• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1251457
審判番号 不服2008-16707  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-01 
確定日 2012-02-17 
事件の表示 特願2002-548785「配置の際に対角線配線を考慮に入れるための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月13日国際公開、WO02/47165、平成16年 9月24日国内公表、特表2004-529402〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年12月5日(パリ条約による優先権主張 2000年12月6日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成20年3月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成20年7月1日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同年7月31日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成20年7月31日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年7月31日付けの手続補正を却下する。

[理由]
2-1.補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項54(以下、「補正後の請求項54」という。)の記載は、以下のとおり補正された。

「 【請求項54】
a)少なくとも2つのエッジは、互いに平行でも直角でもなく、接続グラフは複数のエッジを有し、回路要素のセットを接続する接続グラフを特定し、
b)前記接続グラフに基づいて配置距離関数を特定し、
c)前記回路モジュールの配置を特定するための接続グラフを用い、
ICレイアウトは、回路要素のセットを有し、集積回路(IC)レイアウト
における回路モジュールを置く方法。」

2-2.補正の目的
本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項各号の目的に該当するかどうか検討する。

2-2-1.特許請求の範囲の減縮(平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号)

(1)本件補正前の平成20年2月22日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1(以下、「補正前の請求項…」という。)の記載は以下のとおりである。

「 【請求項1】
コンピュータの少なくとも1つのプロセッサを用いて回路レイアウトの領域内に回路モジュールを設置するための方法であって:
a)
回路レイアウトの領域内に回路モジュールを設置するために、複数の回路モジュールを受領し; そして
b)
前記複数の回路モジュールのうちの少なくとも1つの配置を、少なくとも1つの対角線を用いて確定することによって、少なくとも2つの回路モジュールを接続するのに必要なワイヤの長さの評価量を測定する方法。」

補正後の請求項54には、補正前の請求項1の「コンピュータの少なくとも1つのプロセッサ」が記載されていないし、それを限定したものが記載されているわけでもない。
したがって、補正後の請求項54は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)を限定することにより、特許請求の範囲の減縮を目的として補正されたものとはいえない。
また、上記のとおり、補正後の請求項54には、補正前の請求項1に記載された発明特定事項またはそれを限定した事項が記載されていないのであるから、補正後の請求項54は、少なくとも補正前の請求項1の発明特定事項を有する、補正前の請求項1を引用する他の補正前の請求項に記載した発明特定事項を限定することにより、特許請求の範囲の減縮を目的として補正されたものでないことは明らかである。

(2)補正前の請求項12の記載は以下のとおりである。

「 【請求項12】
回路レイアウトのある領域内の一組のネットをルーティングするために対角線配線とマンハッタン配線を使用するルータを使用する電子設計プロセスに対して、回路レイアウト領域内に回路モジュールを配置する方法であって、該方法が、ルーティング中の潜在的対角線配線に対応する配置測定基準を測定するステップを含む方法。」

補正後の請求項54には、補正前の請求項12の「回路レイアウトのある領域内の一組のネットをルーティングするために対角線配線とマンハッタン配線を使用するルータ」が記載されていないし、それを限定したものが記載されているわけでもない。
したがって、補正後の請求項54は、補正前の請求項12に記載した発明特定事項を限定することにより、特許請求の範囲の減縮を目的として補正されたものとはいえない。
また、上記のとおり、補正後の請求項54には、補正前の請求項12に記載された発明特定事項またはそれを限定した事項が記載されていないのであるから、補正後の請求項54は、少なくとも補正前の請求項12の発明特定事項を有する、補正前の請求項12を引用する他の補正前の請求項に記載した発明特定事項を限定することにより、特許請求の範囲の減縮を目的として補正されたものでないことは明らかである。

(3)補正前の請求項19の記載は以下のとおりである。

「 【請求項19】
回路レイアウトの領域内に回路モジュールを配置するための方法であって、前記回路レイアウト領域が、前記回路レイアウト領域内の複数の回路素子を表す1つのネットを含み、
前記方法が、
a)前記ネットの前記回路素子を囲む囲みボックスを形成するステップ
と、
b)対角線ラインにより前記囲みボックスの属性を測定するステップと、
c)前記測定した属性に基づいて配置コストを指定するステップとをさらに含む方法。」

補正後の請求項54には、補正前の請求項19の「回路素子」が記載されていない。「回路要素」は「回路素子」の上位概念であり、「回路素子」により」「回路モジュール」が構成されるものであるとしても、「回路素子」を限定したものが「回路要素」または「回路モジュール」とはいえない。
したがって、補正後の請求項54は、補正前の請求項19に記載した発明特定事項を限定することにより、特許請求の範囲の減縮を目的として補正されたものとはいえない。
また、上記のとおり、補正後の請求項54には、補正前の請求項19に記載された発明特定事項またはそれを限定した事項が記載されていないのであるから、補正後の請求項54は、少なくとも補正前の請求項19の発明特定事項を有する、補正前の請求項19を引用する他の補正前の請求項に記載した発明特定事項を限定することにより、特許請求の範囲の減縮を目的として補正されたものでないことは明らかである。

(4)補正前の請求項37の記載は以下のとおりである。

「 【請求項37】
回路レイアウトの領域内に回路モジュールを配置するための方法であって、前記回路レイアウト領域が、前記回路レイアウト領域内の複数の回路素子を表す1つのネットを含み、
前記方法が、
a)前記ネットの前記回路素子を接続するための相互接続ラインのトポロジーをモデル化する接続グラフを形成するステップであって、前記接続グラフが一組の縁部を有し、各縁部が前記ネットの2つの回路素子を接続していて、少なくとも1つの縁部が、少なくともその一部が対角線であるステップと、
b)前記接続グラフの属性を測定するステップと、
c)前記測定した属性に基づいて配置コストを指定するステップとを含む方法。」

補正後の請求項54には、補正前の請求項37の「回路素子」が記載されていないから、上記(3)の場合と同様に、補正後の請求項54は、補正前の請求項37に記載した発明特定事項を限定することにより、特許請求の範囲の減縮を目的として補正されたものとはいえない。
また、補正前の請求項37を引用する他の補正前の請求項に記載した発明特定事項を限定することにより、特許請求の範囲の減縮を目的として補正されたものでないことも明らかである。

(5)補正前の請求項57の記載は以下のとおりである。

「 【請求項57】
回路レイアウトの領域内に回路モジュールを配置するための方法であって、前記回路レイアウト領域が複数のネットを含み、各ネットが前記回路レイアウト領域内の一組の回路素子を表し、前記方法が、
a)対角線分割ラインにより前記回路レイアウト領域を2つのサブ領域に分割するステップと、
b)前記対角線分割ラインにより生成した前記サブ領域の両方に回路素子を有するネットの数を測定するステップとを含む方法。」

補正後の請求項54には、補正前の請求項57の「回路素子」が記載されていないから、上記(3)の場合と同様に、補正後の請求項54は、補正前の請求項57に記載した発明特定事項を限定することにより、特許請求の範囲の減縮を目的として補正されたものとはいえない。
また、補正前の請求項57を引用する他の補正前の請求項に記載した発明特定事項を限定することにより、特許請求の範囲の減縮を目的として補正されたものでないことも明らかである。

(6)補正前の請求項69の記載は以下のとおりである。

「【請求項69】
回路レイアウトの領域を複数のサブ領域に分割する配置装置に対して、配置コストを計算するための方法であって、該方法が、
a)一組のサブ領域に対して、前記一組のサブ領域を接続している接続グラフを識別するステップであって、前記接続グラフが、少なくともその一部が対角線である少なくとも1つの縁部を有するステップと、
b)前記接続グラフの属性を計算するステップと、
c)前記計算した属性から配置コストを識別するステップとを含む方
法。」

補正後の請求項54には、補正前の請求項69の「回路レイアウトの領域を複数のサブ領域に分割する配置装置」が記載されていないし、それを限定したものが記載されているわけでもない。
したがって、補正後の請求項54は、補正前の請求項69に記載した発明特定事項を限定することにより、特許請求の範囲の減縮を目的として補正されたものとはいえない。
また、上記のとおり、補正後の請求項54には、補正前の請求項69に記載された発明特定事項またはそれを限定した事項が記載されていないのであるから、補正後の請求項54は、少なくとも補正前の請求項69の発明特定事項を有する、補正前の請求項69を引用する他の補正前の請求項に記載した発明特定事項を限定することにより、特許請求の範囲の減縮を目的として補正されたものでないことは明らかである。

(7)補正前の請求項81の記載は以下のとおりである。

「 【請求項81】
回路レイアウトの領域内で、一組のネットをルーティングするために、対角線配線およびマンハッタン配線を使用するルータを使用する電子設計プロセスに対して、回路レイアウトの領域内に回路モジュールを配置するための方法であって、前記回路レイアウト領域が複数のネットを含み、前記方法が、
a)1つのネットを選択するステップと、
b)前記選択したネットに対して、ルーティング中、潜在的対角線配線に対応する遅延コストを計算するステップと、
c)前記計算した遅延コストから配置コストを識別するステップとを含む方法。」

補正後の請求項54には、補正前の請求項81の「回路レイアウトの領域内で、一組のネットをルーティングするために、対角線配線およびマンハッタン配線を使用するルータ」が記載されていないし、それを限定したものが記載されているわけでもない。
したがって、補正後の請求項54は、補正前の請求項81に記載した発明特定事項を限定することにより、特許請求の範囲の減縮を目的として補正されたものとはいえない。
また、上記のとおり、補正後の請求項54には、補正前の請求項81に記載された発明特定事項またはそれを限定した事項が記載されていないのであるから、補正後の請求項54は、少なくとも補正前の請求項81の発明特定事項を有する、補正前の請求項81を引用する他の補正前の請求項に記載した発明特定事項を限定することにより、特許請求の範囲の減縮を目的として補正されたものでないことは明らかである。

以上のように、補正後の請求項54は、補正前の請求項のいずれかに記載した発明特定事項を限定することにより、特許請求の範囲の減縮を目的として補正されたものとはいえない。

2-2-2.明りょうでない記載の釈明(平成18年改正前特許法第17条の2第4項第4号)

(1)補正前の請求項1の記載は以下のとおりである。

「 【請求項1】
コンピュータの少なくとも1つのプロセッサを用いて回路レイアウトの領域内に回路モジュールを設置するための方法であって:
a)
回路レイアウトの領域内に回路モジュールを設置するために、複数の回路モジュールを受領し; そして
b)
前記複数の回路モジュールのうちの少なくとも1つの配置を、少なくとも1つの対角線を用いて確定することによって、少なくとも2つの回路モジュールを接続するのに必要なワイヤの長さの評価量を測定する方法。」

補正前の請求項1の「コンピュータの少なくとも1つのプロセッサを用いて回路レイアウトの領域内に回路モジュールを設置するための方法であっ
て」との記載に対して、明りょうでないとの拒絶理由は示されていないし、不明りょうな記載とはいえない。
補正後の請求項54には、補正前の請求項1の不明りょうな記載ではない「コンピュータの少なくとも1つのプロセッサ」が記載されていないし、それを限定したものが記載されているわけでもない。
したがって、補正前の請求項1の不明りょうな記載ではない発明特定事項またはそれを限定した事項のない補正後の請求項54は、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする、補正前の請求項1の明りょうでない記載の釈明を目的として補正されたものとはいえない。
また、上記のとおり、補正後の請求項54には、補正前の請求項1に記載された不明りょうな記載ではない発明特定事項またはそれを限定した事項が記載されていないのであるから、補正後の請求項54は、少なくとも補正前の請求項1の不明りょうな記載ではない発明特定事項を有する、補正前の請求項1を引用する他の補正前の請求項の、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする、明りょうでない記載の釈明を目的として補正されたものでないことは明らかである。
なお、拒絶査定の備考に
「・平成19年8月20日付け拒絶理由通知書に記載した理由3について
依然,解消していません。
「コンピュータの少なくとも1つのプロセッサを用いて」との記載だけでは,ソフトウェアによる情報処理をハードウェア資源を用いて実現する際に具体的にどのような実現手段を採用しているのか特定できません。」
との指摘があるが、「理由3」は特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないというものであり、「コンピュータの少なくとも1つのプロセッサを用いて」との記載自体は不明りょうなものではないから、補正後の請求項54が、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする、補正前の請求項1の明りょうでない記載の釈明を目的として補正されたものでないことは明らかである。

(2)補正前の請求項12の記載は以下のとおりである。

「 【請求項12】
回路レイアウトのある領域内の一組のネットをルーティングするために対角線配線とマンハッタン配線を使用するルータを使用する電子設計プロセスに対して、回路レイアウト領域内に回路モジュールを配置する方法であって、該方法が、ルーティング中の潜在的対角線配線に対応する配置測定基準を測定するステップを含む方法。」

補正前の請求項12の「対角線配線」が明りょうでないとしても、「マンハッタン配線」について、明りょうでないとの拒絶理由は示されていない
し、不明りょうな記載とはいえないので、上記記載は、回路レイアウトのある領域内の一組のネットをルーティングするためにマンハッタン配線を使用するルータを使用すること、については不明りょうではない。
補正後の請求項54には、補正前の請求項12の不明りょうでない、回路レイアウトのある領域内の一組のネットをルーティングするためにマンハッタン配線を使用するルータを使用すること、またはそれを限定したものについての記載がない。
したがって、補正前の請求項12の不明りょうな記載ではない発明特定事項またはそれを限定した事項のない補正後の請求項54は、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする、補正前の請求項12の明りょうでない記載の釈明を目的として補正されたものとはいえない。
また、上記のとおり、補正後の請求項54には、補正前の請求項12に記載された不明りょうな記載ではない発明特定事項またはそれを限定した事項が記載されていないのであるから、補正後の請求項54は、少なくとも補正前の請求項12の不明りょうな記載ではない発明特定事項を有する、補正前の請求項12を引用する他の補正前の請求項の、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする、明りょうでない記載の釈明を目的として補正されたものでないことは明らかである。

(3)補正前の請求項19の記載は以下のとおりである。

「 【請求項19】
回路レイアウトの領域内に回路モジュールを配置するための方法であって、前記回路レイアウト領域が、前記回路レイアウト領域内の複数の回路素子を表す1つのネットを含み、
前記方法が、
a)前記ネットの前記回路素子を囲む囲みボックスを形成するステップ
と、
b)対角線ラインにより前記囲みボックスの属性を測定するステップと、
c)前記測定した属性に基づいて配置コストを指定するステップとをさらに含む方法。」

補正前の請求項19の「回路素子」との記載に対して、それが明りょうでないとの拒絶理由は示されていないし、不明りょうな記載とはいえない。
補正後の請求項54には、補正前の請求項19の不明りょうな記載ではない「回路素子」が記載されていないし、それを限定したものが記載されているわけでもない。「回路要素」及び「回路モジュール」が「回路素子」を限定したものでないことは、前述のとおりである。
したがって、補正前の請求項19の不明りょうな記載ではない発明特定事項のない補正後の請求項54は、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする、補正前の請求項19の明りょうでない記載の釈明を目的として補正されたものとはいえない。
また、上記のとおり、補正後の請求項54には、補正前の請求項19に記載された不明りょうな記載ではない発明特定事項またはそれを限定した事項が記載されていないのであるから、補正後の請求項54は、少なくとも補正前の請求項19の不明りょうな記載ではない発明特定事項を有する、補正前の請求項19を引用する他の補正前の請求項の、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする、明りょうでない記載の釈明を目的として補正されたものでないことは明らかである。

(4)補正前の請求項37の記載は以下のとおりである。

「 【請求項37】
回路レイアウトの領域内に回路モジュールを配置するための方法であって、前記回路レイアウト領域が、前記回路レイアウト領域内の複数の回路素子を表す1つのネットを含み、
前記方法が、
a)前記ネットの前記回路素子を接続するための相互接続ラインのトポロジーをモデル化する接続グラフを形成するステップであって、前記接続グラフが一組の縁部を有し、各縁部が前記ネットの2つの回路素子を接続していて、少なくとも1つの縁部が、少なくともその一部が対角線であるステップと、
b)前記接続グラフの属性を測定するステップと、
c)前記測定した属性に基づいて配置コストを指定するステップとを含む方法。」

補正後の請求項54には、補正前の請求項37の「回路素子」が記載されていないから、上記(3)の場合と同様に、補正後の請求項54は、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする、補正前の請求項37の明りょうでない記載の釈明を目的として補正されたものとはいえない。
また、補正前の請求項37を引用する他の補正前の請求項の、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする、明りょうでない記載の釈明を目的として補正されたものでないことも明らかである。

(5)補正前の請求項57の記載は以下のとおりである。

「 【請求項57】
回路レイアウトの領域内に回路モジュールを配置するための方法であって、前記回路レイアウト領域が複数のネットを含み、各ネットが前記回路レイアウト領域内の一組の回路素子を表し、前記方法が、
a)対角線分割ラインにより前記回路レイアウト領域を2つのサブ領域に分割するステップと、
b)前記対角線分割ラインにより生成した前記サブ領域の両方に回路素子を有するネットの数を測定するステップとを含む方法。」

補正後の請求項54には、補正前の請求項57の「回路素子」が記載されていないから、上記(3)の場合と同様に、補正後の請求項54は、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする、補正前の請求項57の明りょうでない記載の釈明を目的として補正されたものとはいえない。
また、補正前の請求項57を引用する他の補正前の請求項の、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする、明りょうでない記載の釈明を目的として補正されたものでないことも明らかである。

(6)補正前の請求項69の記載は以下のとおりである。

「【請求項69】
回路レイアウトの領域を複数のサブ領域に分割する配置装置に対して、配置コストを計算するための方法であって、該方法が、
a)一組のサブ領域に対して、前記一組のサブ領域を接続している接続グラフを識別するステップであって、前記接続グラフが、少なくともその一部が対角線である少なくとも1つの縁部を有するステップと、
b)前記接続グラフの属性を計算するステップと、
c)前記計算した属性から配置コストを識別するステップとを含む方
法。」

補正前の請求項69の「回路レイアウトの領域を複数のサブ領域に分割する配置装置」との記載に対して、明りょうでないとの拒絶理由は示されていないし、不明りょうな記載とはいえない。
補正後の請求項54には、補正前の請求項69の不明りょうな記載ではない「回路レイアウトの領域を複数のサブ領域に分割する配置装置」が記載されていないし、それを限定したものが記載されているわけでもない。
したがって、補正前の請求項69の不明りょうな記載ではない発明特定事項またはそれを限定した事項のない補正後の請求項54は、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする、補正前の請求項69の明りょうでない記載の釈明を目的として補正されたものとはいえない。
また、上記のとおり、補正後の請求項54には、補正前の請求項69に記載された不明りょうな記載ではない発明特定事項またはそれを限定した事項が記載されていないのであるから、補正後の請求項54は、少なくとも補正前の請求項69の不明りょうな記載ではない発明特定事項を有する、補正前の請求項69を引用する他の補正前の請求項の、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする、明りょうでない記載の釈明を目的として補正されたものでないことは明らかである。

(7)補正前の請求項81の記載は以下のとおりである。

「 【請求項81】
回路レイアウトの領域内で、一組のネットをルーティングするために、対角線配線およびマンハッタン配線を使用するルータを使用する電子設計プロセスに対して、回路レイアウトの領域内に回路モジュールを配置するための方法であって、前記回路レイアウト領域が複数のネットを含み、前記方法が、
a)1つのネットを選択するステップと、
b)前記選択したネットに対して、ルーティング中、潜在的対角線配線に対応する遅延コストを計算するステップと、
c)前記計算した遅延コストから配置コストを識別するステップとを含む方法。」

補正前の請求項81の「対角線配線」が明りょうでないとしても、「マンハッタン配線」について、明りょうでないとの拒絶理由は示されていない
し、不明りょうな記載とはいえないので、上記記載は、回路レイアウトの領域内で、一組のネットをルーティングするために、マンハッタン配線を使用するルータを使用すること、については不明りょうではない。
補正後の請求項54には、補正前の請求項81の不明りょうでない、回路レイアウトの領域内で、一組のネットをルーティングするために、マンハッタン配線を使用するルータを使用すること、またはそれを限定したものについての記載がない。
したがって、補正前の請求項81の不明りょうな記載ではない発明特定事項またはそれを限定した事項のない補正後の請求項54は、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする、補正前の請求項81の明りょうでない記載の釈明を目的として補正されたものとはいえない。
また、上記のとおり、補正後の請求項54には、補正前の請求項81に記載された不明りょうな記載ではない発明特定事項またはそれを限定した事項が記載されていないのであるから、補正後の請求項54は、少なくとも補正前の請求項81の不明りょうな記載ではない発明特定事項を有する、補正前の請求項81を引用する他の補正前の請求項の、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする、明りょうでない記載の釈明を目的として補正されたものでないことは明らかである。

以上のように、補正後の請求項54は、補正前の請求項のいずれかに記載された、拒絶理由通知で明りょうでないとされた事項についてする、明りょうでない記載の釈明を目的として補正されたものとはいえない。

2-2-3.請求項の削除(平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号)
補正後の請求項54とすることが、請求項の削除を目的として補正されたものでないことは明らかである。

2-2-4.誤記の訂正(平成18年改正前特許法第17条の2第4項第3号)
補正後の請求項54とすることが、誤記の訂正を目的として補正されたものでないことは明らかである。

したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号のいずれの目的にも該当しない。

2-3.むすび
以上のように、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に適合しないので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下する。

3.本願発明について
3-1.特許請求の範囲の記載
平成20年7月31日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の記載は、平成20年2月22日付けの手続補正書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。
その特許請求の範囲の請求項1(以下、単に「請求項1」という。他の請求項についても同様にする。)の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
コンピュータの少なくとも1つのプロセッサを用いて回路レイアウトの領域内に回路モジュールを設置するための方法であって:
a)
回路レイアウトの領域内に回路モジュールを設置するために、複数の回路モジュールを受領し; そして
b)
前記複数の回路モジュールのうちの少なくとも1つの配置を、少なくとも1つの対角線を用いて確定することによって、少なくとも2つの回路モジュールを接続するのに必要なワイヤの長さの評価量を測定する方法。」

3-2.拒絶理由
平成19年8月20日付けで通知された拒絶の理由のうち、理由1は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないとするもので、(1.1)として次のように指摘されている。

「(1.1)請求項1の記載では,「対角線を使用」がコストの測定にどのような影響を及ぼすのか(全く)特定できない。
したがって,請求項1の記載では,対角線を使用することの意義又は意味が(全く)不明である。
また,その結果,発明の詳細な説明における開示との対応が不明になっている。
他の請求項についても同様である。」

3-3.当審の判断
(1)請求項1には「前記複数の回路モジュールのうちの少なくとも1つの配置を、少なくとも1つの対角線を用いて確定することによって、少なくとも2つの回路モジュールを接続するのに必要なワイヤの長さの評価量を測定する」と記載されているが、この記載では、「対角線」をどのように用いて回路モジュールの配置を確定するのか、また、「対角線」をどのように用いて回路モジュールを接続するのに必要なワイヤの長さの評価量を測定するのか不明であるから、請求項1に係る発明は明確でないといわざるをえない。

(2)そもそも「対角線」とは、何の対角線のことであるのか不明である。
請求項1を間接的に引用する請求項9に記載された「距離(D)」を計算する式が、発明の詳細な説明の段落【0010】に記載された、図9に関する式(A)と同じである。
段落【0010】には次の記載がされている。
「図9は、図1のピン135、145および160が表すネットに対する囲みボックス905の一例である。ライン910は、ボックス905の2つの対向する隅935および940間の最短距離を通る。図9に示すように、このラインの一部は対角線である。より詳細に説明すると、この例の場合に
は、このラインの1つのセグメント920は対角線である。一方、他のセグメント915は、水平である。」
普通の幾何学的な意味で用いられる対角線は、図9でいえば、「ボックス905」の2つの対向する「隅935および940間」をまっすぐに結ぶ線分のことであり、「セグメント920」のような線分のことではない。
また、発明の詳細な説明には、普通の意味で用いられる対角線についての記載はない。
そして、請求項1に記載された「対角線」が普通の意味ではないと解釈すべき適切な理由は見いだすことができないから、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。

(3)仮に、請求項1に記載された「対角線」が、斜線のことであるとしても、それが何の斜線であるのか不明であるし、斜線をどのように用いて回路モジュールの配置を確定するのか、また、斜線をどのように用いて回路モジュールを接続するのに必要なワイヤの長さの評価量を測定するのか不明であるから、請求項1に係る発明は明確でないといわざるをえない。

(4)なお、請求項1の記載は、拒絶査定の備考で、
「そもそも,請求項1の「前記複数の回路モジュールのうちの少なくとも1つの配置を、少なくとも1つの対角線を用いて確定することによって、少なくとも2つの回路モジュールを接続するのに必要なワイヤの長さの評価量を測定する」との記載では,対角線を用いて配置を確定した後にワイヤの長さを評価することを意味するのか,配置を確定する際に対角線を用いたワイヤの長さを評価することを意味するのか,それら以外を意味するのかすら不明です。」
とあるように、その意味を一義的に特定できない不明確なものである。

(5)上記のように、請求項1に係る発明は明確でなく、発明の詳細な説明に記載されたものともいえないので、本願の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないこと
は、他の請求項の記載を検討するまでもないが、仮に、平成20年7月31日付けの手続補正が適法に行われたものとして、その請求項1についても一応の検討をしておく。
平成20年7月31日付けの手続補正書の請求項1(以下、「仮請求項
1」という。)の記載は以下のとおりである。

「 【請求項1】
集積回路(IC)レイアウト内に回路モジュールを設置するための方法で
あって:該ICレイアウトは、1つのネットと、複数の回路素子とを含み、該ネットは、該回路素子の1組の間の相互接続を表し、該方法は、コン
ピュータの少なくとも1つのプロセッサによって実施され、該方法は、下記工程を含む:
a) 該ネットの該回路素子を囲む囲みボックスを構成する工程と;そして
b) 対角線を用いて、該囲みボックスの属性を測定する工程と;
c) 測定された該属性に基づいて、設置コストを特定する工程。」

仮に、上記記載の「対角線」を斜線と読み替えたとしても、それが何の斜線であるのか不明であるし、それをどのように用いて「囲みボックスの属
性」を測定するのか不明であり、「設置コスト」をどのようにして特定するのかも不明であるから、仮請求項1に係る発明は明確でないといわざるをえない。
そもそも「囲みボックスの属性」とは何のことか不明である。
請求人は、平成20年8月11日付けで補正された審判請求書の請求の理由で、
「5.拒絶査定の根拠となった平成19年 8月22日付け拒絶理由通知書に記載した理由1-3に対する出願人の反論:
……
次に、工程b) 対角線を用いて、囲みボックスの属性を測定する工程について検討すると: ここで、「囲みボックスの属性」と言う意味不明な用語が出てくるので戸惑うが、囲みボックスは、自己の属性(D)と称して、該囲みボックスの互いに対向する2つの隅の間の距離の長さを、請求項3記載の下記方程式によって特定します:
D=[L-{S(cosA/sinA)}]+S/sinA.
……」
と主張している。
「囲みボックスの属性」が、平成20年7月31日付けの手続補正書の請求項3では、明確に定義されているとしても、仮請求項1の記載では「意味不明な用語」であるから、仮請求項1に係る発明が明確でないことは明らかである。

3-4.むすび
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-27 
結審通知日 2010-06-02 
審決日 2010-06-15 
出願番号 特願2002-548785(P2002-548785)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06F)
P 1 8・ 574- Z (G06F)
P 1 8・ 537- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 学  
特許庁審判長 加藤 恵一
特許庁審判官 吉村 博之
伊藤 隆夫
発明の名称 配置の際に対角線配線を考慮に入れるための方法および装置  
代理人 齋藤 和則  
代理人 伊東 哲也  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ