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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1251810
審判番号 不服2010-25231  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-09 
確定日 2011-10-24 
事件の表示 特願2010- 83483号「コネクタ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年3月31日の出願であって、平成22年8月5日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、平成22年11月9日に本件審判が請求されるとともに、審判請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成22年11月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年11月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の【請求項1】は、
「【請求項1】
一端側を相手側コネクタに接続される端子と、端子を保持するコネクタ本体とを備え、端子の他端側を基板に接続するようにしたコネクタにおいて、
前記端子の一端側が配置されるコネクタ本体の一部を、基板の端部に設けた切り欠き部内に配置可能に形成し、
基板の一方の面上に配置されるコネクタ本体の他の部分を、切り欠き部内に配置される部分よりも基板の厚さ方向の寸法が小さくなるように形成し、
コネクタ本体における基板の切り欠き部内に配置される部分を、基板の一方の面上に配置される他の部分よりも基板の他方の面側に向かって突出し且つ基板の他方の面から外部に突出しないように形成した
ことを特徴とするコネクタ。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である切り欠き部内に配置される部分について、「基板の一方の面上に配置される他の部分よりも基板の他方の面側に向かって突出し且つ基板の他方の面から外部に突出しないように形成した」と限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-161912号公報(以下「刊行物1」という。)には、モジュラージャックなどのコネクタにおいて、回路基板に実装するための構造に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【0002】
【従来の技術】図6は従来のモジュラージャック200の概略的一部破段斜視図である。・・・モジュラージャック200は回路基板250の上に直接載置され、取付金具220が回路基板250にハンダ付けされることで実装される。この結果、モジュラージャック200は回路基板250に強固に固定される。
【0003】しかしこのモジュラージャック200は回路基板250の上に直接載置されているため、回路基板250上に実装した際の高さはモジュラージャック本体210の高さに制約され、一定以上には小さくできない。このため、このモジュラージャック200が装備された通信装置、例えばパーソナルコンピュータに用いるモデムボード等は一定値、すなわちモジュラージャック200の厚さと回路基板250の厚さの合計値以下には薄型化することができなかった。
【0004】そこで図7に示すモジュラージャック300が考案された。このモジュラージャック300では、モジュラージャック本体310の左右側面のほぼ上端部に取付部320を膨出させている。このモジュラージャック300は、回路基板250に設けた切り欠き251に嵌め込まれて回路基板250に実装されている。したがって、このモジュラージャック300によると、回路基板250の厚さ分だけ前記通信装置全体の厚みを少なくすることができる。また、このモジュラージャック300では取付金具321を取付部320に設け、回路基板250に開口した装着穴252に挿入するようになっているので、回路基板250に強固に固定することができる。」
(イ)「【0012】モジュラージャック100は、図1に示すように、略立方体状のモジュラージャック本体110(『コネクタ本体』に相当する)と、モジュラージャック100を回路基板250の実装面上に固定するための一対の金属製の取付片120と、この取付片120をモジュラージャック本体110に固定する固定部材130と、電話線やLANケーブル等のモジュラー(図示せず)からの電気信号を外部へ取り出すための導通用コンタクト150とから構成されている。」
(ウ)「【0015】またモジュラージャック本体110には、図外のモジュラーを差込むための差込み部114が設けられており、差込み部114の底面には導通用コンタクト150が納められるコンタクト収納部115が形成されている。組み立て時には導通用コンタクト150の接触部153の開放端が外部に引き出された状態で、その一部がこのコンタクト収納部115に納められ、導通用コンタクト150の立ち上がり部152がモジュラージャック本体110の背面に沿うようにして外部に引き出される(図3参照)。」
(エ)「【0017】導通用コンタクト150は、導電性を有する金属細帯板を折曲形成したのものであって、略V字形状に折曲形成された接触部153と、この接触部153の一端から上方に立ち上がった立ち上がり部152と、この立ち上がり部152から直交する方向に延折された端子部151とが一体に形成されている。・・・」
(オ)「【0020】こうして構成されたモジュラージャック100は、図4(a)(b)に示すように回路基板250の縁部に設けられた切り欠き251に挿入され、取付片120の翼部121によって回路基板250に支持される。そして翼部121が回路基板250にハンダ付けされ、回路基板250の実装面上に固定される。また、このとき導通用コンタクト150も回路基板250の実装面上に位置されているので、図示しない配線回路へのハンダ付けも容易に行なえる。」
(カ)【図7】には、別の従来例に係るモジュラージャックを示す斜視図が記載されており、そこには、モジュラージャック本体310が、取付部320等、一部分を除いて、回路基板250の縁部に設けられた切り欠き251に挿入されたものが図示されている。
モジュラージャック本体310の、取付部320等の回路基板250の上面上に配置される部分は、回路基板250の厚さ方向の寸法が、モジュラージャック本体310の切り欠き251に挿入される部分よりも、小さくなるように形成されている。
モジュラージャック本体310における切り欠き251に挿入される部分は、取付部320等の回路基板250の上面上に配置される部分よりも回路基板250の下面側に向かって突出するように形成されている。

すると、記載事項(ア)の【従来の技術】の「図7に示すモジュラージャック300」に着目して、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものということができる。
「モジュラージャック本体310の左右側面のほぼ上端部に取付部320を膨出させているモジュラージャック300において、
モジュラージャック本体310が、取付部320等、一部分を除いて、回路基板250の縁部に設けられた切り欠き251に嵌め込まれて回路基板250に実装され、
モジュラージャック本体310の、回路基板250の上面上に配置される部分は、回路基板250の厚さ方向の寸法が、切り欠き251に挿入される部分よりも、小さくなるように形成し、
モジュラージャック本体310における切り欠き251に挿入される部分は、回路基板250の上面上に配置される部分よりも回路基板250の下面側に向かって突出するように形成した
モジュラージャック300。」

(2)本願出願前に頒布された刊行物である特開2002-151825号公報(以下「刊行物2」という。)には、電子部品であるコネクタを回路基板に実装する実装方法に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【0032】(実施の形態3)図3(a)?(c)は、実施の形態3を示す分解斜視図、正面断面図および側面断面図である。
【0033】回路基板1は、回路部2と、回路部2のコネクタ5の取付け端部に貫通成形されてコネクタ5が嵌合可能な空洞部11と、回路部2および空洞部11の周囲に形成された捨て基板部3とで構成されている。回路部2には、表面で空洞部11に近い部分にコネクタ5の端子部5aと接続される回路導体7が形成されている。・・・
【0036】上記実施の形態3によれば、回路基板1に予め空洞部11を形成しておくとともに、コネクタ5に位置決めピン31を突設しておくことにより、空洞部11でコネクタ5の前後方向および幅方向の位置決めできるとともに、コネクタ5の端子部5aと位置決めピン31とにより、コネクタ5を高さ方向に位置決めをしてコネクタ5を略水平姿勢とし、端子部5aと回路導体2aとをはんだ付けすることにより、コネクタ5を容易かつ精度良く実装することができる。したがって、従来のような大きな受け台も不要で、その保守管理の必要も無く、低い製造コストでコネクタ5を回路基板1に実装することができる。なお、図3に示す実施の形態3では、回路基板1の前部の捨て基板部3が無くして空洞部11の前辺部が開放されていてもよい。」
(イ)「【0038】・・・図5(a)?(c)は、実施の形態3の第2変形例を示す分解斜視図、正面断面図および側面断面図である。
【0039】この第2変形例では、コネクタ5の左右側面に、空洞部11の左右側辺の捨て基板部2の表面に掛止される段部33がそれぞれ前後方向に全長にわたって形成され、これら段部33は、コネクタ5の端子部5aが回路部2の回路導体2aに接したときに水平姿勢となって保持される高さ位置に形成される。そして、これら段部33の突出量は、端子部5aと回路導体2aのはんだ付けまでの間コネクタ5を保持できるだけでよいので、空洞部11の大きさとコネクタ5の大きさとを調節すれば、微少の段差34でよく、実装後に段部33を除去する必要はない。
【0040】この第2変形例によれば、実施の形態3と同様の効果を奏するとともに、空洞部11内でより安定してコネクタ5を水平姿勢で保持することができる。・・・」
(ウ)「【0044】・・・
(実施の形態5)図8(a),(b)は、実施の形態5を示す分解状態および組立状態の側面断面図である。」
(エ)「【0058】請求項7記載の発明によれば、コネクタを空洞部に挿入したときに回路基板に支えられるように、コネクタの側面に段部を設け、段部はコネクタの一部を小さくして設けることにより、実装後に何ら手を加える必要がなく、コネクタを切欠き部に精度良く位置決めして実装することができ、実装のための部品も不要で製造コストを削減することができる。
・・・
【0060】請求項10記載の発明によれば、切欠き部を半抜き状とすることにより、回路基板の形成と同時に保持凹部を形成でき、余分な部材や工程が不要で製造コストを削減できるという作用を有する。」
(オ)【図5】には、本発明に係るコネクタの実装方法の実施の形態3の第2変形例が記載されており、そこには、
コネクタ5に回路基板1の表面に掛止される段部33が形成され、
コネクタ5の一部が、空洞部11内で、回路基板1の厚み内に入り込んで、回路基板1と並列に配置された構成が記載されている。
(カ)【図3】、【図4】、【図5】、【図6】には、それぞれ本発明に係るコネクタの実装方法の実施の形態が記載されており、そこには、
コネクタ5が、コネクタ5の上面が回路基板1の回路部2の上面より上側に突出し、コネクタ5の下面が回路基板1の回路部2の下面と面一となる態様が記載されている。
また、【図8】、【図10】、【図11】には、それぞれ本発明に係るコネクタの実装方法の実施の形態、及び従来のコネクタの実装方法が記載されており、そこには、
コネクタ5が、コネクタ5の上面が回路基板1の回路部2の上面より上側に突出し、コネクタ5の下面が回路基板1の回路部2の上面と下面との間に位置する態様が記載されている。
そして、これら「コネクタ5の下面が回路基板1の回路部2の下面と面一となる態様」、及び「コネクタ5の下面が回路基板1の回路部2の上面と下面との間に位置する態様」は、いずれも、コネクタ5の下面が回路基板1の回路部2の下面から外部に突出しないものといえる。

すると、刊行物2には、図5記載の「実施の形態3の第2変形例」のコネクタ実装方法に着眼して、次の発明(以下「刊行物2記載の発明」という。)が開示されているものということができる。
「端子部5aを回路基板1の回路導体2aに接続するコネクタ5において、
回路基板1の表面に掛止される段部33が形成され、
コネクタ5の一部が、空洞部11内で、回路基板1の厚み内に入り込んで、回路基板1と並列に配置され、
コネクタ5の下面が回路基板1の回路部2の下面から外部に突出しないように形成したコネクタ5。」

3.本願補正発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
(a)引用発明の「モジュラージャック300」は、本願補正発明の「コネクタ」に相当し、以下同様に、その「モジュラージャック本体310」は、「コネクタ本体」に、「回路基板250」は、「基板」に、「回路基板250の縁部に設けられた切り欠き251」は、「基板の端部に設けた切り欠き部」に、「回路基板250の上面」は、「基板の一方の面」に、「モジュラージャック本体310の、回路基板250の上面上に配置される部分」は、「基板の一方の面上に配置されるコネクタ本体の他の部分」に、「モジュラージャック本体310の、回路基板250の上面上に配置される部分は、回路基板250の厚さ方向の寸法が、切り欠き251に挿入される部分よりも、小さくなるように形成し」たことは、「基板の一方の面上に配置されるコネクタ本体の他の部分を、切り欠き部内に配置される部分よりも基板の厚さ方向の寸法が小さくなるように形成し」たことに相当する。
(b)引用発明の「切り欠き251に挿入される部分」は、モジュラージャック本体310の「取付部320等、一部分を除い」た部分であって、モジュラージャック本体310の一部であるので、本願補正発明の「コネクタ本体の一部」、及び「コネクタ本体における基板の切り欠き部内に配置される部分」に相当し、以下同様に、「回路基板250の下面」は、「基板の他方の面」に、「回路基板250の上面上に配置される部分よりも回路基板250の下面側に向かって突出する」は、「基板の一方の面上に配置される他の部分よりも基板の他方の面側に向かって突出し」に相当する。

(2)両発明の一致点
「コネクタにおいて、
コネクタ本体の一部を、基板の端部に設けた切り欠き部内に配置可能に形成し、
基板の一方の面上に配置されるコネクタ本体の他の部分を、切り欠き部内に配置される部分よりも基板の厚さ方向の寸法が小さくなるように形成し、
コネクタ本体における基板の切り欠き部内に配置される部分を、基板の一方の面上に配置される他の部分よりも基板の他方の面側に向かって突出するように形成した
コネクタ。」

(3)両発明の相違点
ア.本願補正発明は、(a)コネクタが、「一端側を相手側コネクタに接続される端子と、端子を保持するコネクタ本体とを備え、端子の他端側を基板に接続するようにした」ものであって、(b)「基板の端部に設けた切り欠き部内に配置可能に形成し」た「コネクタ本体の一部」が、「前記端子の一端側が配置されるコネクタ本体の一部」であるのに対して、引用発明は、端子に係る構成が明らかでない点。
イ.本願補正発明は、「コネクタ本体における基板の切り欠き部内に配置される部分」を、「基板の他方の面から外部に突出しないように形成した」ものであるのに対して、引用発明は、そうでない点。

4.容易想到性の検討
(1)相違点ア.について
(a)引用発明は、端子の構成、及び端子と他の構成要素相互の関係を特定し得るものではないが、「モジュラージャック」である以上、刊行物1記載事項(イ)記載の様な「電気信号を外部へ取り出すための導通用コンタクト」の様な何某かの端子を有していることは自明である。
(b)一方、刊行物1には「【発明の実施の形態】」として、記載事項(イ)?(オ)が記載されている。
そして、その「導通用コンタクト150」は、「接触部153と、この接触部153の一端から上方に立ち上がった立ち上がり部152と、この立ち上がり部152から直交する方向に延折された端子部151とが一体に形成され」(記載事項(エ))ており、「電話線やLANケーブル等のモジュラーからの電気信号を外部へ取り出すための」(記載事項(イ))ものであって、「モジュラーからの電気信号を外部へ取り出す」動作が、モジュラージャックの接触部と相手側コネクタの接触部との電気的接続で行われることが自明であるので、本願補正発明の「一端側を相手側コネクタに接続される端子」に相当する。
また、その「モジュラージャック本体110」は、「モジュラージャック本体110には、・・・導通用コンタクト150が納められるコンタクト収納部115が形成されている」(記載事項(ウ))ものであるので、本願補正発明の「端子を保持するコネクタ本体」に相当する。
また、その「モジュラージャック100」は、記載事項(オ)に「導通用コンタクト150も回路基板250の実装面上に位置されているので、図示しない配線回路へのハンダ付けも容易に行なえる」と記載されているように、導通用コンタクト150を配線回路へハンダ付けするものであり、かつ、そのハンダ付けが導通用コンタクト150の端子部151で行われるものであって、その端子部151は、上記「接触部153」に対して他の側で端部に設けられたものであるので、本願補正発明の「端子の他端側を基板に接続するようにしたコネクタ」に相当する。
(c)そして、上記(a)の引用発明のモジュラージャックが有することが自明である端子の構成、及び端子と他の構成要素相互の関係を、引用発明と同じ刊行物1に記載された上記(b)の構成で具現化して、相違点ア.の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点イ.について
(a)刊行物2には、刊行物2記載の発明が記載されており、その「端子部5a」は、本願補正発明の「端子」に相当し、以下同様に、「回路基板1」は「基板」に、「コネクタ5」は「コネクタ」に、「回路基板1の表面」は「基板の一方の面」に、「回路基板1の回路部2の下面」は「基板の他方の面」に相当する。
また、刊行物2記載の発明の「端子部5aを回路基板1の回路導体2aに接続するコネクタ5」と、本願補正発明の「端子の他端側を基板に接続するようにしたコネクタ」とは、端子を基板に接続するようにしたコネクタである点で共通する。
また、刊行物2記載の発明の「コネクタ5の一部が、空洞部11内で、回路基板1の厚み内に入り込んで、回路基板1と並列に配置され」と、本願補正発明の「前記端子の一端側が配置されるコネクタ本体の一部を、基板の端部に設けた切り欠き部内に配置可能に形成し」とは、コネクタの一部を、基板の厚み内に入り込む様に、基板と並列に配置可能に形成した点で共通する。
また、刊行物2記載の発明の「コネクタ5の一部が、空洞部11内で、回路基板1の厚み内に入り込んで、回路基板1と並列に配置され、
コネクタ5の下面が回路基板1の回路部2の下面から外部に突出しないように形成した」と、本願補正発明の「コネクタ本体における基板の切り欠き部内に配置される部分を、基板の一方の面上に配置される他の部分よりも基板の他方の面側に向かって突出し且つ基板の他方の面から外部に突出しないように形成した」とは、前者の「コネクタ5の一部」が「空洞部11内で、回路基板1の厚み内に入り込んで、回路基板1と並列に配置され」る部分であり、かつ、該部分が「回路基板1の厚み内に入り込」む以上、回路部2の表面に掛止される段部33よりも回路部2の下面側に向かって突出していることが明らかであるので、両者は、コネクタにおける基板の厚み内に入り込む様に、基板と並列に配置される部分を、基板の一方の面上に配置される他の部分よりも基板の他方の面側に向かって突出し且つ基板の他方の面から外部に突出しないように形成した点で共通する。
そうすると、刊行物2記載の発明は、本願補正発明の表現に倣えば「端子を基板に接続するようにしたコネクタにおいて、
コネクタの一部を、基板の厚み内に入り込む様に、基板と並列に配置可能に形成し、
コネクタにおける基板の厚み内に入り込む様に、基板と並列に配置される部分を、基板の一方の面上に配置される他の部分よりも基板の他方の面側に向かって突出し且つ基板の他方の面から外部に突出しないように形成した
コネクタ。」と言い換えることができる。
(b)刊行物2記載の発明は、コネクタの一部を、基板の厚み内に入り込む様に、基板と並列に配置するコネクタという基本構成において引用発明と共通するものであるとともに、引用発明も刊行物1の記載事項(ア)に記載されている様に、薄型化が望まれているので、薄型化のために、刊行物2記載のコネクタ5の様なコネクタ自体が薄型のコネクタを採用するとともに、刊行物2記載の発明の様に、基板の厚み内に入り込む様に、基板と並列に配置する部分を、基板の一方の面上に配置される他の部分よりも基板の他方の面側に向かって突出し且つ基板の他方の面から外部に突出しないように形成して、相違点イ.の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(3)総合判断
そして、本願補正発明の作用効果は、引用発明、刊行物1記載の事項、刊行物2記載の発明から、当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物1記載の事項、刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成22年11月9日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?9に係る発明は、平成22年6月24日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
一端側を相手側コネクタに接続される端子と、端子を保持するコネクタ本体とを備え、端子の他端側を基板に接続するようにしたコネクタにおいて、
前記端子の一端側が配置されるコネクタ本体の一部を、基板の端部に設けた切り欠き部内に配置可能に形成し、
基板の一方の面上に配置されるコネクタ本体の他の部分を、切り欠き部内に配置される部分よりも基板の厚さ方向の寸法が小さくなるように形成した
ことを特徴とするコネクタ。」

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1とその記載事項は、前記の「第2 2.」に記載したとおりである。

3.本願発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
(a)引用発明の「モジュラージャック300」は、本願発明の「コネクタ」に相当し、以下同様に、その「モジュラージャック本体310」は、「コネクタ本体」に、「回路基板250」は、「基板」に、「250の縁部に設けられた切り欠き251」は、「基板の端部に設けた切り欠き部」に、「回路基板250の上面」は、「基板の一方の面」に、「モジュラージャック本体310の、回路基板250の上面上に配置される部分」は、「基板の一方の面上に配置されるコネクタ本体の他の部分」に、「モジュラージャック本体310の、回路基板250の上面上に配置される部分は、回路基板250の厚さ方向の寸法が、切り欠き251に挿入される部分よりも、小さくなるように形成し」たことは、「基板の一方の面上に配置されるコネクタ本体の他の部分を、切り欠き部内に配置される部分よりも基板の厚さ方向の寸法が小さくなるように形成し」たことに相当する。
(b)引用発明の「切り欠き251に挿入される部分」は、モジュラージャック本体310の「取付部320等、一部分を除い」た部分であって、モジュラージャック本体310の一部であるので、本願発明の「コネクタ本体の一部」に相当する。

(2)両発明の一致点
「コネクタにおいて、
コネクタ本体の一部を、基板の端部に設けた切り欠き部内に配置可能に形成し、
基板の一方の面上に配置されるコネクタ本体の他の部分を、切り欠き部内に配置される部分よりも基板の厚さ方向の寸法が小さくなるように形成した
コネクタ。」

(3)両発明の相違点
本願発明は、(a)コネクタが、「一端側を相手側コネクタに接続される端子と、端子を保持するコネクタ本体とを備え、端子の他端側を基板に接続するようにした」ものであって、(b)「基板の端部に設けた切り欠き部内に配置可能に形成し」た「コネクタ本体の一部」が、「前記端子の一端側が配置されるコネクタ本体の一部」であるのに対して、引用発明は、端子に係る構成が明らかでない点。

4.容易想到性の検討
上記相違点は前記の「第2 3.(3)ア.」の相違点であり、前記「第2 4.(1)」で検討したように相違点の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
また、本願発明の作用効果は、引用発明、刊行物1記載の事項から当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明、刊行物1記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
したがって、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-04 
結審通知日 2011-08-05 
審決日 2011-09-05 
出願番号 特願2010-83483(P2010-83483)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01R)
P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 片岡 弘之栗山 卓也  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 中川 真一
稲垣 浩司
発明の名称 コネクタ  
代理人 角田 成夫  
代理人 柳 順一郎  
代理人 長内 行雄  
代理人 吉田 精孝  

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