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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B82B
管理番号 1251958
審判番号 不服2010-18959  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-23 
確定日 2012-02-09 
事件の表示 特願2005-512001「構造体および構造体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 2月 3日国際公開、WO2005/009891〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、特許法第41条に基づく優先権(優先日 平成15年7月15日)を主張し、平成16年7月14日を国際出願日として出願した特願2005-512001号であって、平成21年5月18日付けで拒絶理由が通知され、同年7月24日付けで特許請求の範囲について手続補正がなされるとともに意見書が提出されたものの、平成22年6月30日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、前記拒絶査定を不服として、平成22年8月23日に請求された拒絶査定不服審判事件である。

2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成21年7月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「樹脂および該樹脂の中に分散したナノ微粒子からなる構造体の製造方法であって、
上記樹脂の原料となるモノマー等に、上記ナノ微粒子の前駆体となる物質を混合し、二光子光重合法により上記モノマー等を硬化させた後、上記物質を反応物として用いる化学反応により上記ナノ微粒子を生成させ、
上記ナノ微粒子の平均粒子径は500nm以下であることを特徴とする構造体の製造方法。」

3 刊行物
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である「Atsushi Shishido、Ivan B. Diviliansky、I. C. Khoo、Theresa S. Mayer,“Direct fabrication of two-dimensional titania arrays using interference photolithography”,APPLIED PHYSICS LETTERS,American Institute of Physics,12 November 2001,Vol.79,No.20,pp.3332-3334」(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項(当審による邦訳)が記載されている。
(1a)第3332頁中央(要約)
「0.8-2.0μm周期の2次元(2D)チタニア配列が、感光性チタニウム含有モノマーフィルムの重合により、干渉フォトリソグラフィーを用いて作製された。2D前駆体配列が、光重合開始剤が添加されたメタクリル酸、エチレングリコールジメタクリレート、及びチタニウムエトキシドの混合物に、Nd-イットリウム-アルミニウム-ガーネットレーザーからの、355nm、15nsのパルスを露光することによって準備され、その後、メタノールですすがれた。その前駆体配列の引き続く575℃での焼成により、純チタニア配列が得られた。この方法によって作成された配列構造は、光学顕微鏡と走査電子顕微鏡によって確認された。」
(1b)第3332頁右欄第19?33行
「このレターで、我々は、チタニウム含有モノマーフィルムの光重合によるTiO_(2)の2D誘電体配列直接作製のための簡単で経済的な代替案について報告する。プロセスは、チタニウム(IV)エトキシド(TE)(Aldrich)、メタクリル酸(MA)(Aldrich)、エチレン グリコール ジメタクリレート(EDMA)(Aldrich)、及び、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(光重合開始剤、Aldrich)成分を含む溶液を準備することから始まる。図1は、これら化合物の分子構造を示す;これらTE、MA、EDMAの屈折率は、それぞれ、1.504、1.431、及び、1.45である。TE、MA及びEDMAはモル比2:10:5で混合され、光重合開始剤がMA及びEDMAの2重量%の量で添加される。このフィルムは、ガラス基板上に、約1000rpmのスピニングにより、アルゴン雰囲気下で被覆される。」
(1c)第3333頁右欄第6?16行
「チタニウム含有モノマーフィルムは、図2(b)に図示されているように、アルゴン雰囲気下で、Nd:イットリウム-アルミニウム-ガーネット(YAG)パルス化レーザー(Spectra Physics GCR-13 Nd:YAG,パルス持続時間15ns)放射により355nm、2mW/cm2、7分間、露光されることにより光重合された。次いで、フィルムは未照射材料を除去するために90秒間メタノールですすがれ、図2(C)に図示されているような、配列化されたチタニウム含有ポリマーの2D配列が得られた。図3(a)は、その結果のポリマー配列の光学顕微鏡像(Olympus BX60MF)を示し、柱の周期が1.6μmであることを示している。」
(1d)第3333頁右欄第17?29行
「対比目的のため、フォトレジスト(SU8,MicroChem Corp.)製の2D配列もまた、同じ光学配置[図3(b)]の手段によって作製された。この場合、フィルム中に生成される本来の光分布の周期と等しい2.6μmの周期の規則的な2D構造が観察される。それ故、その収縮は、チタニウム含有ポリマー誘電体柱の作製プロセスにおいて生じたと結論することが妥当である。チタニウムエトキシドが空気中の水分に高反応性であって、そのチタニウム二酸化物が加水分解の生成物であることは、よく知られた事項である。このプロセスは、実体上、体積を減少させ、ここで観察される収縮の最もありそうな要因となる。」
(1e)第3334頁左欄第19?33行
「未照射レジストがメタノールですすぎ除去された後の、光重合された前駆体構造の有機物中にTEが残っていない限り、2Dチタニア配列は達成されない点に留意されたい。そして、この効果について、架橋高分子網中のTEの物理的混入が寄与することは可能であるが、主たる効果は、おそらく、エトキシド配位子と、MAのより強く結合しているカルボン酸塩群との交換、そして、EDMAの弱く結合しているエステル群との交換かもしれない。図4は、個々の純粋材料と、結果として生じる混合物の吸収スペクトルを示している。個々の構成要素のいずれもが、可視光波長に吸収を有さないが、混合物は、400nmの赤に対して強い吸収を有し、黄色がかって見える。この吸収は、束縛されたカルボン酸塩配位子からチタニウム(IV)への電荷移動に帰される。」

これら(1a)?(1e)の記載及び図面の図示内容からして、引用例1には、
「感光性チタニウム含有モノマーフィルムの重合により、干渉フォトリソグラフィーを用いて2次元チタニア配列を作製するための方法であって、
前記感光性チタニウム含有モノマーフィルムは、光重合開始剤が添加されたメタクリル酸、エチレングリコールジメタクリレート、及びチタニウムエトキシドの混合物を、アルゴン雰囲気下で、ガラス基板上に被覆したものであって、
アルゴン雰囲気下において、2.6μmの周期の2次元配列を与える干渉フォトリソグラフィーを利用してレーザ光露光することにより光重合し、
次いで、メタノールですすぐことによりフィルムの未照射材料を除去し、光重合されたチタニウム含有ポリマー中にチタニウムエトキシドが残存している2次元配列を達成し、
前記チタニウムエトキシドが空気中の水分と反応して加水分解することによりチタニウム二酸化物が生成され、
前記光重合されたチタニウム含有ポリマーの体積が減少して収縮することにより、柱の周期が1.6μmである2次元チタニア配列を作製する方法。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(2)引用例2
同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-1599号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(2a)「【0002】
【従来の技術】近年、マイクロマシーンの応用分野は、情報機器、計測機器、医療機器等広範囲に及び、更に今後、ナノサイズの解析や物質創成の研究開発に必須になってくる。この技術を適用したものとしては、数μmのギア、コイル、バルブやフォトニック結晶等がある。
【0003】更に、応用として、導波路や光学格子等にも適用できる。しかしながら、半導体プロセスに基づくマイクロマシニングは、設備が大がかりになり高コストになる。ところが、光造形法は大気中での加工であり、低コストが期待できる。中でも二光子吸収による光重合を利用した微細加工技術は、樹脂硬化の光波長と入射光の波長を別々に設定できること、又原理的に光の回折限界以下の微細加工が可能であることから超微細加工に向いている。」
(2b)「【0020】まず、ここでは、二光子誘起樹脂硬化を利用した光造形法の原理について説明する。
【0021】光硬化性樹脂は、通常紫外光を吸収し液体から固体へと変化する。そこで、近赤外パルスレーザー光をこの樹脂に集光させ、二光子吸収によって焦点位置で重合反応を誘起する。これによって、焦点位置近傍の小さな領域でのみ樹脂を硬化させることができ、焦点位置を変化させながらこの露光を繰り返すことにより、立体構造を造形することができる。」
(2c)「【0038】次に、二光子吸収について説明する。
【0039】二光子吸収とは三次の非線形光学効果の一種であり、2個の光子を同時に吸収し、分子が励起される過程である。通常の一光子吸収と二光子吸収のエネルギー遷移図を図7に示した。
【0040】図7(b)に示すように、二光子吸収においては光子2個で励起を行うため、一光子あたりのエネルギーが通常の吸収と比べ、半分となる。すなわち、振動数が半分となり、波長は倍になる。
【0041】通常の一光子吸収〔図7(a)〕の発生確率は入射光強度に比例するが、二光子吸収においては、入射光強度の2乗に比例する。そのため、より空間的に小さな領域の分子を励起することができる。さらに、波長が倍になることにより、より長い波長で励起を行うため、(1)物質に対する透過率が良くなり、より深い位置の分子を励起できる、(2)試料中の散乱、屈折の影響を受け難くなるという利点がある。ただし、通常の吸収と異なり、二光子吸収の吸収断面積は非常に小さく非常に起こり難い現象である。二光子吸収が顕著に現れるのは光強度が非常に大きいときに限られる。そのため、本発明では瞬間的な光強度が非常に大きいフェムト秒(fs)パルスレーザーを用いている。
【0042】次に、一光子および二光子重合による樹脂硬化を行った場合の樹脂硬化の様子を計算し、比較する。…(中略)…
【0049】…(中略)…図9は焦点近傍の光強度分布および二乗分布の面内積分値の光軸距離依存性を示す図である。
【0050】この図より明らかなように、一点に光を照射した場合、図8(a)に示す一光子の場合の方が、波長が短いために分解能が高いように見える。しかし、図9より分かるように、光軸に対して垂直な面内で光強度を積分すると、一光子吸収では各断面での吸収の総和は等しいが、二光子吸収の場合では焦点近傍のみに吸収が限定されている。
【0051】これは一光子吸収を用いた場合、焦点の前方、後方の樹脂での吸収が大きいことを表している。この差異は一点に露光を行った際でなく、多くの位置に露光を行ったとき、顕著に現れる。このような場合の樹脂重合度合いを算出する。…(中略)…
【0059】これより、一光子吸収〔図11(a),図12(a)〕によって、多点露光を行った場合、焦点の前後で樹脂の硬化が誘起されてしまう可能性が高いことが分かる。これより、複雑な構造を造形するには二光子吸収〔図11(b),図12(b)〕を用いる必要があることが分かる。」
(2d)「【0086】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0087】(A)光硬化樹脂に、この樹脂に吸収されない波長のフェムト秒パルスレーザー光を集光照射し、二光子吸収により樹脂を光重合させて硬化し、微小立体構造物を製造する方法において、作製すべき微小立体構造物の外殻部分を二光子吸収を用いて硬化し、外殻の外の未硬化不要樹脂を洗い流し、次いで外殻内部の未硬化樹脂を光重合させ、短時間で精度の高い三次元微小構造物を得ることができる。
【0088】(B)二光子吸収を用いた加工にはレーザー光強度に範囲がある。下限以下では光重合が起こらない。上限以上ではアブレーションが起こり、樹脂が破壊する。そこで、下限ぎりぎり(動作可能範囲の下半分)にレーザーパワーを設定し、精度を高めることができる。例えば、800nmの光で回折限界以下の120nmができる。」

4 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「チタニウムエトキシド」が、本願発明の「ナノ微粒子の前駆体となる物質」に相当することは、本願明細書の【0038】、【0060】の記載からして明らかであり、また、引用発明の「光重合開始剤が添加されたメタクリル酸、エチレングリコールジメタクリレート」が、本願発明の「樹脂の原料となるモノマー」に相当することは明らかであるから、引用発明の「光重合開始剤が添加されたメタクリル酸、エチレングリコールジメタクリレート、及びチタニウムエトキシドの混合物」である「感光性チタニウム含有モノマーフィルム」は、本願発明の「樹脂の原料となるモノマー等に、ナノ微粒子の前駆体となる物質を混合」したものに相当する。
(2)引用発明は「感光性チタニウム含有モノマーフィルム」を「レーザ光露光することにより光重合し」、「光重合されたチタニウム含有ポリマー中にチタニウムエトキシドが残存している2次元配列を達成」するものであることからして、本願発明と、「光重合法により上記モノマー等を硬化させ」る点で共通していることは明らかであるといえる。
(3)また、上記(1)の相当関係を勘案すると、引用発明の、「チタニウムエトキシドが空気中の水分と反応して加水分解することによりチタニウム二酸化物が生成され」ることが、本願発明の「ナノ微粒子の前駆体となる物質」「を反応物として用いる化学反応によりナノ微粒子を生成させ」ることに相当するといえる。
(4)そして、引用発明では、「チタニウムエトキシドが空気中の水分と反応して加水分解することによりチタニウム二酸化物が生成され、前記光重合されたチタニウム含有ポリマーの体積が減少して収縮することにより、柱の周期が1.6μmである2次元チタニア配列」が作製されるのであるが、引用発明の「感光性チタニウム含有モノマーフィルム」は、「アルゴン雰囲気下で、ガラス基板上に被覆」され、「アルゴン雰囲気下において、……レーザ光露光」されること、すなわち、引用発明の「感光性チタニウム含有モノマーフィルム」は、レーザ光露光がなされるまでアルゴン雰囲気下にあることからして、引用発明において生成される「チタニウム二酸化物」は、「感光性チタニウム含有モノマーフィルム」が「レーザ光露光」された後に生成されているといえる。
(5)さらに、上記(1)乃至(4)の検討内容からして、本願発明と引用発明は、「樹脂および該樹脂の中に分散したナノ微粒子からなる構造体の製造方法」である点で共通することも明らかである。
そうすると、本願発明と引用発明は、
「樹脂および該樹脂の中に分散したナノ微粒子からなる構造体の製造方法であって、
上記樹脂の原料となるモノマー等に、上記ナノ微粒子の前駆体となる物質を混合し、光重合法により上記モノマー等を硬化させた後、上記物質を反応物として用いる化学反応により上記ナノ微粒子を生成させる構造体の製造方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点1〉
モノマー等を硬化するための光重合法が、本願発明は、「二光子光重合法」であるのに対し、引用発明は、単なるレーザ光露光、すなわち、一光子による光重合によって行われている点。
〈相違点2〉
化学反応により生成されるナノ微粒子が、本願発明は、「平均粒子径は500nm以下」であるのに対し、引用発明は、粒子径が明らかでない点。

5 検討・判断
上記相違点について検討する。
(1)光重合法について
一光子光重合に代えて二光子吸収による光重合を利用することにより、超微細な立体構造の造形加工を可能とすることは、引用例2に記載されている(上記「3」の「(2)」の摘記内容参照)ように、本願の優先日前に公知の事項である。
そうすると、引用例2に接した当業者であれば、「干渉フォトリソグラフィーを用いて2次元チタニア配列を作製する」という微細な立体構造の加工を行う引用発明において、二光子吸収による光重合、すなわち、二光子光重合法を採用し、より微細な立体構造の加工を行い得るよう構成することは、格別の困難なく想到し得る事項であり、上記相違点1に格別の進歩性を見いだすことはできない。

(2)ナノ微粒子の平均粒子径について
ナノ微粒子、微細な樹脂構造とナノ微粒子の関係について、本願明細書の発明の詳細な説明には以下の記載がある。
ア 「【0010】本発明において、「ナノ微粒子」とは、本発明の方法によって生成される微粒子であり、本発明の方法によれば、平均粒子径が1μm未満のナノ微粒子を容易に生成することができ、例えば、その平均粒子径が、500nm以下、300nm以下、100nm以下のものを容易に生成することができる。また、「ナノ微粒子の前駆体となる物質」とは、イオンや該イオンを含む化合物などのナノ微粒子を生成できる物質を意味している。…(以下略)」
イ 「【0013】したがって上記の構成によれば、樹脂の原料となるモノマーおよび/またはオリゴマーを二光子光重合法により硬化させることで、微細な樹脂を得ることができる。また、これによれば、ナノ微粒子の前駆体となる物質を微細な樹脂の中に保持させることができる。このように微細な樹脂の中に保持された物質を反応物として用いて化学反応を行うことでナノ微粒子を生成させれば、微細な樹脂の中に粒子径の極めて小さいナノ微粒子を生成させることができる。
【0014】さらに、これによれば、二光子光重合法を行うときの光の照射時間やエネルギー、照射方向等を調節することで、樹脂に保持される、ナノ微粒子の前駆体となる物質の分布を2次元および/または3次元的に自由に操作することができる。すなわち、前駆体を上記樹脂中の所望の位置に配置することができるから、ナノ微粒子の前駆体となる物質が、平面的に規則的に配置された構造、立体的に規則的に配置された構造、または、平面的配置と立体的配置とが組み合わさった構造を容易に作製することができる。」
ウ 「【0017】本発明の構造体の製造方法は、上記の課題を解決するために、上記化学反応が、酸化反応、還元反応、水酸化反応、脱水反応、硫化反応、および酸化還元反応からなる群から選ばれる少なくとも1種類の化学反応であることを特徴としている。
【0018】上記の構成によれば、簡単な操作によりナノ微粒子を生成することができる。
【0019】また本発明の構造体は、上記の課題を解決するために、樹脂および該樹脂の中に分散した平均粒子径が300nm以下のナノ微粒子からなることを特徴としている。
【0020】上記の構成によれば、光学的性質が制御された構造体を提供することができる。すなわち、樹脂中に分散されている平均粒子径300nm以下のナノ微粒子の分布を制御することによって、ナノ微粒子が分散されている樹脂の光学的な性質を任意に調整できる。したがって、目的、用途に応じて、好適な光学的性質を備えた構造体を提供することができる。」
エ 「【0048】本実施の形態の製造方法は、モノマー等を二光子光重合法により硬化させるものであるため、微細な構造樹脂を得ることができる。そしてこれにより、ナノ微粒子の前駆体となる物質は、微細な樹脂の中に保持される。また、二光子光重合法を行うときのレーザー光の照射時間やエネルギー、照射方向等を調節することで、樹脂に保持される前駆体となる物質の分布を2次元および/または3次元的に自由に操作することができる。すなわち、二光子重合の条件を調整することにより、2次元および/または3次元方向に、樹脂による任意構造を作製できるから、当該樹脂に含まれている前駆体となる物質の分布を自由に操作することが可能になる。
【0049】そして、ナノ微粒子の前駆体となる物質を保持した微細な構造の樹脂を作製した後に、該物質を反応物とした化学反応を行い、樹脂中でナノ微粒子を生成させる。上記化学反応は、ナノ微粒子の前駆体となる物質からナノ微粒子を生成する反応であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、酸化反応;光還元反応、化学還元反応等の還元反応;水酸化反応;加熱等による脱水反応;硫化反応、および酸化還元反応を挙げることができる。これらの反応から選ばれる少なくとも1種類の化学反応によってナノ微粒子を生成することにより、簡単な操作でナノ微粒子を生成させることができる。なお、上記した反応を複数組み合わせてナノ微粒子を生成することとしてもよい。」
オ 「【0053】本実施の形態にかかる方法によって得られる構造体は、微細な樹脂の中に、ナノ微粒子が分散してなるものである。上述した方法によれば、ナノ微粒子を生成するための化学反応を適宜調節することで、ナノ微粒子の平均粒子径を300nm以下にすることができる。本実施の形態では、ナノ微粒子の平均粒子径を100nm以下にすることが好ましく、50nm以下にすることがより好ましい。ナノ微粒子の平均粒子径が小さくなるほど、ナノ微粒子を用いて構造体の光学的性質を好適に制御することができる。」
カ 「【0055】ここで、本実施の形態にかかる構造体において、ナノ微粒子を含む空間領域を微粒子含有部と称する。図1(a)?(b)は、本発明にかかる構造体を概略的に示すものである。図1(a)において、斜線で示す部分が、微粒子含有部である。また、図1(b)は、微粒子含有部の伸長方向(図1(a)中、矢印Dで示す方向)に対して垂直方向(A-A’方向)に切断したときの、矢視断面図を示している。
【0056】本実施の形態にかかる構造体は、微粒子含有部の伸長方向に対して垂直方向に切断した断面の外形上の最も遠い2点間の距離、すなわち、図1(b)に示す点B-B’間の距離を500nm以下にすることができる。また、B-B’間の距離を、200nm以下としたり、10μm以下としたりすることも可能である。なお、上記「外形上の最も遠い2点間の距離」とは、例えば、断面が円形であれば円の直径である、断面が楕円形であれば楕円形の長軸である。」

これら本願明細書の発明の詳細な説明の記載からして、ナノ微粒子は、ナノ微粒子の前駆体となる物質を、二光子光重合法によって作製された任意の樹脂構造体の中に保持せしめ、前記ナノ微粒子の前駆体となる物質を反応物として用い、当該物質に化学反応を生じさせることによって生成されるものであって、その平均粒子径は、前記化学反応を調節することによって制御されるものであると解することができ、ナノ微粒子の平均粒子径は、二光子光重合後の化学反応に依存するものと認められる。
そして、ナノ微粒子が、樹脂構造体の中に保持された後の化学反応によって生成されるものである以上、ナノ微粒子の平均粒子径は、前記樹脂構造体の断面寸法に依存し、高々、前記断面の外形上の最も遠い2点間の距離となるといえ、このことは、上記「カ」に摘記した事項からも首肯できることである。
また、二光子光重合法を用いることにより、120nmの三次元微小構造物を得ることができることも、引用例2に記載されている(上記「3」の「(2d)」参照)。
そうすると、微細な立体構造の加工を行う引用発明において、立体構造体の断面寸法を500nm以下として、その中に生成されるナノ微粒子の平均粒子径を「500nm以下」とするよう構成することは、当業者が適宜なし得る設計的事項といわざるを得ない。
なお、請求人は、審判請求書において、本願発明の技術的特徴について、「一光子重合法に替えて、二光子重合法を用いることにより、樹脂中の粒子を微小化することができる」旨主張するが、以上検討したとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載からは、ナノ微粒子の粒径は化学反応によって制御されるものであって、ナノ微粒子の粒径と二光子光重合法を用いることとの直接的な関係は見いだせないから、請求人前記主張を採用することはできない。
したがって、化学反応により生成されるナノ微粒子について、「平均粒子径は500nm以下」であるとすることは、当業者が格別の困難なくなし得る事項である。

(3)小括
以上のとおりであるので、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された技術的事項、に基いて当業者が容易に発明できたものである。

6 むすび
上記のとおり、本願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用例1に記載された発明、引用例2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-25 
結審通知日 2011-11-29 
審決日 2011-12-12 
出願番号 特願2005-512001(P2005-512001)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B82B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 剛  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 北川 清伸
吉川 陽吾
発明の名称 構造体および構造体の製造方法  
代理人 特許業務法人原謙三国際特許事務所  

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