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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q
管理番号 1251162
審判番号 不服2010-1450  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-22 
確定日 2012-01-25 
事件の表示 特願2003-577567「アドホックネットワークを用いた無線遠隔測定のための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月25日国際公開、WO03/79717、平成17年 7月14日国内公表、特表2005-521303〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、2003年 3月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年 3月15日、(US)米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年 9月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年 1月22日付けで審判請求がなされたものである。
特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、平成21年 8月24日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
測定デバイスと、移動ユニットと、中央コントローラとを備えた無線通信システムにおける遠隔測定のための方法であって、
アドホックネットワークを介して前記移動ユニットによって前記測定デバイスから情報を受信することと、
この受信した情報を、前記移動ユニットによって、アドホックネットワークを介して、低いトラフィック時間周期で前記中央コントローラへ送信することと、
前記受信した情報を、少なくとも一つのアドホックネットワークを介して前記中央コントローラへ転送することと
を含む方法。」

2.引用発明
(1)これに対して、原査定の拒絶理由に引用された特開2001-223806号公報(以下、「引用例1」という。)には、「データ伝送システム、およびデータ伝送方法」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般家庭等に設置された通信機能付きのメータが記憶するデータを、顧客が所有する携帯端末、携帯電話等にエージェントソフトを組み込んだエージェント機能付き通信機を利用してセンタに伝送する、または、センタから特定の相手に特定の命令などを伝送するデータ伝送システムに関するものである。」(3頁4欄)

ロ.「【0009】
【発明の実施の形態】以下、図に基づいて本発明における第1の実施の形態を詳細に説明する。図1は、データ伝送システム1のシステム構成図である。データ伝送システム1は、メータ3とメータに取り付けられた通信機5、エージェント機能付きの通信機7、データの管理を行うセンタ9、回線またはネットワークによりセンタ9に接続された通信装置11a、及び電話回線などの、通信装置11aとは異なる回線またはネットワークによりセンタ9に接続され、顧客の家屋に設置された通信装置11b等からなる。
【0010】メータ3は、データを測定して記憶する装置であり、例えば各顧客の家屋に設置されたガスメータ等である。通信機5は、メータ3に記憶されたデータの送信などをする装置であり、メータ3と通信機5で通信機能付きメータ13が構成される。通信機7は、各顧客が携帯して移動する、エージェントソフトを組み込んだ携帯端末等であり、メータ3に記憶されたデータを通信機5から自動的に受信することによりデータの収集を行う。
【0011】また、通信機7は受信したデータを保存し、通信装置11aを介してセンタ9へ送信する。センタ9は複数の通信機7から送信されたデータをコンピュータ管理する。通信機5または通信機7は、所定の期間経過してもセンタ9へデータが送信されないとき、顧客の家屋に設置された通信装置11bを介してデータをセンタ9へ送信する。尚、通信装置11a、通信装置11bとセンタ9は回線交換となっているが、回線交換以外で通信してもよい。また、通信機7がエージェント機能を持たないで、データの内部にエージェント機能を持つオブジェクトを挿入して、通信機7や通信装置11aがエージェント機能を発揮するようにしてもよい。」(4頁5欄)

ハ.「【0012】図2のフローチャートに従って、データ伝送システム1におけるデータ収集の手順を説明する。図3は、データを通信機能付きメータ13から収集するときの例を示す図である。各顧客の家屋15に設置された例えばガスメータ等のメータ3に通信機5を取り付けた通信機能付きメータ13がデータを測定し、記憶している(ステップ201)。
【0013】通信機7を持った顧客が通信機能付きメータ13のデータ伝送圏内(通信圏内)17に入ると(ステップ202)、通信機7は、そのエージェント機能によりデータ伝送圏内17に入ったことを認識し、通信機能付きメータ13からデータを直接受信することによりデータの収集を行う(ステップ203)。
【0014】図4は、データをセンタ9に伝送するときの例を示す図である。データを保持した通信機7を携帯した顧客が移動して、センタ9に接続された通信装置11aのデータ伝送圏内19に入ると(ステップ204)、通信機7は、そのエージェント機能によりデータ伝送圏内19に入ったことを認識し、通信装置11aを介してセンタ9にデータを送信する(ステップ205)。以上の手順によって、顧客の通信機を利用して、通信路を確保できない場合でもデータを収集することができる。
【0015】尚、通信機能付きメータ13が記憶し、送信するデータには、測定されたデータのほかに、データの作成日時、センタ9の送信先アドレスなどが含まれており、ステップ201または、ステップ203で一定時間経過してもセンタ9にデータが送信されない場合には、通信機能付きメータ13または通信機7が、顧客の家屋に設置された通信機11bを介してデータをセンタ9へ通信送信する。」(4頁5?6欄)

ニ.「【0025】このように本実施の形態によれば、顧客の持つ携帯端末などを利用してデータの収集を行うので、メータ等の設置箇所からセンタへの通信路を常時設置しておく必要もないし、検針員等が巡回してデータを収集する必要もない。また、通信機能5と通信機7、通信機7と通信装置11a、通信機7と通信装置11b,及び通信機7同志のそれぞれのデータ伝送圏内におけるデータの送受信は、基地局を介さずに通信を行うため、通話料が無料である。更に、データの収集のみならず、センタから特定のメータへのデータ要求、動作命令などの通信にも利用できるし、メータからセンタにデータ要求、動作命令もできる。」(5頁8欄)

上記引用例1の記載及び図面を参照すると、上記ロ.【0009】の「・・・データ伝送システム1は、メータ3とメータに取り付けられた通信機5、エージェント機能付きの通信機7、データの管理を行うセンタ9、回線またはネットワークによりセンタ9に接続された通信装置11a、及び電話回線などの、通信装置11aとは異なる回線またはネットワークによりセンタ9に接続され、顧客の家屋に設置された通信装置11b等からなる。」という記載から、引用例1の「データ伝送方法」は「メータ3とメータに取り付けられた通信機5」、「エージェント機能付きの通信機7」、「センタ9」及び「センタ9に接続された通信装置11a」を備えるシステムにおけるものであり、図1?3及び同イ.【0001】の「本発明は、一般家庭等に設置された通信機能付きのメータが記憶するデータを、顧客が所有する携帯端末、携帯電話等にエージェントソフトを組み込んだエージェント機能付き通信機を利用してセンタに伝送する。・・・」、同ニ.【0025】の「・・・本実施の形態によれば、顧客の持つ携帯端末などを利用してデータの収集を行うので、メータ等の設置箇所からセンタへの通信路を常時設置しておく必要もないし、・・・」という記載から、当該システムは無線通信システムといえる。
そして、上記ロ.【0010】の「メータ3は、データを測定して記憶する装置であり、例えば各顧客の家屋に設置されたガスメータ等である。・・・」、同ハ.【0012】の「・・・各顧客の家屋15に設置された例えばガスメータ等のメータ3に通信機5を取り付けた通信機能付きメータ13がデータを測定し・・・」という記載から、「メータ3」あるいは「通信機能付きメータ13」はデータを測定する装置であって、引用例1の「データ伝送方法」は、上記イ.【0001】の「本発明は、一般家庭等に設置された通信機能付きのメータが記憶するデータを、・・・センタに伝送する・・・」という記載から、「顧客の家屋に設置された」「メータ3」あるいは「通信機能付きメータ13」が測定したデータを「センタ」に伝送するためのものである。
さらに、上記ロ.【0010】の「・・・通信機7は、各顧客が携帯して移動する、エージェントソフトを組み込んだ携帯端末等であり、メータ3に記憶されたデータを通信機5から自動的に受信することによりデータの収集を行う。」という記載から、「通信機7」は移動可能であり、「メータに取り付けられた通信機5」からデータを受信し、同【0011】の「・・・通信機7は受信したデータを保存し、通信装置11aを介してセンタ9へ送信する。・・・」という記載から、「通信機7」は「センタ9」に受信したデータを送信するものである。
また、上記ハ.【0013】の「通信機7を持った顧客が通信機能付きメータ13のデータ伝送圏内(通信圏内)17に入ると(ステップ202)、通信機7は、そのエージェント機能によりデータ伝送圏内17に入ったことを認識し、通信機能付きメータ13からデータを直接受信することによりデータの収集を行う(ステップ203)。」及び同【0014】の「・・・データを保持した通信機7を携帯した顧客が移動して、センタ9に接続された通信装置11aのデータ伝送圏内19に入ると(ステップ204)、通信機7は、そのエージェント機能によりデータ伝送圏内19に入ったことを認識し、通信装置11aを介してセンタ9にデータを送信する(ステップ205)。」という記載から、「通信機7」は「通信機能付きメータ13のデータ伝送圏内(通信圏内)17に入ると」、「通信機能付きメータ13からデータを直接受信」し、「センタ9に接続された通信装置11aのデータ伝送圏内19に入ると」、「通信装置11aを介してセンタ9にデータを送信する」ものである。
上記イ.【0001】の「・・・センタから特定の相手に特定の命令などを伝送する・・・」及び同ニ.【0025】の「・・・データの収集のみならず、センタから特定のメータへのデータ要求、動作命令などの通信にも利用できる・・・」という記載から、「センタ9」はコントロール機能を有するものである。
したがって、上記引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「データを測定する通信機能付きメータ13と、移動可能な通信機7と、通信装置11aに接続され、コントロール機能を有するセンタ9を備えた無線通信システムにおいて、顧客の家屋に設置された前記通信機能付きメータ13が測定したデータをセンタ9に伝送するための方法であって、
前記移動可能な通信機7が前記通信機能付きメータ13のデータ伝送圏内17に入ると前記通信機能付きメータ13からデータを受信することと、
該受信したデータを、前記移動可能な通信機7が前記センタ9に接続された前記通信装置11aのデータ伝送圏内19に入ると、該通信装置11aを介してセンタ9に送信することと
含む方法。」

(2)同じく原査定の拒絶理由に引用された国際公開第01/74045号(2001年10月 4日国際公開。以下、「引用例2」という。)には、「Transmission of control information」(制御情報の伝送)(( )内は当審の仮訳。)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「The embodiments of the present invention aim to address one or several of the above problems and to provide a feasible solution for communication of information between an on-site controller and a remote control entity.
(本発明の実施態様は1つまたはいくつかの上記の問題に取組み、現場のコントローラと遠隔のコントロール装置との間の情報の通信に対する可能な解決策を提供することが目的である。)

According to one aspect of the present invention, there is provided a method for communication between an on-site controller of a utility commodity system and a remote data processing unit associated with the utility commodity system, wherein the on-site controller is associated with a wireless module, the remote unit is provided with a connection to a telecommunications system that provides wireless communication for a plurality of mobile stations, and each mobile station of the plurality of mobile stations is enabled to communicate with the wireless module, the method comprising : detecting that a mobile station of said plurality of mobile stations is located such that it is possible to establish a wireless link in accordance with a first wireless mode between the wireless module and said mobile station ; and upon detection of the possibility for the wireless link, transmitting information between the controller and the remote unit via a first wireless link that is established in accordance with the first wireless mode between the wireless module and the mobile station and a second wireless link between the mobile station and the wireless telecommunication system, said second wireless link being based on a second wireless mode, wherein the mobile station acts as a gateway between the first and second wireless links.
(本発明の一面によると、利用する製品システムの現場のコントローラと利用する製品システムに関連した遠隔のデータ処理ユニットとの間の通信方法を提供する。その際、現場のコントローラは無線モジュールが付属し、遠隔ユニットは複数の移動ステーションとの無線通信を提供する遠隔通信システムと接続され、複数の移動ステーションのそれぞれは無線モジュールと通信可能になっている。この方法は、該複数の移動ステーションのうちの1つの移動ステーションが第1の無線モードに従って無線モジュールと該移動ステーションとの間で無線リンクを確立することが可能な位置にあることを検出すること、無線リンクの可能性を検出すると、第1の無線モードに従って無線モジュールと移動ステーションとの間で確立した第1の無線リンクと、移動ステーションと無線遠隔通信システムとの間の第2の無線リンクを経由して、コントローラと遠隔ユニットの間で情報を伝送することから成り、該第2の無線リンクは第2の無線モードに基づくものであり、その際、移動ステーションは第1と第2の無線リンクの間のゲートウェイとして機能する。)

In accordance with more specific embodiments, the first wireless link may comprise a short range radio link between the mobile station and the wireless module. The first wireless link may be based on at least one unlicensed radio frequency band. The first wireless link may employ frequency hopping.
(より詳細な実施態様によると、第1の無線リンクは移動ステーションと無線モジュールとの間の近距離無線リンクで構成できる。第1の無線リンクは少なくとも1つの免許の要らない無線周波数バンドとすることができる。)

The transmissions may include packet data. The frequency of transmission via the first wireless link may be changed between the subsequent data packets. The first wireless link may be based on a short range radio link protocol that is defined by Bluetooth Special Interest Group (SIG). Information may be transmitted from the on-site controller to the remote data processing unit and/or from the remote data processing unit to the on-site controller. 」
(伝送にはパケットデータが含まれる。第1の無線リンクを経由する伝送の周波数は続くデータパケットの間で変えることができる。第1の無線リンクは、ブルートゥーススペシャルインタレストグループ(SIG)によって定義された近距離無線リンクプロトコルに基づくものとすることができる。)(7頁11行?8頁19行)

ロ.「The meter 10 of Figure 1 provides an on-site controller that may provide various control functions relating to the inflow, distribution and consumption of electricity within the household 16. ・・・However, instead of this, the control unit 10 of Figure 1 is provided with a remote meter reading function. More particularly, the control unit 10 is provided with a wireless module 11 and antenna 12 for wirelessly transmitting and/or receiving radio frequency signals so that reading information may be communicated to a remote data processing unit 14 of the system.」
(図1のメータ10は、家庭16内の電力の流入量、分配及び消費に関連する様々なコントロール機能を提供できる現場のコントローラを提供する。・・・しかしながら、これに代わって、図1のコントロールユニット10は遠隔でメータを読みとる機能を備えている。特に、コントロールユニット10は、無線周波数信号を無線で伝送、および/または、受信するための無線モジュール11とアンテナ12を備え、読みとる情報がシステムの遠隔データ処理ユニット14に伝えられる。)(12頁21行?13頁2行)

ハ.「Referring now also to the flowchart of Figure 3, the data transmission arrangement may be such that the wireless module 11 of the controller unit 10 monitors continuously if a mobile station with a co-operational wireless module has entered the short range radio link service area 33 (see Figure 2) of the wireless module 11. After a mobile station 20 with a co-operative module 19 has entered a Bluetooth^(TM) 'piconet' 33 of the module 11, and upon detection of the mobile station 20, the controller 10 may send an initial enquiry concerning the services provided by the detected mobile station. The detection may be based on a Bluetooth^(TM) 'broadcast and join the piconet' protocol.」
(ここで図3のフローチャートを参照すると、データ伝送手段は、コントローラユニット10の無線モジュール11が共通の機能を備えた無線モジュールを有する移動ステーションが無線モジュール11の近距離無線サービスエリア33(図2参照)に入ったか否かを連続的にモニタするようなものとすることができる。共通の機能をするモジュール19を有する移動ステーション20がモジュール11のブルートゥース「ピコネット」33に入った後、移動ステーション20を検出して、コントローラ10は検出された移動ステーションが提供するサービスに関する最初の問い合わせを送信することができる。検出はブルートゥースの「ブロードキャスト アンド ジョイン ザ ピコネット」プロトコルに基づくものとすることができる。)(23頁19行?23頁30行)

上記引用例2及び図面を参照すると、上記イ.「・・・there is provided a method for communication between an on-site controller of a utility commodity system and a remote data processing unit associated with the utility commodity system, ・・・」という記載から、引用例2には「現場のコントローラ」と「遠隔のデータ処理ユニット」との間のデータ伝送方法が記載され、さらに、同イ.「・・・wherein the on-site controller is associated with a wireless module, ・・・and each mobile station of the plurality of mobile stations is enabled to communicate with the wireless module,・・・」という記載から、「現場のコントローラ」は「無線モジュール」を備え、「移動ステーション」と通信することができるものである。
そして、上記イ.「・・・transmitting information between the controller and the remote unit via a first wireless link that is established in accordance with the first wireless mode between the wireless module and the mobile station and a second wireless link between the mobile station and the wireless telecommunication system,・・・」という記載から、「現場のコントローラ」が備える「無線モジュール」と「移動ステーション」は「第1の無線モードに従って」「第1の無線リンク」を介して情報を伝送するものであり、さらに、同イ.「・・・the remote unit is provided with a connection to a telecommunications system that provides wireless communication for a plurality of mobile stations,・・・」という記載から、「遠隔のデータ処理ユニット」は「移動ステーション」と「第2の無線リンク」である「無線電話通信システム」で通信するものであるから、「現場のコントローラ」と「遠隔のデータ処理ユニット」は「移動ステーション」を介して情報を伝送するものである。
上記イ.「・・・The first wireless link may be based on a short range radio link protocol that is defined by Bluetooth Special Interest Group (SIG).・・・」、同ハ.「・・・the wireless module 11 of the controller unit 10 monitors continuously if a mobile station with a co-operational wireless module has entered the short range radio link service area 33 (see Figure 2) of the wireless module 11. After a mobile station 20 with a co-operative module 19 has entered a Bluetooth^(TM) 'piconet' 33 of the module 11,・・・」、「・・・The detection may be based on a Bluetooth^(TM) 'broadcast and join the piconet' protocol.・・・」という記載から、「現場のコントローラ10」が備える「無線モジュール11」と「移動ステーション20」の「第1の無線リンク」は「近距離無線リンク」であって、「ブルートゥース」の「ピコネット」を構成するものである。
また、上記ロ.の記載から、「現場のコントローラ」は「メータ」であり、データを測定するものである。
したがって、上記引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「データを測定する無線モジュールを備えたメータと遠隔のデータ処理ユニットとが移動ステーションを介して情報を伝送する方法において、無線モジュールを備えたメータと移動ステーションはブルートゥースのピコネットを用いて通信を行う方法。」

3.対比
本願発明と引用発明1を比較すると、引用発明1の「データを測定する通信機能付きメータ13」、「移動可能な通信機7」、「コントロール機能を有するセンタ9」は、本願発明の「測定デバイス」、「移動ユニット」、「中央コントローラ」に、それぞれ相当する。
また、引用発明1の「顧客の家屋に設置された前記通信機能付きメータ13が測定したデータをセンタに伝送するための方法」は、通常、顧客の家屋とセンタは離れた場所に有ることから、本願発明の「遠隔測定のための方法」に相当する。
そして、引用発明1の「前記移動可能な通信機7が前記通信機能付きメータ13のデータ伝送圏内17に入ると前記通信機能付きメータ13からデータを受信すること」と本願発明の「アドホックネットワークを介して前記移動ユニットによって前記測定デバイスから情報を受信すること」は、いずれも「前記移動ユニットによって前記測定デバイスから情報を受信すること」で一致する。
さらに、引用発明1の「該受信したデータを、前記移動可能な通信機7が前記センタ9に接続された前記通信装置11aのデータ伝送圏内19に入ると、該通信装置11aを介してセンタ9に送信すること」と本願発明の「この受信した情報を、前記移動ユニットによって、アドホックネットワークを介して、低いトラフィック時間周期で前記中央コントローラへ送信すること」は、いずれも「この受信した情報を、前記移動ユニットによって、前記中央コントローラへ送信すること」で一致し、引用発明1の「該受信したデータを、前記移動可能な通信機7が前記センタ9に接続された前記通信装置11aのデータ伝送圏内19に入ると、該通信装置11aを介してセンタ9に送信すること」は、「該受信したデータを、センタ9に転送すること」でもあるので、本願発明の「前記受信した情報を、少なくとも一つのアドホックネットワークを介して前記中央コントローラへ転送すること」とも「前記受信した情報を、前記中央コントローラへ転送すること」で一致する。

したがって、本願発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「測定デバイスと、移動ユニットと、中央コントローラとを備えた無線通信システムにおける遠隔測定のための方法であって、
前記移動ユニットによって前記測定デバイスから情報を受信することと、
この受信した情報を、前記移動ユニットによって、前記中央コントローラへ送信することと、
前記受信した情報を、前記中央コントローラへ転送することと
を含む方法。」

<相違点>
(1)本願発明は「アドホックネットワークを介して」移動ユニットによって測定デバイスから情報を受信するのに対し、引用発明1は「アドホックネットワークを介して」いるか否か不明である点。
(2)本願発明は受信した情報を、移動ユニットによって、「アドホックネットワークを介して」、前記中央コントローラへ送信するのに対し、引用発明1は「アドホックネットワークを介して」いるか否か不明である点。
(3)本願発明は受信した情報を、移動ユニットによって、「低いトラフィック時間周期で」中央コントローラへ送信するのに対し、引用発明1は「低いトラフィック時間周期で」送信するのか否か不明である点。
(4)本願発明は受信した情報を、「少なくとも一つのアドホックネットワークを介して」中央コントローラへ転送するのに対して、引用発明1は「アドホックネットワークを介して」いるか否か不明である点

4.検討
まず、上記相違点(1)について検討すると、上記引用発明2の「無線モジュールを備えたメータ」、「移動ステーション」は本願発明の「測定ユニット」、「移動ユニット」に相当し、「測定ユニット」からのデータを「移動ユニット」で受信する際に、ブルートゥースによるネットワークを構成することは、上記引用発明2として公知であり、ブルートゥースがアドホックネットワーク構成する機能を提供することは当業者にとって周知(例えば、特開2000-224156号公報【0010】、特開2001- 24579号公報【0003】参照。)のことであるから、引用発明1の「データを測定する通信機能付きメータ13」と「移動可能な通信機7」とのデータ受信において、引用発明2ブルートゥースによるネットワークを利用して「アドホックネットワーク」を構成することは容易になし得ることである。
また、無線通信端末が近距離にある場合に、アドホックネットワークを構成して通信を行うことは周知(例えば、特開2000-224156号公報【0032】、特開2001- 24579号公報【0003】、特開2001-285345号公報【0002】参照。)のことであり、引用発明1は「移動可能な通信機7」が「通信機能付きメータ13」の「データ伝送圏内17」に入ると「前記通信機能付きメータ13」からデータを受信するものであり、当該引用発明1の構成に係る引用例1の図3を参照すると、「データ伝送圏内17」は「通信機能付きメータ13」と無線による送受信が可能な限られた領域となることが明らかであるから、「データ伝送圏内17」において上記周知技術を利用して「アドホックネットワーク」を構成することは容易になし得ることである。
したがって、本願発明の「アドホックネットワークを介して」移動ユニットによって測定デバイスから情報を受信することは、引用発明1及び引用発明2または周知技術に基づいて容易になし得ることである。
次に、上記相違点(2)及び(4)について検討すると、上記相違点(1)についての検討において記載したように、無線通信端末が近距離にある場合に、アドホックネットワークを構成して通信を行うことは周知(例えば、特開2000-224156号公報【0032】、特開2001- 24579号公報【0003】、特開2001-285345号公報【0002】参照。)のことである。
そして、引用発明1は「受信したデータ」を、「移動可能な通信機7」が「センタ9に接続された通信装置11a」の「データ伝送圏内19」に入ると、「該通信装置11a」を介して「センタ9」に送信するものであり、当該引用発明1の構成に係る引用例1の図4を参照すると、「データ伝送圏内19」は「通信装置11a」と無線による送受信が可能な限られた領域となることが明らかであるから、「データ伝送圏内19」において上記周知技術を利用して「アドホックネットワーク」を構成することは容易になし得ることである。
したがって、本願発明の受信した情報を、移動ユニットによって、「アドホックネットワークを介して」、前記中央コントローラへ送信する、あるいは、受信した情報を、「少なくとも一つのアドホックネットワークを介して」中央コントローラへ転送することは、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易になし得ることである。
さらに、上記相違点(3)について検討すると、測定したデータを該データを監視している中央コントローラ等の監視装置にどのくらいの容量のデータを、どのような周期あるいはタイミングで送信するかは、測定の目的や対象に応じて決めるべき設計的事項(例えば、特開2000-267892号公報【請求項1】?【請求項4】、特開平6-209493号公報【請求項1】?【請求項3】、【0122】、特開平6-311253号公報【0002】第1?3行参照。)であり、本願発明の「低いトラフィック時間周期で」中央コントローラへ送信することは、当業者が所望に応じて適宜なし得ることである。
そして、本願発明の作用効果も引用発明1、2及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-25 
結審通知日 2011-08-30 
審決日 2011-09-12 
出願番号 特願2003-577567(P2003-577567)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土谷 慎吾西脇 博志  
特許庁審判長 田中 庸介
特許庁審判官 新川 圭二
石井 研一
発明の名称 アドホックネットワークを用いた無線遠隔測定のための方法及び装置  
代理人 勝村 紘  
代理人 砂川 克  
代理人 堀内 美保子  
代理人 峰 隆司  
代理人 河野 哲  
代理人 岡田 貴志  
代理人 白根 俊郎  
代理人 村松 貞男  
代理人 中村 誠  
代理人 野河 信久  
代理人 山下 元  
代理人 市原 卓三  
代理人 河野 直樹  
代理人 佐藤 立志  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 竹内 将訓  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 福原 淑弘  

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