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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 C07C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C07C
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C07C
管理番号 1251401
審判番号 不服2010-11778  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-02 
確定日 2012-01-31 
事件の表示 特願2000-504098「液晶プロペンまたはプロペニルニトリル誘導体」拒絶査定不服審判事件〔平成11年2月4日国際公開、WO99/05097、平成13年8月7日国内公表、特表2001-510822〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1998年7月14日〔パリ条約による優先権主張外国庁受理 1997年7月24日ドイツ(DE)及び同年9月29日ドイツ(DE)〕を国際出願日とする出願であって、平成22年1月26日付けで拒絶査定がなされ、同年6月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、同年10月18日付けの審尋に対し、平成23年4月26日付けで回答書の提出がなされ、さらに、同年6月23日付けの審尋に対し、同年7月28日付けで回答書の提出がなされたものである。

2.平成22年6月2日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成22年6月2日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成22年6月2日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の請求項1に記載された
「式Iで表わされるアセチレン誘導体:
【化1】

式中、
Rは、炭素原子1?15個を有するアルキル基またはアルケニル基であり、この基は未置換であるか、又は置換基として1個のCN若しくはCF_(3)を有するか、又は置換基として少なくとも1個のハロゲンを有しており、これらの基中に存在する1個または2個以上の-CH_(2)-基は、それぞれ相互に独立して、O原子が相互に直接に結合しないものとして、-O-、-S-、
【化2】

-CO-、-CO-O-、-O-CO-または-O-CO-O-により置き換えられていてもよく、
A^(1)およびA^(2)はそれぞれ相互に独立して、
(a)トランス-1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH_(2)-基または隣接していない2個以上の-CH_(2)-基は、-O-および/または-S-により置き換えられていてもよい)、
(b)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個または2個のCH基は、Nにより置き換えられていてもよい)、
(c)トランス-1,4-シクロヘキセニレン基、又は
(d)1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン、ピペリジン-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイルおよび1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイルからなる群からの基、
であり、上記基(a)?(c)は、フッ素またはCH3により単置換または二置換されることができ、
Z^(1)、Z^(2)およびZ^(3)は、それぞれ相互に独立して、-CO-O-、-O-CO-、-CH_(2)O-、-OCH_(2)-、-CH_(2)CH_(2)-、-CH=CH-、-C≡C-、-(CH_(2))_(4)-、-OCF_(2)-、-CF_(2)O-、-CH=CH-CH_(2)CH_(2)-または単結合であり、
mは、0、1または2であり、
nは、0または1であり、
L^(1)、L^(2)およびL^(3)は、それぞれ相互に独立して、HまたはFであり、
Yは、-C≡C-、-CH=CH-、-CF=CH-、-CH=CF-または-CF=CF-であり、
ただし、
Y=-C≡C-である場合、
c)Rは、炭素原子2?12個を有するアルケニル基またはアルケニルオキシ基であるか、
d)A^(2)は、ピリミジン基、若しくは置換基として1個または2個のフッ素またはCH_(3)を有するトランス-1,4-シクロヘキシレン基であるか、
e)A^(1)及び/又はA^(2)はフッ素またはCH_(3)により単置換または二置換され、かつ基Z^(1)、Z^(2)またはZ^(3)の中の1個は、-CO-O-であるか、
f)n=1かつL^(3)=Fであるか、
g)基Z^(1)、Z^(2)またはZ^(3)の中の少なくとも1個は、-CF_(2)O-または-OCF_(2)-であるか、
h)A^(2)は3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであるか、または
i)A^(2)は1つまたは2つ以上のCH_(2)基が-O-で置換されている1,4-シクロヘキシレンであり
Y=-CH=CH-である場合、
a)n=1であり、かつZ^(3)は単結合であるか、
b)L^(1)および/またはL^(2)はフッ素であるか、
c)Rは、炭素原子2?12個を有するアルケニル基またはアルケニルオキシ基であるか、
d)A^(2)は、ピリミジン基、若しくは置換基として1個または2個のフッ素またはCH_(3)を有するトランス-1,4-シクロヘキシレン基であるか、又は
e)基Z^(1)、Z^(2)またはZ^(3)の中の1個は、-CO-O-である。」を、

「式Iで表わされるアセチレン誘導体:
【化1】

式中、
Rは、炭素原子1?15個を有するアルキル基またはアルケニル基であり、この基は未置換であるか、又は置換基として1個のCN若しくはCF_(3)を有するか、又は置換基として少なくとも1個のハロゲンを有しており、これらの基中に存在する1個または2個以上の-CH_(2)-基は、それぞれ相互に独立して、O原子が相互に直接に結合しないものとして、-O-、-S-、
【化2】

-CO-、-CO-O-、-O-CO-または-O-CO-O-により置き換えられてい
てもよく、
A^(1)およびA^(2)はそれぞれ相互に独立して、
(a)トランス-1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH_(2)-基または隣接していない2個以上の-CH_(2)-基は、-O-および/または-S-により置き換えられていてもよい)、
(b)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個または2個のCH基は、Nにより置き換えられていてもよい)、
(c)トランス-1,4-シクロヘキセニレン基、又は
(d)1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン、ピペリジン-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイルおよび1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイルからなる群からの基、
であり、上記基(a)?(c)は、フッ素またはCH_(3)により単置換または二置換されることができ、
Z^(1)、Z^(2)およびZ^(3)は、それぞれ相互に独立して、-CO-O-、-O-CO-、-CH_(2)O-、-OCH_(2)-、-CH_(2)CH_(2)-、-CH=CH-、-C≡C-、-(CH_(2))_(4)-、-OCF_(2)-、-CF_(2)O-、-CH=CH-CH_(2)CH_(2)-または単結合であり、
mは、0、1または2であり、
nは、0または1であり、
L^(1)、L^(2)およびL^(3)は、それぞれ相互に独立して、HまたはFであり、
Yは、-C≡C-、-CH=CH-、-CF=CH-、-CH=CF-または-CF=CF-であり、
ただし、
Y=-C≡C-である場合、
d)A^(2)は、ピリミジン基であるか、
e)存在するA^(1)及び/又はA^(2)はフッ素により単置換または二置換され、かつ基Z^(1)、Z^(2)またはZ^(3)の中の1個は、-CO-O-であるか、または
i)A^(2)は1つまたは2つ以上のCH_(2)基が-O-で置換されている1,4-シクロヘキシレンであり
Y=-CH=CH-である場合、
a)n=1であり、かつZ^(3)は単結合であるか、
b)L^(1)および/またはL^(2)はフッ素であるか、
c)Rは、炭素原子2?12個を有するアルケニル基またはアルケニルオキシ基であるか、
d)A^(2)は、ピリミジン基、若しくは置換基として1個または2個のフッ素またはCH_(3)を有するトランス-1,4-シクロヘキシレン基であるか、又は
e)基Z^(1)、Z^(2)またはZ^(3)の中の1個は、-CO-O-である。」に改める補正を含むものである。

そして、当該補正は、補正前の請求項1に択一的に列挙された選択肢の一部を削除しているという点において、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か)について検討する。

(2)新規性について
ア.引用文献及びその記載事項
原査定において「引用文献2」として引用された本願優先権主張日前に頒布された刊行物である「特開昭58-110527号公報」には、次の記載がある。

摘記2a:第9頁左上欄第14行?左下欄第13行
「次の一般式は上記式Iの範囲内にある本発明によつて提供される化合物群の例である:…

…次の第I表は本発明によつて提供される代表的な化合物の中間相範囲または中間相タイプの変化を示す。…ここにa(芳香族)は1,4-フエニレンを表わし、s(飽和した)はトランス-1,4-二置換されたシクロヘキサン環を表わす。」

摘記2b:第10頁第I表
「 式 環B … R^(1) R^(2) 融点 透明点 …
XXIV a C_(5)H_(11) CN 60.3 111.0 」

摘記2c:第26頁左上欄第11行?第27頁左上欄第5行
「p-(トランス-5-ブチル-1,3-ジオキサン-2-イル)フエニルプロピオロニトリル(純度98.7%)1.18g(50%)を得た。…
同様の方法で次の化合物を製造することができた:…
p-(トランス-5-ペンチル-1,3-ジオキサン-2-イル)フエニルプロピオロニトリル、融点(C-N)60.3℃、透明点(N-I)111.0℃」

イ.引用文献2に記載された発明
摘記2aの式XXIVの記載、及び摘記2cの「p-(トランス-5-ペンチル-1,3-ジオキサン-2-イル)フエニルプロピオロニトリル」との記載からみて、引用文献2には、
『p-(トランス-5-ペンチル-1,3-ジオキサン-2-イル)フェニルプロピオロニトリル。』という化合物(摘記2a及び2bの式XXIVにおいて、環Bが1,4-フエニレン基、R^(1)がペンチル基、R^(2)がシアノ基である化合物)についての発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

ウ.対比・判断
補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「トランス-5-ペンチル-1,3-ジオキサン-2-イル」との構造部分は、補正発明の式Iにおいて、Rが炭素原子5個を有する未置換のアルキル基であり、m及びnが0であり、A^(2)が(a)トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する隣接していない2個の-CH_(2)-基が-O-により置き換えられている)であり、Z^(2)およびZ^(3)が単結合である場合に相当し、
引用発明の「p-(…)フェニルプロピオロニトリル」との構造部分は、補正発明の式Iにおいて、L^(1)およびL^(2)がHであり、Yが-C≡C-である場合に相当し、
引用発明は、補正発明の「ただし、Y=-C≡C-である場合」という但し書きにおいて、i)A^(2)が2つのCH_(2)基が-O-で置換されている1,4-シクロへキシレンである場合に相当するものである。
してみると、補正発明と引用発明は、「式Iで表わされるアセチレン誘導体:
【化1】

式中、
Rは、炭素原子5個を有するアルキル基であり、この基は未置換であり、
A^(2)は、(a)トランス-1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する隣接していない2個の-CH_(2)-基は、-O-により置き換えられていてもよい)、であり、
Z^(2)およびZ^(3)は、それぞれ相互に独立して、単結合であり、
mは、0であり、
nは、0であり、
L^(1)およびL^(2)は、それぞれ相互に独立して、Hであり、
Yは、-C≡C-、であり、
ただし、
Y=-C≡C-である場合、
i)A^(2)は1つまたは2つ以上のCH_(2)基が-O-で置換されている1,4-シクロヘキシレンである。」という点において一致し、両者に相違する点はない。

したがって、補正発明は、引用文献2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(3)まとめ
以上総括するに、上記請求項1についての補正は、独立特許要件違反があるという点において平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、その余のことを検討するまでもなく、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成22年6月2日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?12に係る発明は、平成21年6月2日付けの手続補正及び同日付けの誤訳訂正により補正ないし訂正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものであり、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記2.(1)に示したとおりのものである。

(2)原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、理由3として、『この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。』という理由を含むものである。
そして、原査定の備考欄には、『先願3の明細書に記載された化合物のうち、例えば[0057]のNo.6?10は、本願の請求項1に係る発明におけるc)の条件に合致する。よって、本願発明に係る化合物と先願3の明細書に記載された化合物は同一であるから、本願発明は先願3の明細書に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。』との指摘がなされている。

(3)先願3の記載事項
原査定において「先願3」として引用された本願優先権主張日前に出願された「特願平9-186008号(特開平10-95761号)」の願書に最初に添付した明細書(以下、「先願明細書」という。)には、次の記載がある。

摘記3a:請求項1
「一般式(1)
【化1】


(式中、n1およびn2は、それぞれ独立して0または1であり;
A1、A2およびA3は、それぞれ独立して1,4-フェニレン、1個または2個のフッ素原子で置換された1,4-フェニレン、トランス-1,4-シクロヘキシレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイルまたは1,3-ピリミジン-2,5-ジイルを表し;
Z1、Z2およびZ3は、それぞれ独立して単結合、エチレン基、エテニレン基、エチニレン基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、メチレンオキシ基、オキシメチレン基、1,4-ブチレン基または1,4-ブテニレン基を表し;
Rは、炭素数1?10の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数2?10の不飽和炭化水素基、鎖中に1以上のエーテル結合(-O-)を有する炭素数1?10の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、または鎖中に1以上のフッ素原子を含む炭素数1?10の飽和または不飽和のフッ素置換脂肪族炭化水素基を表し;そして
X1およびX2は、それぞれ独立してF、ClまたはHを表す、ただし、n1=n2=0、Z1が単結合、エチレン基、カルボニルオキシ基またはオキシカルボニル基、かつRがアルキル基またはアルコキシ基の場合、ならびにn1=1、n2=0または1、Z1およびZ2が単結合またはエチレン基、Z3がエチレン基、かつRがアルキル基またはアルコキシ基の場合には、X1、X2の少なくとも一方はFまたはClである)で表わされるプロピオロニトリル誘導体。」

摘記3b:段落0057




摘記3c:段落0120及び0126?0127
「実施例1 3-フルオロ-4-シアノエチニル-1-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)ベンゼン(化合物番号2)の合成…
実施例3 4-〔2-〔トランス-4-(3-ブテニル)シクロヘキシル〕エチル〕フェニルプロピオロニトリル(化合物番号32)の合成…
上記と同様の方法により、表1?24に記載の化合物のうち、化合物番号6?10、16?20、31?39、46?49、56?59、66?69、76?79、86?90、96?100、106?110、116?119、126、127、129、130、136、137、139および140の化合物を合成することができる。」

(4)先願3に記載された発明
摘記3aの一般式(1)の記載、摘記3bのNo.7の記載、及び摘記3cの「3-フルオロ-4-シアノエチニル-1-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)ベンゼン」との記載からみて、先願明細書には、化合物番号7の具体例として、
『4-シアノエチニル-1-〔トランス-4-(3-ブテニル)シクロヘキシル〕ベンゼン』という化合物〔摘記3aの一般式(1)において、Rが炭素数4の不飽和炭化水素基(3-ブテニル基)、A1がトランス-1,4-シクロへキシレン基、Z1が単結合、n1=n2=0、X1およびX2がHである化合物〕についての発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。

(5)対比・判断
本願発明と先願発明とを対比する。
先願発明の「トランス-4-(3-ブテニル)シクロヘキシル」との構造部分は、本願発明の式Iにおいて、Rが炭素原子4個を有する未置換のアルケニル基であり、m及びnが0であり、A^(2)が(a)トランス-1,4-シクロへキシレン基であり、Z^(2)およびZ^(3)が単結合である場合に相当し、
先願発明の「4-シアノエチニル-1-〔…〕ベンゼン」との構造部分は、本願発明の式Iにおいて、L^(1)およびL^(2)がHであり、Yが-C≡C-である場合に相当し、
先願発明は、本願発明の「ただし、Y=-C≡C-である場合」という但し書きにおいて、c)Rが炭素原子4個を有するアルケニル基である場合に相当するものである。
してみると、本願発明と先願発明は、「式Iで表わされるアセチレン誘導体:
【化1】

式中、
Rは、炭素原子4個を有するアルケニル基であり、この基は未置換であり、
A^(2)は、(a)トランス-1,4-シクロヘキシレン基であり、
Z^(2)およびZ^(3)は、それぞれ相互に独立して、単結合であり、
mは、0であり、
nは、0であり、
L^(1)およびL^(2)は、それぞれ相互に独立して、Hであり、
Yは、-C≡C-、であり、
ただし、
Y=-C≡C-である場合、
c)Rが炭素原子4個を有するアルケニル基である。」という点において一致し、両者に相違する点はない。

したがって、本願発明は、先願発明と同一である。

(6)請求人の主張について
審判請求人は、平成22年7月22日付けで手続補正された審判請求書の請求の理由において、『原審審査官殿は上記拒絶査定において、「先願3の明細書に記載された化合物のうち、例えば、[0057]のNo.6?10は、本願の請求項1に係る発明におけるc)の条件に合致する」旨指摘されましたが、上記手続補正書により本願の請求項1に係る発明におけるY=-C≡C-の場合のc)の条件を削除しましたので、当該拒絶理由はもはやあたらないものとなりました。』と主張しているが、平成22年6月2日付け手続補正は上記2.のとおり却下されたので、当該主張は採用できない。

また、審判請求人は、平成23年4月26日付けの回答書において、『「特許・実用新案 審査基準」第II部第3章3.2(2)において、「・・・、ある発明又は考案が、当業者が当該他の出願の当初明細書等の記載及び他の出願の出願時における技術常識に基づいて、物の発明の場合はその物を作れ、また方法の発明の場合はその方法を使用できることが明らかであるように当該他の出願の当初明細書等に記載されていないときは、当該発明又は考案を「他の出願の当初明細書等に記載された発明又は考案」とすることができない」旨記載されるところ、先願1の明細書においてNo.222およびNo.225の化合物は段落〔0079〕において記載されるものの、物性値などを以て具体的に記載されたものではなく、つまり単なる例示にすぎないため、先願1において該各化合物に係る発明は「当初明細書等に記載された発明又は考案」にはあたらないというべきであります。』と主張しているが、摘記3bの「CN点65.4℃、NI点134.9℃」との記載からみて、先願明細書においてNo.7の化合物は、物性値などを以て具体的に記載されたものであると認められ、摘記3cの「同様の方法により…化合物番号6?10…の化合物を合成することができる」との記載からみて、当業者が先願明細書の記載に基づいて、当該No.7の化合物を作れることも明らかであると認められ、しかも、引用文献1?2や特表平4-501575号公報などに開示された技術が、先願3の出願日前に夙に知られていたという技術水準をも考慮すれば、先願明細書に当該No.7を含む化合物が実質的に記載されていることは明らかであるから、当該主張も採用できない。

さらに、審判請求人は、平成23年7月28日付けの回答書において、
『(い)先願3との同一性について
審判官殿は今回の審尋において、先願3のNo.222及びNo.225並びにNo.171及びNo.173の化合物については、先願3の公開公報の第85欄第12?18行の「上記と同様の方法により、…221?240の化合物を合成することができる。」との記載及び同第86欄第29?32行の「上記と同様の方法により、…141?220の化合物を合成することができる。」との記載、並びに、上記引用文献1及び2並びに周知例B?Cに記載された技術常識からみて、先願3の出願時における技術常識に基づいて、先願3のNo.222及びNo.225並びにNo.171及びNo.173の化合物を作れることが明らかであるように当該先願3の当初明細書等に記載がある旨指摘されました。
ここで上記先願3のNo.222及びNo.225の各化合物は、本願の式Iにおいて「d)A^(2)は、ピリミジン基」なる場合の化合物に相当するものであるところ、上記補正案による補正は「d)A^(2)は、ピリミジン基である」なる場合の化合物を請求項1に係る発明の範囲から除外するものでありますので、上記の審判官殿のご指摘のうち同No.222及びNo.225の各化合物に基づくご指摘は、上記補正案による請求項1に係る発明にはあたらないものであります。
また上記先願3のNo.171及びNo.173の各化合物は、本願の式Iにおいて「e)存在するA^(1)及び/又はA^(2)はフッ素により単置換または二置換され、かつ基Z^(1)、Z^(2)またはZ^(3)の中の1個は、-CO-O-である」なる化合物に相当しますが、該No.171及びNo.173の各化合物は3環を有する化合物であるところ、上記補正案による請求項1に係る発明の化合物は2環を有する化合物でありますので、上記の審判官殿のご指摘のうちNo.171及びNo.173の各化合物に基づくご指摘は、上記補正案による請求項1に係る発明にはあたらないものであります。
また、上記補正案により補正された本願請求項2?7に記載の発明は、実質的に同請求項1に記載の発明の構成を全て包含し、さらに別異の構成によって同請求項1に記載の発明をさらに限定するものでありますので、本願請求項1のかかる補正により、同請求項2?7に係る発明にも審判官殿の上記ご指摘はもはやあたらないものになるものと思料します。』と主張するとともに、「補正の機会を与えるべく拒絶理由を通知」すべき旨の主張をしている。
しかしながら、当該回答書に提示された補正案の請求項1に記載されたものは、先願3の請求項1の一般式(1)において(摘記3a)、
『(式中、n1およびn2は、それぞれ独立して0…であり;A1…は、…2個のフッ素原子で置換された1,4-フェニレン…を表し;Z1…は、そ…カルボニルオキシ基…を表し;Rは、炭素数1?10の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数2?10の不飽和炭化水素基、鎖中に1以上のエーテル結合(-O-)を有する炭素数1?10の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基…を表し;そしてX1およびX2は、それぞれ独立してF…またはHを表す)で表わされるプロピオロニトリル誘導体。』である場合のものと合致し、当該補正案の請求項1に記載された発明の特許性の判断については、これが否定される蓋然性が高く、「補正案が一見して特許可能であることが明白である場合」に該当しない。このため、補正の機会を与えるべく拒絶理由を通知するのが妥当であるとはいえず、上記主張も採用できない。

(7)むすび
以上のとおり、本願発明は、先願発明と同一であり、しかも、本願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また、本願の出願の時にその出願人が当該他の特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本
願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-12 
結審通知日 2011-08-23 
審決日 2011-09-07 
出願番号 特願2000-504098(P2000-504098)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (C07C)
P 1 8・ 575- Z (C07C)
P 1 8・ 113- Z (C07C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 爾見 武志  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 木村 敏康
小出 直也
発明の名称 液晶プロペンまたはプロペニルニトリル誘導体  
代理人 葛和 清司  

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