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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1250986
審判番号 不服2010-24389  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-29 
確定日 2012-01-26 
事件の表示 特願2005-181325「情報表示装置、情報表示方法、情報表示プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月19日出願公開、特開2006-285937〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年3月30日に出願した特願2005-99215号の一部を平成17年6月21日に新たな特許出願としたものであって、平成22年8月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年10月29日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。


2.平成22年10月29日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年10月29日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項3は、次のように補正された。

「 【請求項3】
コンピュータにより、表示画面に画像を移動させながら表示する方法であって、
前記表示画面の一方の表示端から他方の表示端へ、所定の移動速度で画像を表示させ、
表示された前記画像の左端が前記他方の表示端に到着したことを検知し、
前記到着が検知された場合、前記画像を、前記所定の移動速度より遅い移動速度で表示させる、ことを特徴とする情報表示方法。」

本件補正は、請求項3に記載した発明を特定するために必要な事項である「情報」を「画像」と限定し、「情報の一端」を「画像の左端」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項3に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物(特開2004-212589号公報)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

(ア)第0001段落
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば複写機やプリンタ等の画像形成装置に適応され、一括表示が可能な文字数を超える文字列をディスプレイに表示する文字表示装置に関する。

(イ)第0004段落
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、文字列を一定の速度でスクロール表示させる場合、スクロール速度に対して表示部における文字表示の切り換え速度(反応速度)が遅い場合が多く、スクロール速度を遅くしなければ文章を読み取れないことがある。これに対し、表示部に表示される文章全体を読み取るのに要する時間を短縮させるためには、所定の速さ以上でのスクロールが要求されるという問題があった。

(ウ)第0029段落
【0029】
図3は、本発明の一実施形態に係る表示器473への文字列のスクロール表示の一例を説明する図である。

(エ)第0030段落
【0030】
次に、第1のスクロール速度でスクロールされ、文字列が表示領域内を端部301側に向けて順次移動し、「Service」の次の単語である「will」の先頭のスペースが、上記端部301にきたとき、スクロール速度は、第1のスクロール速度から第2のスクロール速度に低下する。そして、この第2のスクロール速度でスクロールされて▲2▼の表示状態を経て、「will」の先頭のスペースが端部301にきたときから所定時間(例えば、約1秒間)経過後、第1のスクロール速度に復帰する。これらの動作を繰り返しながら、▲3▼の表示状態から▲6▼の表示状態となるまで文章のスクロール表示が行われる。当該文章ユニットを繰り返して表示する場合は、必要再び▲1▼の表示状態に戻り、以降同様のスクロール表示を行う。このように、▲1▼?▲6▼の各表示状態の付近では所謂遅くスクロールさせ、▲1▼?▲6▼の各表示状態間の移行段階(図3中の記号A?Fの矢印)では所謂速くスクロールさせることによって、全文字列がスクロール表示される速さが保持されつつ、文字列が読み取り易くなる。

以上の刊行物の記載によれば、刊行物には、次の発明(以下、「刊行物記載発明」という。)が記載されていると認められる。

「第1のスクロール速度でスクロールされ、文字列が表示領域内を端部301側に向けて順次移動し、
次の単語の先頭のスペースが、上記端部301にきたとき、スクロール速度は、第1のスクロール速度から第2のスクロール速度に低下する、
文字列のスクロール表示。」

(3)対比
本願補正発明と刊行物記載発明とを以下で対比する。

刊行物記載発明が情報表示方法であることは明らかである。

刊行物記載発明の「表示領域」及び「端部301」は、それぞれ本願補正発明の「表示画面」及び「他方の表示端」に相当する。
刊行物記載発明の「スクロール表示」は、本願補正発明の「表示画面に画像を移動させながら表示する方法」に相当する。
刊行物記載発明の「単語」と、本願補正発明の「画像」とは、「情報」である点で一致する。
よって、本願補正発明と刊行物記載発明とは、「表示画面に情報を移動させながら表示する方法であって、前記表示画面の一方の表示端から他方の表示端へ、所定の移動速度で情報を表示させ」る点で一致する。

刊行物記載発明で「次の単語の先頭のスペースが、上記端部301にきたとき」とは、つまり、表示すべき情報のスクロール進行方向側の端部が、表示画面のスクロール進行方向側の端部に到着したときのことであるから、本願補正発明と刊行物記載発明とは、「表示された前記情報の左端が前記他方の表示端に到着したことを検知」する点で一致する。

刊行物記載発明の「第1のスクロール速度」及び「第2のスクロール速度」は、それぞれ本願補正発明の「所定の移動速度」及び「所定の移動速度より遅い移動速度」に相当する。

すると、本願補正発明と刊行物記載発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

〈一致点〉
「表示画面に情報を移動させながら表示する方法であって、
前記表示画面の一方の表示端から他方の表示端へ、所定の移動速度で情報を表示させ、
表示された前記情報の左端が前記他方の表示端に到着したことを検知し、
前記到着が検知された場合、前記情報を、前記所定の移動速度より遅い移動速度で表示させる、ことを特徴とする情報表示方法。」である点。

〈相違点1〉
本願補正発明は、「コンピュータにより」表示する方法であるのに対し、刊行物記載発明は、表示をコンピュータによっているのか否かが明らかではない点。

〈相違点2〉
本願補正発明で表示する情報は「画像」であるのに対し、刊行物記載発明で表示する情報は文字列中の「単語」である点。

(4)判断

(4-1)相違点1について
刊行物記載発明は、複写機やプリンタ等に用いられるディスプレイに表示するものである(上記摘記事項(ア)を参照)。
複写機やプリンタ等の制御のためにコンピュータを使うこと、及び、動的な情報表示のためにコンピュータを使うことは、文献を挙げるまでもない周知技術である。
したがって、刊行物記載発明において、情報表示のためにコンピュータを用いることは、当業者が容易になし得ることである。

(4-2)相違点2について
単語などの文字列を表示する際に、個々の文字を画像として記憶しておき、文字列を構成する各々の文字の画像を互いに接するようにつなぎ合わせることによって、単語などを表す1つの画像と成して、この画像を表示することにより単語などの文字列を表示する技術は、文献を挙げるまでもない周知技術である。
してみれば、刊行物記載発明の「単語」を表示するために、上記周知技術を用いて単語から「画像」を形成して、該「画像」を表示するように構成することは、当業者が容易になし得ることである。

(4-3)効果について
本願補正発明の構成によって生じる効果は、「スクロールの速度が速すぎれば携帯端末ユーザとして閲覧しにくいデジタルコンテンツ1100となるし、逆にスクロールの速度が遅すぎると処理の冗長さに耐えられず、デジタルコンテンツ1100の閲覧を取りやめることも考えられる。いずれにしても、閲覧しやすい速度にスクロールを制御する必要があるのである。」(第0106段落)という課題を解決するものである。
一方、刊行物記載発明は、「文字列を一定の速度でスクロール表示させる場合、スクロール速度に対して表示部における文字表示の切り換え速度(反応速度)が遅い場合が多く、スクロール速度を遅くしなければ文章を読み取れないことがある。これに対し、表示部に表示される文章全体を読み取るのに要する時間を短縮させるためには、所定の速さ以上でのスクロールが要求されるという問題があった」(上記摘記事項(イ)参照)という問題を解決し「全文字列がスクロール表示される速さが保持されつつ、文字列が読み取り易くなる」(上記摘記事項(エ)を参照)という効果を生じるものである。
してみると、本願補正発明の構成によって生じる効果は、刊行物記載発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のもので格別顕著であるとはいえない。

(4-4)審判請求人の主張について
審判請求人は、「文字列認識によって表示文字列の位置を特定することと、画像の端を検出することによって表示画像の位置を特定することでは、装置側のディスプレイで移動表示を行う際の制御手法が全く異なります。」(審判請求の理由、及び、審尋に対する回答書を参照)と述べ、本願補正発明と刊行物記載発明とが相違し、この相違に進歩性があることを主張している。
しかしながら、本願補正発明は、表示された前記情報の左端が前記他方の表示端に到着したことを検知するための具体的な仕組みについては限定されていない。
そして、上記(4-2)で述べたとおり、文字列を画像に変換して表示する技術は周知である。
してみれば、審判請求人の主張は採用できない。

(4-5)
上記(4-1)から(4-4)のとおり、本願補正発明は、刊行物記載発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
平成22年10月29日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年7月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「 【請求項3】
コンピュータにより、表示画面に情報を移動させながら表示する方法であって、
前記表示画面の一方の表示端から他方の表示端へ、所定の移動速度で情報を表示させ、
表示された前記情報の一端が前記他方の表示端に到着したことを検知し、
前記到着が検知された場合、前記情報を、前記所定の移動速度より遅い移動速度で表示させる、ことを特徴とする情報表示方法。」

(1)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の「画像」という限定を省いて「情報」とし、「画像の左端」という限定を省いて「情報の一端」としたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、上記刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、刊行物記載発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物記載発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-09 
結審通知日 2011-11-15 
審決日 2011-12-14 
出願番号 特願2005-181325(P2005-181325)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 円子 英紀  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 丸山 高政
近藤 聡
発明の名称 情報表示装置、情報表示方法、情報表示プログラム  
代理人 一色国際特許業務法人  

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