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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1251302
審判番号 不服2011-14001  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-30 
確定日 2012-02-03 
事件の表示 特願2009-18230号「ケーブルコネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成21年4月23日出願公開、特開2009-87953号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年1月21日(優先権主張平成11年4月1日、平成11年7月5日)に出願した特願2000-13523号の一部を平成21年1月29日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(以下「本願発明」という。)
「信号コンタクトが組み込まれ、ラッチ爪部材が取り付けられたコネクタ本体部と、
上記コネクタ本体部の外側に設けられ、上記ラッチ爪部材と対向する部位に突起を有し、上記コネクタ本体部に対して相対的に所定方向に変位させた場合に上記突起が上記ラッチ爪部材のロックを解除させるロック解除部材と、
上記コネクタ本体部と上記ロック解除部材とを引き寄せる方向に付勢力を発生するバネと、を備えることを特徴とするケーブルコネクタ。」

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された特開平6-208864号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図1?19とともに以下の事項が記載されている。
(1)「プラグコネクタ20は、大略、図3に示す金属シールドハウジング21の上下面に図4に示す抜け止め手段としてのラッチばね22,22Aが組付けられ、更には、図5に示す操作部材23が組付けられた構造である。
図1(A),(B)に示すようにハウジング21の後端には、ケーブル24の端をクランプしているケーブルクランプ25が固定してある。これにより、プラグコネクタ20はケーブル24の端に設けてあり、プラグコネクタ20の後端からケーブル24が引き出されている。
ハウシング21及びケーブルクランプ25が、コネクタ本体20Aを構成する。
またハウジング21内には、オスコンタクト26が植設してあるブロック27が、切り起こし片21_(-1)に係止されて組込まれている。」((段落【0027】?【0030】)
(2)「ラッチばね22は、図4に示すように、先端22aに、U字状の爪22_(-1)及びこの両側にL字状の舌部22_(-2),22_(-3)を有する。
先端近傍には、山形部22_(-4)が形成してある。
22_(-5)は傾斜部であり、山形部22_(-4)の一部を構成する。
山形部22_(-4)には、操作部材23を組込むための切欠き22_(-6)が形成してある。
この山形部22_(-4)から基部側寄りに、順に、切り起こし片22_(-7)及び一対のストッパ22_(-8),22_(-9)が形成してある。
・・・(中略)・・・
このラッチばね22は、・・・(中略)・・・基部の舌部22_(-1)0 がスリット21_(-3)内に係合し、且つ爪22_(-1)及び舌部22_(-2),22_(-3)が開口21_(-4)内に嵌合した状態で、ハウジング21の上面に取り付けられている。
爪22_(-1)は、図1及び図7(A)に示すように、ハウジング21内に入り込んでいる。
・・・(中略)・・・
ラッチばね22は、大略、線22_(-10) で示す個所から先端22a側の部分が、矢印B方向に反るように弾性変形する。
ハウジング21の下面側にも、ラッチばね22Aが、上記のラッチばね22と同様に取り付けられている。」(段落【0031】?【0042】)
(3)「操作部材23は、図5に併せて示すように、U字状腕23_(-1)の各腕部23_(-2),23_(-3)の先端に、ラッチ解除カム23_(-4),23_(-5)を有し、・・・(中略)・・・U字状腕23_(-1)の元の部分に、T字状のプルタブ23_(-8)を有する構成である。
ラッチ解除カム23_(-4),23_(-5)は、略L字状をなし、上記ラッチばね22の山形部22_(-4)に対応する大きさを有する。
・・・(中略)・・・
この操作部材23は、図1及び図5に示すように、カム23_(-4)がラッチばね22の山形部22_(-4)の下側に位置し、腕部23_(-2)が切欠き22_(-6)より出て、ラッチばね22上を延在し、ストッパ22_(-8)と22_(-9)との間を延在し、同様に、カム23_(-5)がラッチばね22Aの山形部22A_(-4)の内側に位置し、腕部23_(-3)がラッチばね22Aに沿って延在して、コネクタ本体20Aを上下より挟むようにして取り付けてある。」(段落【0043】?【0046】)
(4)「引き抜き(図2,図7)
作業者は、プルタブ23_(-8)まで指先をのばし、指10,11でこれをつかんで、矢印X_(2)方向に引く。
(1)第1段階
コネクタ本体20Aとは独立に、操作部材23だけがX_(2 )方向に移動する。
カム23_(-4)は、山形部22_(-4)の内側でハウジング21の上面上を、図7(A)の状態から、同図(B)の状態を経て同図(C)の状態へ移動する。
このとき、カム23_(-4)が傾斜部22_(-5)に当たり、山形部22_(-4)へ上方への押上げ力Fを作用させる。
これにより、ラッチばね22が弾性的に撓んで、山形部22_(-4)が寸法G押し上げられる。寸法Gは約2mmである。
これにより、爪22_(-1)が凹部33より抜け出し、ラッチが解除される。
また、この状態で、突部23_(-6)がストッパ22_(-8),22_(-9)に当接する。
(2)第2段階
突部23_(-6)がストッパ22_(-8),22_(-9)に当接し、プルタブ23_(-7)を引く力が、ラッチばね22を介してコネクタ本体20Aに伝わる。
このとき、ロックは、既に解除された状態にあるため、プラグコネクタ20がジャックコネクタ31より引き抜かれる。
なお、プルタブ23_(-8)を離すと、ラッチばね22のばね力によって、カム23_(-4)が押されて、操作部材23は矢印X_(1)方向に移動して図7(A)に示す元の位置へ自動的に復帰する。」(段落【0055】?【0064】)
(5)図1及び7には、プラグコネクタ20やラッチバネ22の長手方向でそれぞれ反対方向に矢印X_(1) 及びX_(2 )が示されている。
上記(1)?(4)の記載事項並びに上記(5)の図示内容を総合すると、引用刊行物1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「オスコンタクト26が植設してあるブロック27が組み込まれ、その上面と下面に、U字状の爪22_(-1)を有するラッチばね22が取り付けられているハウジング21及びケーブル24の端をクランプしているケーブルクランプ25からなるコネクタ本体20Aと、
略L字状をなしてラッチばね22の山形部22_(-4)に対応する大きさを有しラッチばね22の山形部22_(-4)の下側に位置するラッチ解除カム23_(-4),23_(-5)を先端に有する、ラッチばね22上に延在する、U字状腕23_(-1)の各腕部23_(-2),23_(-3)によりコネクタ本体20Aを上下より挟むようにして取り付けてある操作部材23であって、
プルタブ23_(-8)を矢印X_(2)方向に引くと、コネクタ本体20Aとは独立に、操作部材23だけがX_(2)方向に移動し、ラッチ解除カム23_(-4),23_(-5)が山形部22_(-4)の傾斜部22_(-5)に当たり、爪22_(-1)が凹部33より抜け出し、ラッチが解除される操作部材23とを備え、
プルタブ23_(-8)を離すと、ラッチばね22のばね力によって、カム23_(-4)が押されて、操作部材23は矢印X_(2)方向と反対の矢印X_(1)方向に移動して元の位置へ自動的に復帰するプラグコネクタ20。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、
後者の「オスコンタクト26」は、その機能・構成からみて、前者の「信号コンタクト」に相当し、以下同様に、後者の「U字状の爪22_(-1)を有するラッチばね22」は前者の「ラッチ爪部材」」に、後者の「オスコンタクト26が植設してあるブロック27が組み込まれ、その上面と下面に、U字状の爪22_(-1)を有するラッチばね22が取り付けられているハウジング21及びケーブル24の端をクランプしているケーブルクランプ25からなるコネクタ本体20A」は前者の「信号コンタクトが組み込まれ、ラッチ爪部材が取り付けられたコネクタ本体部」に、後者の「操作部材23」は前者の「ロック解除部材」にそれぞれ相当する。
また、後者の「プラグコネクタ20」は「ケーブル24の端をクランプしているケーブルクランプ25からなるコネクタ本体20A」を備えるから、前者の「ケーブルコネクタ」に相当する。
さらに、後者の「操作部材23」の「U字状腕23_(-1)の各腕部23_(-2),23_(-3)」が「先端に有する」、「略L字状をなしてラッチばね22の山形部22_(-4)に対応する大きさを有しラッチばね22の山形部22_(-4)の下側に位置するラッチ解除カム23_(-4),23_(-5)」は、「ラッチ解除カム23_(-4),23_(-5)が山形部22_(-4)の傾斜部22_(-5)に当たり、爪22_(-1)が凹部33より抜け出し、ラッチが解除される」ものであるから、前者のロック解除部材が「ラッチ爪部材と対向する部位」に有する「突起」に相当する。
そして、後者の「操作部材23」は「ラッチばね22上に延在」し「、U字状腕23_(-1)の各腕部23_(-2),23_(-3)によりコネクタ本体20Aを上下より挟むようにして取り付けてある」から、前者の「ロック解除部材」が「コネクタ本体部の外側に設けられ」る態様に相当し、また、後者の操作部材23についての「プルタブ23_(-8)を矢印X_(2)方向に引くと、コネクタ本体20Aとは独立に、操作部材23だけがX_(2)方向に移動し、ラッチ解除カム23_(-4),23_(-5)が山形部22_(-4)の傾斜部22_(-5)に当たり、爪22_(-1)が凹部33より抜け出し、ラッチが解除される」ことは、前者のロック解除部材についての「コネクタ本体部に対して相対的に所定方向に変位させた場合に上記突起が上記ラッチ爪部材のロックを解除させる」ことに対応する。
その上、後者の「プルタブ23_(-8)を離すと、ラッチばね22のばね力によって、カム23_(-4)が押されて、操作部材23は矢印X_(2)方向と反対の矢印X_(1)方向に移動して元の位置へ自動的に復帰する」ことと、前者の「コネクタ本体部と上記ロック解除部材とを引き寄せる方向に付勢力を発生するバネと、を備える」こととは、「コネクタ本体部とロック解除部材とを引き寄せる方向に付勢力を発生するバネ力と、を備える」点で共通する。
そうすると、両者は、「信号コンタクトが組み込まれ、ラッチ爪部材が取り付けられたコネクタ本体部と、
上記コネクタ本体部の外側に設けられ、上記ラッチ爪部材と対向する部位に突起を有し、上記コネクタ本体部に対して相対的に所定方向に変位させた場合に上記突起が上記ラッチ爪部材のロックを解除させるロック解除部材と、
上記コネクタ本体部と上記ロック解除部材とを引き寄せる方向に付勢力を発生するバネ力と、を備えるケーブルコネクタ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:「コネクタ本体部とロック解除部材とを引き寄せる方向に付勢力を発生するバネ力」に関して、本願発明は「コネクタ本体部と上記ロック解除部材とを引き寄せる方向に付勢力を発生するバネ」により発生しているのに対して、引用発明は「ラッチばね22のばね力によって、カム23_(-4)が押されて、操作部材23は矢印X_(2)方向と反対の矢印X_(1)方向に移動」する点。

そこで、上記相違点について検討する。
引用発明は、ラッチばね22自身のばね力によって、操作部材23を移動するものであって、本願発明のバネを兼ねるものである。
当該ばね力をより強くして確実に操作部材23を移動するようにバネを設けたり、或いはU字状の爪22_(-1)がラッチするための機能・材質とばね力を出すための機能・材質とをそれぞれ最適化するべく別途の部材とすることは、当業者が容易になし得たことといえる。
さらに付言すると、ばね力でより容易に移動出来るように、直接、移動方向に伸縮するばねを設けることも当業者にとって格別困難であるとはいえない。
したがって、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことといえ、そのことによる格別の効果もない。
なお、仮に、突起の方向やラッチ爪部材の台形部・フック部の形状・方向等が、実施例のような方向・形状のものであるとしても、ケーブルコネクタの端部が相手側コネクタの内側に入り、ラッチ爪が内側から外側の相手側コネクタに係止するものは、例えば実願昭63-50105号(実開平1-115182号)のマイクロフイルムやXLRタイプコネクター等で従来より周知のものにすぎず、このようなタイプとするとき、引用発明の爪22_(-1)は外向きで、ラッチばね22の山形部22_(-4)は内側に凸の向きとなり、これを動かすラッチ解除カム23_(-4),23_(-5)も内側に突出するものとなるので、当業者が容易になし得たものである。

4.むすび
以上のように、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そうすると、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-16 
結審通知日 2011-11-22 
審決日 2011-12-05 
出願番号 特願2009-18230(P2009-18230)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 片岡 弘之  
特許庁審判長 平上 悦司
特許庁審判官 青木 良憲
長浜 義憲
発明の名称 ケーブルコネクタ  
代理人 伊東 忠彦  

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