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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16D
管理番号 1251944
審判番号 不服2010-11952  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-02 
確定日 2012-02-09 
事件の表示 特願2006-255954「接続装置と、接続装置を介して混練装置と駆動装置とを接続した混練設備」拒絶査定不服審判事件〔平成20年4月3日出願公開、特開2008-75759〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成18年9月21日の出願であって、その請求項1?7に係る発明は特許を受けることができないとして、平成22年2月24日付けで拒絶査定がされたところ、平成22年6月2日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1?7に係る発明は、平成19年11月15日付け、及び平成21年5月15日付けの手続補正によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
駆動装置の出力軸と被駆動装置の入力軸とを接続するギアカップリング部と、ギアカップリング部のギアに対して潤滑する潤滑部とを備えており、
前記潤滑部は、横向きのギアカップリング部の下側に潤滑油を貯留するオイルケースを有しており、当該オイルケースに貯留された潤滑油に前記ギアカップリング部の下部に位置するギアを浸漬させる油浴式の構成とされており、
前記ギアカップリング部は、当該ギアカップリングと一体となって回転しながらオイルケース内に貯留する潤滑油を上方へ汲み上げると共に、当該ギアカップリングの内歯部分および外歯部分に流し込むようにギアカップリング部のギアに対して潤滑油を案内する案内部材を有しており、且つ、前記被駆動装置の入力軸及び前記駆動装置の出力軸に対してそれぞれ個別に嵌合され且つ外周面に第1ギアを有する一組の第1筒体と、この一組の第1筒体に遊嵌すると共に、一組の第1ギアにそれぞれ個別に噛合する第2ギアを内周面に有する一組の第2筒体と、この一組の第2筒体の間で着脱自在に設けられ且つ両第2筒体を連結する連結体とを有し、前記第2筒体及び前記連結体が入力軸及び出力軸の両端面間から抜き取り自在となるように、当該第2筒体及び連結体それぞれの軸方向長さが、両端面間の距離よりも短く設定されおり、且つ、前記第2筒体の周壁にギアカップリング部内の潤滑油をギアカップリング部外に排出可能な潤滑油流通孔が設けられていることを特徴とする接続装置。」

2.原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物及びその記載事項
(1)刊行物1:実公昭48-27296号公報
(2)刊行物2:特開平8-61450号公報
(3)刊行物3:特開平2-275117号公報
(4)刊行物4:特開2000-64980号公報
(5)刊行物5:実願平1-11106号(実開平2-102057号)のマイクロフィルム
(6)刊行物6:実公昭34-19638号公報

(刊行物1)
刊行物1には、「ゴム、プラスチック用ロール機の伝動装置」に関して、図面(特に、第1及び2図を参照)とともに、下記の技術的事項が記載されている。なお、拗音及び促音は小書きで表記した。
(a)「本考案はゴム、プラスチック用ロール機において減速装置ロール回転歯車等の動力伝動機構を集約的に結合してコンパクトに構成し、据付面積の節約及びロール軸に不必要な応力の発生を阻止して負担を軽減し、堅牢なこの種装置を提供せんとするものである。」(第1頁第1欄第21?26行)
(b)「本考案は減速機軸1とバックロール軸2を左右の環状歯車筐12,13と中間接手片14よりなるギヤフレックスカップリングを介して連結せしめ、該カップリングにおいてバックロール軸2に固着すべき歯車4のボスを円筒状7とし、之にフロントロール0’回転用の歯車6を設けてなることを特徴とするゴム、プラスチックロール機の伝動装置を要旨とするものである。
本考案ロール機の伝動装置を図面について説明すると、公知のようにモーターAに連結している減速機BとバックロールC、フロントロールC’の1組のロールを有するロール機において減速機軸1とバックロールCの軸2とをギヤフレックスカップリングを介して連結する。該ギヤフレックスカップリングは左右の環状歯車筐12,13と中間接手片14よりなっている。環状歯車筐12には内歯歯車10が設けられ、減速機軸1の先端にキー止め8せる外歯歯車3と噛み合っており、他方の環状歯車筐13には内歯歯車11が設けられ、内歯歯車11はバックロール軸2にキー止め9せる外歯歯車4と噛み合っている。左右の環状歯車筐12,13の間には中間接手片14を挿入し、ボルト17,18で夫々固定されている。従って減速機軸1の回転はギヤフレックカップリングを介してバックロール軸2に伝達される。しかして上記歯車3と10及び4と11の関係は何れを内外に位置せしめても作用は同じであるが、第2図では歯車4は外歯歯車とし、第3図の場合は内歯歯車として設けている場合を示すものである。
本考案ではバックロール軸2に固定するギヤフレックスカップリングの歯車4のボスを円筒状7とし、歯車6を刻設する。歯車6は他方のフロントコントロールC’の軸に固定する歯車6’と噛合うようになっている。
図中、15,16は、くさび、19はくさび止め、aは歯車3,4の中高弧状外縁を示す。
本考案は減速機軸1とロール軸2とをギヤフレックスカップリングで連結しているので、軸1,2の軸心に若干狂いが、あっても無理が生じないこと、中間接手片14を取脱すことによってカップリングの左右の歯車筐の着脱が自由に出来るので補修が簡単に出来る利点がある。」(第1頁第1欄第27行?第2欄第29行)
(c)第2図から、環状歯車筐12,13及び中間接手片14がバックロール軸2及び減速機軸1の両端面間から抜き取り自在となるように、環状歯車筐12,13及び中間接手片14それぞれの軸方向長さが、前記両端面間の距離よりも短く設定されている構成が看取できる。
したがって、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
【引用発明】
モーターAに連結している減速機Bの減速機軸1とゴム、プラスチックロール機のバックロール軸2とを連結する横向きのギヤフレックスカップリングを備えており、
前記ギヤフレックスカップリングは、前記ゴム、プラスチックロール機のバックロール軸2及び前記減速機Bの減速機軸1に対してそれぞれ個別に嵌合され且つ外周面に外歯歯車3,4を有する円筒体5,7と、この円筒体5,7に遊嵌すると共に、外歯歯車3,4にそれぞれ個別に噛合する内歯歯車10,11を内周面に有する環状歯車筐12,13と、この環状歯車筐12,13の間で着脱自在に設けられ且つ環状歯車筐12,13を連結する中間接手片14とを有し、前記環状歯車筐12,13及び前記中間接手片14がバックロール軸2及び減速機軸1の両端面間から抜き取り自在となるように、当該環状歯車筐12,13及び中間接手片14それぞれの軸方向長さが、両端面間の距離よりも短く設定されているゴム、プラスチック用ロール機の伝動装置。

(刊行物2)
刊行物2には、「遊星ローラ式変速機構を用いた動力伝達装置」に関して、図面(特に、図5及び7を参照)とともに、下記の技術的事項が記載されている。
(d)「本発明は、一方の軸の回転動力を、遊星ローラ式変速機構にて、他方の軸へ増速または減速して伝達する動力伝達装置に関する。」(第2頁第1欄第30?32行、段落【0001】参照)
(e)「収容凹部29dを囲繞する太陽ローラ軸29の周壁には、第1実施例の歯車型カップリング30の給油孔30fに代わる半径方向の排油孔29fが、収容凹部29dの底部に連通して設けられており、収容凹部25aでは、高速回転軸25の給油孔25cを通して給油通路37の潤滑油を強制的に導入するのに対し、収容凹部29dでは、収容凹部29d底部の潤滑油を、太陽ローラ軸29と歯車型カップリング30の回転遠心力によって、排油孔29fから油滴やオイルミストの充満する油滴室43へ排出して、収容凹部29dの底部を負圧にし、油滴室43の潤滑油を収容凹部29dの開口端より導入して、雄インボリュートスプライン30gと雌インボリュートスプライン29eとに潤滑油を供給する。」(第5頁第8欄第47行?第6頁第9欄第9行、【0037】参照)
(f)「図7は、第1発明を適用した第4実施例で、高速回転軸25と太陽ローラ軸29との接続に、歯車型カップリング70と雄継手71とを用いている。歯車型カップリング70は、両端に開口する円筒体72の中央を隔壁72aで仕切って、円筒体72内に2つの収容凹部72b,72cを画成し、収容凹部72b,72cの内周面に、直線状の雌インボリュートスプライン72d,72eを刻設すると共に、円筒体72の周壁に、排油孔72f,72gを半径方向に貫通形成して、収容凹部72b,72cの底部に連通させている。」(第6頁第9欄第21?30行、段落【0039】参照)

(刊行物3)
刊行物3には、「歯車式軸継手」に関して、図面(特に、図1を参照)とともに、下記の技術的事項が記載されている。なお、拗音及び促音は小書きで表記した。
(g)「本発明は、端面が軸に締結されていて内歯を有するスリーブと、端部に外歯を有するスペーサより成る歯車式軸継手に係り、特に歯かみ合い部への給油構造に関する。」(第1頁左下欄第14?17行)
(h)「給油管6により給油ポケット9に供給された油は、給油穴10を通り、それぞれの歯底から歯かみ合い部5へ均等に導かれる。そして、歯面を潤滑,冷却した後、油だまりを形成することなしにスリーブ1の排油穴8から直ちに排出される。上記構成により、歯かみ合い部5へのスラッジの堆積をなくすることができ、かつ油切れのない安定した給油が可能となる。」(第3頁左上欄第6?14行)

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、それぞれの有する機能からみて、引用発明の「モーターAに連結している減速機B」は本願発明の「駆動装置」に相当し、以下同様にして、「減速機軸1」は「出力軸」に、「ゴム、プラスチックロール機」は「被駆動装置」に、「バックロール軸2」は「入力軸」に、「連結」は「接続」に、「ギヤフレックスカップリング」は「ギアカップリング部」に、「外歯歯車3,4」は「第1ギア」に、「円筒体5,7」は「一組の第1筒体」に、「内歯歯車10,11」は「第2ギア」に、「環状歯車筐12,13」は「一組の第2筒体」に、「中間接手片14」は「連結体」に、「ゴム、プラスチック用ロール機の伝動装置」は「接続装置」に、それぞれ相当するので、両者は下記の一致点、及び相違点1?3を有する。
<一致点>
駆動装置の出力軸と被駆動装置の入力軸とを接続する横向きのギアカップリング部を備えており、
前記ギアカップリング部は、前記被駆動装置の入力軸及び前記駆動装置の出力軸に対してそれぞれ個別に嵌合され且つ外周面に第1ギアを有する一組の第1筒体と、この一組の第1筒体に遊嵌すると共に、一組の第1ギアにそれぞれ個別に噛合する第2ギアを内周面に有する一組の第2筒体と、この一組の第2筒体の間で着脱自在に設けられ且つ両第2筒体を連結する連結体とを有し、前記第2筒体及び前記連結体が入力軸及び出力軸の両端面間から抜き取り自在となるように、当該第2筒体及び連結体それぞれの軸方向長さが、両端面間の距離よりも短く設定されている接続装置。
(相違点1)
本願発明は、「ギアカップリング部のギアに対して潤滑する潤滑部とを備えており、前記潤滑部は」、「ギアカップリング部の下側に潤滑油を貯留するオイルケースを有しており、当該オイルケースに貯留された潤滑油に前記ギアカップリング部の下部に位置するギアを浸漬させる油浴式の構成とされて」いるのに対し、引用発明は、そのような構成を具備していない点。
(相違点2)
本願発明は、「前記ギアカップリング部は、当該ギアカップリングと一体となって回転しながらオイルケース内に貯留する潤滑油を上方へ汲み上げると共に、当該ギアカップリングの内歯部分および外歯部分に流し込むようにギアカップリング部のギアに対して潤滑油を案内する案内部材を有して」いるのに対し、引用発明は、そのような構成を具備していない点。
(相違点3)
本願発明は、「前記第2筒体の周壁にギアカップリング部内の潤滑油をギアカップリング部外に排出可能な潤滑油流通孔が設けられている」のに対し、引用発明は、そのような構成を具備していない点。
そこで、上記相違点1?3について検討する。
(相違点1について)
カップリングの潤滑装置において、ギアを浸漬させる油浴式の構成は、従来周知の技術手段(例えば、刊行物4には、「カップリング13およびポンプ側軸受16、17を油浴潤滑する潤滑油槽18がハウジング3の外部に設けてある。」[第3頁第3欄第38?40行、段落【0013】参照]と記載されている。)である。
そして、刊行物1に記載されたものは、横向きのギヤフレックスカップリングであり、ギヤフレックスカップリングのギアは潤滑を必要とする部位であることは技術的に自明の事項である。
一方、潤滑は様々な技術分野の回転部分で普遍的に必要とされるものであるが、その際に、どのような潤滑方式を選択するかは、良好な潤滑を行うために当業者が適宜選択する設計変更の範囲内の事項にすぎない。
また、オイルケースは、油浴潤滑で潤滑油を貯めるために必要なものであり、従来周知の技術手段(例えば、刊行物4の図1には、潤滑油槽18が記載されている。刊行物5には、「10は減速機構の空間を示し、その内底部には潤滑油が11のレベルまで蓄えられている。」[第5頁第16?18行]と記載されている。刊行物6には、「11は被動軸4に遊かんする大径のオイルギヤで、中間軸3に固定した小径のオイルギヤ12にかみ合い、かつ、その下部は常に油に浸っている。」[第1頁左欄第19?21行]と記載されている。特開2001-323999号公報の段落【0011】及び図1には、オイルバス8が記載されている。)にすぎない。
してみれば、引用発明の横向きのギヤフレックスカップリングに、上記従来周知の技術手段を適用することにより、ギヤフレックスカップリングのギアに対して潤滑する潤滑部とを備え、潤滑部は、横向きのギアカップリング部の下側に潤滑油を貯留するオイルケースを設け、オイルケースに貯留された潤滑油にギヤフレックスカップリングの下部に位置するギアを浸漬させる油浴式の構成とすることにより、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、技術的に格別の困難性を有することなく当業者が容易に想到できるものであって、これを妨げる格別の事情は見出せない。
(相違点2について)
ギアに対して潤滑油を案内する案内部材は、従来周知の技術手段(例えば、刊行物5には、「リブ7と鏡板8及びフローテングシール9は密閉した空間10を形成するとともに、それぞれの内部にはヒレ状の突起7a、又は8a或いは窪み7b、又は8bを設けて凹凸部を形成しているため、例えば、リブ7及び鏡板8のヒレ状の突起7a,8bがリブ及び鏡板が構成する内部に形成する空間10の底部に11のレベルまで蓄えられた潤滑油中を回転すると潤滑油をはね上げて歯車の所定の箇所に潤滑油を供給する。リブ7及び鏡板8に設けた窪み7b,8bがリブ及び鏡板が構成する内部に形成する空間の底部に11のレベルまで蓄えられた潤滑油中を回転するとヒレ状の突起と同様に潤滑油をはね上げて歯車の所定の箇所に潤滑油を供給する。」[第7頁第6?20行]と記載されている。刊行物6には、「11は被動軸4に遊かんする大径のオイルギヤで、中間軸3に固定した小径のオイルギヤ12にかみ合い、かつ、その下部は常に油に浸っている。これらのギヤ11,12はたゞ油を飛散させるのを目的とするもので、ほとんど無負荷であるから歯幅を著しく狭くしてある。」[第1頁左欄第19行?右欄第2行]、及び「本考案においては、オイルギヤ11は被動軸4に固定した減速ギヤ10より高速度で回転して油をすくい上げる。オイルギヤ11によりすくい上げられた油はオイルギヤ12を介して、これに近接して設けた高速度の減速ギヤ6に供給される。」[第1頁右欄第6?11行]と記載されている。また、特開2001-323999号公報の段落【0011】及び図4には、オイルバス8のオイルを汲み上げるオイルバケット27が記載されている。)にすぎない。
してみれば、(相違点1について)の判断の前提下において、引用発明の横向きのギヤフレックスカップリングに、上記従来周知の技術手段を適用することにより、ギアカップリングと一体となって回転しながらオイルケース内に貯留する潤滑油を上方へ汲み上げると共に、ギヤフレックスカップリングの内歯部分および外歯部分に流し込むようにギヤフレックスカップリングのギアに対して潤滑油を案内する案内部材を設けて、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、技術的に格別の困難性を有することなく当業者が容易に想到できるものであって、これを妨げる格別の事情は見出せない。
(相違点3について)
引用発明及び刊行物2に記載された技術的事項は、ともに接続装置に関する技術分野に属するものであって、刊行物2には、図5に関して、「収容凹部29dを囲繞する太陽ローラ軸29の周壁には、(中略)半径方向の排油孔29fが、収容凹部29dの底部に連通して設けられており、(中略)収容凹部29dでは、収容凹部29d底部の潤滑油を、太陽ローラ軸29と歯車型カップリング30の回転遠心力によって、排油孔29fから油滴やオイルミストの充満する油滴室43へ排出して、収容凹部29dの底部を負圧にし、油滴室43の潤滑油を収容凹部29dの開口端より導入して、雄インボリュートスプライン30gと雌インボリュートスプライン29eとに潤滑油を供給する。」(第5頁第8欄第47行?第6頁第9欄第9行、段落【0037】、上記摘記事項(e)参照)、及び図7に関して、「円筒体72の周壁に、排油孔72f,72gを半径方向に貫通形成して、収容凹部72b,72cの底部に連通させている。」(第6頁第9欄第28?30行、段落【0039】、上記摘記事項(f)参照)と記載されている。
また、引用発明及び刊行物3に記載された技術的事項は、ともに接続装置に関する技術分野に属するものであって、刊行物3には、「給油管6により給油ポケット9に供給された油は、給油穴10を通り、それぞれの歯底から歯かみ合い部5へ均等に導かれる。そして、歯面を潤滑,冷却した後、油だまりを形成することなしにスリーブ1の排油穴8から直ちに排出される。」(第3頁左上欄第6?11行、上記摘記事項(h)参照)と記載されている。
上記各記載からみて、刊行物2及び3には、筒体の周壁にギアカップリング部内の潤滑油をギアカップリング部外に排出可能な潤滑油流通孔が設けられていることが記載又は示唆されている。
してみれば、(相違点1について)の判断の前提下において、引用発明の環状歯車筐12,13に、上記刊行物2及び3に記載又は示唆された技術的事項を適用することにより、環状歯車筐12,13の周壁にギヤフレックスカップリング内の潤滑油をギヤフレックスカップリング外に排出可能な排油孔・排油穴(潤滑油流通孔)を設けて、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、技術的に格別の困難性を有することなく当業者が容易に想到できるものであって、これを妨げる格別の事情は見出せない。

また、本願発明が奏する効果についてみても、引用発明、刊行物2及び3に記載された発明、並びに従来周知の技術手段が奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
したがって、本願発明は、刊行物1?3に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、「ギアカップリングの潤滑では、シール部から漏れにくい等の理由から潤滑が容易なものとしてグリースを用いた潤滑が一般的に知られており且つよく用いられています。例えば、実開昭58-135527、特開平7-279985、特開平7-286188、特開平11-152490などにもギアカップリングにおけるグリースを用いた潤滑が開示されていて、ギアカップリングの潤滑ではグリースを用いて潤滑することが本願出願当時において周知かつ慣用な技術であるとも言えます。
つまり、横向きのギアカップリングを油浴潤滑することが周知の技術的事項でないことに加えて、ギアカップリングの潤滑ではむしろグリースを用いて潤滑することが本願出願当時において周知かつ慣用な技術であると考えられます。これらの点に鑑みれば、『本願発明の出願時の技術常識を参酌すれば、引用文献1(注:本審決の「刊行物1」に相当する。)にギアカップリングを油浴潤滑することが開示されているに等しい』とする審査官殿のお考えは成立しないと思料致します」(「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(d)本願出願当時の技術常識」の項を参照)、及び「潤滑は様々な技術分野の回転部分で普遍的に必要とされるものであるからといって、数ある潤滑の中から本願発明と全く設置方向が異なるギアカップリングを潤滑する引用文献2(注:本審決の「刊行物4」に対応する。以下同様。)の潤滑機構を選択した上で、混練設備のように設置方向が異なるギアカップリングを潤滑する機構にこの引用文献2の潤滑機構を適用する動機付けにもなりません。」(同「(f)容易性の認定について」の項を参照)と主張している。
しかしながら、上記(相違点1について)において述べたように、引用発明の横向きのギヤフレックスカップリングに、従来周知の技術手段(ギアを浸漬させる油浴式の構成)を適用することの容易想到性について判断をしているのであって、審判請求人が述べている「本願発明の出願時の技術常識を参酌すれば、刊行物1にギアカップリングを油浴潤滑することが開示されているに等しい」という趣旨のものではないし、また、上記(相違点1について)?(相違点3について)において述べたように、本願発明は、刊行物1?3に記載された発明、及び従来周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、審判請求人が主張する本願発明が奏する作用効果は、従前知られていた構成が奏する作用効果を併せたものにすぎず、本願発明の構成を備えることによって、本願発明が、従前知られていた構成が奏する作用効果を併せたものとは異なる、相乗的で予想外の作用効果を奏するものとは認められないので、審判請求人の主張は採用することができない。

4.むすび
結局、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、その出願前日本国内において頒布された刊行物1?3に記載された発明、及び従来周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の請求項2?7に係る発明について検討をするまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-15 
結審通知日 2011-11-22 
審決日 2011-12-12 
出願番号 特願2006-255954(P2006-255954)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増岡 亘  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 倉田 和博
常盤 務
発明の名称 接続装置と、接続装置を介して混練装置と駆動装置とを接続した混練設備  
代理人 安田 敏雄  

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