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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1251433
審判番号 不服2009-9030  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-27 
確定日 2012-02-01 
事件の表示 特願2003-524223「取り込まれたライブ放送チャンネルのインターネットストリーミングに基づいた放送ビデオチャンネルサーフィンシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月 6日国際公開、WO03/19900、平成17年 1月13日国内公表、特表2005-501482〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯
1 手続
本願は、平成14年8月2日を国際出願日(パリ条約による優先権主張:平成13年8月23日、米国)とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成19年 8月23日(起案日)
意見書 :平成20年 2月27日
誤訳訂正書 :平成20年 2月27日
拒絶理由通知 :平成20年 7月11日(起案日)
意見書 :平成20年10月17日
補正書 :平成20年10月17日
拒絶査定 :平成21年 1月22日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成21年 4月27日
手続補正 :平成21年 5月27日
前置審査報告 :平成21年 8月21日
審尋 :平成22年10月 5日(起案日)
回答書 :平成23年 4月 6日

2 査定
原審での査定の理由は、概略、以下のとおりである。

この出願の請求項1-25に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用例1.越井、杉浦、花村、富永,多フォーマット利用の映像配信システムにおけるシーン同定に関する検討,情報処理学会研究報告,日本,社団法人情報処理学会,2001年 6月 8日,第2001巻,第60号,P.7?12
(特に1.はじめに、3.1提案システムの記載を参照)。
2.国際公開第01/15427号
3.国際公開第00/74378号

第2 補正却下の決定
平成21年5月27日付けの手続補正(以下、本件補正という。)について次のとおり決定する。

《結論》

平成21年5月27日付けの補正を却下する。

《理由》

1 補正の内容
本件補正における補正の内容は、以下のとおりである。
[補正事項]
請求項1ないし25における発明特定事項「(前記所与のフレーム速度及び解像度よりも)低減されたフレーム速度、解像度、又はフレーム速度及び解像度」を「(前記所与のフレーム速度よりも)低減されたフレーム速度」とする補正

2 補正の範囲の適否
上記補正事項は、願書に最初に添付した明細書(平成20年2月27日付け誤訳訂正書による補正後の明細書)及び図面に記載した範囲内においてする補正である。

3 補正の目的の適否
上記請求項1ないし25の補正は、補正前の請求項1ないし25に記載した発明を特定するために必要な事項である「(前記所与のフレーム速度及び解像度よりも)低減されたフレーム速度、解像度、又はフレーム速度及び解像度」を限定するものであり、特許法第17条の2第4項第2号で規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

4 独立特許要件についての検討
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後発明」という。)が、独立特許要件(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定)を満たすか否かについて検討する。

(1)補正後発明
補正後発明は、平成21年5月27日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、下記のとおりのものであると認められる。

記(補正後発明)
第1のサイトから第2のサイトに放送チャンネルを提供する方法であって、
第1のサイトで、所与のフレーム速度及び解像度の放送品質を有する少なくとも1つの放送チャンネルを入力し、前記少なくとも1つの放送チャンネルを、前記所与のフレーム速度よりも低減されたフレーム速度で、ネットワークを介してストリーミングする、入力及びストリーミングステップと、
前記第1のサイトから離れた第2のサイトで、前記ネットワークを介して、前記低減されたフレーム速度の少なくとも1つの放送チャンネルを受信する受信ステップと、
前記第2のサイトで、前記受信された少なくとも1つの放送チャンネルを前記低減されたフレーム速度で視聴する視聴ステップと、
を有する方法。

(2)引用発明
ア 引用例1の記載事項
原査定の拒絶理由に引用された、越井、杉浦、花村、富永,多フォーマット利用の映像配信システムにおけるシーン同定に関する検討,情報処理学会研究報告,日本,社団法人情報処理学会,2001年 6月 8日,第2001巻,第60号,P.7?12(以下「引用例1」という。)には、図面(図2ないし図4)とともに次の記載a.乃至f.(以下、「記載a」・・・「記載f」などという。)がある。

a. 概要
ディジタル放送の開始,ネットに接続できる携帯電話及びPCの普及等により様々な状態で映像を取得できる環境が整いつつある.しかし現在のシステムでは携帯端末で得た情報は携帯端末でのみ有効的であり,ユーザがその情報を再度取得しようとした場合,プロバイダーの提供する検索エンジンを用いたり,アドレス入力により検索・特定し,ダウンロードするには多大な労力を必要とする.そこで容易に高速に画像にアクセスするため,映像の特徴を示す情報(インデックス)を自動的に抽出することが必要とされている.本稿では携帯端末に代表される狭帯域と,PCに代表される広帯域を両用する映像配信システムを提案し,携帯端末への映像配信の際に想定されるMPEG-2/MPEG-4フォーマット変換での原画像からの縮小及び切り出し処理での有効な映像特徴抽出について検討する.
(7頁)

b. 1.はじめに
ディジタル放送,CATV網,次世代携帯電話IMT-2000など複数の伝送メディアが混在する環境において,伝送帯域,端末能力,またユーザの要求する画像精度が異なるような環境において,同一のコンテンツが様々な形でユーザに配信される.携帯端末に代表される狭帯域においては端末の軽量化という利便性,移動中の情報の送受信という従来のネットとは特徴が異なるために,画像サイズ,画像のフレーム間隔による受信能力・表示能力に限界が存在する.例えば,ディジタル放送で採用されているMPEG-2,MP@ML(Main Profile Main Level)では画像サイズが724×480に対して,IMT-2000で採用されるSimple ProfileにおけるQCIFでは176×120程度,つまり縦横比がそれぞれ約1/4程度である.現在放送用のMPEG-2画像を携帯端末用のMPEG-4画像にトランスコード(フォーマット変換)^((1))する研究も行なわれている.そこで携帯端末においてMPEG-4による映像取得を想定する場合,閲覧した画像を,より高品位の映像において再度取得・閲覧という要求が考えられる.しかし現在,ユーザがその情報を再度高品位で取得しようとした場合,PCに代表される広帯域の伝送路においてプロバイダーの提供する検索エンジンを用いたり,アドレスを入力より,検索・特定しその情報をダウンロードするには多大な労力を必要とする.
そこで携帯端末においてMPEG-4表示技術程度の画像を閲覧している際に,閲覧画像のインデックスとなるキー情報を抽出・保存することで,PCにおいてそのインデックスを用いて,新たに検索・特定といった処理をせずにその画像を検索しえるようなシステムを提案し,またMPEG-4映像作成過程に生じる縮小・切り出し取得画像における有効なインデックスについて検討する.
(8頁左欄1行?下から6行)

c. 3.提案システム
3.1 提案システム
狭帯域と広帯域を以下に定義し,次に提案する両用システムについて検討する.
・狭帯域
モバイル環境下において,帯域が狭く,かつ時間的に変動する環境下における動画像伝送路.
・広帯域
ディジタル放送品質の動画像の送受信が可能である伝送路.
(8頁右欄13行?22行)

d. 3.1.1 システム1;携帯端末におけるオンデマンド通信
要約情報・編集情報(インデックス)を用いることにより,携帯端末におてディジタルコンテンツ情報のオンデマンド通信を可能とするシステム.
狭帯域環境にある端末において情報変換された情報を受信しながら(1),その情報(ディジタル放送の内容)のうち,携帯端末内で情報変換器により番組の要約情報を,またはキー操作により端末内部に保存(2)された編集情報をコンテンツサーバー(センタ-)へ送信(3,4)することで同じ情報を再度受信,もしくは高品位での受信すを要求(5)する.コンテンツサーバでは,編集情報により情報が検索され,要求を発信した端末ヘ再度情報が送信されることで,オンデマンド再生を可能とするシステム.
(8頁右欄23行?最終行)

e. 3.1.2 システム2;効率的ホームサーバ蓄積システム
要約情報・編集情報を用いることにより,ホームサーバの記憶装置に所望するディジタル放送コンテンツを効率的に蓄積するシステム.
狭帯域環境にある端末において情報変換された情報を受信(1)しながら,その情報のうち,ユーザが興味を持った点,もしくは番組をキー操作によってセンターへ送信(4)し,さらに携帯端末の記憶装置にその情報を編集情報(2)として保存する.送信された情報は,直ちにセンタ-で受信され,センターにおいて,記憶装置(ビデオサーバ)に蓄積された情報のうち,指定された部分の情報のみを家庭内の端末に送信(5)することにより,家庭内の設備において,所望する部分の情報のみを高品位に蓄積することを可能とするシステム.
(9頁左欄1行?15行)

f. 3.2 多フォーマット対応インデックス抽出手法
特徴量抽出における要求条件をまとめると次の条件が挙げられる.
・縮小・切り出し処理に強い特徴量情報
・インデックスとしての特徴抽出処理,検索処理が高速
本システムにおいては,図4で示すように携帯端末で取得する映像はMPEG-2/MPEG-4のフォーマット変換処理を経ており,画像サイズの縦横比が原画像の各々約1/4程度であることが想定され,取得画像は原画像からの縮小・切り出し処理を経て情報削減を前提として検討する.またインデックス抽出処理,検索処理は当然高速処理が求められる.よって上記の2つの問題を検討する.ここで図5に特徴領域抽出のフローチヤートを示す.
(9頁左欄16行?下から7行)

イ 引用発明
(ア)補正後発明の対比の対象とする発明
記載bによれば、「携帯端末においてMPEG-4による映像取得を想定する場合」に、「閲覧」を行うことを前提として、
「閲覧画像のインデックスとなるキー情報を抽出・保存することで,PCにおいてそのインデックスを用いて,新たに検索・特定といった処理をせずにその画像を検索しえるようなシステム」が提案されている。
そこで、この引用例1が前提とする、携帯端末において映像取得して閲覧する(までの)方法を、補正後発明と対比する引用発明とする。
この「携帯端末において映像取得して閲覧する方法」の詳細は以下のとおりである。

(イ)「閲覧」する「映像」(プロバイダーの動作)
記載d、記載eによれば、「狭帯域環境にある端末において情報変換された情報を受信」とされているから、
「携帯端末」(狭帯域環境にある端末)において閲覧する映像は、
「情報変換された情報」であり、
「受信」により「取得」するものである。
そして、図2および図3によれば、該「情報変換」は、「プロバイダー」(Provider)が行っていると認められる。
そこで、以下、プロバイダーが行う動作について検討する。

[プロバイダーの動作]
「情報変換」は、図2,図3および記載fに示される「MPEG-2/MPEG-4のフォーマット変換」であることは明らかであり、記載fによれば、「画像サイズの縦横比が原画像の各約1/4程度」にしているから、
「MPEG-2」を、「MPEG-2/MPEG-4のフォーマット変換して、画像サイズの縦横比が原画像の各約1/4程度にし」ている。
また、その「MPEG-2」は、
図2および図3によれば、プロバイダーが(図2,3の絵から認定される)「衛星」からの映像を「リアルタイム」(Real time)に受信するものであって、
記載d、記載eによれば、受信されるのは「ディジタル放送」の内容(映像)であると認められる。
したがって、プロバイダーは、衛星からのディジタル放送(の映像)をリアルタイムに受信する。
そして、該受信したディジタル放送(の映像)を、上述のようにMPEG-2/MPEG-4のフォーマット変換して、画像サイズの縦横比が原画像の各約1/4程度にしている。
その後、情報変換された情報は、図2および図3によれば、MPEG-4のフォーマットで「送信」(send)され、この「送信」は、
記載aからみて、「携帯端末」(「ネットに接続できる携帯電話」)との間で「ネット」を介して行われていると認められるから、
ネットを介して送信していると認められる。

(ウ)携帯端末の動作
携帯端末が、上記変換された情報を受信する際に行う動作は、上述(イ)からもわかるように、ネットを介して、当該変換された情報を受信しており、
その後、この受信した情報を閲覧することは明らかである。

(エ)まとめ
以上、まとめると、引用発明として以下のものが認められる。

記(引用発明)
プロバイダーが、
衛星からのディジタル放送(の映像)をリアルタイムに受信し、
該受信したディジタル放送(の映像)を、MPEG-2/MPEG-4のフォーマット変換して、画像サイズの縦横比が原画像の各約1/4程度にし、
ネットを介して送信し、
携帯端末が、
ネットを介して、当該変換された情報を受信し、
この受信した情報を閲覧する、
携帯端末において映像取得して閲覧する方法。

(3)対比・判断
ア 「第1のサイトから第2のサイトに放送チャンネルを提供する方法であって」、「を有する方法。」について
引用発明は、「プロバイダー」側からみれば、
「衛星からのディジタル放送をリアルタイムに受信」し、(フォーマット変換し、)「送信」し、「携帯端末」が「受信」しているから、
「衛星からのディジタル放送」を(携帯端末に)「提供する方法」ということができ、
また、該「受信」される「衛星からのディジタル放送」は、「放送チャンネル」といえる。
よって、引用発明は、補正後発明と同様、「第1のサイトから第2のサイトに放送チャンネルを提供する方法」といえる。
ところで、補正後発明における「放送チャンネル」とは、
「第1のサイトから第2のサイトに放送チャンネルを提供する」、「所定のフレーム速度及び解像度の放送品質を有する少なくとも1つの放送チャンネルを入力し」、「前記低減されたフレーム速度の少なくとも1つの放送チャンネルを受信する」、「前記少なくとも1つの放送チャンネルを、前記所与のフレーム速度よりも低減されたフレーム速度で、ネットワークを介してストリーミングする」、「前記受信された少なくとも1つの放送チャンネルを前記低減されたフレーム速度で視聴する」からすれば、
「フレーム速度」および「解像度」で特徴づけられ、「視聴」されるものであるから、
「放送チャンネルで放送される映像」をいうものと理解される。
そして、上述のように引用発明における「衛星からのディジタル放送」も「衛星からのディジタル放送の映像」ともいえ、
引用発明において「受信」される「衛星からのディジタル放送」は「放送チャンネル」といえることは上述のとおりであるから、
「放送チャンネルで放送される映像」といえる。
そのような解釈からも、補正後発明における「放送チャンネル」と引用発明において「受信」される「衛星からのディジタル放送」は一致するから、引用発明は、補正後発明と同様、「第1のサイトから第2のサイトに放送チャンネルを提供する方法」といえる。

イ 「第1のサイトで、所与のフレーム速度及び解像度の放送品質を有する少なくとも1つの放送チャンネルを入力し、前記少なくとも1つの放送チャンネルを、前記所与のフレーム速度よりも低減されたフレーム速度で、ネットワークを介してストリーミングする、入力及びストリーミングステップ」について

[所与のフレーム速度及び解像度の放送品質を有する少なくとも1つの放送チャンネルを入力し]
引用発明の「衛星からのディジタル放送(の映像)をリアルタイムに受信し」について、
引用発明の「衛星からのディジタル放送」が「放送チャンネル」といえることは上述アのとおりであり、「受信」は「入力」といえ、
「衛星からのディジタル放送」が少なくとも1つ「受信」されているから、
引用発明の「衛星からのディジタル放送をリアルタイムに受信し」は、「少なくとも1つの放送チャンネルを入力し」といえる。
また、「受信」(入力)された「ディジタル放送」は「MPEG-2」のフォーマットであることは明らかであり、「MPEG-2」が「所与のフレーム速度及び解像度の放送品質を有する」ことも明らかである。
よって、引用発明の「衛星からのディジタル放送(の映像)をリアルタイムに受信し」は、「所与のフレーム速度及び解像度の放送品質を有する少なくとも1つの放送チャンネルを入力し」といえる。

[前記少なくとも1つの放送チャンネルを、前記所与のフレーム速度よりも低減されたフレーム速度で]
引用発明は「該受信したディジタル放送(の映像)を、MPEG-2/MPEG-4のフォーマット変換して、画像サイズの縦横比が原画像の各約1/4程度にし」ており、
引用発明の「衛星からのディジタル放送(の映像)をリアルタイムに受信」したものは、「少なくとも1つの放送チャンネル」であることは上述のとおりであり、
「MPEG-2/MPEG-4のフォーマット変換して、画像サイズの縦横比が原画像の各約1/4程度に」し、伝送(送信)することは、「元の画像の品質よりも低減された画像の品質で」伝送(送信)することということがができる。
また、補正後発明の「所与のフレーム速度よりも低減されたフレーム速度で」伝送(ストリーミング)することも「元の画像の品質よりも低減された画像の品質で」伝送(ストリーミング)することということができる。
よって、引用発明と補正後発明は、「少なくとも1つの放送チャンネルを、元の画像の品質よりも低減された画像の品質で」伝送する点で一致する。
もっとも、「元の画像の品質よりも低減された画像の品質」が、
補正後発明は「所与のフレーム速度よりも低減されたフレーム速度」であるのに対し、
引用発明は「画像サイズの縦横比が原画像の各約1/4程度」である点で相違する。(→相違点1)

[ネットワークを介してストリーミングする、]
引用発明における「ネット」は「ネットワーク」といえ、「送信」は「伝送」といえ、
補正後発明における(第1のサイトで)「ストリーミング」することは、「伝送」といえるから、
引用発明と補正後発明は、「ネットワークを介して伝送する」といえる点で一致する。
もっとも、「伝送」を、補正後発明は「ストリーミング」とするのに対し、引用発明は「送信」とする点で相違する。(→相違点2)

[第1のサイトで]
引用発明において、上記動作は「プロバイダー」が行っており「プロバイダー」を「第1のサイト」と称することは差し支えないことである。

ウ 「前記第1のサイトから離れた第2のサイトで、前記ネットワークを介して、前記低減されたフレーム速度の少なくとも1つの放送チャンネルを受信する受信ステップ」
引用発明において「プロバイダー」が「第1のサイト」と称することができることは上述イのとおりであり、引用発明の「携帯端末」を「第2のサイト」と称しても差し支えなく、引用発明の「携帯端末」と「プロバイダー」が離れているのは明らかであるから、引用発明の「携帯端末」は「第1のサイトから離れた第2のサイト」といえる。
また、引用発明の「ネット」が「ネットワーク」といえることも上述イのとおりであり、
引用発明における「携帯端末」が「受信」する「当該変換された情報」は、(元の画像の品質よりも)低減された画像の品質の(に変換された)
「少なくとも1つの放送チャンネル」といえることも上述イのとおりである。
よって、引用発明における「携帯端末が、ネットを介して、当該変換された情報を受信」は、「第1のサイトから離れた第2のサイトで、ネットワークを介して、低減された画像の品質の少なくとも1つの放送チャンネルを受信」といえ、
補正後発明の「低減されたフレーム速度」が「低減された画像の品質」といえることは上述イのとおりであるから、
引用発明と補正後発明は、「第1のサイトから離れた第2のサイトで、ネットワークを介して、低減された画像の品質の少なくとも1つの放送チャンネルを受信する」点で一致する。
もっとも、「低減された画像の品質」が、
補正後発明は、「低減されたフレーム速度」であるのに対し、
引用発明は「画像サイズの縦横比が原画像の各約1/4程度」である点で相違する。(→相違点1)

エ 「前記第2のサイトで、前記受信された少なくとも1つの放送チャンネルを前記低減されたフレーム速度で視聴する視聴ステップ」
引用発明の「携帯端末」が「第2のサイト」と称することができることは上述ウのとおりであり、
引用発明における「この受信した情報」が、(元の画像の品質よりも)低減された画像の品質の(に変換された)「受信された少なくとも1つの放送チャンネル」といえることも、上述イ、ウと同様である。
また、「閲覧」を、低減された画像の品質(画像サイズの縦横比が原画像の各約1/4程度)で行うことは明らかであり、(ディジタル放送の)「受信した情報を閲覧する」ことが「視聴」といえることも明らかであるから、
引用発明の「携帯端末が」、「この受信した情報を閲覧する」は、「第2のサイトで、受信された少なくとも1つの放送チャンネルを低減された画像の品質で視聴する」といえ、補正後発明も「第2のサイトで、受信された少なくとも1つの放送チャンネルを低減された画像の品質で視聴する」といえる。
もっとも、「低減された画像の品質」が、
補正後発明は、「低減されたフレーム速度」であるのに対し、
引用発明は「画像サイズの縦横比が原画像の各約1/4程度」である点で相違する。(→相違点1)

オ 一致点・相違点
以上の対比結果によれば、補正後発明と引用発明との一致点および相違点は、下記のとおりである。

[一致点]
第1のサイトから第2のサイトに放送チャンネルを提供する方法であって、
第1のサイトで、所与のフレーム速度及び解像度の放送品質を有する少なくとも1つの放送チャンネルを入力し、前記少なくとも1つの放送チャンネルを、前記元の画像の品質よりも低減された画像の品質で、ネットワークを介して伝送するステップと、
前記第1のサイトから離れた第2のサイトで、前記ネットワークを介して、前記低減された画像の品質の少なくとも1つの放送チャンネルを受信する受信ステップと、
前記第2のサイトで、前記受信された少なくとも1つの放送チャンネルを前記低減された画像の品質で視聴する視聴ステップと、
を有する方法。

[相違点1]
「(元の画像の品質よりも)低減された画像の品質」が、
補正後発明は「(所与のフレーム速度よりも)低減されたフレーム速度」であるのに対し、
引用発明は「画像サイズの縦横比が原画像の各約1/4程度」である点

[相違点2]
「伝送」を、補正後発明は「ストリーミング」とするのに対し、引用発明は「送信」とする点

(4)相違点の判断
ア 相違点1
(ア)周知事項
通信環境や受信端末に応じて画像の品質を低減するために、フレーム速度を低減することは、下記の周知例1、2にもあるように周知技術である。

記(周知例1,2)
周知例1:特開平10-304334号公報(段落【0008】?【0011】等参照。動画データを伝送する際に、ネットワークや受信する側の装置等の負荷がかかる問題を解決するために、解像度を下げたり、或いは、フレームレートを下げて伝送することが記載されている。)
周知例2:特開2000-244560号公報(段落【0017】、【0043】?【0045】等参照。動画像ストリームを無線環境上の移動体端末へ伝送する場合に、ネットワークや端末の状況に応じて、必要があればフレームレートやフレームサイズを低減することが記載されている。)

(イ)相違点1の克服の容易想到性
記載bにもあるように、「携帯端末に代表される狭帯域においては端末の軽量化という利便性,移動中の情報の送受信という従来のネットとは特徴が異なるために,画像サイズ,画像のフレーム間隔による受信能力・表示能力に限界が存在する.例えば,ディジタル放送で採用されているMPEG-2,MP@ML(Main Profile Main Level)では画像サイズが724×480に対して,IMT-2000で採用されるSimple ProfileにおけるQCIFでは176×120程度,つまり縦横比がそれぞれ約1/4程度である.」ということを前提として、「画像サイズの縦横比が原画像の各約1/4程度」にしている引用発明において、「画像のフレーム間隔」に着目し、上記の周知の品質の低減方法である、フレーム速度の低減を採用する動機づけはあるというべきである。
よって、引用発明における「低減された画像の品質」としての「画像サイズの縦横比が原画像の各約1/4程度」を、
周知の「低減されたフレーム速度」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2
(ア)周知事項
動画像を送信するために、ストリーミングを行うことは、下記の周知例3ないし5にもあるように周知の事項である。

記(周知例3?5)
周知例3:国際公開01/15427号公報(拒絶査定時の引用文献2)
(例えば11頁1行目には、「streaming」と表現されているように、「end-user」への「video」の送信は、「ストリーミング」により行われている。特に、この「ストリーミング」は、放送を受信し、品質を低減させたビデオに対して行うものである。)
周知例4:特開平11-220665号公報
(段落【0048】?【0053】等参照。「中継された信号を受信し、MEPG-2のデコードを行って」いること、「チューナなどの処理部を備える必要がな(く)」いという効果から、「ストリーミング」であるといえる。)
周知例5:特開2001-218273号公報
(段落【0007】?【0008】、【0022】等参照。「WAP対応のブラウザプログラムとして、例えば米国法人Phone.com(フォンドットコム社)のマイクロブラウザ(UP.Browser)」が挙げられ、そのプロトコルはストリーム放送などで使われるUDP/IPを利用していることが知られていること、「テレビチューナを介して受信する必要がない」いという効果から、「ストリーミング」であるといえる。)

(イ)相違点2の克服の容易想到性
ストリーミング伝送は、動画像の伝送として、典型的な伝送形態であり、MPEG2,MPEG4が想定する伝送形態は、ストリーミング伝送である。
そして、引用発明の該送信の内容が動画像であることは明らかであり、引用発明における(MPEG4での)「伝送」(送信)の態様を、上記周知例3ないし5にもあるような、周知の動画像の伝送方法である「ストリーミング」とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

ウ まとめ(当審の判断)
以上、引用発明を出発点として、上記相違点1、相違点2の克服を合わせて行うことで、補正後発明の構成に達するところ、これらの克服を合わせて行うことも当業者が容易になし得ることである。
よって、補正後発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

(5)まとめ
したがって、補正後発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本願の請求項1ないし25に係る発明は、本願明細書および図面(平成20年10月17日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし25に記載したとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、下記のとおりである。

記(本願発明)
第1のサイトから第2のサイトに放送チャンネルを提供する方法であって、
第1のサイトで、所与のフレーム速度及び解像度の放送品質を有する少なくとも1つの放送チャンネルを入力し、前記少なくとも1つの放送チャンネルを、前記所与のフレーム速度及び解像度よりも低減されたフレーム速度、解像度、又はフレーム速度及び解像度で、ネットワークを介してストリーミングする、入力及びストリーミングステップと、
前記第1のサイトから離れた第2のサイトで、前記ネットワークを介して、前記低減されたフレーム速度、解像度、又はフレーム速度及び解像度の少なくとも1つの放送チャンネルを受信する受信ステップと、
前記第2のサイトで、前記受信された少なくとも1つの放送チャンネルを前記低減されたフレーム速度、解像度、又はフレーム速度及び解像度で視聴する視聴ステップと、
を有する方法。

2 引用発明
原査定の拒絶理由に引用された引用例1、その記載事項および引用発明は、前記第2 4(2)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記補正後発明から、前記第2 3で認定したとおりの前記手続補正による限定を省いたものであるところ、上記限定を有する補正後発明が、前記引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることは前記第2 4(3)、(4)で認定、判断したとおり(つまり、相違点は、上述第2 4(3)の[相違点2]のみであり、その容易想到性も上述第2 4(4)イのとおり)であり、また、本願発明を全体としてみても格別なものはなく、その作用効果も、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

したがって、本願発明も、前記引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をするべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-07 
結審通知日 2011-09-08 
審決日 2011-09-21 
出願番号 特願2003-524223(P2003-524223)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川崎 優  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 梅本 達雄
小池 正彦
発明の名称 取り込まれたライブ放送チャンネルのインターネットストリーミングに基づいた放送ビデオチャンネルサーフィンシステム  
代理人 笛田 秀仙  
代理人 津軽 進  
代理人 宮崎 昭彦  

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