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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1251165 |
審判番号 | 不服2010-5373 |
総通号数 | 147 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-03-10 |
確定日 | 2012-01-25 |
事件の表示 | 特願2007-532693「多重技術エントロピー符号化システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月 6日国際公開、WO2006/036806、平成20年 5月 1日国内公表、特表2008-514142〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2005年(平成17年)9月22日の国際出願(パリ条約による優先権主張2004年(平成16年)9月22日、米国)であって、平成21年5月28日付けの拒絶理由通知に対し、指定した期間内に出願人から何らの応答もなかったため、平成21年10月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年3月10日に審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 第2 本願発明について 1.本願発明の認定 本願の発明は、平成22年3月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「少なくとも2つの符号化技術を並列に組み合わせて用い、各符号化技術が入力データストリームの異なる部分を処理するようにする、入力データストリームのエントロピーコーディング工程を具えるデータ圧縮方法。」 2.拒絶査定の概要 拒絶査定は、平成21年5月28日付け拒絶理由通知書に記載された理由によってなされたものである。 平成21年5月28日付け拒絶理由通知書における理由は以下のとおりである。 「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) [1]請求項1?4に対して 引用文献1又は2 (引用文献1は、国際調査報告で引用されるとともに、国際予備報告で請求項1?4に係る発明の新規性及び進歩性を否定する公知文献として用いられた文献である。 また、引用文献2は、本願のパテントファミリーである欧州特許出願に対する欧州特許庁での拒絶理由通知において、上記引用文献1とともに引用された欧州特許出願公開第1351518号明細書のパテントファミリー文献である。) [2]請求項1?4に対して 引用文献3?5 (引用文献3には、ハフマン符号化のように符号語テーブルを用いる手法は、符号語テーブルのサイズが過大になるという問題点が記載されている(段落【0002】?【0003】参照)。また、符号語テーブルを用いずに計算で符号語を生成する手法についても記載されており、具体例としてゴロム符号化が挙げられている(段落【0004】参照)。 また、引用文献4には、上述したようなハフマン符号化の問題点を解決するために、すなわち、符号語テーブル(符号化テーブル)を小さくするために、シンボルの大きさが一定値より小さい場合、すなわち、発生確率の高いシンボルの場合には、ハフマン符号化を行い、そうでない場合(シンボルの大きさが一定値より小さくない場合、すなわち、発生確率の低いシンボルの場合)には、ハフマン符号化とは異なる符号化(シフトコードを用いた符号化)を行うことが記載されている。 そして、上述のハフマン符号化とは異なる符号化として、具体的にどのような符号化を採用するかは当業者が適宜選択し得ることであり、引用文献3に記載されている上記ゴロム符号化は、符号語テーブルを用いずに計算で符号語を生成可能な手法であるから、上述のハフマン符号化とは異なる符号化として、上記ゴロム符号化や、さらには、指数ゴロム符号化(引用文献5参照)を用いるようにすることは、当業者にとって格別困難なことではない。) 引 用 文 献 等 一 覧 1.米国特許第6650784号明細書 2.特開2004-7526号公報 3.特開2003-218704号公報 4.特開平2-260872号公報 5.大久保榮監修,インプレス標準教科書シリーズ H.264/AVC教科書,株式会社インプレス ネットビジネスカンパニー,2004年 8月11日,p.144-157」 3.刊行物2(特開2004-7526号公報)記載の発明との対比 3-1.刊行物2発明 原査定の拒絶の理由で引用された刊行物2には、図面とともに次のア?エの事項が記載されている。 ア 「【0013】 【発明の実施の形態】 図1は、データ圧縮システムの構成を模式的に示す図である。このデータ圧縮システムは、符号化装置(encoder)10と、データ処理装置(data processingmodule)20と、復号装置(decoder)30とを備える。入力の高品位(high difinition)ビデオ信号5は、符号化装置10に供給される。符号化装置10は、冗長度を除去し、その統計的性質を利用するためにビデオ画像データをモデル化し、入力画像データ5の情報を圧縮フォーマットで表現する出力データシンボルを生成する。符号化装置10は、圧縮データ信号15Aを出力し、この圧縮データ信号15Aはデータ処理装置20に供給され、そこで、通信チャンネルを介して伝送されるか、又は記録媒体に格納される。記録媒体から読み出された、又は通信チャンネルを介して受信された圧縮データ信号15Bは、復号装置30に供給され、復号装置30は、圧縮データ信号15Bを復号して高品位の出力画像信号35を形成する。 【0014】 図2は、図1のビットレートを低減する符号化装置10の具体的な構成を示すブロック図である。高品位ビデオのフレームにおける入力RGBチャンネルに対応するデータ信号D1、D2、D3は、シャッフル部(shuffle unit)100に供給される。他の具体例として、データは、YCbCrフォーマットで供給することもできる。更に、画像は、プログレッシブフレームモードとインタレースフィールドモードのいずれでも処理することができる。シャッフル部100は、入力データをマクロブロックユニット(Macro-Block Unit:以下、MBUという)に分割する。この具体例では、1フレームは40個のMBUからなり、各MBUは204個のMBからなる。各入力フレームの画像サンプルは、外部SDRAM200に一時的に書き込まれる。このシャッフル書込処理中に、後続の符号化処理で必要とされる2つの量子化除数パラメータQ_START、DCT_PRECISIONの値が算出される。画素ブロックが外部SDRAM200から、入力画像フレーム内の隣接した画素ブロックがシャッフル順序では隣接した位置で読み出されないように画像データをインタリーブする所定のシャッフル順序に従って、読み出される。 【0015】 シャッフル処理により、復号装置30によって再生される画像におけるデータ消失の影響が軽減される。入力ビデオフレームにおいて隣接した画素ブロックは、シャッフルされたビットストリームでは、離れている。短時間のデータ消失により、ビットストリームの連続した一部が損なわれ、幾つかのデータブロックが影響を受けるが、これらのブロックは、シャッフル処理のために再生画像内では連続していない。したがって、データ隠蔽(concealment)を適切に用いて、消失したブロックを再構成することができる。シャッフル処理は、可変速再生(suttle playback)時の画質を改善することができる。更に、シャッフル処理は、入力ビデオデータをMBUに疑似ランダム的に分配することによって画像フレームの各MBUに選択された量子化パラメータの変化の度合い(variation)を低減することができる。 【0016】 現画像フレームは、外部SDRAM200から前フレームをシャッフルされたフォーマットで読み出している間に、外部SDRAM200に書き込まれる。シャッフル部100は、2対の出力信号を生成し、第1の信号対は、信号S_OP_D1と信号S_OP_D2からなり、第2の信号対は、同じMBUデータを含むが、第1の信号対に対して約1MBU遅延された信号S_OP_DD1と信号S_OP_DD2からなる。この遅延は、Q割当部(Q allocation unit)300に内蔵されているビット割当器(bit allocation module)400の処理による遅延を補償するためのものである。Q割当部300は、第1の信号対S_OP_D1、S_OP_D2を用いて、適切な符号化モードと、MBUの各MBに対するQ_SCALEパラメータと呼ばれる量子化除数を測定する(determine)。 【0017】 シャッフル部100から出力される信号は、Q割当部300に供給され、このQ割当部300は、ビット割当器400と、ターゲット挿入器500と、DCT変換器600と、2分探索(binary search module)器700とを備える。シャッフル部100から出力される第1の信号対S_OP_D1、S_OP_D2は、ビット割当器400に入力される。これらの入力信号は、ラスタ走査された12ビットビデオサンプルの8H×8V縦ブロックからなる。 【0018】 ビット割当器400は、無ひずみ(lossless)の差分パルス符号変調(differential pulse code modulation:以下、DPCMという)符号化とDCT量子化符号化を比較する。【0019】 DPCMは、画像内の空間的に近い画素は相関が高いことを利用した簡単な画像圧縮技術である。DPCMでは、画素値自体は伝送されない。代わりに、符号化装置により、前に送信した画素値に基づいた画素の期待値が予測される。1回のDPCM符号化処理(single DPCM encoding stage)は、DPCMリフォーマットと、DPCM変換と、エントロピー符号化計算を含む。【0020】 これに対し、DCT量子化符号化の処理は、1回のDCT変換と、一連の量子化除数を用いた複数回の量子化処理を含み、各量子化処理の後にハフマン(Huffman)エントロピー符号化計算が行われる。この具体例では、6個の試し(trial)量子化除数がビット割当器400により試験される。ハフマン符号化は、既知の無ひずみ圧縮技術であり、出現頻度の高い値は短い符号で、出現頻度の低い値は長い符号で表現される。DCT試し符号化処理は、オプションとして、画像領域の「アクティビティ(activity)」に依存した量子化を含む。アクティビティは、画像ブロックの適切に正規化された画素の分散(variance)から算出される尺度(measure)である。高いアクティビティを有する画像ブロックでは、量子化をより粗くしても、見る人には知覚されにくいことが知られているので、各ブロックの量子化ステップを、アクティビティのレベルに応じて適切に調整することができる。アクティビティを考慮することにより、再生画像の知覚的な画質を維持したまま、圧縮率をより高めることができる。 【0021】 DPCM及びDCT量子化の試し符号処理により、所要の符号化ビットレートに基づいた所定のフレームのターゲットビット数によって制限されるMBのターゲットビット数を計算する。各MBに対して最少の符号化ビットが得られるモード(DCTかDPCM)が選択される。ビット割当器400は、信号405をターゲット挿入器500に出力する。この信号405は、各マクロブロックに対して選択された符号化モードと、2分探索器700で使用される量子化除数Q_SCALEの値Q_BASEと、各マクロブロックに対するターゲットビット数(bit count traget)とに関する情報を含んでいる。信号405に含まれる各マクロブロック毎のQ_BASE値、符号化モード情報及びビットターゲットは、ターゲット挿入器500によって、対応する遅延された画像データのビットストリームに付加される。ターゲット挿入器500は、2つの信号505A、505Bを出力し、これらの信号はDCT変換器600に入力として供給される。 【0022】 DCT変換器600で再びDCT係数を計算するが、今回は画像データの遅延バージョンに基づき計算を行う。DCT変換器600は、データを2分探索器700に出力する。2分探索器700は、各DCTモードのMBに対して2回目の(second stage)Q割当を実行するとともに、2分探索法を用いて、各マクロブロックに対して適切な量子化除数を測定する。2分探索器700は、ビット割当器400で使用された分解能より高い分解能で(使用可能な量子化除数の範囲内で)量子化除数を測定し、ビット割当部400によって設定されたターゲットに合う最小の利用可能なQ_SCALEを各マクロブロックに対して見つけ出す。実際には、5回の2分探索における開始点を定めるためにQ_BASEを用いて、DCTモードの各マクロブロックに対してより高い分解能の量子化ステップQ_ALLOCが選択されるようにする。DPCMモードのマクロブロックは、バイパス機能によって2分探索器700を通過するので、その出力においてデータは変更されてない。【0023】 2分探索器700からの出力は、DCTモードの各マクロブロックに対する量子化ステップの値Q_ALLOCを含み、逆戻り探索(backsearch)器800に供給される。逆戻り探索器800は、各MBに対して選択された値Q_ALLOCが符号化のための「最良」の量子化スケールであることを検査(check)する。上述したように、前に1回以上の符号化/復号化サイクルを経験したことがある画像データについては、所定のターゲットビット数(target bit count)を達成できる最も粗さが小さい量子化が必ずしもそのマクロブロックに対して可能な限り小さい量子化誤差をもたらさない。代わりに、最小の量子化誤差は、前回の符号化/復号化サイクルで使用された量子化除数に略等しい量子化除数を用いることによって達成される可能性が高い。したがって、逆戻り探索器800は、値Q_ALLOCから始まり、より粗い量子化となる様々な量子化除数に対する量子化誤差を評価する。逆戻り探索器800は、可能な限り最も小さい量子化誤差を実際に発生する量子化ステップQ_FINALを決定する(determine)。試し量子化はDCTモードのマクロブロックに対してのみ行われ、DPCMモードのマクロブロックに対してはバイパス機能が適用される。【0024】 逆戻り探索器800から出力される、選択された量子化ステップQ_FINALと、DCT符号化器600で生成されたDCTブロックは、量子化器900に供給され、ここで、最終的な量子化が実行される。量子化処理は、以下のようにして行われる。」 イ 「【0035】 量子化器900から出力される量子化データは、エントロピー符号器1000に供給され、ここで、無ひずみデータ圧縮が、エントロピー符号化の標準原理に基づき適用される。この具体例では、ハフマン符号化を使用している。」 ウ 「【0039】 図5は、図2のビット割当器400の具体的な構成を示すブロック図である。このビット割当器400は、3つの主要な機能を有し、第1の機能では、各マクロブロック毎に無ひずみDCPMと有ひずみDCT符号化という2つの利用可能な選択肢の中から符号化モードを選択し、第2の機能では、マクロブロックユニットに関する同様のターゲットに基づいて、各マクロブロックに対するターゲットビット数MB_TARGETを算出し、第3の機能では、2分探索器700で実行される2分探索における量子化除数Q_SCALEの開始目盛り(starting scale)となるように定義される値Q_BASEを算出する。2分探索器700は、量子化除数Q_SCALEの値Q_ALLOCを測定し、これは、開始点の値Q_BASEを得るのに使用したよりも高い分解能で量子化除数Q_SCALEを探索することによって得られる。 【0040】 シャッフル部100から出力されるシャッフルされた画像データ信号S_OP_D1、S_OP_D2は、ビット割当器400に入力として供給される。これらの入力信号は、ラスタ走査された12ビットのビデオサンプルの8H×8VDCTブロックからなる。 【0041】 パラメータ推定回路は、図2に示す符号化装置のシャッフル部100内に配設される。このパラメータ推定回路は、一連の試し量子化の実行に先立って設定され固定されるDCT_PRECISIONの値を推定すると共に、ビット割当部400によって実行される最低分解能試し量子化(lowest resolution trial quantisations)を実行するときの量子化除数を決定する際に用いるQ_SCALEの値Q_STARTを算出する。パラメータ予測回路により生成される最終的な量子化除数パラメータDCT_PRECISION、Q_STARTの値もビット割当器400に入力として供給される。 【0042】 ビット割当部400は、DPCMリフォーマット部410、DPCM部420、ゴーロン(Golomb)長部430、DCT部440、量子化部452とハフマン長部454から成る有ひずみ符号化部450、アクティビティ部460及び決定論理ユニット470を備える。決定論理ユニット470は、ターゲット挿入部500に入力データを供給する。 【0043】 ビット割当部400は、この具体例においては204個のMBから成るマクロブロックユニットの試し符号化に基づいて符号化の決定を行う。符号化モード決定の際には、無ひずみDPCMあるいは有ひずみDCTモード符号化のいずれかを選択する。符号化モードの決定は、単一のDPCM符号化段(DPCMリフォーマット部410、DPCM部420及びゴーロン長部430と連携して実行される)を実行することによって行われ、その結果は、6個のDCT試し符号化段の出力と比較される。6個のDCT試し符号化段は、DCT部440における単一の離散コサイン変換と、後に続く有ひずみ符号化ユニット450による6サイクルとを含む。DCTモードの符号化において、アクティビティ部460は、量子化部452によってデータに適用される量子化除数を調整する。アクティビティ部460が実行する計算については、以下に詳細に説明する。 【0044】 図5に示すように、決定論理器470には、DPCM符号化のエントロピー符号化処理を行うゴーロン長器430の出力が供給されるとともに、DCT符号化のエントロピー符号処理を行うハフマン長器454の出力が供給される。決定論理ユニット470は、DPCM試し符号化とDCT試し符号化との結果を比較する。無ひずみDPCMは、マクロブロックに対して全体のビット数がより少ない場合のみ、選択される。また、決定論理ユニット470は、マクロブロックユニットとマクロブロックの双方についてターゲットビット数を算出する。」 エ 図2の記載によれば、「シャッフル部100」から出力される(「第2の信号対」に対応する)信号S_OP_DD1と信号S_OP_DD2は、「ターゲット挿入器500」に供給されている。 以上の記載から、刊行物2には以下の発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されている。 「高品位ビデオ信号を入力し、圧縮データ信号15Aを出力する符号化装置であって、 シャッフル部100は、供給された高品位ビデオのフレームにおけるデータ信号を204個のマクロブロック(MB)からなるマクロブロックユニット(以下、MBUという)に分割し、シャッフルされたビットストリームとして、第1の信号対と、第1の信号対と同じMBUデータを含む第2の信号対の2対の出力信号を生成して出力するものであり、 第1の信号対は、ビット割当器400と、ターゲット挿入器500と、DCT変換器600と、2分探索器700とを備えるQ割当部300に供給され、ビット割当器400に入力されるものであり、 第2の信号対は、ビット割当器400の処理による遅延を補償するために第1の信号対に対して約1MBU遅延されて、シャッフル部100からターゲット挿入器500に供給されるものであり、 ビット割当器400は、無ひずみの差分パルス符号変調(DPCM)符号化とDCT量子化符号化を比較するものであって、DPCMリフォーマットと、DPCM変換と、エントロピー符号化計算を含む単一のDPCM符号化処理と、6個の試し(trial)量子化除数に対して、DCT変換と、一連の量子化除数を用いた複数回の量子化処理と、ハフマン(Huffman)エントロピー符号化計算が行われるDCT量子化符号化の処理を行い、各MBに対して最少の符号化ビットが得られるモード(DCTかDPCM)を選択し、 DCTモードが選択されたMBに関しては、画像データの遅延バージョンに基づきDCT変換器600で再びDCT係数を計算した後、2分探索器700及び逆戻り探索器800における処理によって、量子化ステップQ_FINALを決定し、選択された量子化ステップQ_FINALと、DCT符号化器600で生成されたDCTブロックは、量子化器900に供給され、量子化器900で最終的な量子化が実行され、量子化器900から出力される量子化データは、エントロピー符号器1000でハフマン符号化を使用した無ひずみデータ圧縮がエントロピー符号化の標準原理に基づき行われ、 DPCMモードのマクロブロックは、2分探索器700における処理及び試し量子化についてバイパス機能が適用されるものである、 ことを特徴とする符号化装置。」 3-2.対比 本願発明と刊行物2発明とを対比する。 刊行物2発明の「符号化装置」は、「高品位ビデオのフレームにおけるデータ信号」を「シャッフル部100」でマクロブロックユニット(MBU)単位に分割して「シャッフルされたビットストリーム」として「Q割当部300に供給」し、該「Q割当部300」の後段において、エントロピー符号化の標準原理に基づき無ひずみデータ圧縮を行う「エントロピー符号器1000」を設けたものであり、「データ圧縮方法」を用いた装置であるといえる。ここで、刊行物2発明の「ビットストリーム」は本願発明の「入力データストリーム」に相当し、刊行物2発明の「エントロピー符号器1000」で行われる「無ひずみデータ圧縮」の処理は、本願発明の「エントロピーコーディング工程」に相当する。 それゆえ、本願発明と刊行物2発明とは、「入力データストリームのエントロピーコーディング工程を具えるデータ圧縮方法」である点で一致する。 また、刊行物2発明では、「ビット割当器400」において各マクロブロック(MB)に対して最少の符号化ビットが得られるモード(DCTかDPCM)を選択するものであって、各マクロブロックに対して「DCTモード」と「DPCMモード」という2つの符号化モードを択一的に選択し、「DCTモード」が選択されたブロックに対しては、遅延されて「シャッフル部100」から出力されたデータに対してDCT及びハフマン符号化を用いた符号化処理が行われるものである。 刊行物2発明の「ビットストリーム」は高品位ビデオ信号のフレームにおけるデータ信号をマクロブロックユニット単位で分割されたものであり、かつ、マクロブロックユニット単位の中に複数個のマクロブロックが含まれるものであるから、刊行物2発明は、「ビットストリーム」の中に含まれる複数のマクロブロックに対し、マクロブロック毎に「DCTモード」と「DPCMモード」に分けて、「DCTモード」のマクロブロックにはDCTを用いた符号化技術を、「DPCMモード」のマクロブロックにはDPCMを用いた符号化技術を、それぞれ用いて符号化を行うもの、すなわち、DCTを用いた符号化技術とDPCMを用いた符号化技術とを並列に組み合わせて用いるものであり、これら2つの異なる符号化技術は互いに「入力データストリームの異なる部分」に対して用いられているといえる。 それゆえ、本願発明と刊行物2発明とは、「2つの符号化技術を並列に組み合わせて用い、各符号化技術が入力データストリームの異なる部分を処理するようにする」点で共通する。 したがって、本願発明と刊行物2発明は、以下の点で一致し、以下の相違点を有する。 [一致点] 2つの符号化技術を並列に組み合わせて用い、各符号化技術が入力データストリームの異なる部分を処理するようにする、入力データストリームのエントロピーコーディング工程を具えるデータ圧縮方法。 [相違点] 本願発明は、「並列に組み合わせて用い」る「符号化技術」が「少なくとも2つ」であって3つ以上の「符号化技術を並列に組み合わせて用い」るものも含まれているのに対し、刊行物2発明では、3つ以上の符号化技術を並列に組み合わせて用いるものについては明記されていない点。 3-3.相違点に対する判断 刊行物2発明は、「ビット割当部400」において、マクロブロックに対してDPCM変換の後にエントロピー符号化を用いて得られる符号化ビットと、「6個の試し(trial)量子化除数」を用いて、各量子化除数に対してDCT変換、量子化、ハフマンエントロピー符号化を用いて得られる符号化ビット数を比較して、最少の符号化ビットが得られるモード(DCTかDPCM)を選択するものであり、各マクロブロックに対して複数の符号化技術をそれぞれ用いて得られる符号化ビットを比較することにより、当該マクロブロックに対して使用する符号化技術を選択するものである。 また、一般的に、画像圧縮符号化の分野において、マクロブロックに対して適用可能な符号化技術としては、DCTやDPCMを用いた符号化以外にも、例えばウェーブレット変換符号化やアダマール変換符号化、ブロックトランケーション符号化などのような符号化技術があることは当業者において周知慣用の技術である。 それゆえ、刊行物2発明において、マクロブロックに対して行われる符号化技術として、DCTやDPCM以外にも上記の周知慣用の符号化技術を採用し、3種類以上の各符号化技術を用いて得られる符号化ビットを比較することによって、各マクロブロックで用いるべき符号化技術を選択することは、当業者が適宜選択してなし得ることである。 そのため、刊行物2発明において、3種類以上の各符号化技術を用いるものも含む「少なくとも2つの符号化技術」を並列に組み合わせて用いることにより、本願発明の相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 したがって、本願発明は、刊行物2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.刊行物3(特開2003-218704号公報)記載の発明との対比 4-1.刊行物3発明 原査定の拒絶の理由で引用された刊行物3には、図面とともに次のア?クの事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、可変長符号化/復号化方法及び装置に関する。 【0002】 【従来の技術】可変長符号化は、入力された情報シンボルに対応した符号長の符号語を符号化データとして出力する技術である。可変長符号化に際しては、各情報シンボルの出現頻度(生起確率)に基づき、頻繁に出現する情報シンボルに対しては短い符号長の符号、希にしか出現しない情報シンボルに対しては長い符号長の符号をそれぞれ割り当てることにより、符号化データとして出力される符号語が平均的に短い符号長とされる。その結果、符号化前と比較して情報のデータ量を大幅に圧縮することができる。このような可変長符号の構成方法としては、無記憶情報源で最適なハフマンのアルゴリズムが知られている。 【0003】一般に、可変長符号化は情報シンボルに可変長符号の符号語を対応付ける符号語テーブルを用いて行われる。符号語テーブルを用いる方法では、例えば動画像符号化における変換係数のように、可変長符号化の符号化対象となる情報シンボルの数が非常に多い場合には、符号語テーブルのサイズが過大になるという問題がある。 【0004】符号語テーブルを用いず、情報シンボルに対して計算で符号語を生成する方法も提案されている。計算で符号語を生成する手法として、正整数に対する符号化である図9に示されるEliasのδ符号(IEEE Trans. IT vol.IT-21,no.2.pp.194-203,1975)や、Golombの幾何分布に対する符号化(IEEE Trans. IT vol.IT-12,no.3.pp.399-401,1966)などが以前より知られているが、いずれも適用できる情報シンボルの出現確率分布が限定され、符号化効率が低いという問題がある。」 イ 「【0010】本発明は、大きなテーブルを用いることなく、高い符号化効率を実現できる可変長符号化/復号化方法及び装置を提供することを目的とする。」 ウ 「【0021】符号化システム100は、入力された情報シンボル10を可変長符号化する可変長符号化部101と区間設定部102を有する。可変長符号化部101は、予め用意された符号語テーブルを用いずに、入力された情報シンボル10の値に対応した可変長符号の符号語を生成し、これを可変長符号化データ14として出力する。 【0022】可変長符号化部101においては、情報シンボル10と符号語との対応付けに関して複数の方法(対応方法)が用意され、また符号語の生成に関して複数の方法(符号語生成方法)に関して複数の方法(対応方法)が用意されており、外部より供給される切り替え信号11,12に応じて一つの対応方法及び符号語生成方法が選択される。切り替え信号11,12は、別途符号化された後に復号化システム104に送られるか、あるいは復号化システム104において他の符号化パラメータの値によって求めることができるものとする。 【0023】可変長符号化部101から出力される可変長符号化データ14は、区間設定部102より所定の区間に分けられ(区間設定という)、符号化システム100から出力される。区間設定部102からの区間設定後の符号化データ15は伝送/蓄積系103に入力され、伝送蓄積系103から出力される可変長符号化データ16は復号化システム104に入力される。 【0024】復号化システム104は、区間検出部105と可変長復号化部106及び長さ判定部107を有する。区間検出部105では、入力される可変長符号化データ16から区間設定部102で設定された区間が検出される。可変長符号化データ16は、区間検出部105で検出された区間毎の可変長符号化データ20として可変長復号化部106に入力される。可変長復号化部106は、予め用意された符号語テーブルを用いずに、入力された可変長符号化データ20に含まれる各符号語から計算によって復号値を生成し、該復号値に情報シンボルを対応付けて復号結果24として出力する。 【0025】可変長復号化部106においては、復号値の生成に関して複数の方法(復号値生成方法)が用意され、また復号値と情報シンボルとの対応付けに関して複数の方法(対応方法)が用意されており、例えば前述のように符号化システム100より供給されるか、あるいは前述のように復号化システム104内で他の符号化パラメータの値に基づいて生成される切り替え信号21,22に応じて一つの対応方法及び符号語生成方法が選択される。」 エ 「【0027】図2に可変長符号化部101の構成を示す。可変長符号化部101は、情報シンボル対応部201と符号語生成部202を有する。情報シンボル対応部201は、入力された情報シンボル10の値に対応する符号値13を出力する。情報シンボル対応部201は複数の対応テーブル、言い換えれば複数の対応方法を備えており、これらが情報シンボル対応切り替え信号11により切り替えられ、一つの対応テーブルが選択される。【0028】符号語生成部202は、情報対応部201からの符号値13を入力として、符号毎に予め決められた計算方法によって符号語14を計算により生成する。符号語生成部202は複数の符号語生成方法を備えており、これらが符号語生成切り替え信号12によって切り替えられ、一つの符号語生成方法が選択される。」 オ 「【0032】図5は、図2中の情報シンボル対応部201及び図3中の情報シンボル対応部302で使用される対応テーブルの例と、各対応テーブルにおける情報シンボルと符号値との対応関係の例を示している。この例は、動画像符号化において画像信号をブロック毎に直交変換して得られた係数(例えば、DCT係数)を量子化した後の値をランレングス符号化によて可変長符号化した場合である。情報シンボルは、この例ではブロックに以後非ゼロ係数がないことを示すEOB(End OfBlock)記号と、ラン(Run)とレベル(Level)の組み合わせである。ここではシンボル対応テーブルはAとBの2種類があり、情報シンボル対応切り替え信号によって情報シンボルと符号値との対応を切り替えることができる。 【0033】次に、図6を用いて符号語生成部202における符号語生成のための計算手法の具体例について説明する。・・・」 カ 「【0038】次に、図7を用いて符号語生成部202における符号語生成のための計算手法の他の具体例について説明する。・・・」 キ 「【0041】なお、情報シンボルの生起確率に応じて、符号語生成切り替え信号を使うことで、図6または図7に示した符号とEliasのδ符号と切り替えて使用してもよい。」 ク 図6及び図7の記載によれば、「符号語生成部202における符号語生成」の処理の結果、入力される符号値によって異なる長さの符号語が生成される。 以上の記載から、刊行物3には以下の発明(以下、「刊行物3発明」という。)が記載されている。 「符号語テーブルを用いる方法で生じる符号語テーブルのサイズが過大になるという問題や、情報シンボルに対して計算で符号語を生成する方法で生じる符号化効率が低いという問題を解決するために、大きなテーブルを用いることなく、高い符号化効率を実現できる可変長符号化方法であって、 符号化システム100は、入力された情報シンボル10を可変長符号化する可変長符号化部101と区間設定部102を有し、 可変長符号化部101は、情報シンボル対応部201と符号語生成部202を有し、情報シンボル10と符号語との対応付けに関して複数の方法(対応方法)が用意され、また符号語の生成に関して複数の方法(符号語生成方法)に関して複数の方法(対応方法)が用意されており、外部より供給される切り替え信号11,12に応じて一つの対応方法及び符号語生成方法が選択されるものであり、 情報シンボル対応部201は複数の対応テーブル、言い換えれば複数の対応方法を備えており、情報シンボル対応切り替え信号11により情報シンボルと符号値との対応を切り替え、入力された情報シンボル10の値に対応する符号値13を出力し、 符号語生成部202は複数の符号語生成方法を備えており、符号語生成切り替え信号12によって一つの符号語生成方法が選択され、情報対応部201からの符号値13を入力として、符号毎に予め決められた計算方法によって符号語14を計算により生成するものであって、入力される符号値によって異なる長さの符号語が生成されるものであり、 情報シンボルの生起確率に応じて、符号語生成切り替え信号を使うことで、計算により生成した符号とEliasのδ符号と切り替えて使用してもよい ことを特徴とする画像符号化方法。」 4-2.対比 本願発明と刊行物3発明とを対比する。 刊行物3発明は、入力された情報シンボルを符号化する際に、情報シンボルと符号値との対応を示した「シンボル対応テーブル」を2種類設け、「情報シンボル対応切り替え信号11」によって使用する「シンボル対応テーブル」を切り替える技術や、「符号語生成切り替え信号12」によって符号語の生成に関する複数の方法(符号語生成方法)から一つの符号語生成方法を選択して符号語14を計算により生成する技術が用いられており、刊行物3発明の2種類設けられた「シンボル対応テーブル」や「複数の符号語生成方法」は、本願発明の「2つの符号化技術」に相当するものである。加えて、刊行物3発明において、「情報シンボルの生起確率に応じて、符号語生成切り替え信号を使うことで、計算により生成した符号とEliasのδ符号と切り替えて使用」する場合に、「計算により生成した符号」と「Eliasのδ符号」を用いるものも、異なる「符号化技術」を用いているといえる。 また、刊行物3発明において、「情報シンボル対応切り替え信号11」は「情報シンボル10と符号語との対応付け」に関する「対応方法」を、「符号語生成切り替え信号12」は「符号語の生成」に関する「符号語生成方法」を、それぞれ択一的に選択するものであるから、刊行物3発明は、「2つの符号化技術を並列に組み合わせて用い」るものであって、各符号化技術が入力データの「異なる部分を処理するように」動作する点で、本願発明と共通するといえる。 さらに、刊行物3発明で用いられる「可変長符号化」が本願発明の「エントロピー符号化」に相当するものであり、当該可変長符号化の技術を用いて、各情報シンボルの出現頻度(生起確率)に基づき、頻繁に出現する情報シンボルに対しては短い符号長の符号、希にしか出現しない情報シンボルに対しては長い符号長の符号をそれぞれ割り当てることにより、符号化データとして出力される符号語の平均符号長を短くすることができる、すなわちデータ圧縮の効果を有するものであることは、圧縮符号化の技術分野における技術常識である。また、刊行物3発明の「符号語生成部202」で、符号値によって異なる長さの符号語が生成される処理は、本願発明の「エントロピーコーディング工程」に相当する。 したがって、本願発明と刊行物3発明は、以下の点で一致し、以下の相違点を有する。 [一致点] 2つの符号化技術を並列に組み合わせて用い、各符号化技術が入力データの異なる部分を処理するようにする、入力データのエントロピーコーディング工程を具えるデータ圧縮方法。 [相違点1] 本願発明は、「並列に組み合わせて用い」る「符号化技術」が「少なくとも2つ」であって3つ以上の「符号化技術を並列に組み合わせて用い」るものも含まれているのに対し、刊行物3発明では、3つ以上の符号化技術を並列に組み合わせて用いるものについては明記されていない点。 [相違点2] 本願発明が「入力データストリーム」に対して符号化を行うものであるのに対し、刊行物3発明は符号化対象となる入力データが「ストリーム」であることは明記されていない点。 4-3.相違点に対する判断 [相違点1について] 刊行物3発明は、「符号語生成部202」において「符号語生成切り替え信号12によって一つの符号語生成方法が選択され」るものであり、「情報シンボルの生起確率に応じて、符号語生成切り替え信号を使うことで、計算により生成した符号とEliasのδ符号と切り替えて使用してもよい」ことも示されている。 そのため、刊行物3発明の符号語の生成に関して、複数の「符号語生成方法」に対して「Eliasのδ符号」を更に選択肢として加えることにより、3つ以上の符号化技術を並列に組み合わせて用いることにより、本願発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者が適宜選択してなし得ることである。 [相違点2について] 刊行物3発明では、入力される「情報シンボル」のデータが「ストリーム」であることは明らかにされていないが、一般的な符号化装置において、符号化対象となるデータが時間の経過と共に連続的に入力され、当該入力されたデータに対して順次圧縮符号化処理を行うことは、ごく普通に行われることである。 してみると、刊行物3発明における符号化技術を、連続的に入力されるデータ、すなわち「ストリーム」を対象に用いることにより、本願発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得ることである。 そして、これらの相違点1及び2は相互に関連した事項ではなく、また、上記各相違点を総合的に考慮しても当業者が推考し難い格別のものであるとすることはできず、また本願補正案発明の効果についてみても、刊行物3発明から予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるともいえない。 したがって、本願発明は、刊行物3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.刊行物4(特開平2-260872号公報)記載の発明との対比 5-1.刊行物4発明 原査定の拒絶の理由で引用された刊行物4には、図面とともに次のア?ウの事項が記載されている。 ア 「ところで、2次元ハフマン符号化においては、前記の直流(DC)成分データの差分値およびランレングス符号化された交流(AC)成分データのそれぞれについて、とり得るすべての値に対応し、ハフマン符号化により出力される符号化データをあらかじめルックアップテーブルとして記憶しておくことが必要である。 2次元ハフマン符号化においては、前記の直流(DC)成分データの差分値およびランレングス符号化された交流(AC)成分データの発生頻度を考慮し、発生類度の高いこれらの値については短い符号化データを得るように、また、発生頻度の低い値については長い符号化データを得るように、前記のルックアップテーブルに符号化用のデータが格納される。したがって、発生頻度の低い値については、使用されることがきわめて少ないにもかかわらず、長い符号化データが格納され、これによりルックアップテーブルの容量を大きくしなければならないという欠点があった。 目 的 本発明はこのような従来技術の欠点を解消し、ハフマン符号化に使用されるルックアップテーブルの容量を少なくすることのできる画像信号圧縮符号化装置、およびこの装置により符号化されたデータを復号する伸長復号装置を提供することを目的とする。」(第3頁右上欄第9行目?同頁左下欄第14行目) イ 「平均値算出部14は、ブロック化部12から送られたブロックごとのデータの平均値、すなわち各ブロックのデータの直流(DC)成分を求める。平均値算出部14の出力は差分値算出部16へ送られる。差分値算出部16は平均値算出部14から送られたブロックの平均値とそのブロックの1つ前のブロックの平均値との差分を求め、アドレス生成部18へ出力する。平均値算出部14から出力されるブロックの平均値は、例えば0?255の範囲のデータ(8ビット)であり、差分値算出部16から出力される差分値は-255?255の範囲のデータ(9ビット)となる、差分値算出部16から出力される差分値は、第5図に示すような確率で分布する。同図に示すように、値「0」が最も発生確率が高く、0から離れるにつれて発生確率が減少する。-128以下および128以上の値は、発生確率が著しく低い。このような分布となる理由は、隣接するブロック間で平均値(直流成分)が大きく変化することは少ないからである。 アドレス生成部18は、差分値算出部16から送られる上記差分値に基づき、ハフマン符号化のためのアドレスを生成する。すなわち、差分値算出部16から送られる差分値データ-255?255をアドレス1?511に変換する。アドレス生成部18からの出力は、アドレス識別回路26へ送られる。 アドレス識別回路26は、アドレス生成部18から送られるアドレスによって、差分値算出部16で算出された差分値が第6図の-255?-128または128?255の範囲(シフト領域)内であるか否かを判断する。アドレス識別回路26の出力はルックアップテーブル28へ送られる。ルックアップテーブル28は、ハフマン符号化部20およびシフトコード発生部24により構成されている。 アドレス識別回路26は、差分値算出部16で算出された差分値が前記シフト領域の範囲内である場合には、発生確率のきわめて低いデータであるから、シフトコード発生部24からシフトコードを発生させる。この場合には第3図に示すように、シフトコード発生部24から発生されたシフトコードと、差分値算出部16から送られる差分値データとからなるデータが、DC符号出力部22へ出力される。差分値算出部16から送られる差分値データは前記のように-255?255の範囲の9ビットのデータであるが、シフトコードが発生された場合の第3図の差分値データは、-255?-128または128?255の範囲であるから、8ビットで表すことができる。 このように、差分値が発生確率の少ないシフト領域内のデータである場合には、シフトコードおよび差分値データからなるデータがDC符号出力部22へ出力される。復号装置においては、シフトコードおよび差分値データから元の差分値を複合することができる。 一方、差分値算出部16で算出された差分値が上記のシフト領域以外のデータである場合、すなわち第5図の-127?127の範囲内のデータである場合には、アドレス識別回路26はこれを検出してルックアップテーブル28のハフマン符号化部20へ制御信号を出力する。ハフマン符号化部20は、アドレス生成部18からのデータをハフマン符号化する。 この場合には発生確率がある程度高いデータであるから、ハフマン符号化のためのルックアップテーブルはデータ量があまり多くならないため、ハフマン符号化部20で通常のハフマン符号化が行われ、DC符号出力部22へ出力される。」(第4頁左上欄第18行目?第5頁左上欄第3行目) ウ 「2次元直交変換部30において2次元直交変換されたブロックごとの画像データは第14図に示すように縦横に配列され、左上の部分に低次のデータが配列され、矢印の方向に向かうにつれて高次のデータとなる。2次元直交変換部30の出力は正規化部32に送られる。 正規化部32は、2次元直交変換部30において2次元直交変換された画像データ、すなわち変換係数に対して係数切り捨てを行った後、正規化を行う。係数切り捨ては、直交変換された変換係数を所定の閾値と比較し、閾値以下の部分を切り捨てるものである。正規化は、係数切り捨てを行われた変換係数を所定の量子化ステップ値、すなわち正規化係数αにより除算し、正規化係数αによる量子化を行うものである。 なお、この正規化は、係数切り捨てを行われた変換係数を1つの正規化係数の値αによって除算することに変えて、第16図に示すような重みテーブルTに格納されたデータと正規化係数aとを合わせて用いてもよい。すなわち第16図のテーブルTのデータに前記の正規化係数αを乗算して得た値α・Tにより、前記の係数切り捨てを行われた変換係数を除算することによって正規化を行うようにしてもよい。正規化前の変換係数をXとすると、正規化後の変換係数X’は、 X’=X/α・T で表される。 正規化された変換係数は、第14図に示す正規化前のデータと同様にブロック状に配列され、ジグザグスキャン部34において、第15図に示されるように低域成分から順にジグザグ状にスキャンされて出力される。 ジグザグスキャン部34の出力は、例えばn個のインバータにより構成される非零検出部(図示せず)によって、零および非零が検出され、ランレングスカウント部36に送られる。ランレングスカウント部36は、例えばインバータとカウンタによって構成され、零「0」のデータのランレングスをカウントする。カウントされた零のランレングスおよびその後に出現する非零のデータの振幅は、アドレス生成部38へ出力される。 本実施例では前記ブロックのサイズが8×8=64であるため、「0」のデータの連続は最大で64であるから、零のラン長は、第8A図に示すように6ビットのデータにより表される。非零の振幅は同図に示すように、3ビットのデータにより表される。ランレングスカウント部36の出力は、アドレス生成部38へ出力される。 アドレス生成部38は、上記の零のラン長を示す6ビットのデータと、非零の振幅を示す3ビットのデータとからなる9ビットのデータをアドレスとして生成する。すなわち、零のラン長の6ビットを上位アドレス、非零の振幅の3ビットを下位アドレスとする9ビットにより0?511の512個のアドレスを生成する。 この512個のアドレスの発生頻度が第11図に示されている。同図に示されるように、特定のアドレスの発生頻度が0となっている。これは、非零の振幅により構成される下位3ビットが0となることがないからである。 アドレス生成部38からの出力はアドレス識別回路42へ送られる。アドレス識別回路42はアドレス生成部38から送られた前記9ビットのアドレスが255を越えるか否かを検出する。アドレスが255を越えない場合、すなわち零のランレングスが32を越えない場合には、アドレス識別回路42はさらに、非零のデータに所定のオーバーフローがあるか否かを判断する。アドレス識別回路42からの出力はルックアップテーブル44へ送られる。ルックアップテーブル44はハフマン符号化部46およびシフトコード発生部40により構成されている。 非零のデータにオーバーフローがない場合には、アドレス識別回路42はルックアップテーブル44のハフマン符号化部46へ制御信号を出力し、ハフマン符号化部46において通常の2次元ハフマン符号化を行う。ハフマン符号化部46はアドレス生成部38から送られるアドレス、すなわち零のラン長および非零の振幅からなるデータを2次元ハフマン符号化する。この場合には、アドレス生成部38から送られる、零のラン長および非零の振幅からなるデータは発生確率がある程度高いものであり、ハフマン符号化のためのルックアップテーブルはデータ量があまり多くならないため、通常の2次元ハフマン符号化を行う。2次元ハフマン符号化されたデータはAC符号出力部48へ出力される。 一方、アドレスが255を越えた場合、すなわち零のランレングスが32を越えることにより第12図におけるシフト領域内のアドレスとなる場合には、アドレス識別回路42はシフトコード発生部40および2次元直交変換部30に制御信号を出力する。アドレスが255を越えない場合にも、前記の非零のデータにオーバーフローがある場合には、アドレス識別回路42はシフトコード発生部40および2次元直交変換部30に制御信号を出力する。 シフトコード発生部40は制御信号を受けると、2次元直交変換部30から送られる変換係数を用い、第8B図に示すような8ビットの入力に対応するLUTの出力であるシフトコードを発生する。シフトコードは同図に示されるように8ビットのデータであり、最上位のビットが「1」、次の4ビットが2次元直交変換部30から送られる変換係数の上位4ビット、その後の下位3ビットは「000」である。このようなシフトコードは、アドレス生成部38から発生されるアドレス、すなわち2次元ハフマン符号化されるべきデータが、所定の範囲から逸脱していることを示すコードである。 ハフマン符号化されたデータとシフトコードの符号長を第13図に示す。同図に示されるように、ハフマン符号化されたデータは、第11図の発生頻度の高いものに対して短い符号化データが割り当てられ、発生頻度の低いものに対して長い符号化データが割り当てられる。シフトコードは、8ビットの入力に対応するLUTの出力であり、下位3ビットが0であるから、第11図に示すようにもともと発生頻度の0であった部分に対応し、第13図に示されるように、ハフマン符号化されたデータ長の長い、もともと使用されていなかった部分に割り当てられる。 シフトコード発生部40からシフトコードが発生された時には、このシフトコードとともに、第9図に示すように、アドレス生成部38から発生された零のランレングス(6ビット)および2次元直交変換部30から送られる変換係数の下位12ビットがAC符号出力部48へ出力される。」(第5頁右上欄第4行目?第6頁右下欄第9行目) 以上の記載から、刊行物4には以下の発明(以下、「刊行物4発明」という。)が記載されている。 「ハフマン符号化に使用されるルックアップテーブルの容量を少なくすることのできる画像信号圧縮符号化装置であって、画像信号圧縮符号化装置は、 ブロックごとのデータの平均値、すなわち各ブロックのデータの直流(DC)成分に対しては、平均値算出部14から送られたブロックの平均値とそのブロックの1つ前のブロックの平均値との差分を差分値算出部16で求め、 アドレス識別回路26で前記算出された差分値が-255?-128または128?255の範囲(シフト領域)内であるか否かを判断し、 前記差分値が前記シフト領域の範囲内である場合には、発生確率のきわめて低いデータであるから、シフトコード発生部24からシフトコードを発生させ、 前記差分値が上記のシフト領域以外のデータである場合、すなわち-127?127の範囲内のデータである場合には、発生確率がある程度高いデータであり、ハフマン符号化のためのルックアップテーブルはデータ量があまり多くならないため、ハフマン符号化部20で通常のハフマン符号化を行い、 2次元直交変換された画像データ、すなわち変換係数に対しては、係数切り捨て、正規化を行った後、ジグザグスキャン部34において低域成分から順にジグザグ状にスキャンされて出力され、 ジグザグスキャン部34の出力は、零および非零を検出して零「0」のデータのランレングスをカウントした後、カウントされた零のランレングスおよびその後に出現する非零のデータの振幅は、アドレス生成部38へ出力され、 アドレス生成部38は、上記の零のラン長を示す6ビットのデータと、非零の振幅を示す3ビットのデータとからなる9ビットのデータをアドレスとして生成し、 アドレス識別回路42はアドレス生成部38から送られた前記9ビットのアドレスが255を越えるか否かを検出し、アドレスが255を越えない場合、すなわち零のランレングスが32を越えない場合には、さらに、非零のデータに所定のオーバーフローがあるか否かを判断し、 非零のデータにオーバーフローがない場合には、アドレス生成部38から送られる、零のラン長および非零の振幅からなるデータは発生確率がある程度高いものであり、ハフマン符号化のためのルックアップテーブルはデータ量があまり多くならないため、通常の2次元ハフマン符号化を行い、 アドレスが255を越えた場合、すなわち零のランレングスが32を越えることによりシフト領域内のアドレスとなる場合、又は非零のデータにオーバーフローがある場合には、アドレス識別回路42はシフトコード発生部40および2次元直交変換部30に制御信号を出力し、 シフトコード発生部40は制御信号を受けると、2次元直交変換部30から送られる変換係数を用い、アドレス生成部38から発生されるアドレス、すなわち2次元ハフマン符号化されるべきデータが、所定の範囲から逸脱していることを示すシフトコードを発生する、 ことを特徴とする画像信号圧縮符号化装置。」 5-2.対比 本願発明と刊行物4発明とを対比する。 刊行物4発明は、ブロックの平均値とそのブロックの1つ前のブロックの平均値との差分を符号化する際に、当該差分値が発生確率のきわめて低い-255?-128または128?255の範囲(シフト領域)内であるか否かを判断し、シフト領域の範囲内である場合にはシフトコードを発生させ、シフト領域以外の発生確率がある程度高いデータである場合は、通常のハフマン符号化を行うものである。 また、刊行物4発明は、変換係数の零のランレングス及びその後に出現する非零のデータの振幅を示すアドレスを符号化する際に、零のランレングスが32を越えず、かつ、非零のデータにオーバーフローがない場合には、零のラン長及び非零の振幅からなるデータの発生確率がある程度高いものであるため通常の2次元ハフマン符号化を行い、零のランレングスが32を越えたり非零のデータにオーバーフローがある場合にはシフトコードを発生させるものである。 してみると、刊行物4発明は、符号化対象のデータがブロックの平均値の「差分値」である場合には、差分値の発生確率に応じて「通常のハフマン符号化」か「シフトコード」の異なる「2つの符号化技術を並列に組み合わせて用い」て符号化を行い、符号化対象のデータが変換係数の零のランレングス及びその後に出現する非零のデータの振幅を示す「アドレス」の場合にも、アドレスの発生確率に応じて「通常の2次元ハフマン符号化」か「シフトコード」の異なる「2つの符号化技術を並列に組み合わせて用い」て符号化を行うものである。そして、刊行物4発明は、符号化対象のデータの種類又はその発生確率が互いに異なるシンボルに対して、「ハフマン符号化」、「2次元ハフマン符号化」、「シフトコード」と異なる3種類以上の符号化技術が用いられるのであるから、各符号化技術が入力データの「異なる部分を処理するように」動作する点で、本願発明と共通するといえる。 さらに、刊行物4発明で用いられる「ハフマン符号化」が本願発明の「エントロピー符号化」に相当するものであることは、圧縮符号化の技術分野における技術常識であり、刊行物4発明において「ハフマン符号化」を用いた処理が、本願発明の「エントロピーコーディング工程」に相当する。 したがって、本願発明と刊行物4発明は、以下の点で一致し、以下の相違点を有する。 [一致点] 少なくとも2つの符号化技術を並列に組み合わせて用い、各符号化技術が入力データの異なる部分を処理するようにする、入力データのエントロピーコーディング工程を具えるデータ圧縮方法。 [相違点] 本願発明が「入力データストリーム」に対して符号化を行うものであるのに対し、刊行物4発明は符号化対象となる入力データが「ストリーム」であることは明記されていない点。 5-3.相違点に対する判断 刊行物4発明では、入力される画像データが「ストリーム」であることは明らかにされていないが、一般的な画像符号化装置において、符号化対象となる画像データが時間の経過と共に連続的に入力され、当該入力画像データに対して順次圧縮符号化処理を行うことは、ごく普通に行われることである。 してみると、刊行物4発明における符号化技術を、連続的に入力されるデータ、すなわち「ストリーム」を対象に用いることにより、本願発明の相違点に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得ることである。 したがって、本願発明は、刊行物4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第3 まとめ 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、刊行物2発明から刊行物4発明のいずれに基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとした拒絶査定に誤りはない。 よって、原査定を取り消す、この出願の発明は特許をすべきものとする、との審決を求める審判請求の趣旨は認められないから、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-08-23 |
結審通知日 | 2011-08-30 |
審決日 | 2011-09-13 |
出願番号 | 特願2007-532693(P2007-532693) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 國分 直樹 |
特許庁審判長 |
板橋 通孝 |
特許庁審判官 |
吉村 博之 古川 哲也 |
発明の名称 | 多重技術エントロピー符号化システム及び方法 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 英 貢 |