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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1251976
審判番号 不服2010-25469  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-11 
確定日 2012-02-09 
事件の表示 特願2004-177182「焦点検出装置及び撮影装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年1月5日出願公開、特開2006-3427〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年6月15日の出願であって、平成19年6月11日付けで手続補正がなされ、その後平成22年5月11日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年7月16日付けで手続補正がなされ、その後同年8月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。その後当審にて平成23年8月1日付けで審尋がなされ、同年10月3日付けで回答がなされたものである。

2.平成22年11月11日付けの手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成22年11月11日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
〔理由〕
(2-1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲及び明細書の段落【0028】を補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1について、
「【請求項1】
撮影光学系の焦点状態を検出する焦点検出装置であって、
前記撮影光学系からの光束を分割して、第1の方向に間隔を有する第1の対の光学像および該第1の方向に直交する第2の方向に間隔を有する第2の対の光学像を形成する焦点検出光学系と、
前記第1および第2の対の光学像を光電変換する光電変換素子とを有し、
前記焦点検出光学系は、
前記撮影光学系の1次結像面から前記光電変換素子側に配置され、絞りを通過した前記第1および第2の対の光学像を形成する2次結像レンズと、
前記1次結像面と前記絞りとの間にあって前記1次結像面及び前記絞りから離れて位置し、前記第1の対の光学像の前記第1の方向への間隔を広げる光学的作用が前記第2の対の光学像の前記第2の方向への間隔を広げる光学的作用よりも大きい光学部材とを有し、
前記光学部材は前記1次結像面よりも前記2次結像レンズに近い位置に配置されていることを特徴とする焦点検出装置。」
とする補正を含むものである。

(2-2)本件補正の目的
本件補正のうち、上記請求項1に係る補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、前記撮影光学系からの光束を分割して、第1の方向に間隔を有する第1の対の光学像および該第1の方向に直交する第2の方向に間隔を有する第2の対の光学像を形成する「光学系」を「焦点検出光学系」と言い換え、光電変換素子が光電変換する「各光学像」を「第1および第2の対の光学像」と言い換え、2次結像レンズが形成する第1および第2の対の光学像を「絞りを通過した」第1および第2の対の光学像と言い換え、前記第1の対の光学像の前記第1の方向への間隔を広げる光学的作用が前記第2の対の光学像の前記第2の方向への間隔を広げる光学的作用よりも大きい光学部材の配置位置を「前記1次結像面と前記2次結像レンズとの間」から「前記1次結像面と前記絞りとの間にあって前記1次結像面及び前記絞りから離れて位置」するものに限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2-3)独立特許要件について
本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について以下に検討する。

(2-3-1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前である昭和62年7月11日に頒布された「特開昭62-156609号公報」(以下「引用刊行物」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。

(a)「〔産業上の利用分野〕
本発明は、例えば自動焦点カメラなどに用いられる焦点検出用の光学系で、詳しくは、撮影レンズの予定焦点面の近傍ないし後方にコンデンサレンズを配置し、このコンデンサレンズの後方に主光軸対称に一対の結像レンズを配置するとともに、これら結像レンズの前方に入射する光束を規制する開口部を有する遮光部材を設け、前記一対の結像レンズによって形成される予定焦点面の像を互いに比較することにより、前記撮影レンズの焦点検出を行う焦点検出用光学系に関する。」(第1頁右欄第2-13行)

(b)「〔実施例〕
本発明を一眼レフレックスカメラの焦点検出装置に適用した実施例について図面を参照して説明すると、第4図はカメラ全体の概略を示し、カメラボデー(1)には交換可能な撮影レンズ(2)が装着され、かつ、カメラボデー(1)内には、回動可能な主ミラー(3)、焦点板(4)、ペンタプリズム(5)、接眼レンズ(6)などからなるファインダ光学系が組込まれている。主ミラー(3)の後方には、撮影レンズ(2)を通過した光束の一部を下方へ反射させるための副ミラー(7)が設けられ、この副ミラー(7)の下方には、副ミラー(7)によって反射された光束にもとづいて撮影レンズ(2)の焦点を検出する焦点検出モジュール(8)が配設されている。
焦点検出モジュール(8)は、第3図に示すように、モジュール本体(9)、視野マスク(10)、受光素子パッケージ(11)などからなり、前記視野マスク(10)には、赤外線カットフィルタ(12)が取付けられ、この視野マスク(10)の弾性脚部(10a),(10b)をモジュール本体(9)の係合孔(9a)と係合切欠(9b)内に係合させることにより、コンデンサレンズ(13)をモジュール本体(9)の開口部(14)に固定保持できるように構成されている。モジュール本体(9)内には、副ミラー(7)で反射された主光軸(l)に対して45°の傾きをもつ屈曲用ミラー(15)が固着され、この屈曲用ミラー(15)の光路後方には、主光軸(l)に対して左右対称な一対の開口部(16a),(16b)を有する遮光部材(16)と、同じく主光軸(l)に対して左右対称な一対の結像レンズ(17a),(17b)を有するプラスチックからなる透明板(17)とが配設されている。この透明板(17)は、第2図(イ)または(ロ)に示すように、光路前方側の面が凹型のシリンドリカル面または凹型の球面になるように彎曲形成されている。換言すると、結像レンズ(17a),(17b)の前方に、凹型のシリンドリカルレンズ(18)または凹型の球面レンズ(19)が、結像レンズ(17a),(17b)と同一部材で一体的に形成されて設けられている。そして、遮光部材(16)に形成された一対の孔(16c),(16d)と、透明板(17)に形成された一対の孔(17c),(17d)とを、遮光部材(16)を光路前方に位置させた状態でモジュール本体(9)に植設のピン(9c),(9d)にそれぞれ外嵌することにより、遮光部材(16)と透明板(17)との位置決めを行うように構成されている。前記受光素子パッケージ(11)は、従来のものと同様に台板(11a)上に一列に配置された受光素子アレイの一例であるCCDアレイチップ(20)(第1図参照)をカバーガラスで封入したもので、CCDアレイチップ(20)の出力端子(20a)が台板(11a)の上下に突出されていて、この受光素子パッケージ(11)もモジュール本体(9)に固定できるように構成されている。
この焦点検出モジュール(8)の光学系を展開して示したのが第1図で、第4図に示したフィルム面(F)と等価な予定焦点面(F_(0))がコンデンサレンズ(13)の直前方に位置し、この予定焦点面(F_(0))の近傍に一次像(I)が形成される。この一次像(I)は、赤外線カットフィルタ(12)やコンデンサレンズ(13)、ならびに遮光部材(16)に形成の一対の開口部(16a),(16b)を介して結像レンズ(17a),(17b)で再結像され、受光素子アレイ(20)上に2つの二次像(Ia),(Ib)を形成する。これら両二次像(Ia),(Ib)の位置の変化を検出して、撮影レンズ(2)の焦点検出を行う点については従来と全く同様であるが、遮光部材(16)と結像レンズ(17a),(17b)との間に、凹型のシリンドリカルレンズ(18)または凹型の球面レンズ(19)が設けられているので、コンデンサレンズ(13)からの光束は、主光軸(l)から遠ざかる方向に屈折され、その後、再結像レンズ(17a),(17b)に入射されて再結像されることになる。したがって、第5図に示した傾き(θ)を大きくすることなく、受光素子アレイ(20)上での2つの二次像(Ia),(Ib)の干渉を回避することができ、焦点感度域を広げることができる。
なお、今まで述べた実施例においては、シリンドリカルレンズ(18)または球面レンズ(19)と結像レンズ(17a),(17b)とを、同一部材で一体的に形成したものを示したが、それぞれ別体に形成して実施することもできる。」(第2頁右下欄第5行-第3頁右下欄第6行)

(c)「第4図




(d)「第3図




(e)「第1図




上記引用刊行物の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「一眼レフレックスカメラの焦点検出装置において、
カメラボデー(1)内には、回動可能な主ミラー(3)、焦点板(4)、ペンタプリズム(5)、接眼レンズ(6)などからなるファインダ光学系が組込まれており、主ミラー(3)の後方には、撮影レンズ(2)を通過した光束の一部を下方へ反射させるための副ミラー(7)が設けられ、この副ミラー(7)の下方には、副ミラー(7)によって反射された光束にもとづいて撮影レンズ(2)の焦点を検出する焦点検出モジュール(8)が配設されており、
焦点検出モジュール(8)は、モジュール本体(9)、視野マスク(10)、受光素子パッケージ(11)などからなり、
前記視野マスク(10)には、赤外線カットフィルタ(12)が取付けられ、この視野マスク(10)の弾性脚部(10a),(10b)をモジュール本体(9)の係合孔(9a)と係合切欠(9b)内に係合させることにより、コンデンサレンズ(13)をモジュール本体(9)の開口部(14)に固定保持できるように構成されており、
モジュール本体(9)内には、副ミラー(7)で反射された主光軸(l)に対して45°の傾きをもつ屈曲用ミラー(15)が固着され、この屈曲用ミラー(15)の光路後方には、主光軸(l)に対して左右対称な一対の開口部(16a),(16b)を有する遮光部材(16)と、同じく主光軸(l)に対して左右対称な一対の結像レンズ(17a),(17b)を有するプラスチックからなる透明板(17)とが配設されており、
この透明板(17)は、光路前方側の面が凹型のシリンドリカル面になるように彎曲形成されており、結像レンズ(17a),(17b)の前方に、凹型のシリンドリカルレンズ(18)が、結像レンズ(17a),(17b)と同一部材で一体的に形成されて設けられており、
受光素子パッケージ(11)は、台板(11a)上に一列に配置された受光素子アレイであるCCDアレイチップ(20)をカバーガラスで封入したもので、CCDアレイチップ(20)の出力端子(20a)が台板(11a)の上下に突出されていて、この受光素子パッケージ(11)もモジュール本体(9)に固定できるように構成されており、
一眼レフレックスカメラのフィルム面(F)と等価な予定焦点面(F_(0))がコンデンサレンズ(13)の直前方に位置し、この予定焦点面(F_(0))の近傍に一次像(I)が形成され、この一次像(I)は、赤外線カットフィルタ(12)やコンデンサレンズ(13)、ならびに遮光部材(16)に形成の一対の開口部(16a),(16b)を介して結像レンズ(17a),(17b)で再結像され、受光素子アレイ(20)上に2つの二次像(Ia),(Ib)を形成し、これら両二次像(Ia),(Ib)の位置の変化を検出して、撮影レンズ(2)の焦点検出を行い、
遮光部材(16)と結像レンズ(17a),(17b)との間に、凹型のシリンドリカルレンズ(18)が設けられているので、コンデンサレンズ(13)からの光束は、主光軸(l)から遠ざかる方向に屈折され、その後、再結像レンズ(17a),(17b)に入射されて再結像されることになるので、受光素子アレイ(20)上での2つの二次像(Ia),(Ib)の干渉を回避することができ、焦点感度域を広げることができ、
シリンドリカルレンズ(18)と結像レンズ(17a),(17b)とを、それぞれ別体に形成して実施する、
焦点検出装置。」

(2-3-2)対比
本願補正発明と、引用発明を比較する。
引用発明における「撮影レンズ(2)」は、本願補正発明における「撮影光学系」に相当する。
引用発明における「一眼レフレックスカメラの焦点検出装置」は、一眼レフレックスカメラに装着した撮影レンズ(2)の焦点検出を行っているので、本願補正発明における「撮影光学系の焦点状態を検出する焦点検出装置」に相当する。
引用発明における「主ミラー(3)」が「撮影レンズ(2)を通過した光束の一部」をその「後方に」生成することは、本願補正発明における「前記撮影光学系からの光束を分割して」いることに相当する。
引用発明における「2つの二次像(Ia),(Ib)」は、「受光素子アレイ(20)上に」「形成」され、かつ「干渉を回避することができ」ることからその間に間隔を有していることは明らかであるから、本願補正発明における「第1の方向に間隔を有する第1の対の光学像」に相当する。
引用発明における「受光素子アレイであるCCDアレイチップ(20)」は、「両二次像(Ia),(Ib)の位置の変化を検出」するものであるから、本願補正発明における「第1」「の対の光学像を光電変換する光電変換素子」に相当する。
引用発明における「コンデンサレンズ(13)の直前方に位置」する「一眼レフレックスカメラのフィルム面(F)と等価な予定焦点面(F_(0))」は、本願補正発明における「撮影光学系の1次結像面」に相当する。
引用発明における「遮光部材(16)」は、本願補正発明における「絞り」に相当する。
引用発明における「結像レンズ(17a),(17b)」は、「予定焦点面(F_(0))の近傍」に「形成され」た「一次像(I)は、赤外線カットフィルタ(12)やコンデンサレンズ(13)、ならびに遮光部材(16)に形成の一対の開口部(16a),(16b)を介して結像レンズ(17a),(17b)で再結像され、受光素子アレイ(20)上に2つの二次像(Ia),(Ib)を形成」することから、本願補正発明における「撮影光学系の1次結像面から」「光電変換素子側に配置され」た「第1」「の対の光学像を形成する2次結像レンズ」に相当する。
引用発明における「結像レンズ(17a),(17b)と」「別体に形成し」た「シリンドリカルレンズ(18)」は、「遮光部材(16)と結像レンズ(17a),(17b)との間」に配置されており、かつ「受光素子アレイ(20)上での2つの二次像(Ia),(Ib)の干渉を回避することができ」、さらに「予定焦点面(F_(0))の近傍」に「形成され」た「一次像(I)は、赤外線カットフィルタ(12)やコンデンサレンズ(13)、ならびに遮光部材(16)に形成の一対の開口部(16a),(16b)を介して結像レンズ(17a),(17b)で再結像され、受光素子アレイ(20)上に2つの二次像(Ia),(Ib)を形成」することから、本願補正発明における「1次結像面」「から離れて位置し」、「第1の対の光学像の」「第1の方向への間隔を広げる光学的作用」を備えた「光学部材」に相当する。

すると、本願補正発明と、引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「撮影光学系の焦点状態を検出する焦点検出装置であって、
前記撮影光学系からの光束を分割して、第1の方向に間隔を有する第1の対の光学像を形成する焦点検出光学系と、
前記第1の対の光学像を光電変換する光電変換素子とを有し、
前記焦点検出光学系は、
前記撮影光学系の1次結像面から前記光電変換素子側に配置され、絞りを通過した前記第1の対の光学像を形成する2次結像レンズと、
前記1次結像面から離れて位置し、前記第1の対の光学像の前記第1の方向への間隔を広げる光学的作用を有する光学部材とを有する、
焦点検出装置。」

一方で、両者は、次の各点で相違する。
<相違点1>
本願補正発明では、「焦点検出光学系」が「該第1の方向に直交する第2の方向に間隔を有する第2の対の光学像を形成する」ものであり、「2次結像レンズ」は「第1および第2の対の光学像を形成」し、「光電変換素子」は「前記第1および第2の対の光学像を光電変換」し、「光学部材」は、「前記第1の対の光学像の前記第1の方向への間隔を広げる光学的作用が前記第2の対の光学像の前記第2の方向への間隔を広げる光学的作用よりも大きい」のに対し、引用発明では、焦点検出モジュール(8)が2つの二次像(Ia),(Ib)しか形成していないので、上記発明特定事項を備えていない点。
<相違点2>
本願補正発明では、「光学部材」が、「1次結像面よりも前記2次結像レンズに近い位置に配置されて」おり、「1次結像面と」「絞りとの間にあって」「絞りから離れて位置」するのに対し、引用発明では、「シリンドリカルレンズ(18)」は、「遮光部材(16)と結像レンズ(17a),(17b)との間」に配置されている点。

(2-3-3)判断
上記相違点について判断する。
<相違点1について>
引用発明と同一の技術分野に属するカメラに用いる焦点検出装置において、4個の開口部を有する絞りマスクと4個のレンズを有する再結像レンズを通過した光によりイメージセンサーチップ上に水平方向の一対の像と垂直方向の一対の像を生成し、それらの像から焦点検出を行う技術は、本願出願前に周知である(必要ならば特開2001-208962号公報の段落【0006】-【0007】及び【図7】参照のこと。)。そして、引用発明に上記周知技術を適用する際に、水平方向にのみ一対の像の間隔を広げるようにすることは、「広げる必要のある方向により広げる」という、当業者における通常の創作能力の発揮に過ぎない。ゆえに、引用発明に上記周知技術を適用して、上記相違点1に係る発明特定事項を得ることは、当業者ならば容易になし得ることである。
<相違点2について>
カメラに用いる焦点検出装置については、カメラボディの内部においてカメラの本撮影光学系や、ファインダ光学系と共存させるという、内在された課題を備えており、そのために光学系における光学部材の配置を最適に決定することは、当業者における通常の創作能力の発揮に過ぎず、引用発明における2つの像の間隔を広げるシリンドリカルレンズ(18)の配置位置を適宜変更して、コンデンサレンズ(13)の直前方にある予定焦点面(F_(0))と遮光部材(16)の間で遮光部材(16)から離れた位置でかつ、予定焦点面(F_(0))よりもシリンドリカルレンズ(18)に近い位置に配置するように適宜変更して、上記相違点2に係る発明特定事項を得ることは、当業者ならば容易になし得ることである。

そして、本願補正発明の作用効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測しうる程度のものに過ぎない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(2-4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成22年11月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至9に係る発明は、平成22年7月16日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至9に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
撮影光学系の焦点状態を検出する焦点検出装置であって、
前記撮影光学系からの光束を分割して、第1の方向に間隔を有する第1の対の光学像および該第1の方向に直交する第2の方向に間隔を有する第2の対の光学像を形成する光学系と、
前記各光学像を光電変換する光電変換素子とを有し、
前記光学系は、
前記撮影光学系の1次結像面から前記光電変換素子側に配置され、前記第1および第2の対の光学像を形成する2次結像レンズと、
前記第1の対の光学像の前記第1の方向への間隔を広げる光学的作用が前記第2の対の光学像の前記第2の方向への間隔を広げる光学的作用よりも大きい光学部材とを有し、
前記光学部材は、前記1次結像面と前記2次結像レンズとの間であって、前記1次結像面よりも前記2次結像レンズに近い位置に配置されていることを特徴とする焦点検出装置。」

4.引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用刊行物並びにその記載事項は、前記「2.」の「(2-3-1)」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、前記「2.」の「(2-3)」で検討した本願補正発明から、前記撮影光学系からの光束を分割して、第1の方向に間隔を有する第1の対の光学像および該第1の方向に直交する第2の方向に間隔を有する第2の対の光学像を形成する「焦点検出光学系」を「光学系」と言い換え、光電変換素子が光電変換する「第1および第2の対の光学像」を「各光学像」と言い換え、2次結像レンズが形成する「絞りを通過した第1および第2の対の光学像」を「第1および第2の対の光学像」と言い換え、前記第1の対の光学像の前記第1の方向への間隔を広げる光学的作用が前記第2の対の光学像の前記第2の方向への間隔を広げる光学的作用よりも大きい光学部材の配置位置を「前記1次結像面と前記絞りとの間にあって前記1次結像面及び前記絞りから離れ」た「位置」から「前記1次結像面と前記2次結像レンズとの間」に変更して拡張した構成としたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらにほかの構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.」の「(2-3)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-01 
結審通知日 2011-12-07 
審決日 2011-12-20 
出願番号 特願2004-177182(P2004-177182)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 神 悦彦
伊藤 幸仙
発明の名称 焦点検出装置及び撮影装置  
代理人 高岡 亮一  

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