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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E05B
管理番号 1251940
審判番号 不服2010-10606  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-26 
確定日 2012-02-09 
事件の表示 特願2003-325217「ソレノイドの行程制限機構」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月 7日出願公開、特開2005- 90088〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は,平成15年9月17日の出願であって,平成22年1月22日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年4月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同時に手続補正がなされたものである。
その後,平成23年3月22日付けで平成22年4月26日付けの手続補正を却下するとともに,拒絶の理由を通知したところ,平成23年5月23日付けで審判請求人から手続補正書(平成23年9月21日付けの手続補正により補正)が提出された。

本願の請求項1に係る発明は,平成23年5月23日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ソレノイドのプランジャが出没する外面に、プランジャに近接して、その中心軸に平行な規制板を装着し、この規制板にプランジャの長さ方向に沿う長孔を開口させ、この長孔に、プランジャの外側面に突設された連結ピンを係合させてプランジャの行程を制限することにより、ソレノイドにより制御される機構側のプランジャの規制機構を省略するようにしたことを特徴とするソレイドの行程制限機構。」(以下,「本願発明」という。)

2 刊行物及びその記載内容
刊行物1 実願平4-17047号(実開平6-20816号)のCD-ROM
刊行物2 特開平7-235102号公報

(1)平成23年3月22日付け拒絶理由通知書にて通知され,本願出願前に頒布された上記刊行物1には,図面とともに,以下の記載がある。
(1a)「【請求項1】ソレノイド52にて進退する作動杆55にばね54を介在し、この作動杆55の先端部にリンク部材60の第1点で連結ピン58により軸架し、この連結ピン58を通る作動杆55の軸線からずらして支点軸61を設け、前記リンク部材60の第2点を支点軸61に軸架されて回転の支点となし、このリンク部材60の第3点には、前記連結ピン58に向かってガイド孔63を形成し、錠ピン65に固着されたガイドピン64を前記ガイド孔63に係合し、吊り車枠14の上部には、前記錠ピン65が係脱する錠孔69を形成した係止板67を固定的に取付けてなることを特徴とする自動ドアの電気錠装置。」
(1b)「【0010】
前記電気錠装置49は、細長箱状の前記ブラケット50の内部に、ソレノイド52が収納固定され、このソレノイド52から突出した軸ピン53が作動杆55に連結されるとともに、ばね54が介在されている。前記作動杆55の両側部のガイドピン56は、ブラケット50の長孔57に遊嵌している。前記作動杆55の先端部は、ブラケット50内に設けられた取付けブロック59に進退自在に嵌合している。この作動杆55の先端部には、3角形のリンク部材60の第1点で連結ピン58により軸架されている。この連結ピン58には、ゴムのOリングが内蔵されて、揺動を吸収し、ノイズの発生を防止している。この連結ピン58を通る作動杆55の軸線を中心にして左右の等しい距離をおいて第1支点軸61と第2支点軸62が設けられている。」
(1c)「【0015】
まず、以上のような構成における電気錠装置49の動作について説明する。
停電していない場合において、ソレノイド52が励磁されていると、ばね54に抗して軸ピン53と作動杆55が吸引され、作動杆55の先端の連結ピン58が引き込まれるので、リンク部材60は、第1支点軸61を支点として図の実線状態(時計方向)に回転し、そのためガイド孔63に係合するガイドピン64を介して錠ピン65が図の上方向に突出している。したがって、錠ピン65は係止板67の錠孔69に嵌合せず、施錠していない状態となる。
ここで、停電すると、ソレノイド52が解磁され、ばね54によって軸ピン53と作動杆55は突出し、リンク部材60は、第1支点軸61を支点として図の鎖線のように(反時計方向)回動し、ガイド孔63に係合するガイドピン64を介して錠ピン65が図の下方に突出して係止板67の錠孔69に嵌合し、施錠される。」
(1d)【図1】には,ソレノイド52で進退する作動杆55に近接した位置に,ブラケットの長孔57を有する面が配されている様子が示されている。
(1e)(1c)を参酌すれば,【図1】には,リンク部材60が実線の施錠していない状態と鎖線の施錠状態との間で回動する様子が示されている。

上述の記載事項(1a)?(1e)及び図面の記載から見て,刊行物1には,以下の発明が記載されているものと認められる(以下,「刊行物1記載の発明」という。)。

「ソレノイド52にて進退する,軸ピン53に連結された作動杆55に近接して,長孔57を開口したブラケット50が配され,この長孔に,作動杆55の両側部に設けられたガイドピン56が遊嵌しており,作動杆55の先端には,リンク部材60の第1点に連結ピン58によって軸架されており,リンク部材は第2点の支点軸61に軸架されて支点軸回りに回動するように構成されており,リンク部材60の第3点には連結ピンに向かってガイド孔63が形成されており,錠ピン65に固着されたガイドピン64を前記ガイド孔63に係合して錠孔に係脱させる機構が設けられている電気錠装置。」

(2)同じく上記刊行物2には,図面とともに,以下の記載がある(下線は合議体が付与。)。
(2a)「【0029】実施例リール台係止機構30は、それぞれ同一部材によって構成され、図1に示すように、リールフレーム7のストッパ部材9と相対係合してリール台4を係止保持するリール台係止部材32A・32B(32)と、このリール台係止部材32を移動自在に支持する保持部材33A・33B(33)と、プランジャ35A・35B(35)を組み込んだソレノイド34A・34B(34)及び保持部材33とソレノイド34とを組み合わせる取付け部材36A・36B(36)等の部材によって構成され、ダイキャスト製の装置ベースに形成したそれぞれ一対の取付け部31A1、31A2・31B1、31B2(31)上に配設固定される。
【0030】ソレノイド34及びプランジャ35については、上述した従来のソレノイド17と同一の部材が用いられ、フレームを兼ねる枠状ヨークの内部に筒状コイルを組み込んで構成したソレノイド34の前記筒状コイルの中心穴37A、37B(37)にプランジャ35が移動自在に組み込まれる。プランジャ35は、図8に示すように、それぞれ先端部分に軸方向のホゾ溝38A、38B(38)が形成されるとともに、連結ピン40A・40B(40)が嵌合されるピン穴39A・39B(39)が穿設されている。プランジャ35には、コイルスプリング41A・41B(41)が装着されている。
【0031】リール台係止部材32は、図8に示すように、それぞれ一端部に軸方向のホゾ42A・42B(42)が突出形成されるとともに連結ピン40が嵌合されるピン穴43A・43B(43)が穿設されている。このリール台係止部材32は、ホゾ42をホゾ溝38に嵌合した後、連結ピン40を連通状態のピン穴43とピン穴39とに連結ピン40を嵌合することによって、プランジャ35と結合される。連結ピン40は、図8に示すように、プランジャ35の外周面に大きく突出してコイルスプリング41のストッパ手段としての機能を奏して、このコイルスプリング41を圧縮状態に保持する。したがって、プランジャ35は、このコイルスプリング41の弾性力によって、ソレノイド34からの突出習性が付与される。
【0032】保持部材33は、金属板材料を外形抜き加工、穴抜き加工或いは曲げ加工を施して形成したプレス部品によって構成されている。この保持部材33は、図1に示すように、底面部44A・44B(44)と、この底面部44のリールフレーム7側の一方側に立上り形成された側面部46A・46B(46)と、この側面部46と対向するようにして底面部44の他方側に一対の切欠き溝によって形成した舌片部を立上り形成した軸受け側面部48A・48B(48)及び底面部44の幅方向の側端部に突出形成したそれぞれ一対の取付け側面部50A1、50A2・50B1、50B2(50)とからなる全体が略上向きコ字状に形成されている。
【0033】底面部44には、装置ベースにリールフレーム7と直交する互いに平行な一対の取付け部31にそれぞれ穿設した取付け穴55A1、55A2・55B1、55B2(55)に対応して取付け穴45A1、45A2・45B1、45B2(45)がそれぞれ穿設されている。前記側面部46及び軸受け側面部48には、互いに軸線を一致させてリール台係止部材ガイド穴47A・47B(47)、49A・49B(49)がそれぞれ穿設されている。また、取付け側面部50は、上端部が水平方向に折曲され、この折曲部分にそれぞれ取付け穴51A1、51A2・51B1、51B2(51)が穿設されている。
【0034】保持部材33とソレノイド34とを組み合わせる取付け部材36は、図1に示すように、板状のソレノイド取付け部と、その一端側を略クランク状に折曲することによって段落ちとされた保持部材取付け部59A・59B(59)とから構成され、ソレノイド取付け部が取付けねじ56A1、56A2・56B1、56B2(56)を介してソレノイド34のヨーク天井面に接合固定されることによって、ソレノイド34と一体に組み合わされる。また、この取付け部材36は、保持部材取付け部59が取付け穴51にねじ込まれる取付けねじ57A1、57A2・57B1、57B2(57)を介して取付け側面部50上に接合固定されることによって、保持部材33と一体に組み合わされる。
【0035】このようにして、取付け部材36を介して保持部材33とソレノイド34とを組み合わせることによって、プランジャ35の先端部に結合されたリール台係止部材32は、図3乃至図6に示すように、取付け部材36の側面部46及び軸受け側面部48に軸線を一致させてそれぞれ穿設したリール台係止部材ガイド穴47、49に貫通支持される。
【0036】取付け部材36の保持部材取付け部59には、プランジャ35とリール台係止部材32とを連結する連結ピン40の一端部が係合することによって、この連結ピン40をガイドする連結ピンガイド溝60A・60B(60)が、リールフレーム7と直交する方向に穿設されている。この、連結ピンガイド溝60は、後述するリール台係止部材32の駆動動作に際して、リール台係止部材32の先端部が保持部材33の側面部46からリールフレーム7のストッパ部材9の移動路に臨む第1の位置と、ストッパ部材9の移動路から構体する第2の位置との範囲に亘って移動動作するように、連結ピン40の動作量を規制する長さを有して保持部材取付け部59に穿設されている。」
(2b)【図1】,【図6】には,取付け部材36の保持部材取付け部59は板状であること,保持部材取付け部59はプランジャに近接して,その中心軸に平行に取り付けられたものであること,連結ピンガイド溝60は,プランジャの長手方向に沿う長孔形状であることが示されている。

上述の記載事項(2a),(2b)及び図面の記載から見て,刊行物2には,以下の発明が記載されているものと認められる(以下,「刊行物2記載の発明」という。)。

「ソレノイド34のヨーク天井面に取付け部材36のソレノイド取付け部を接合固定することにより,ソレノイド34のプランジャ35が出没する外面に,プランジャ35に近接して,その中心軸に平行な板状の保持部材取付け部59を装着し,この板状の保持部材取付け部59にプランジャ35の長さ方向に沿う連結ピンガイド溝60を開口させ,この連結ピンガイド溝60に,プランジャの外側面に大きく突出して設けられた連結ピン40を係合させて,プランジャ35に連結されたリール台係止部材32の先端部が第1の位置と,第2の位置との範囲に亘って移動動作するように,連結ピン40の動作量を規制するようにしたソレノイドの取付け機構。」

3 対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比する。
刊行物1記載の発明の「ソレノイド52」,「軸ピン53」,「長孔57」,「ガイドピン56」は,本願発明の「ソレノイド」,「プランジャ」,「長孔」,「連結ピン」にそれぞれ相当する。
刊行物1記載の発明の「長孔57」は,プランジャ(軸ピン53)に連結した作動杆55に設けられたガイドピン56をガイドするものであるから,プランジャの長さ方向に沿う「長孔」であることは自明であり,本願発明と刊行物1記載の発明とは,長孔の設けられる位置が「ソレノイドのプランジャの付近」である点で共通する。
刊行物1記載の発明は,プランジャの動きが,作動杆55,リンク部材60を介して錠ピン65を駆動するものであるから,「リンク部材60,錠ピン65」は,本願発明の「ソレノイドにより制御される機構側」に相当する。

よって,本願発明と刊行物1記載の発明とは,以下の一致点,相違点を有する。

[一致点]
「ソレノイドのプランジャの付近に長孔を開口させ,この長孔に,プランジャとともに動く連結ピンを係合させて,ソレノイドにより制御させる機構側を駆動するようにした,ソレノイド機構。」

[相違点1]
長孔が,本願発明は,プランジャが出没する外面に,プランジャに近接して装着した,プランジャの中心軸方向に平行な規制板に設けられているのに対し,刊行物1記載の発明は,ソレノイドが収容されるブラケット50のプランジャの中心軸方向と平行となっている一面に設けられるものである点。

[相違点2]
本願発明は,長孔に,プランジャの外側面に突設された連結ピンを係合させてプランジャの行程を制限することにより,ソレノイドにより制御される機構側のプランジャの規制機構を省略するようにしたソレノイドの行程制限機構であるのに対し,刊行物1記載の発明は,長孔57が係合するガイドピン56によってプランジャの行程を制限するものであるかどうかが不明であり,補正発明のような行程制限機構となっているかが不明な点。

4 判断
上記相違点について検討する。
相違点1について
刊行物2記載の発明には,「連結ピンガイド溝60(補正発明の「長孔」に相当。)」が,プランジャに近接して,その中心軸方向に平行な「板状の保持部材取付け部59(補正発明の「規制板」に相当。)」に設けられている,ソレノイドの取付け機構が開示されている。
刊行物1記載の発明は,ブラケット側面がソレノイドに近接しているものであって,ブラケットに長孔を設けているが,ブラケット側面とソレノイドとが近接していないような場合に,ブラケットに長孔を設けることに代えて,長孔を刊行物2記載のような板状の部材(規制板)に設け,該部材をプランジャに近接して設けることは当業者が容易になし得ることである。

刊行物2記載の発明は,「板状の保持部材取付け部59(規制板)」を,ソレノイド取付け部をソレノイドのヨーク天井面に接合固定することによって取り付けているものであるが,ソレノイドのどの面に規制板を装着するかは,ソレノイドの形状や他の部材との寸法関係を考慮して当業者が適宜決定し得る事項であり,刊行物1記載の発明において,長孔を刊行物2記載のような規制板に設け,該部材をプランジャに近接して設けるにあたり,規制板をソレノイドのプランジャが出没する外面に固定して装着することは,当業者が容易になし得ることである。

相違点2について
刊行物2記載の発明には,ソレノイドの取付けにあたり,「連結ピンガイド溝60の長さによって,プランジャ35に連結されたリール台係止部材32の先端部が第1の位置と,第2の位置との範囲に亘って移動動作するように,連結ピン40の動作量を規制する」技術思想が開示されている。

刊行物1記載の発明においても,「ソレノイドに制御される機構側」の部材である錠ピン65は,鍵孔69に嵌合して施錠する位置と,鍵孔69から抜け出して解錠する位置との範囲で動くものであり,ソレノイドは,錠ピン65が上記のような2つの位置の範囲に亘って移動動作するように機構側を駆動するものであるから,刊行物1記載の発明において,ソレノイドに制御される機構側が,確実に2つの位置の範囲にわたって作動するように,刊行物2記載の長孔の長さによって連結ピン(及びそれに固定されたプランジャ)の動作量を規制する技術を採用し,長孔に,プランジャの外側面に突設された連結ピンを係合させてプランジャの行程を制限することは当業者が容易になし得ることである。
プランジャの行程をソレノイドに設けた長孔及びピンによって制限すれば,ソレノイドにより制御させる機構側には,プランジャの規制機構は必須ではないことは自明であるから,これを省略することは,当業者が容易になし得ることである。

5 本願発明の効果について
ソレノイドによって制御される機構側に行程の規制機構を設ける必要がないことは,プランジャの行程をソレノイドに設けた長孔及びピンによって制限した刊行物2記載の発明から予測し得る効果である。
プランジャの引き出し力や吸引力の設定の自由度が増すことも,プランジャの行程をソレノイドに設けた長孔及びピンによって制限した刊行物2記載の発明から予測し得る効果である。
本願発明の効果は,全体として,刊行物1,2記載の発明から当業者が予測できる程度のものである。

6 むすび
したがって,本願発明は,刊行物1,2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-15 
結審通知日 2011-11-17 
審決日 2011-12-15 
出願番号 特願2003-325217(P2003-325217)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 辻野 安人  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 土屋 真理子
紀本 孝
発明の名称 ソレノイドの行程制限機構  
代理人 飯田 岳雄  

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