ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) IPCコード:なし |
---|---|
管理番号 | 1251400 |
審判番号 | 不服2010-3207 |
総通号数 | 147 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-02-15 |
確定日 | 2012-01-31 |
事件の表示 | 特願2007- 23532「湾曲したゴルフパター」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月19日出願公開、特開2007-181708〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成19年1月4日(パリ条約による優先権主張 平成18年1月4日 アメリカ合衆国)の出願であって、平成21年2月16日付け拒絶理由通知に対して、同年8月24日に手続補正がなされたが、同年10月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年2月15日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。 その後、当審において、平成23年2月18日付けで拒絶の理由(最初)を通知したところ、同年8月19日に手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成23年8月19日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 パタータイプのゴルフクラブヘッドであって、 ヒール及びトウを備えたフェース部材と、 前記フェース部材に結合され、前記フェース部材から後方に延びる本体部材とを有し、 前記本体部材は、第1の高さを有するトウと、第2の高さを有するヒールとを有し、前記本体部材の上面は、前記第1の高さが前記第2の高さよりも大きいように角度がつけられ、 前記フェース部材の上面は、前記トウが前記ヒールよりも大きな高さを有するように、角度がつけられ、 前記本体部材の頂面のトウからヒールの角度は、前記フェース部材の頂面のトウからヒールと同じ角度がつけられ、 前記本体部材を少なくとも部分的に貫通して重量を減少させる穴が形成されている、 ゴルフクラブヘッド。」(下線は審決で付した。以下同じ) 第3 引用文献に記載の事項 1 当審拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である実願昭56-122440号(実開昭57-51572号)のマイクロフィルム(以下「引用文献1」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。 (1)「2.実用新案登録請求の範囲 左右に延びる伸張部材の打撃面に対して直角に長手方向の端面を固定したパター本体の左右側縁が本体の長手方向の上面中心部を通る照準線と平行に成りこの照準線上にシヤフトの下端を取付けて成ることを特徴とするゴルフパター。」(第1頁第4ないし9行) (2)「本考案は、グリーン上にのつたゴルフボールをパターするのに使用するゴルフクラブヘツド、すなわちゴルフパターに関するものである。」 (第1頁第11ないし13行) (3)「この伸張部は、アルミニウムまたは衝撃抵抗プラスチツクシート材のような軽量材で形成するとよい。また伸張部は、透明な材料で形成してパターを使用するプレーヤーに邪魔になつたり、気を散らさせたりすることのないようにするとよい。」(第4頁第5ないし10行) (4)「本体並びに伸張部材からなるパターヘツドは、適当な同一の材料で構成してもよいし、また異なつた材料で構成してもよい。好ましくは、本体(6)は金属で構成し、伸張部材(9)は衝撃抵抗という所望の物理特性を有した熱可塑材で構成して、使用中損傷の生じないようにする。」(第5頁第15ないし20行) (5)「次に第3図に示すパターは、第1図および第2図を参照しながら説明したものと基本的には同じ構造を有するが、本体(6a)は断面長方形である点が異なり、伸張部材(9a)が取付けられる端面とは反対側の該本体の部分は、下側縁(15)から上方へとテーパ状になつていて傾斜面(16)を形成している。もし必要ならば、本体のこの部分には傾斜面(16)から内方へと延びる凹部(図示せず)を設けてもよい。傾斜面を設けることは、これに凹部がついていてもまたはついていなくても、重さの中心を打撃面により近づけるようにパターのバランスを変えることになる。 このヘツドの本体(6a)には、打撃面(8a)と直角な側縁(12a)が左右に形成してあり、また本体(6a)の長手方向の上面中心部には照準線(13a)が設けられており、プレーヤーはこの照準線(13)と左右側縁(12a)を視覚において打撃面をボールと正確に整列させ、所望のライン上にボールが転がるようにするのである。(7)はシヤフトで、その下端は戦記照準線(13)上に取付く。 第3図に示すパターはまた対称的に配設された伸張部材(9a)を有し、該伸張部材は本体(6a)に螺着(10a)している。」(第6頁第12行ないし第7頁第14行) (6)第3図より、以下のことが読み取れる。 ア 断面長方形の本体(6a)に打撃面(8a)と直角に形成された2つの側縁(12a)のうち左側の側縁(図面上側の角部の位置。以下「左側角部」という。)の高さと、同じく2つの側縁(12a)のうち右側の側縁(図面下側の角部の位置。以下「右側角部」という。)の高さが略同じであること。 イ 伸張部材(9a)の左側上面端部の高さと右側上面端部の高さが略同じであること。 ウ 本体(6a)の左側角部と右側角部とを結ぶ線の高さ(以下「本体の頂面の高さ」という。)と伸張部材(9a)の左側上面端部と右側上面端部とを結ぶ線の高さ(以下「伸張部材の頂面の高さ」という。)が略同じであること。 (7)上記記載から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「左右に延びる衝撃抵抗プラスチツクシート材で形成された伸張部材と、 伸張部材の打撃面に対して直角に長手方向の端面を固定した金属で構成された断面長方形の本体とからなり、 本体の頂面の高さと伸張部材の頂面の高さが略同じであり、 伸張部材が取付けられる端面とは反対側の本体の部分には傾斜面が形成され、かつこの傾斜面に内方へと延びる凹部を設けた、 グリーン上にのつたゴルフボールをパターするのに使用するゴルフクラブヘツド。」 2 当審拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2005-66249号公報(以下「引用文献2」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。 (1)「【請求項1】 低比重金属よりなり、前面がフェース面となっている前半体と、 高比重金属よりなり、該前半体の後側に取り付けられた後半体と、 該前半体の内部において該フェース面に沿って配置されたゴム又は合成樹脂よりなるインサートと、 を備えてなるパターヘッド。 【請求項2】 請求項1において、該前半体の背面に凹所が設けられ、該凹所内に前記インサートが配置されており、且つ該インサートは、該後半体によって押圧されていることを特徴とするパターヘッド。 【請求項3】 請求項2において、 該前半体はトウ・ヒール方向に延在しており、 該後半体は、該前半体のトウ側からヒール側まで連続し、前半体の後方に張り出した形状の外周棒状体と、 該前半体のトウ・ヒール方向の中央から後方に張り出し、後端が該外周棒状体に連なっている中央棒状体とが一体とされたものであり、 該中央棒状体の先端に、前記凹所に嵌合する大きさの蓋体が設けられており、 該蓋体が前記インサートを押圧するように該後半体と前半体とが連結されていることを特徴とするパターヘッド。 【請求項4】 請求項3において、前記凹所は、 前半体の背面から凹陥する比較的大きい入口部と、 該入口部の奥側に設けられた比較的小さい奥部と、 該入口部と奥部との間に形成された、前記フェース面と略平行な段差面とからなり、 前記インサートは該奥部内に配置され、 前記蓋体が該段差面に当接していることを特徴とするパターヘッド。 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれか1項において、前記前半体の比重は2?5であり、前記後半体の比重は7?15であることを特徴とするパターヘッド。 【請求項6】 請求項1ないし5のいずれか1項において、前記インサートは熱可塑性エラストマーよりなることを特徴とするパターヘッド。 」 (2)「【0006】 かかる本発明のパターヘッドにあっては、ボールをヒットしたときの衝撃が前半体内部のゴム又は合成樹脂製のインサートによって吸収される。 【0007】 このインサートは、フェース面に沿って配置されているので、衝撃を吸収し易い。 【0008】 本発明では、前半体の背面に凹所が設けられ、該凹所内に前記インサートが配置されており、且つ該インサートは、該後半体によって押圧されていることが好ましい。このように構成した場合、インサートは前半体に強く押し付けられて密着するため、前半体に生じた衝撃が確実にインサートに伝播し、十分に吸収されるようになる。 【0009】 本発明では、前半体はトウ・ヒール方向に延在しており、該後半体は、該前半体のトウ側からヒール側まで連続し、前半体の後方に張り出した形状の外周棒状体と、該前半体のトウ・ヒール方向の中央から後方に張り出し、後端が該外周棒状体に連なっている中央棒状体とが一体とされたものであり、該中央棒状体の先端に、前記凹所に嵌合する大きさの蓋体が設けられており、該蓋体が前記インサートを押圧するように該後半体と前半体とが連結されている構成としてもよい。この構成によると、パターヘッドの重心回りの慣性モーメントが大きく、パターヘッドのスイートエリアが広いものとなる。また、蓋体によりインサートが十分に前半体に押し付けられる。 【0010】 この場合、凹所は、前半体の背面から凹陥する比較的大きい入口部と、該入口部の奥側に設けられた比較的小さい奥部と、該入口部と奥部との間に形成された、前記フェース面と略平行な段差面とからなり、前記インサートは該奥部内に配置され、前記蓋体が該段差面に当接していることが好ましい。このように蓋体が奥部に配置され、これを押え付ける蓋体が段差面に当接することにより、インサートが所定の比率で押し縮められるようになる。これにより、設計通りの衝撃吸収特性が確実に発現するようになる。」 (3)「【0011】 以下、本発明の実施の形態について図1?4を参照して詳細に説明する。図1は実施の形態に係るパターヘッドの分解斜視図、図2はこのパターヘッドの斜視図、図3はこのパターヘッドの底面図、図4は図3のIV-IV線断面図である。 【0012】 このパターヘッド1は、低比重金属材料よりなる前半体10、高比重金属材料よりなる後半体20及びゴム又は合成樹脂よるなるインサート30により構成されている。 【0013】 前半体10は、そのトウ(図2の左端)とヒール(図2の右端)とを結ぶトウ・ヒール方向に延在する略々直方体形状のものである。なお、この前半体10のソール面10sは、トウ・ヒール方向の中央側が下方に向って若干膨出する円弧形状となっている。前半体10の前面が、ボールをヒットするためのフェース面10aである。 【0014】 この前半体10の背面にあっては、そのトウ・ヒール方向の中間付近に凹所11が設けられている。この凹所11は、入口部11aと、この入口部11aの奥側(フェース面10a側)からフェース面10a側に向って凹陥する奥部11bと、該入口部11aと奥部11bとの境界部に形成された段差面11cとからなる。入口部11aは、トウ・ヒール方向に延在し、前半体10の背面と底面とに向って開放する切欠状である。奥部11bは入口部11aのフェース面10a側の面から凹陥する溝状である。この奥部11bは、トウ・ヒール方向に延在する。奥部11bは入口部11aよりも若干小さく、奥部11bの全周囲にわたって段差面11cが存在する。 【0015】 前半体10のトウ・ヒール方向の両端側の背面にそれぞれソール面10sにも向って開放する切欠部12が設けられている。この切欠部12のフェース面10a側とフェース面10aとを連通するようにボルト14の挿通孔13が穿設されている。この挿通孔13は、後述の挿通孔23aと同様にフェース面10a側が大径部となり、背面側が小径部であり、ボルト14の頭部が大径部内に配置される。 【0016】 前半体10の上面のうちヒール側にシャフト差込穴15が穿設されている。 【0017】 後半体20は、半円弧形状の外周棒状体21と、この外周棒状体21の延在方向の中央部に連なって一体となっている中央棒状体22と、この中央棒状体22の先端面にボルト24によって取り付けられた蓋体23とを有する。この中央棒状体22の後部の底面は、後半体20の最後尾に向って上り勾配となる斜面20a(図4)となっている。 【0018】 外周棒状体21の両端は、前記切欠部12に嵌合する形状及び大きさであり、この両端面には前記挿通孔13と同軸状となる雌螺子穴(図示略)が設けられている。外周棒状体21の両端を切欠部12に嵌合させ、ボルト14を該雌螺子穴に螺じ込むことにより前半体10と後半体20とが連結される。 【0019】 蓋体23は、入口部11aに嵌合する大きさである。図4の通り、蓋体23に設けられた挿通孔23aを通して、中央棒状体22の先端面に設けられた雌螺子穴22aにボルト24を螺じ込むことにより該蓋体23が中央棒状体22に固着されている。 【0020】 インサート30は、前記奥部11bと略等しい縦横寸法を有するが、厚み(ヘッド前後方向の寸法)は奥部11bの深さよりも若干(例えば0.5?2mm程度)大きいものとなっている。 【0021】 パターヘッドを組み立てるには、インサート30を奥部11bに挿入した後、蓋体23付きの後半体20を前半体10と組み合わせ、ボルト14を螺じ込む。これにより、外周棒状体21の両端面21aが切欠部12の奥面に当接すると共に、蓋体23がインサート30を押圧しつつ段差面11cに当接する。インサート30は奥部11bの内周全体及び蓋体23の全面に隙間なく密着する。 【0022】 このパターヘッド1にシャフトを取り付けることによりパターが完成する。 【0023】 このパターを用いてボールをヒットした際に生じる衝撃がインサート30によって吸収されるため、打感が柔らかいものとなる。このインサート30は前半体10及び蓋体23に隙間なく密着し、また、インサート30とフェース面10aとの距離が小さい(好ましくは1?5mm特に2?4mm程度)ものとなっているので、衝撃が十分に吸収される。 【0024】 なお、この実施の形態では、高比重の後半体20が円弧状となっているので、パターヘッドのスイートエリアが広く、芯を外したときの衝撃が少ない。 【0025】 本発明を特に限定するものではないが、前半体10としてはアルミニウム、マグネシウム、チタン、あるいはそれらの合金などよりなる比重2?5程度のものが好適である。 【0026】 後半体20としては、ステンレス、銅合金、タングステン、タングステン合金(例えばW-Cu合金、W-Ni合金)などよりなる比重7?14程度のものが好適である。」 (4)図面より、以下の事項が読み取れる。 ア 図1より、インサート30及び蓋体23の断面形状が、いずれも「略矩形」であること。 イ 図1及び図4より、蓋体23の上面は、トウとヒールの高さが略同じであること。 ウ 図2及び図4より、前半体10の上面は、トウとヒールの高さが略同じであること。 (5)上記記載から、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「前面がフェース面となっているトウ・ヒール方向に延在する略々直方体形状の前半体と、 前半体の後側に取り付けられた後半体と、 前半体の内部においてフェース面に沿って配置された断面形状が略矩形のインサートと、を備えてなるパターヘッドであって、 前半体は、 背面に凹所が設けられ、凹所内にインサートが配置されており、上面はトウとヒールの高さが略同じであり、 後半体は、 前半体のトウ側からヒール側まで連続し、前半体の後方に張り出した形状の外周棒状体と、前半体のトウ・ヒール方向の中央から後方に張り出し、後端が外周棒状体に連なっている中央棒状体とが一体とされたものであり、中央棒状体の先端に、凹所に嵌合する大きさの断面形状が略矩形の蓋体が設けられており、 蓋体の上面はトウとヒールの高さが略同じであり、 蓋体がインサートを押圧するように後半体と前半体とが連結され、 インサートは前半体に強く押し付けられて密着するため、前半体に生じた衝撃が確実にインサートに伝播し、十分に吸収され、打感が柔らかいものとなる、パターヘッド。」 第4 本願発明と引用発明1との対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 (1)引用発明1の「グリーン上にのつたゴルフボールをパターするのに使用するゴルフクラブヘツド」は本願発明の「パタータイプのゴルフクラブヘッド」に相当し、同様に、 「『左右に延びる』『伸張部材』」は「フェース部材」に、 「固定した」は「結合され」に、 「本体」は「本体部材」に、それぞれ、相当する。 (2)引用発明1の「本体」は、伸張部材の打撃面に対して直角に長手方向の端面を固定されている。 してみれば、引用発明1の「本体」と本願発明の「本体部材」とは、「フェース部材に結合され、前記フェース部材から後方に延びる本体部材」という点で一致する。 (3)引用発明1の「本体の頂面の高さと伸張部材の頂面の高さが略同じであり」と、 本願発明の「前記本体部材は、第1の高さを有するトウと、第2の高さを有するヒールとを有し、前記本体部材の上面は、前記第1の高さが前記第2の高さよりも大きいように角度がつけられ、 記フェース部材の上面は、前記トウが前記ヒールよりも大きな高さを有するように、角度がつけられ、 前記本体部材の頂面のトウからヒールの角度は、前記フェース部材の頂面のトウからヒールと同じ角度がつけられ」とは、 「前記本体部材及びフェース部材は、所定高さを有するトウと、所定高さを有するヒールとを有し」という点で共通する。 (4)引用発明1の「『傾斜面』に設けられた『凹部』」が本体の重量を減少させることは、当業者にとって明らかである。 してみれば、引用発明1の「伸張部材が取付けられる端面とは反対側の本体の部分には傾斜面が形成され、かつこの傾斜面に内方へと延びる凹部を設けた」と、 本願発明の「前記本体部材を少なくとも部分的に貫通して重量を減少させる穴が形成されている」とは、 「前記本体部材に重量を減少させる箇所が形成されている」という点で共通する。 (5)してみると、本願発明と引用発明1とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「パタータイプのゴルフクラブヘッドであって、 ヒール及びトウを備えたフェース部材と、 前記フェース部材に結合され、前記フェース部材から後方に延びる本体部材とを有し、 前記本体部材及びフェース部材は、所定高さを有するトウと、所定高さを有するヒールとを有し、 前記本体部材に重量を減少させる箇所が形成されている、ゴルフクラブヘッド。」 (6)一方で、本願発明と引用発明1とは、以下の点で相違する。 <相違点1> 本体部材とフェース部材の高さ及び上面(頂面)に関し 本願発明が「前記本体部材は、第1の高さを有するトウと、第2の高さを有するヒールとを有し、前記本体部材の上面は、前記第1の高さが前記第2の高さよりも大きいように角度がつけられ、 記フェース部材の上面は、前記トウが前記ヒールよりも大きな高さを有するように、角度がつけられ、 前記本体部材の頂面のトウからヒールの角度は、前記フェース部材の頂面のトウからヒールと同じ角度がつけられ」と特定されるものであるのに対して、引用発明1ではそのようなものではない点。 <相違点2> 重量を減少させる箇所の形状に関し 本願発明が「前記本体部材を少なくとも部分的に貫通して重量を減少させる穴」と特定されるものであるのに対して、引用発明1ではそのような形状ではない点。 2 判断 (1)上記<相違点1>について検討する。 ア 「フェース部材の上面をトウがヒールよりも大きな高さを有するように角度をつけたパタータイプのゴルフクラブヘッド」は、本願の優先日前に周知である(例えば、特開2002-85605号公報の図3、実願昭58-63382号(実開昭59-169867号)のマイクロフィルムの第6図、実願昭57-83882号(実開昭58-185253号)のマイクロフィルムの図面、米国特許第6358162号明細書の第2図、米国特許第5273282号明細書の第1図を参照。以下「周知技術1」という。)。 イ してみれば、引用発明1の「フェース部材(伸張部材)」の上面をトウがヒールよりも大きな高さを有するように角度をつけることは、当業者が上記周知技術1に基づいて、容易になし得たことである。 ウ 上記イのようにした引用発明1においては、「『衝撃抵抗プラスチツクシート材で形成された』『フェース部材(伸張部材)』」のトウ側の打撃面の面積が上方に向かって大きくなることから、「本体部材(本体)」の断面積もそれに合わせて上方に向かって大きくなるように、「本体部材(本体)」の上面をトウがヒールよりも大きな高さを有するように同じ角度をつけることは、当業者がプラスチツクシート材の強度等を考慮して適宜なし得た設計事項である。 エ 上記イ及びウのようにした引用発明1の「本体部材とフェース部材の高さ及び上面(頂面)」は、 「前記本体部材は、第1の高さを有するトウと、第2の高さを有するヒールとを有し、前記本体部材の上面は、前記第1の高さが前記第2の高さよりも大きいように角度がつけられ、 記フェース部材の上面は、前記トウが前記ヒールよりも大きな高さを有するように、角度がつけられ、 前記本体部材の頂面のトウからヒールの角度は、前記フェース部材の頂面のトウからヒールと同じ角度がつけられ」たものとなる。 オ 以上のことから、引用発明1において、上記<相違点1>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術1に基づいて容易になし得たことである。 (2)上記<相違点2>について検討する。 ア 「本体部材を貫通して重量を減少させる穴が形成されたパタータイプのゴルフクラブヘッド」は、本願の優先日前に周知である(例えば、特開2005-46442号公報の【0030】及び図8、特開2003-210629号公報の【0021】、図1及び図8、実願昭54-153995号(実開昭56-73863号)のマイクロフィルムの第2図、米国特許第5080365号明細書の第7図を参照。以下「周知技術2」という。)。 イ してみれば、引用発明1の「重量を減少させる箇所(凹部)」の形状を、本体部材を貫通する穴とすることは、当業者が上記周知技術2に基づいて容易になし得たことである。 ウ 上記イのようにした引用発明1の「重量を減少させる箇所の形状」は、「前記本体部材を少なくとも部分的に貫通して重量を減少させる穴」となる。 エ 以上のことから、引用発明1において、上記<相違点2>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術2に基づいて容易になし得たことである。 (3)また、本願発明の奏する効果も、当業者が引用発明1の奏する効果、周知技術1及び周知技術2から予測し得る範囲内のものである。 第5 本願発明と引用発明2との対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明2とを対比する。 (1)引用発明2の「パターヘッド」は本願発明の「パタータイプのゴルフクラブヘッド」に相当し、同様に、 「『トウ・ヒール方向に延在する』『前半体』」は「フェース部材」に、 「取り付けられた」は「結合され」に、 「後半体」は「本体部材」に、それぞれ、相当する。 (2)上記(1)より、引用発明2と本願発明とは「パタータイプのゴルフクラブヘッドであって、 ヒール及びトウを備えたフェース部材と、 前記フェース部材に結合され、前記フェース部材から後方に延びる本体部材とを有し」という点で一致する。 (3)引用発明2の「前半体は、 背面に凹所が設けられ、凹所内にインサートが配置されており、上面はトウとヒールの高さが略同じであり、 後半体は、 前半体のトウ側からヒール側まで連続し、前半体の後方に張り出した形状の外周棒状体と、前半体のトウ・ヒール方向の中央から後方に張り出し、後端が外周棒状体に連なっている中央棒状体とが一体とされたものであり、中央棒状体の先端に、凹所に嵌合する大きさの断面形状が略矩形の蓋体が設けられており、 蓋体の上面はトウとヒールの高さが略同じであり」と、 本願発明の「前記本体部材は、第1の高さを有するトウと、第2の高さを有するヒールとを有し、前記本体部材の上面は、前記第1の高さが前記第2の高さよりも大きいように角度がつけられ、 記フェース部材の上面は、前記トウが前記ヒールよりも大きな高さを有するように、角度がつけられ、 前記本体部材の頂面のトウからヒールの角度は、前記フェース部材の頂面のトウからヒールと同じ角度がつけられ」とは、 「前記本体部材及びフェース部材は、所定高さを有するトウと、所定高さを有するヒールとを有する」という点で共通する。 (4)してみると、本願発明と引用発明2とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「パタータイプのゴルフクラブヘッドであって、 ヒール及びトウを備えたフェース部材と、 前記フェース部材に結合され、前記フェース部材から後方に延びる本体部材とを有し、 前記本体部材及びフェース部材は、所定高さを有するトウと、所定高さを有するヒールとを有する、 ゴルフクラブヘッド。」 (5)一方で、本願発明と引用発明2とは、以下の点で相違する。 <相違点3> 本体部材とフェース部材の高さ及び上面(頂面)に関し 本願発明が「前記本体部材は、第1の高さを有するトウと、第2の高さを有するヒールとを有し、前記本体部材の上面は、前記第1の高さが前記第2の高さよりも大きいように角度がつけられ、 記フェース部材の上面は、前記トウが前記ヒールよりも大きな高さを有するように、角度がつけられ、 前記本体部材の頂面のトウからヒールの角度は、前記フェース部材の頂面のトウからヒールと同じ角度がつけられ」と特定されるものであるのに対して、引用発明2ではそのようなものではない点。 <相違点4> 本願発明が「前記本体部材を少なくとも部分的に貫通して重量を減少させる穴が形成されている」と特定されるものであるのに対して、引用発明2はそのような穴が形成されていない点。 2 判断 (1)上記<相違点3>について検討する。 ア 「フェース部材の上面をトウがヒールよりも大きな高さを有するように角度をつけたパタータイプのゴルフクラブヘッド」は、本願の優先日前に周知である(上記周知技術1を参照。)。 イ してみれば、引用発明2の「フェース部材(前半体)」の上面をトウがヒールよりも大きな高さを有するように角度をつけることは、当業者が上記周知技術1に基づいて、容易になし得たことである。 ウ 上記イのようにした引用発明2においては、「フェース部材(前半体)」のトウ側のフェース面の面積が上方に向かって大きくなることから、「フェース部材(前半体)」に生じた衝撃が確実にインサートに伝播し、十分に吸収されるように、インサート及び蓋体の面積も上方に向かって大きくなるように、インサート及び蓋体の上面をトウがヒールよりも大きな高さを有するように同じ角度をつけることは、当業者が適宜なし得た設計事項である。 エ ところで、上記ウのようにした引用発明2の「蓋体」は「本体部材(後半体)」を構成する部材の1つであることから、本体部材(後半体)は「第1の高さを有するトウと第2の高さを有するヒールとを有し、上面の第1の高さが第2の高さよりも大きいように角度がつけられた上面(蓋)」を備えることになる。 したがって、上記ウのようにした引用発明2の「本体部材とフェース部材の高さ及び上面(頂面)」は、 「前記本体部材は、第1の高さを有するトウと、第2の高さを有するヒールとを有し、前記本体部材の上面は、前記第1の高さが前記第2の高さよりも大きいように角度がつけられ、 記フェース部材の上面は、前記トウが前記ヒールよりも大きな高さを有するように、角度がつけられ、 前記本体部材の頂面のトウからヒールの角度は、前記フェース部材の頂面のトウからヒールと同じ角度がつけられ」たものとなる。 オ 以上のことから、引用発明2において、上記<相違点3>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術1に基づいて容易になし得たことである。 (2)上記<相違点4>について検討する。 ア 「本体部材を貫通して重量を減少させる穴が形成されたパタータイプのゴルフクラブヘッド」は、本願の優先日前に周知である(上記周知技術2を参照。)。 イ してみれば、重量を減少させるべく引用発明2の「本体部材(後半体)」に貫通する穴を設けることは、当業者が上記周知技術2に基づいて容易になし得たことである。 ウ 上記イのようにした引用発明2の「本体部材(後半体)」は、「前記本体部材を少なくとも部分的に貫通して重量を減少させる穴が形成されている」ことになる。 エ 以上のことから、引用発明2において、上記<相違点4>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術2に基づいて容易になし得たことである。 (3)また、本願発明の奏する効果も、当業者が引用発明2の奏する効果、周知技術1及び周知技術2から予測し得る範囲内のものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、あるいは引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-08-30 |
結審通知日 | 2011-09-05 |
審決日 | 2011-09-16 |
出願番号 | 特願2007-23532(P2007-23532) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
()
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 柴田 和雄 |
特許庁審判長 |
長島 和子 |
特許庁審判官 |
星野 浩一 桐畑 幸▲廣▼ |
発明の名称 | 湾曲したゴルフパター |
代理人 | 弟子丸 健 |
代理人 | 井野 砂里 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 大塚 文昭 |