオが既に決まっている。ここではシナリオ例1において「進行」、「後退」、「待機」が記述されているものを用いるとして説明する。
【0059】
図柄制御装置40は、連打ゲーム開始表示(図5(a)参照)と同時にボタン遊技処理1を開始し、遊技ボタン24の操作によって操作信号が入力すると(S1:YES)、それが連打ゲーム開始から何回目の信号入力であるかを判断し、その回数とシナリオ記述とを対比して、「進行」、「後退」、「待機」のいずれかを選択する。
【0060】
選択が「進行」であれば(S2:YES)、LCDパネル42の表示を1コマ進行させる(S3)。図5との対応で言えば、図5(c)のようにキャラクタCのキックがリーチ変動中の中央の図柄Nに命中してこれを1コマ分変化させる。本例の場合、図柄Nが次の図柄Nに入れ替わる(変動表示のスクロール方向が1→2→3→4・・・であり、例えば3の図柄Nが4の図柄Nになる)には10コマ分の進行変化が必要である。
【0061】
なお、リーチ変動中には左右の図柄は停止状態で表示されているが、共に確定表示ではなくて仮停止(厳密には変動を継続している)である。しかしながら、説明を簡明にするために、以下は(他のボタン遊技処理例の説明でも)、リーチ変動中は中央の図柄Nだけが変動するものとして説明する。
【0062】
選択が「待機」であれば(S4:YES)、図柄Nを揺れ表示(微妙に上下に揺れてはいるが、実質的な位置の変化はない)させる(S5)。このとき、キャラクタCはキックを行わないか、空振りさせる。
【0063】
選択が「進行」でも「待機」でもなければ(S4:NO)、すなわち「後退」であるから、図柄Nを1コマ分後退変化(変動表示のスクロール方向が1→2→3→4・・・という場合であれば、3の図柄Nが4の図柄Nになる方向ではなくて2の図柄Nに戻る方向に変化)させる。
【0064】
選択が「進行」で(S2:YES)表示を1コマ進行させた(S3)なら、進行分の合計が10コマ分(図柄Nの入れ替わり相当)に達したか否かを判定する(S7)。なお、進行分の合計は、S3による進行分を+1、S6による後退分を-1として算出される。
【0065】
進行合計値が10コマ分に達していれば(S7:YES)、ボタン入力終了処理(S8)にて遊技ボタン24の操作信号の入力を受け付けない状態になり(操作有効期間終了)、キャラクタCの動作を終了させる(図5(d)参照)。
【0066】
続いて、確定表示処理(S9)により、LCDパネル42に大当たり図柄(図5(e))又は外れ図柄(図5(f))を表示させる。
S9を詳しく説明すると、ボタン遊技処理の開始時に表示されていた図柄Nが10コマ分進行すると次の図柄Nに入れ替わるので、変動開始コマンドで指定されていた確定図柄が大当たり図柄のときは、図5(d)のようにほとんど大当たり図柄(例えば444)になっている状態から、図5(e)のように大当たり図柄(444)を確定表示する。一方、変動開始コマンドで指定されていた確定図柄が外れ図柄のときは、図柄Nを入れ替えて大当たり図柄にするわけにはいかないので、図5(d)の状態から図柄Nを逆スクロールさせて図5(f)のように外れ図柄(例えば434)にする。
【0067】
また、S5又はS6を実行した場合及びS7で否定判断のときは、操作有効期間の開始から所定時間を経過したか否かを判断する(S10)。ここで否定判断であればリターンするが、肯定判断ならボタン入力終了処理(S8)と確定表示処理(S9)が行われる。
【0068】
ボタン入力終了処理(S8)は上述と同様である。
しかし、この状況では連打ゲームによる図柄Nの進行が10コマ分に達していない(連打ゲームに成功しなかった)のであるから、変動開始コマンドで指定されていた確定図柄が大当たり図柄であっても、図5(e)のように大当たり図柄(例えば444)を確定表示するわけに行かない。このため、確定表示処理(S9)では、変動開始コマンドで指定されていた確定図柄が大当たり図柄であっても外れ図柄であっても、一旦は図5(f)のように外れ図柄(例えば434)をLCDパネル42に表示させる。そして、変動開始コマンドで大当たり図柄を指定されていた場合には、図5(g)に示すように図柄の変動表示を行って、大当たり図柄を表示する(図5(h))。」

以上、(ア)乃至(カ)の記載、及び図面を総合すると、引用例1には、
「主制御装置30、サブ統合基板90及び図柄制御装置40と、遊技者によって押し下げ操作される遊技ボタン24と、を備えたパチンコ機10であって、
主制御装置30は、大当たり図柄又は外れ図柄を指定するデータが含まれた変動開始コマンドをサブ統合基板90を経由して図柄制御装置40に送信し、図柄制御装置40は、変動開始コマンドを受信すると、変動開始コマンドに含まれている変動パターンに基づいてLCDパネルユニット42を制御して図柄の変動表示を行わせ、主制御装置30からの確定コマンドを受信すると変動開始コマンドで指定された確定図柄を確定表示し、
遊技ボタン24が操作されると出力される操作信号は図柄制御装置40に入力され、
変動表示中にリーチになると、図柄表示装置40の制御により、特別図柄表示装置25に操作有効期間の開始を報知する連打ゲーム開始の表示がなされ、
遊技ボタン24の操作に対応してキャラクタCが蹴り等の動作を行う場合と行わない場合とがあり、その動作回数が設定値(例えば10回)になるとキャラクタCの動作は終了し、その後に大当たり図柄又は外れ図柄が表示され、大当たり図柄が特別図柄表示装置25に表示されると、主制御装置30は大当たり遊技処理を実行して大入賞口を開放させ、大当たり遊技の内容は、公知の第1種パチンコ機における特別遊技と同様であり、
遊技ボタン24が操作されなかった場合や操作されたがキャラクタCの蹴り等の動作回数が設定値に至らなかった場合は、外れ図柄が表示されるものの、抽選が大当たりであれば、一旦は外れ図柄が表示されるが、その後に図柄が変動して、大当たり図柄が表示され、前記大当たり遊技処理を実行するパチンコ機10。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

4.対比
引用発明と本願発明とを対比する。
引用発明の「主制御装置30」は、本願発明の「主基板」に相当する。以下同様に、
「図柄制御装置40」は「演出基板」に、
「遊技者によって押し下げ操作される遊技ボタン24」は「遊技者が押下可能な所定ボタン」に、
「パチンコ機10」は「遊技機」に、
「大当たり図柄」「を指定するデータが含まれた変動開始コマンド」は「大当たり情報」に、
「操作信号」は「ボタン押下信号」に、
「操作有効期間」は「前記所定ボタンの押下を促す告知がおこなわれている間」に、
「外れ図柄が表示」は「はずれ演出を実行」に、
それぞれ相当する。

引用発明は、変動表示中にリーチになると、操作有効期間の開始を報知する連打ゲーム開始の表示をするのであり、変動表示は遊技中になされるのであるから、操作ボタン24は、遊技中に遊技者によって押し下げ操作されることは明らかである。

また、引用発明では、主制御装置30は、大当たり図柄又は外れ図柄を指定するデータが含まれた変動開始コマンドをサブ統合基板90を経由して図柄制御装置40に送信し、図柄制御装置40は、変動開始コマンドを受信すると、変動開始コマンドに含まれている変動パターンに基づいてLCDパネルユニット42を制御して図柄の変動表示を行わせているのであるから、図柄制御装置40には、変動開始コマンドを受信する手段を備えていることが明らかである。よって、引用発明の図柄制御装置40は本願発明の「前記主基板からの大当たり情報を受信する大当たり情報受信手段」に相当する手段を備えているといえる。

また、引用発明では、遊技ボタン24が操作されると出力される操作信号は図柄制御装置40に入力されるのであるから、引用発明の図柄制御装置40は本願発明の「遊技者によって前記所定ボタンが押下されると、ボタン押下信号を受信するボタン押下信号受信手段」に相当する手段を備えているといえる。

また、引用発明では、図柄制御装置40は、変動開始コマンドを受信すると、変動開始コマンドに含まれている変動パターンに基づいて(本願発明の「受信された前記大当たり情報に基づいて」に相当)LCDパネルユニットを制御して図柄の変動表示を行わせ、・・・変動表示中にリーチになると(本願発明の「リーチ演出を実行するとともに、実行されているリーチ演出中に」に相当)、図柄表示装置40の制御により、特別図柄表示装置25に操作有効期間の開始を報知する連打ゲーム開始の表示(本願発明の「前記遊技者に対して前記所定ボタンの押下を促す告知」に相当)がなされるのであるから、引用発明の図柄制御装置40は前記したことを実行する「演出実行手段」に相当する手段を備えているといえる。

また、引用発明は、操作有効期間の間に、遊技ボタン24の操作に対応してキャラクタCが蹴り等の動作回数が設定値(例えば10回)になるとキャラクタCの動作は終了し、その後に大当たり図柄又は外れ図柄が表示されるのであり、引用例1の段落【0065】の「進行合計値が10コマ分に達していれば(S7:YES)、ボタン入力終了処理(S8)にて遊技ボタン24の操作信号の入力を受け付けない状態になり(操作有効期間終了)、キャラクタCの動作を終了させる(図5(d)参照)。」との記載、段落【0079】の「なお、理論上はシナリオA-1の終了時点で進行変化が10コマ分になる(S7:YES)こともあるし、その後でもシナリオA-2又は3の開始?シナリオA-4、5又は6の終了前に(操作信号が30回入力される前に)進行変化が10コマ分になる(S7:YES)こともあるが、その場合はS8?S9にて操作有効期間(連打ゲーム)が終了する。従って、シナリオA-1の終了時点で進行変化が10コマ分になればシナリオA-2又は3の選択は行われないし、シナリオA-2又は3の終了までに進行変化が10コマ分になったときシナリオA-4、5又は6の選択は行われない。」との記載から、操作有効期間の途中であっても動作回数が設定値となれば大当たり図柄又は外れ図柄を表示するのであるから、その条件が操作信号が所定回数受信された場合かどうかはさておき、引用発明は「前記ボタン押下信号の受信に連動して大当たり移行演出を実行」しているといえる。そうすると、引用発明と本願発明とは「前記所定ボタンの押下を促す告知がおこなわれている間に前記ボタン押下信号受信手段によって前記ボタン押下信号により所定の条件を満たした場合に、前記ボタン押下信号の受信に連動して大当たり移行演出を実行」する点で共通しているといえる。

また、引用発明は、大当たり図柄を表示した後については、公知の第1種パチンコ機における特別遊技と同様であることから、「大当たり情報に対応する大当たり演出を実行する」ことは技術常識から明らかである。

また、引用発明は、操作有効期間の間に、遊技ボタン24が操作されなかった場合や操作されたがキャラクタCの蹴り等の動作回数が設定値に至らなかった場合は、外れ図柄が表示されるものの、抽選が大当たりであれば、一旦は外れ図柄が表示されるが、その後に図柄が変動して、大当たり図柄が表示され、前記大当たり遊技処理を実行するのであるから、その条件が操作信号が所定回数受信されなかった場合かどうかはさておき、引用発明は「前記所定ボタンの押下を促す告知が終了した後に、はずれ演出を実行し、前記はずれ演出が実行された後に、前記大当たり情報に対応する大当たり演出を実行」しているといえる。そうすると、引用発明と本願発明とは「前記所定ボタンの押下を促す告知がおこなわれている間に前記ボタン押下信号受信手段によって前記ボタン押下信号により所定の条件が満たされなかった場合に、前記所定ボタンの押下を促す告知が終了した後に、はずれ演出を実行し、前記はずれ演出が実行された後に、前記大当たり情報に対応する大当たり演出を実行する」点で共通しているといえる。

以上を総合すると両者は、
「主基板と、演出基板と、遊技中に遊技者が押下可能な所定ボタンと、を備えた遊技機の前記演出基板であって、
前記主基板からの大当たり情報を受信する大当たり情報受信手段と、
遊技者によって前記所定ボタンが押下されると、ボタン押下信号を受信するボタン押下信号受信手段と、
前記大当たり情報受信手段によって受信された前記大当たり情報に基づいて、リーチ演出を実行するとともに、実行されているリーチ演出中に前記遊技者に対して前記所定ボタンの押下を促す告知をおこなう演出実行手段と、
を備え、
前記演出実行手段は、
前記所定ボタンの押下を促す告知がおこなわれている間に前記ボタン押下信号受信手段によって前記ボタン押下信号により所定の条件を満たした場合に、前記ボタン押下信号の受信に連動して大当たり移行演出を実行し、その後、前記大当たり情報に対応する大当たり演出を実行するとともに、
前記所定ボタンの押下を促す告知がおこなわれている間に前記ボタン押下信号受信手段によって前記ボタン押下信号により所定の条件が満たされなかった場合に、前記所定ボタンの押下を促す告知が終了した後に、はずれ演出を実行し、前記はずれ演出が実行された後に、前記大当たり情報に対応する大当たり演出を実行する演出基板。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本願発明では、前記所定ボタンの押下を促す告知がおこなわれている間に前記ボタン押下信号受信手段によって前記ボタン押下信号が所定回数受信された場合に、前記ボタン押下信号の受信に連動して大当たり移行演出を実行し、前記所定ボタンの押下を促す告知がおこなわれている間に前記ボタン押下信号受信手段によって前記ボタン押下信号が前記所定回数受信されなかった場合に、前記所定ボタンの押下を促す告知が終了した後に、はずれ演出を実行しているのに対して、引用発明では、操作信号による所定演出の実行条件が所定回数の受信ではない点。

5.判断
<相違点>について
引用発明では、遊技ボタン24を押した回数を所定演出の実行条件としていないものの、単純に押した回数のみを演出の実行条件とする程度のこと(例えば、引用例1の図10?図12において、S2の判断をすることなく、S1で入力があればS3で1コマ進行とすること)は、当業者であれば、適宜なし得る設計事項に過ぎない。

そして、本願発明の作用効果は、引用発明に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。

なお、請求人は審判請求書において「本願発明にあっては、演出実行手段が、所定ボタンの押下を促す告知をするのは、あくまで、大当たり情報を受信した場合におこなわれるリーチ演出のときのみです。したがって、大当たり情報を受信していない場合のリーチ演出では、所定ボタンの押下を促す告知はおこないません。本願発明において、ボタン連動制御の実行を、大当たり情報を受信した場合におこなわれるリーチ演出のときに限定しているのは、大当たりを引き寄せたという感覚を遊技者に対して付与するとともに、大当たり演出までの間に実行される大当たり移行演出をできるだけ長い時間遊技者に見せることで、遊技者に大当たりを引き寄せた幸福感をできるだけ長く味わわせるという作用効果を奏するためです。
これに対して、引用例1は、大当たりであるかハズレであるかにかかわらず、リーチになったときに連打ゲームが開始される点で本願発明とは異なります。また、引用例1と同様に周知技術1?3も大当たり情報を受信したことが前提とはなっていません。したがって、引用文献1や周知技術1?3では、上記作用効果を奏することはできません。」と主張するが、請求項1の特定では、演出実行手段が、所定ボタンの押下を促す告知をするのは、大当たり情報を受信した場合におこなわれるリーチ演出のときのみであることは特定されていないため(その他の場合については特定されてない)、審判請求人の主張は発明を特定する事項に基づかないものであり妥当ではなく採用することがでない。
しかしながら、仮に請求人が主張している事項が請求項1で特定されたとしても、遊技機の分野において、遊技者への特定の演出を大当たりの場合のみとするか、いわゆるガセの場合を含ませるようにするかは、双方ともに例示するまでもなく周知技術であることから、当業者が適宜選択し得る事項に過ぎない点に留意されたい。

6.まとめ
以上のとおり、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
 
審理終結日 2011-11-24 
結審通知日 2011-11-29 
審決日 2011-12-12 
出願番号 特願2007-68995(P2007-68995)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 納口 慶太  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 瀬津 太朗
澤田 真治
発明の名称 遊技機、演出基板および演出基板に実行させるプログラム  
代理人 酒井 昭徳  

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