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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1251934 |
審判番号 | 不服2010-4378 |
総通号数 | 148 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-03-01 |
確定日 | 2012-02-09 |
事件の表示 | 特願2006- 63474「印刷のための画像データの処理」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月20日出願公開、特開2007-241682〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年3月9日に出願されたものであって、平成21年7月24日付け拒絶理由通知に対して平成21年9月28日付けで意見書が提出されたが、平成21年11月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年3月1日に審判請求がなされたものである。 審判合議体は、平成23年9月15日付けで拒絶理由を通知し、これに対し、平成23年11月16日付けで意見書及び手続補正書が提出されている。 第2 本願発明について 1.本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成23年11月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「印刷のための画像処理装置であって、 対象画像データに対応する第1の解析データが既に生成されている場合には、前記対象画像データに対する解析処理を実行せず、前記対象画像データに対応する前記第1の解析データが未だ生成されていない場合には、前記対象画像データに対する解析処理を実行して第2の解析データを生成する解析部と、 前記対象画像データに対応する前記第1の解析データまたは前記第2の解析データを用いて、前記対象画像データを補正して補正済み画像データを生成する補正部と、 前記補正済み画像データを用いて印刷データを生成する印刷データ生成部と、 前記第2の解析データを、対応する前記対象画像データと関連付けて保存する保存部と、 を備え、 前記対象画像データに対する解析処理は、顔領域情報と顔領域の平均輝度情報と赤目情報の解析データを得るための解析処理であり、前記第1および第2の解析データは前記顔領域情報と前記顔領域の平均輝度情報と前記赤目情報の解析データである、 ことを特徴とする画像処理装置。」 2.当審が通知した拒絶理由の要旨 当審が通知した拒絶理由の要旨は、本願発明は、特開2000-137806号公報(以下、「引用刊行物5」という。)、特開平11-215358号公報(以下、「引用刊行物1」という。)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3.引用刊行物に記載の発明 当審が拒絶の理由に引用した引用刊行物5には、図面とともに、次の事項が記載されている。 なお、下線は当審において付した。 (ア)「【0012】<第1実施形態>図1は、本実施例における画像処理装置の構成を示すブロック図である。同図において、10は画像入力部であり、カラーマネージメントシステム(CMS)等を利用しないカラーデバイス(デジタルカメラやスキャナ)である。11は画像処理部であり、本実施形態の特徴である画像補正処理を含む各種画像処理を行う。12は操作パネル等、操作者によるコマンド入力や操作者へ画像処理装置の状態報知等を行う操作部である。13はCRT等、画像データを表示する画像表示部である。14は画像データの送受信を行う通信部であり、例えば、外部のホストコンピュータ等と接続されることにより、画像入力部10と同等の画像入力処理、及び画像出力部15と同等の画像出力処理を行なうことができる。15はプリンタ等、記録媒体に画像データを印刷出力する画像出力部である。 【0013】図2は、画像処理部11の機能構成を示すブロック図である。同図において、30はCPUであり、予めROM31に保持されている制御プログラムを実行することにより、後述する画像処理部11内の他の構成における動作を統括的に制御する。32はRAMであり、CPU30の作業領域として使用される。 【0014】画像入力部10から入力された画像データは、まずメモリ部21に格納された後、本実施形態における特徴であるガンマ値タグが補正値タグ付加部22によって付加される。以下、このガンマ値タグの付加処理について説明する。 【0015】図3は、本実施形態におけるガンマ値タグ付加処理のフローチャートである。まずステップS101において、ユーザが操作部12より、ガンマ値タグ付加を行なう対象ファイルを設定し、ステップS102において、処理の実行条件が整っていればガンマ値タグ付加処理を実行する。」 (イ)「【0020】図3に戻り、ステップS102において処理が開始されると、まずステップS103において検索対象パスマップとカレントパスとを比較しながら、ガンマ値タグ付加処理を終了するか否かを判定する。 【0021】終了でなければステップS104に進み、カレントパス上にあるファイルにアクセスする。そしてステップS105において、該ファイルがステップS101で設定された検索対象ファイルであるか否かを判定し、そうであればステップS106においてファイル内のヘッダ情報、タグデータ等を参照してガンマ値タグを検索する。この結果、ガンマ値タグが検出された、即ち、該ファイルには既にガンマ値タグが添付されている場合には、ステップS107に進み、該タグがオーバーライト可能であるか否かを判断する。オーバライト可能であればステップS108に進むが、不可能であればステップS103に戻る。 【0022】一方、ステップS106においてガンマ値タグが検出されなかった、即ち、該ファイルにはガンマ値タグが未添付である場合にも、ステップS108に進む。 【0023】ステップS108においては、検索されたファイルから画像データ(RGB値)を読出し、ステップS109において該画像データに基づいてガンマ値Gvを算出する。ここで、ガンマ値Gvの算出方法について説明する。」 (ウ)「【0027】ここで、本実施形態においてガンマ値タグが付加される様子を、図6に示す。図6において、601は、既にN個のタグデータが付加されているオリジナルの画像データである。また602は、画像データ601に対してN+1個目のタグデータ603を新規に付加した画像データである。上述した図3のステップS109で求めたガンマ補正値Gvは、このN+1個目のタグデータ603に書込まれる。 【0028】このように本実施形態においては、ガンマ補正値Gvは単なるタグデータとして画像ファイル内に付加されるので、オリジナルの画像データやその他の情報には何ら影響を及ぼさない。従って、該ガンマ値タグを付加した画像ファイルを、必要であればいつでもオリジナルのファイルに戻すことが可能である。 【0029】以上説明したように補正値タグ付加部22においては、一つの画像ファイルに対して画像データを解析して適切なガンマ補正値を求め、これを新たなタグデータとして付加または更新する。そして、図3のステップS103?S110に示した処理を、検索対象パス以下の対象画像ファイルの全てに対して繰り返す。 【0030】尚、図3のフローチャートに示した一連の処理は、例えばマルチプロセスが実行可能なオペレーティングシステムにおいて実行されるバックプロセスジョブやデーモンプログラム等として実装されると、より好適である。 【0031】上述したようにして画像ファイルにガンマ値タグが付加されることにより、該画像ファイルを印刷処理する際に、補正処理に要する時間を短縮することが可能となる。以下、ガンマ値タグが付加された画像ファイルの補正処理について説明する。 【0032】ここで、メモリ部21における画像データの格納形式について、図7を参照して説明する。 【0033】図7において、ガンマ値タグが付加された画像データは、ファイル71の形式で格納される。このファイル71のファイル形式の詳細が、上述した図6の602に相当する。602における「マジック番号」、「バージョン情報」、「ディレクトリオフセット」が図7に示すファイル71のヘッダ情報に相当し、同様に「タグ1」?「タグN」が標準タグセットに、「タグN+1」が「ガンマ値タグ」に相当する。 【0034】図7において、70は、CPU30によって実行される各種プログラムを概念的に示したものである。ガンマ値タグが付加された画像ファイル71は、CPU30によって実行されるアプリケーションプログラム(以下、アプリケーション)によって、該アプリケーションの内部形式72に変換される。一般に、画像データを扱うアプリケーションは、画像ファイル内の必要なデータを適宜参照し、該データを内部形式に変換して処理を続行する。プリンタへの印刷処理を行う場合には、オペレーティングシステム(以下、OS)のAPI等を利用して、アプリケーションの内部形式の画像データをOSの内部形式に適合するよう変更し、プリンタドライバへ画像を転送している。即ち、アプリケーション内部形式72の画像データは、OS内部形式73に変換された後、プリンタドライバにおける内部形式74に変換される。」 (エ)「【0036】図2に戻り、以下、主にプリンタドライバによる処理について説明する。プリンタドライバは、上述したように画像ファイルに添付されているガンマ値タグに基づいてガンマ変換を行う。 【0037】まず、ガンマテーブル作成部23において、ガンマ値タグに基づいてガンマテーブル24を作成する。尚、予め用意された複数のガンマテーブルから、最適なものを選択してガンマテーブル24に設定しても良い。そしてガンマ変換部25において、ガンマテーブル24を用いて画像ファイル内の画像データ(RGB値)に対してガンマ補正を施した後、後段の色空間圧縮部26へ画像データを引渡す。 【0038】色空間圧縮部26においては、入力されたガンマ補正後のRGBデータに対してICCカラープロファイルに基づいた色空間圧縮処理を行なった後、色空間変換部27でYMCKデータに変換し、次に2値化処理部28において2値化した後、プリンタエンジン部である画像出力部15へ出力する。 【0039】以上説明したように本実施形態によれば、ファイルシステムに格納済みの画像データに対して、適切な補正パラメータを予め決定してファイルの拡張タグに記録しておくことにより、印刷時に該タグ情報を参考にして、適切な画像補正処理を高速に行なうことができる。」 (オ)「【0064】また、本発明においてはガンマ補正パラメータの設定を例として説明したが、もちろん、他の画像処理パラメータにも本発明は同様に適用可能である。」 また、明文の記載はないものの、図3及び上記(ア)、(イ)の記載から、 (カ)画像データに添付されているガンマ値タグが、オーバーライト不可能であれば該画像データに基づくガンマ値の算出を行わないこと が明らかである。 上記(ア)?(カ)によれば、引用刊行物5には、以下の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されている。 [刊行物発明] (キ)画像データに画像処理パラメータ値タグが添付されている場合には、該画像処理パラメータ値タグがオーバーライト可能であるか否かを判断し、オーバーライト可能であれば該画像データに基づいて画像処理パラメータ値を算出し、オーバーライト不可能であれば該画像データに基づく画像処理パラメータ値の算出を行わず、 画像データに画像処理パラメータ値タグが未添付である場合に、該画像データに基づいて画像処理パラメータ値を算出し、 前記算出した画像処理パラメータを新たなタグデータとして付加または更新する補正値タグ付加部と、 前記画像データに対して画像処理パラメータ値による補正を施す画像処理パラメータ変換部と、 プリンタエンジン部である画像出力部と、 画像処理パラメータ値が付加された画像データを格納するメモリ部と、 を備えた画像処理装置。 4.本願発明と刊行物発明の対比 刊行物発明は「画像処理装置」に関するものであって、印刷のために用いる装置であることから、刊行物発明と本願発明とは「印刷のための画像処理装置」である点で一致する。 刊行物発明の「画像データ」が本願発明の「対象画像データ」に相当することは当業者に明らかな事項である。 そして、刊行物発明の「画像データに画像処理パラメータ値タグが添付されている場合」の当該添付された「画像処理パラメータ値タグ」に含まれる「画像処理パラメータ値」は、「画像データ」を何らかの手法を用いて解析して得られたものであって、「画像データ」に対応するものであることが明らかであることから、本願発明の「対象画像データ」に対応する「第1の解析データ」に相当するものであると言える。 更に、この「画像データに画像処理パラメータ値タグが添付されている場合」とは、「画像データ」に対応する「画像処理パラメータ値」が既に生成されている状態を表すものであることから、刊行物発明の「画像データに画像処理パラメータ値タグが添付されている場合」は、本願発明の「対象画像データに対応する第1の解析データが既に生成されている場合」と技術的に等価である。 刊行物発明の「画像データに画像処理パラメータ値タグが未添付である場合に、該画像データに基づいて画像処理パラメータ値を算出し」について、当該「画像処理パラメータ値」は、「画像データ」を新たに解析して算出されたデータであることから、本願発明の「第2の解析データ」に相当するものであると言える。 ここで、この「画像データに画像処理パラメータ値タグが未添付である場合」とは、「画像データ」に対応する「画像処理パラメータ値」が未だ生成されていない状態を表すものであって、本願発明の「対象データに対応する第1の解析データが未だ生成されていない場合」と技術的に等価である。 更に、刊行物発明の「画像処理パラメータ値の算出」を行うことは、本願発明の「対象画像データに対する解析処理を実行」することに相当することは明らかである。 してみれば、刊行物発明の「補正値タグ付加部」は、「画像データに画像処理パラメータ値タグが添付されている場合」であっても「画像処理パラメータ値」を算出して「画像処理パラメータ値タグ」をオーバーライトすることがあるものの、「画像処理パラメータ値タグが未添付である場合」に「画像データに基づいて画像処理パラメータ値を算出」するものであるから、刊行物発明の「補正値タグ付加部」は、本願発明の「解析部」に対応するものであって、本願発明と刊行物発明とは、「対象画像データに対応する第1の解析データが既に生成されている場合、または、前記対象画像データに対応する前記第1の解析データが未だ生成されていない場合に、前記対象画像データに対する解析処理を実行しない、または、前記対象画像データに対する解析処理を実行して第2の解析データを生成する動作を行う解析部」を備える点で共通する。 刊行物発明の「パラメータ変換部」は、画像データを事前又は新たに解析して算出された画像処理パラメータ値を用いて画像データの補正を行うものであることから、本願発明の「補正部」に相当する。 刊行物発明の「画像出力部」は、補正された画像データから印刷用データを生成するものであることから、本願発明の「印刷データ生成部」に相当する。 刊行物発明の「メモリ部」は、画像データを新たに解析して算出された画像処理パラメータ値を画像データと共に格納するものであることから、本願発明の「保存部」に相当する。 したがって、刊行物発明における構成要素を本願発明において用いられている用語に置き換えれば、本願発明と刊行物発明は以下の点で一致、あるいは相違する。 [一致点] (ク)印刷のための画像処理装置であって、 対象画像データに対応する第1の解析データが既に生成されている場合、または、前記対象画像データに対応する前記第1の解析データが未だ生成されていない場合に、前記対象画像データに対する解析処理を実行しない、または、前記対象画像データに対する解析処理を実行して第2の解析データを生成する動作を行う解析部と、 前記対象画像データに対応する前記第1の解析データまたは前記第2の解析データを用いて、前記対象画像データを補正して補正済み画像データを生成する補正部と、 前記補正済み画像データを用いて印刷データを生成する印刷データ生成部と、 前記第2の解析データを、対応する前記対象画像データと関連付けて保存する保存部と、 を備える画像処理装置。」 [相違点] (ケ)本願発明は、「対象画像データに対応する第1の解析データが既に生成されている場合には、前記対象画像データに対する解析処理を実行せず、前記対象画像データに対応する前記第1の解析データが未だ生成されていない場合には、前記対象画像データに対する解析処理を実行して第2の解析データを生成する」ものであって、“第1の解析データの有無”が“対象画像データに対する解析処理を実行しない”及び“対象画像データに対する解析処理を実行する”動作にそれぞれ1対1に対応するものであるのに対し、刊行物発明は、“画像処理パラメータ値の有無”の条件に“画像処理パラメータ値タグのオーバーライトの可否”の条件がつけ加わることによって、“画像処理パラメータ値の有無”が“画像処理パラメータ値の算出を行わない”又は“画像処理パラメータ値の算出を行う”動作にそれぞれ1対1には対応するものではない点。 (コ)解析データの種別について、本願発明は、「顔領域情報と顔領域の平均輝度情報と赤目情報」であるのに対し、刊行物発明では「画像処理パラメータ」とあるのみで、「顔領域情報と顔領域の平均輝度情報と赤目情報」のような具体的な種別について言及がなされていない点。 5.当審の判断 相違点(ケ)について検討する。 画像データを解析して得られるタグデータを用いて画像データの補正を行う画像処理装置において、タグデータが存在している場合には当該タグデータをそのまま利用し、タグデータが存在しない場合に画像データを解析することは、ごく普通に行われていることであって(例えば、本願の出願日前である平成12年5月16日に頒布された特開2000-137805号公報の段落【0047】や、平成16年11月11日に頒布された特開2004-320383号公報には、そのような技術が記載されている。)、タグデータが存在している場合に、特に必要がなければ、改めて画像データの解析を行わないことはきわめて自然な事項である。 してみれば、刊行物発明において、“画像処理パラメータ値タグのオーバーライトの可否”の条件を付することなく、既に画像データに対応する画像パラメータ値が生成されている場合に、該画像データに対する解析処理を行わない動作を対応させ、画像データに対応する画像パラメータ値が生成されていない場合に、該画像データに対する解析処理を実行する動作をそれぞれ対応させて、本願発明の構成とすることは当業者にとって推考困難な事項ではない。 なお、審判請求人は、平成23年11月16日付け意見書において、 「また、引用文献5の前提となるのは、段落0002に記載されているように、『カラーマネージメントシステム(CMS)等を利用しないカラーデバイス(デジタルカメラやスキャナ)等を利用しないカラーデバイス(デジタルカメラやスキャナ)等において読み込まれた画像は、ガンマ調整等が適切でない等の原因により、コントラストが弱かったり、色のサイドが低かったりするといった、低画質な画像になってしまっていた。その様な低画質画像をそのまま印刷すると、著しく劣化した画質での印刷出力しかえられないという不都合があった。』という点に対応するものであります。この点から考えると、基本的には、引用文献5の発明は、画像データにガンマ値タグが付加されている否かに関わらず、原則としてガンマ値の算出を行うものであり、オーバライトが禁止されている場合に限ってガンマ値の算出を行わないものである、と考えられます。」 と主張している。 しかしながら、刊行物発明が画像処理パラメータ値タグが添付されていない画像データのみならず、既に添付されている画像データをも処理対象として、画像処理パラメータ値タグの有無に応じて画像処理パラメータ値の算出を行う又は行わない処理を行うものであることには相違なく、仮に審判請求人が主張するように刊行物発明が原則として画像処理パラメータ値の算出を行うものであって、画像処理パラメータ値タグのオーバーライトが禁止されている場合に限って画像処理パラメータ値の算出を行わないものであるとしても、刊行物発明が画像処理パラメータ値の算出を行わない処理動作を含むものであることに変わりはなく、上述したとおり、刊行物発明において、既に画像データに対応する画像パラメータ値が生成されている場合に、該画像データに対する解析処理を行わず、画像データに対応する画像パラメータ値が生成されていない場合に、該画像データに対する解析処理を実行する構成とすることは当業者にとって推考困難な事項ではないことから、上記審判請求人の主張は、本願発明の進歩性を肯定する根拠とはならない。 相違点(コ)について検討する。 画像データを解析して得られる解析データを用いて当該画像データの補正を行う画像処理装置において、顔領域、顔領域の平均輝度、赤目に関する解析データを得て、画像データを補正することは、ごく普通に行われている周知慣用された技術であることから(例えば、本願の出願日前である平成16年12月24日に頒布された特開2004-362443号公報には、顔領域と顔領域の平均輝度を算出して画素値の補正を行う技術が記載されており、原査定の拒絶の理由で引用された特開2005-124046号公報には、顔領域と赤目領域を検出して画像データを補正する技術が記載されている。)、このような「顔領域と顔領域の平均輝度情報と赤目情報」は「解析データ」の種別としてはごくありふれたものにすぎない。 よって、刊行物発明における具体的な画像処理パラメータの種別として、 「顔領域情報と顔領域の平均輝度情報と赤目情報」を選択することは、当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎない。 そして、本願発明の効果についてみても、上記相違点からなる構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるともいえない。 6.まとめ したがって、本願発明は、刊行物発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-12-05 |
結審通知日 | 2011-12-06 |
審決日 | 2011-12-20 |
出願番号 | 特願2006-63474(P2006-63474) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 内田 正和 |
特許庁審判長 |
板橋 通孝 |
特許庁審判官 |
溝本 安展 吉村 博之 |
発明の名称 | 印刷のための画像データの処理 |
代理人 | 特許業務法人明成国際特許事務所 |