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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24C
管理番号 1251448
審判番号 不服2010-17223  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-30 
確定日 2012-02-01 
事件の表示 特願2008-231804号「加熱調理器具」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月15日出願公開、特開2009- 8387号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成11年1月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年1月20日、フランス国)を国際出願日として出願した特願平11-12504号の一部を平成20年9月10日に新たな特許出願としたものであって、平成22年3月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月30日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成22年7月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年7月30日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「大部分が平らな少なくとも一枚の上部プレート(3)と少なくとも一つの加熱発生源(5、16、17)を備えた加熱調理器具(1)であって、前記プレートがグラスセラミックでできており、前記プレートが、前記加熱発生源が下に置かれた少なくとも一つの凹面(9)を有し、該凹面がグラスセラミックでできており、加熱発生源が加熱エレメントであり、前記加熱エレメントが、およそ450℃の最高温度で較正されることを特徴とする器具。」と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「プレート」及び「凹面」について、「前記プレートがグラスセラミックでできており」及び「該凹面がグラスセラミックでできており」との限定を付加するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野および解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭59-123180号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a)「少なくとも1つの赤外線放射源を備え、この赤外線放射源によって加熱される食品を収容した調理器具を支持する支持手段の下方に前記赤外線放射源が設けられている構成の加熱装置において、・・・」(特許請求の範囲、下線は当審にて付与。以下同様。)

b)「第1図を参照すると、金属製を可とするほぼ円形の浅い盆状体1内の底板上に、例えば「マイクロサーム」(Microtherm)として知られている微多孔質材料で作製された断熱材層2が取付けられている。盆状体1はその対向する縁部に2個のフランジ3,4を備えており、各フランジ3,4は上方に屈曲した部分5,6をそれぞれ有している。
4個を可とし、そのうちの1個が符号7で示されている赤外線放射源である複数のランプが断熱材層2上に取付けられており、これら複数のランプ7はその両端がフランジ3,4によって支持されている。」(公報第3頁左上欄第8-20行)

c)「第1図に示された、4個を可とする複数の赤外線放射源であるランプ7はガラスセラミック層の下に置かれるのが好ましく、このガラスセラミックは本実施例ではコーニング ブラック クックトップ9632から作製されたものであり、標準的なワークトップ(worktop)の深さに匹敵する薄型調理テーブル(cooking hob)を構成している。
ガラスセラミック層の動作温度を制限するために、マイクロスイッチ12を作動するためのバイメタル棒からなる熱制限器11がランプ7と断熱材層2との間に設けられており、この熱制限器11はランプ7から放散される熱によってバイメタル棒が変形することによって動作するようになされ、温度がしきい値に達するとバイメタル棒の一端がマイクロスイッチ12を作動してランプ7に対する電力供給を遮断する。この熱制限器11の調整に際しては、温度の読みを変化させる原因となる赤外線放射の影響を考慮に入れる必要がある。」(公報第3頁左下欄第19行-右下欄第17行)

d)「第1図および第2図に示されている熱制限器11は、ガラスセラミックよりなる熱板の下面における最高温度を約700℃以下に保持する。熱制限器11はマイクロスイッチ12の誤動作を排除するように調整される必要があり、これによってランプに対する電力供給を遮断する。
このような装置に熱制限器を用いると、如何なる材質の調理用具も使用が可能となる利点がある。」(公報第4頁右下欄第8-15行)

e)「また加熱装置上に調理器具を置く代りに、それ自体が調理器具となる構成とすることもできる。」(公報第5頁右下欄第14-15行)

f)上記c)の記載事項から、「ガラスセラミック層」及び当該「ガラスセラミック層」のうち下に赤外線放射源が置かれた部分は、「ガラスセラミック」でできていると認められる。

上記a)?e)の記載事項、上記f)の認定事項および図面の図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「少なくとも一枚のガラスセラミック層と少なくとも一つの赤外線放射源を備えた加熱装置であって、前記ガラスセラミック層がガラスセラミックでできており、前記ガラスセラミック層が、前記赤外線放射源が下に置かれた部分を有し、該部分がガラスセラミックでできており、赤外線放射源がランプ7であり、前記ランプ7が、ガラスセラミックよりなる熱板の下面における最高温度を約700℃以下に保持するように制御される加熱装置。」

(2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-22389号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a)「(1)調理具を載置する載置板と、該載置板の直下に配置され前記調理具に交番磁界を供給する円形の誘導加熱コイルと、該誘導加熱コイルに磁界形成用の電源を供給する電源回路とよりなり、前記載置板には前記誘導加熱コイル対応部分にその誘導加熱コイルの外径よりも大きな凹みを設けたことを特徴とする誘導加熱調理器。」(特許請求の範囲)

b)「第1図乃至第4図は本発明の一実施例である誘導加熱調理器を示す。この実施例は、設置台の中に埋め込んで設置される業務用のものである。
(1)は誘導加熱調理器の本体であり、上部に載置板(2)を備え、またその載置板(2)の直下に円形の誘導加熱コイル(3)をそなえている。載置板(2)は厚み約6mm程度であるが、その中央部には深さ3mm程度のほぼ球面の凹み(2a)が円形に形成され、誘導加熱コイル(3)は凹み(2a)とほぼ同心位置に配置されている。」(公報第2頁左上欄第14行?右上欄第3行)

c)第1図から、「載置板(2)」は、大部分が平らな一枚のプレートであると認められる。

上記a)?b)の記載事項、上記c)の認定事項および図面の図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例2には、次の事項が記載されていると認められる。
「大部分が平らな一枚の載置板(2)と誘導加熱コイル(3)を備えた誘導加熱調理器であって、前記載置板(2)が、前記誘導加熱コイル(3)が下に置かれた少なくとも一つの凹み(2a)を有する誘導加熱調理器。」

3.対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ガラスセラミック層」は、本願補正発明の「(上部)プレート」に相当し、以下同様に、
「赤外線放射源」は「加熱発生源」に、
「加熱装置」は「(加熱調理)器具」に、
「ガラスセラミック」は「グラスセラミック」に、
「ランプ7」は「加熱エレメント」に、
それぞれ相当する。

また、引用発明の「赤外線放射源が下に置かれた部分」と本願補正発明の「加熱発生源が下に置かれた少なくとも一つの凹面」とは、「加熱発生源が下に置かれた部分」という点において共通する。
さらに、引用発明の「ランプ7が、ガラスセラミックよりなる熱板の下面における最高温度を約700℃以下に保持するように制御される」ことと、本願補正発明の「加熱エレメントが、およそ450℃の最高温度で較正される」こととは、「加熱エレメントが、ある最高温度で較正される」という点において共通する。

したがって、両者は、
「少なくとも一枚の上部プレートと少なくとも一つの加熱発生源を備えた加熱調理器具であって、前記プレートがグラスセラミックでできており、前記プレートが、前記加熱発生源が下に置かれた部分を有し、該部分がグラスセラミックでできており、加熱発生源が加熱エレメントであり、前記加熱エレメントが、ある最高温度で較正される器具。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明は、「大部分が平らな少なくとも一枚の上部プレート」が、「加熱発生源が下に置かれた少なくとも一つの凹面を有し、該凹面がグラスセラミックでできて」いるのに対し、引用発明は、「ガラスセラミック層」が当該構成を有しているか不明な点。

[相違点2]
本願補正発明は、「加熱エレメントが、およそ450℃の最高温度で較正される」のに対し、引用発明は、「ランプ7が、ガラスセラミックよりなる熱板の下面における最高温度を約700℃以下に保持するように制御される」点。

4.判断
[相違点1]について
本願補正発明と引用例2の記載事項とを対比する。
引用例2の「載置板(2)」は本願補正発明の「(上部)プレート」に相当し、以下同様に「誘導加熱コイル(3)」は「加熱発生源」に、「誘導加熱調理器」は「加熱調理器具」に、「凹み(2a)」は「凹面」に相当する。
したがって、引用例2の記載事項は、
「大部分が平らな一枚の上部プレートと加熱発生源を備えた加熱調理器具であって、前記プレートが、前記加熱発生源が下に置かれた少なくとも一つの凹面を有する加熱調理器具。」
と言い換えることができる。
そして、引用発明の「加熱装置」の「ガラスセラミック層」と引用例2の「誘導加熱調理器」の「載置板(2)」とは、加熱調理器具という同一の技術分野に属する対応する部材である。
そうすると、引用発明の「加熱装置」に引用例2に記載された「誘導加熱調理器」の構成を適用して、引用発明において、「ガラスセラミック層」を、「凹面」を有する大部分が平らな一枚のプレートにするとともに、「凹面」の下に「加熱発生源」を置くことは、当業者にとって容易に想到し得たものである。その際、引用発明において「ガラスセラミック層」は「ガラスセラミック」でできていることから、「ガラスセラミック層」の「凹面」も同様に「ガラスセラミック」でできていることになる。

よって、引用発明の「加熱装置」に引用例2に記載された「誘導加熱調理器」の構成を適用して、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

[相違点2]について
引用例1の前記e)には「また加熱装置上に調理器具を置く代りに、それ自体が調理器具となる構成とすることもできる。」と記載されており、引用発明は、「ガラスセラミック層」の上で食品を直接的に加熱調理することを可能とするものである。その際、直接調理される食品の過度の加熱を避けなければならないことは、当業者であれば当然想到し得たことであり、食品の過度の加熱を避けるために、加熱エレメントの最高温度をどの程度に制限するかは、当業者が適宜選択し得る設計事項であり、引用発明において、ガラスセラミックよりなる熱板の下面における最高温度を約700℃以下に保持する代わりに、「ランプ7」をおよそ450℃の最高温度で較正することは、当業者が適宜なし得る設計変更である。

そうすると、引用発明及び引用例1の記載事項から、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして、本願補正発明の奏する作用効果も、引用発明及び引用例1、2の記載事項から当業者が予測できる範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例1、2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
平成22年7月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年3月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「大部分が平らな少なくとも一枚の上部プレート(3)と少なくとも一つの加熱発生源(5、16、17)を備えた加熱調理器具(1)であって、前記プレートが、前記加熱発生源が下に置かれた少なくとも一つの凹面(9)を有し、加熱発生源が加熱エレメントであり、前記加熱エレメントが、およそ450℃の最高温度で較正されることを特徴とする器具。」

1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「第2.2.」に記載したとおりである。

2.対比および判断
本願発明は、前記「第2.」で検討した本願補正発明から、「プレート」及び「凹面」について、「前記プレートがグラスセラミックでできており」及び「該凹面がグラスセラミックでできており」との限定を省いたものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.3.及び4.」に記載したとおり、引用発明及び引用例1、2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、引用発明及び引用例1、2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例1、2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-31 
結審通知日 2011-09-06 
審決日 2011-09-20 
出願番号 特願2008-231804(P2008-231804)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F24C)
P 1 8・ 121- Z (F24C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 達之  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 佐野 遵
青木 良憲
発明の名称 加熱調理器具  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  

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