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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08F
管理番号 1251142
審判番号 不服2008-24225  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-22 
確定日 2012-01-25 
事件の表示 特願2002-582102「プロピレン-エチレンコポリマー」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月24日国際公開、WO2002/83753、平成16年9月9日国内公表、特表2004-527617〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年4月12日を国際出願日とする特許出願であって、平成17年3月23日に手続補正書が提出され、平成19年8月7日付けで拒絶理由が通知され、平成20年2月14日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月20日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、それに対して、同年9月22日に拒絶査定不服審判が請求され、同年10月31日に審判請求書についての手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?26に係る発明は、平成20年2月14日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?26にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は以下のとおりである。
「5乃至25重量%の、エチレンから由来する単位及び95乃至75重量%の、プロピレンから由来する単位を含有し、ジエンから誘導された単位が実質的に存在しないコポリマーであり、
(a)90℃未満の融点、
(b)弾性度≦0.9348M+12
(式中、弾性度は%においてであり、MはMPaにおける500%引張弾性率である)
の、500%引張弾性率に対する弾性度の関係及び
(c)曲げ弾性率≦4.1864e^(0.269M)+50
(式中、曲げ弾性率はMPaにおいてであり、MはMPaにおける500%引張弾性率である)
の、500%引張弾性率に対する曲げ弾性率の関係
を有するコポリマー。」

3.原査定における拒絶理由の概要
これに対して、原査定における拒絶の理由の一つとしている平成19年8月7日付け拒絶理由通知書の理由1は、
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」
というものである。
そして、次の点が付記されている。
「理由1.、2.について
・請求項 1-26
・引用文献 1
・備考
引用文献1には、メタロセン触媒を用いて、本願発明と同様の方法で、エチレンとプロピレンを請求項1-4で規定する共重合割合で有するコポリマーを製造する旨の記載があることから(特許請求の範囲、実施例、特にExample 1参照)、得られるコポリマーは、請求項1,5-25の性質を示すと解される。
……
引用文献等一覧
1.国際公開第00/69963号」(拒絶理由通知書)
「理由1.、2.について
出願人は、意見書において引用文献1に記載された発明はジエンを加えることを前提とする旨主張するが、引用文献1の第14頁9-13行には、ジエンが任意成分である旨が記載されている。よって、出願人の該主張を採用することはできない。」(拒絶査定)

4.原査定の拒絶理由の妥当性について
(1)引用文献
刊行物A:国際公開第2000/69963号(原査定の拒絶の理由において引用する文献1)

(2)刊行物Aの記載事項
ア.「ポリオレフィンの混合物からなる、柔軟でセット抵抗を有するフィルムであって、該混合物は次のものを含む:
a)該ポリオレフィンの全重量基準で75-98重量%の範囲で該フィルム中に存在する第1ポリマー成分(FPC);
該FPCは、25-70℃の範囲に示差走査熱量計(DSC)により決定される融点を有し;
該FPCは、25J/g未満の融解熱を有し;
該FPCは、80重量%以上で該FPC中に存在する該プロピレンと、20重量%以下で存在する該エチレンとを有するプロピレン-エチレンポリマーであり;及び
b)該フィルム中の全ポリオレフィン基準で2-25重量%の範囲で該フィルム中に存在する第2ポリマー成分(SPC);該フィルム中、ポリオレフィン全体の量に基づいて、2-25重量%の範囲で存在する第2ポリマー成分(SPC);
該SPCは、立体規則性のアイソタクチックポリプロピレンであり;
該SPCは、130℃を超えるDSCにより決定される融点と80J/gを超える融解熱を有し;
該フィルムは……」(特許請求の範囲の請求項1)

イ.「実施例
実施例1:第1ポリマー成分を形成するためのエチレン/プロピレン共重合
溶媒としてヘキサンを用いて9リットル容の連続流通攪拌槽反応器においてFPCの連続的重合を行った。液体を満たした反応器は、9分間の滞留時間を有し、圧力を700kPaに維持した。ヘキサン、エチレン及びプロピレンの混合された供給原料を約-30℃に予備冷却し、反応器に入れる前に、重合熱を除去した。トルエン中の触媒/活性剤溶液及びヘキサン中の掃去剤溶液を別々にそして連続的に反応器に入れ、重合を開始させた。目的の分子量によって、反応器温度を35℃乃至50℃に維持した。供給温度を、重合速度によって変化させ、一定の反応器温度に維持した。重合速度を0.5Kg/時間から4Kg/時間まで変化させた。
30Kg/時間におけるヘキサンを717g/時間におけるエチレン及び5.14Kg/時間におけるプロピレンと混合し、反応器に供給した。重合触媒である、1:1モル比のN',N'-ジメチルアニリニウム-テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートで活性化されたジメチルシリル架橋ビスインデニルハフニウムジメチルを0.0135g/時間における速度で導入した。トリイソブチルアルミニウムの希溶液を触媒停止剤の掃去剤として反応器に導入した。この重合には、触媒モル当り約111モルの掃去剤の割合が適していた。重合が定常状態に達した後に、この重合において製造されたポリマーの代表的な試料を回収し、次に水蒸気蒸留し、ポリマーを単離した。重合速度は、3.7Kg/時間と測定された。この重合において製造されたポリマーは、14%のエチレン含量、13.1のML(1+4)125Cを有し、アイソタクチックプロピレン配列を有した。
本ポリマーの組成におけるバリエーションは、主に、プロピレンに対するエチレンの比を変えることにより得られた。本ポリマーの分子量は、反応器温度を変えることにより又は重合速度に対する総モノマー供給速度の比を変えることにより変化した。三元共重合のためのジエン類は、ジエンのヘキサン溶液を調製し、その必要な容量を計量しながら供給することによって、反応器に入る混合供給流に加えた。」(30頁12行?31頁8行)

ウ.「第1ポリマー成分はアタクチックプロピレンとアイソタクチックプロピレンの結晶化可能コポリマーを含むこともできる。……。任意に、本発明の組成物の第1ポリマー成分はジエンを含むことができる。」(12頁1?5行)

(3)刊行物Aに記載された発明
刊行物Aには、摘示アの請求項1における第1ポリマー成分として、以下の発明が記載されているといえる。
「DFCによる25-75℃の融点を有し、25J/gより少ない融解熱を有する、80重量%以上のプロピレンと20重量%以下のエチレンを有するプロピレン-エチレンポリマー」

(4)対比
本願発明1と刊行物Aに記載された発明とを対比すると、「プロピレン-エチレンポリマー」は、「プロピレン-エチレンコポリマー」と同義であるから、両者は、25?75℃の範囲の融点と、エチレン単位及びプロピレン単位がそれぞれ5?20重量%及び95?80重量%を有するプロピレン-エチレンコポリマーである点で一致する。
したがって、本願発明1では、プロピレン-エチレンコポリマーについて、さらに以下の点が特定されているのに対して、刊行物Aに記載された発明ではそのような規定ががない点で、一応相違するものと認められる。
1)ジエンから誘導された単位が実質的に存在しない。
2)(b)弾性度≦0.9348M+12
(式中、弾性度は%においてであり、MはMPaにおける500%引張弾性率である)
の、500%引張弾性率に対する弾性度の関係を有する。
及び
(c)曲げ弾性率≦4.1864e^(0.269M)+50
(式中、曲げ弾性率はMPaにおいてであり、MはMPaにおける500%引張弾性率である)
の、500%引張弾性率に対する曲げ弾性率の関係を有する。

しかしながら、刊行物Aに記載された発明であるプロピレン-エチレンコポリマーの製造方法が、刊行物Aの摘示イの実施例1に記載され、その製造方法と、本願明細書の実施例に記載された実施例1に記載される製造方法とは、その重合条件のすべてにおいて一致するものであり、さらに、得られたコポリマーについても、それぞれ、14%のエチレン含量及び13.1のML(1+4)125℃(ムーニー粘度)を有するものである点でも一致している。
そうすると、上記のプロピレン-エチレンコポリマーのムーニー粘度が同一であるように、同一の製造条件で製造されたコポリマーにおいて、同一の物性を有することは当然のことであるから、刊行物Aに記載された発明であるプロピレン-エチレンコポリマーが、本願発明1で特定する上記2)の(b)及び(c)の関係を有するものであることは明らかである。
なお、本願発明1では、「1)ジエンから誘導された単位が実質的に存在しない。」としている点についても、摘示イに記載される「エチレン/プロピレン共重合」によって製造されたプロピレン-エチレンコポリマーには、ジエンが存在していないことは明らかである。
したがって、上記1)及び2)については、相違点とはいえないものであるから、本願発明1は、刊行物Aに記載された発明といわざるをえない。

なお、請求人は、請求書の請求の理由において、
「引用文献1の実施例1では、
“Dienes for terpolymerization were added to the mixed feed stream entering the reactor by preparing the diene in a hexane solution and metering it in the required volumetric amount.”(31ページ、6-8行)
の記載を含む。この記載より、引用文献1はジエンを使用することを想定しているものであり、さらに引用文献1の他の実施例を見ても、ジエンの使用を想定していると思われる(実施例3:“In a manner described in Example 1” (32ページ、4行目)、実施例5(41ページ、2-3行)、実施例6(42ページ、10行)についても同様である。実施例2及び7は比較例である。実施例4については明らかでないが実施例4のみが例外とは想定し難い。」(なお、引用文献1は刊行物Aに相当する。)
と主張するが、刊行物Aには、摘示ウに、「任意に、本発明の組成物の第1ポリマー成分はジエンを含むことができる。」と記載されているように、「ジエンは」必須の成分ではないことは明らかであるから、請求人の主張は受け入れられない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明1は、刊行物Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の理由や他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-26 
結審通知日 2011-08-30 
審決日 2011-09-13 
出願番号 特願2002-582102(P2002-582102)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (C08F)
P 1 8・ 121- Z (C08F)
P 1 8・ 537- Z (C08F)
P 1 8・ 113- Z (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大久保 智之  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 ▲吉▼澤 英一
田口 昌浩
発明の名称 プロピレン-エチレンコポリマー  
代理人 山崎 行造  

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