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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1252015
審判番号 不服2009-25157  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-18 
確定日 2012-02-08 
事件の表示 特願2004-551825「チップスケールのショットキーデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月27日国際公開、WO2004/044984、平成18年 2月16日国内公表、特表2006-505955〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2003年11月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年11月6日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成20年11月18日付けで拒絶理由が通知され,平成21年5月25日に手続補正書が提出されたが,同年8月10日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年12月18日に審判請求がされるとともに,同日に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成21年12月18日に提出された手続補正書による補正(以下,「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1. 本件補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲を補正するものであり,以下のとおりである。
〈補正事項a〉
補正前の請求項1及び請求項3の「第1主要表面を有する半導体ダイと,」を,補正後の請求項1及び請求項3の「第1主要表面を有し,更に低濃度にドープされた第1の部分と,高濃度にドープされた第2の部分とを備え,前記第1部分は,前記第2部分の上に配置されており,更に前記第1部分の主要表面から前記第2部分まで延びるシンカーを備える半導体ダイと,」と補正する。
〈補正事項b〉
補正前の請求項1及び請求項3の「前記半導体ダイの前記第1主要表面に電気的に接続されているが,前記第1電極からは電気的にアイソレートされている第2電極と,」を,補正後の請求項1及び請求項3の「前記半導体ダイの前記第1主要表面に電気的に接続されているが,前記第1電極からは電気的にアイソレートされ,かつ前記シンカーに電気的に接続されている第2電極と,」と補正する。
〈補正事項c〉
補正前の請求項7を削除し,補正前の請求項8?16を補正後の請求項7?15に繰上げるとともに,補正前の請求項8が引用する請求項7を,補正後の請求項7が引用する請求項6とする。

2. 補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無についての検討
前記〈補正事項a〉は,「第1主要表面を有する半導体ダイ」について,「第1主要表面を有し,更に低濃度にドープされた第1の部分と,高濃度にドープされた第2の部分とを備え,前記第1部分は,前記第2部分の上に配置されており,更に前記第1部分の主要表面から前記第2部分まで延びるシンカーを備える半導体ダイ」と限定的に減縮するものであるから,特許法第17条の2第4項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項をいう。以下同じ。)第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
前記〈補正事項b〉は,「第2電極」について「かつ前記シンカーに電気的に接続されている第2電極」と限定的に減縮するものであるから,特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
前記〈補正事項c〉は,補正前の請求項7を削除するとともに,当該削除に伴う項番の整合を行うものであるから,特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものである。
また,「第1主要表面を有し,更に低濃度にドープされた第1の部分と,高濃度にドープされた第2の部分とを備え,前記第1部分は,前記第2部分の上に配置されており,更に前記第1部分の主要表面から前記第2部分まで延びるシンカーを備える半導体ダイ」及び「前記シンカーに電気的に接続されている第2電極」は,いずれも本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に示されているから,上記各補正事項は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

上記のとおり,本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むから,以下,本件補正後の特許請求の範囲に記載された発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項に規定する独立特許要件を満たすか)どうかを,請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について検討する。

3. 独立特許要件についての検討
(1)本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明は,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりものである。(以下「本願補正発明」という。)
「 【請求項1】
第1主要表面を有し,更に低濃度にドープされた第1の部分と,高濃度にドープされた第2の部分とを備え,前記第1部分は,前記第2部分の上に配置されており,更に前記第1部分の主要表面から前記第2部分まで延びるシンカーを備える半導体ダイと,
前記第1主要表面の一部の上に配置され,これにオーミック接触するショットキー構造体と,
前記ショットキー構造体に電気的に接続された第1電極と,
前記半導体ダイの前記第1主要表面に電気的に接続されているが,前記第1電極からは電気的にアイソレートされ,かつ前記シンカーに電気的に接続されている第2電極と,
複数のハンダバンプと,
前記半導体ダイの中の前記第1電極と前記第2電極との間の領域の一部に形成されたガードリングとを備え,
ハンダバンプのうちの少なくとも1つは,前記1つの第1電極および第2電極に接続されており,
前記第1電極は前記第2電極を取り囲む半導体デバイスパッケージ。」

(2)刊行物に記載された発明
(2-1) 特開平10-284741号公報
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平10-284741号公報(以下「引用例1」という。)には,図1及び図2とともに,以下の記載がある。(下線は当審において付加。以下同様。)
ア 発明の属する技術分野
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,同じ表面に両極の電極を形成してあり,回路基板の導体パターンにリード線を用いることなく直接接続が可能な金属と半導体間の接合を有するダイオード装置に関する。」

イ 発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は,同じ表面に両極の電極を形成することによりフエースダウンボンディングの手法を用いて回路基板に接続できる金属と半導体間の接合を有するダイオード装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のダイオード装置は,半導体基体の表面に露呈する高比抵抗の第1の領域,第1の領域の下側に形成された低比抵抗の同じ導電形の第2の領域,該基体の表面から第2の領域まで延在する低比抵抗で第1の領域と同じ導電形の第3の領域,基体の表面で第1の領域と接触して金属と半導体間の接合を形成する第1の電極,基体表面で第3の領域に接続する第2の電極とを有することを特徴とする。」

ウ 実施例
「【0008】
【実施例】以下,本発明のダイオード装置の実施例をショットキーダイオード装置を例にとり図1と図2を参照しながら説明する。図1は断面図,図2は平面図であり,図3と同一部分は同じ符号を付してある。図1において,1は導電形がN形で低比抵抗のシリコンの半導体基板であり,その基板1上に同じ導電形で高比抵抗のエピタキシャル層2が形成されている。エピタキシャル層2には,第1の電極5が接触しており接触部分に金属と半導体間の接合であるショットキー・バリア3を形成している。また,エピタキシャル層2にはその表面から基板1まで延在する導電形がN形で低比抵抗の第3の領域7を形成してある。そして,領域7には第2の電極6が接続している。また,フエースダウンボンディングを行うためのバンプ8,バンプ9を夫々電極5と電極6の上に形成してある。
【0009】このようなショットキーダイオード装置は,アノード電極である電極5が第1の領域であるエピタキシャル層2に接触し,カソード電極である電極6は領域7を介して,第2の領域の役割をする基板1に接続している。電極5,電極6はいずれもエピタキシャル層2の同じ表面,つまり半導体基体の表面にあり,フエースダウンボンディングが可能である。このようなショットキーダイオード装置の製造に際しては,エピタキシャル層2内に最初に領域7を形成する以外は通常のショットキーダイオード装置の製造方法を用いればよい。
【0010】なお,基板1は第2の領域の役割を行ったが,基板とは別に埋め込み層を形成してその埋め込み層を第2の領域として用いることもできる。実施例においては,領域7は金属と半導体間の接合を形成する電極5の近傍に一箇所形成されているが,例えば周囲に円状に形成してもよい。また実施例では,ショットキーダイオード装置について説明したが,金属と半導体間の接合を有する種々のダイオード装置に広く応用できることは明らかである。」

したがって,引用例1には,以下の発明が記載されているものと認められる。(以下「引用発明1」という。)
「導電形がN形で低比抵抗のシリコンの半導体基板1上に同じ導電形で高比抵抗のエピタキシャル層2が形成され,
前記エピタキシャル層2には,第1の電極5が接触しており,当該接触部分に金属と半導体間の接合であるショットキー・バリア3が形成されており,
エピタキシャル層2には,さらに,その表面から前記半導体基板1まで延在する導電形がN形で低比抵抗の第3の領域7を形成され,前記第3の領域7には第2の電極6が接続されており,
前記第1の電極5と前記第2の電極6の上には,それぞれフエースダウンボンディングを行うためのバンプ8,バンプ9が形成されてなり,
アノード電極である前記第1の電極5が第1の領域である前記エピタキシャル層2に接触し,カソード電極である前記第2の電極6が前記第3の領域7を介して第2の領域の役割をする前記半導体基板1に接続された,フエースダウンボンディングが可能とされたショットキーダイオード装置。」

(2-2) 特開平6-5842号公報
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平6-5842号公報(以下「引用例2」という。)には,図1及び図4とともに,以下の記載がある。
ア 産業上の利用分野
「【0002】
【産業上の利用分野】本発明は,半導体装置に関し,更に詳しく言えば,ショットキバリアダイオードを有する半導体装置に関する。」

イ 実施例
「【0015】
【実施例】次に,図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。図1(a),(b)は,本発明の第1の実施例のSBDを含む半導体装置についての説明図で,例えばリニアICの電源整流回路を構成するSBDのうちの1つのSBDとその周辺部を示すものである。図1(a)は平面図,図1(b)は図1(a)のB-B線断面図である。
【0016】図1(a),(b)において,11はn型のシリコン基板(半導体層),12は熱酸化により選択的に形成されたシリコン酸化膜からなるフィールド絶縁膜で,外側周縁部が方形状となっているドーナツ状の,アノード電極(第1の電極)18のショットキ接合の形成領域13a,アノード電極18の外側周縁部を取り囲むように形成される第1のカソード電極(第2の電極)19のオーミックコンタクトの形成領域14,及びアノード電極18の内側周縁部の内側に形成される第2のカソード電極(第3の電極)20のオーミックコンタクトの形成領域15を除く領域に形成されている。
【0017】また,16,17はそれぞれ第1のカソード電極19及び第2のカソード電極20と接触するシリコン基板11の表層に形成された帯状のn+型のコンタクト領域層で,外側周縁部が方形状となっている環状のアノード電極18の外側周縁部から適当な間隔をおいて,かつ該外側周縁部に沿って,切れ目無く形成されている。
【0018】18は膜厚1500?3000Åのチタン膜(Ti膜)/膜厚5000?10000 Åのアルミニウム膜(Al膜)の2層の導電体膜からなり,外側周縁部が140 ×140 μmの方形状を有し,かつ内側周縁部が50×50の方形状を有する環状のアノード電極で,下層のTi膜がシリコン基板11と接触し,その接触面においてシリコン基板11との間でショットキ接合が形成されている。また,アノード電極18と一体的に形成された幅約80μmの配線21を有し,フィールド絶縁膜12上に引き出されて図示しない他のSBD等に接続されている。
【0019】19はアノード電極18の外側周縁部を取り囲むように形成されている,幅約30μm,膜厚5000?10000 Åの帯状のAl膜からなる第1のカソード電極で,シリコン基板11に形成されたコンタクト領域層16と接触し,その接触面においてシリコン基板11との間でオーミックコンタクトが形成されている。また,外側周縁部が方形状となっている環状のアノード電極18の外側周縁部から適当な間隔をおいて,かつ該外側周縁部に沿って形成されている。なお,第1のカソード電極19は,アノード電極18の配線21の通過する領域には形成されておらず,途切れている。更に,第1のカソード電極19と一体的に形成された幅約80μmの配線22を有し,フィールド絶縁膜12上に引き出されて図示しない他のSBD等に接続されている。
【0020】20はアノード電極18の内側周縁部の内側に形成されている40×40μmの方形状を有する,膜厚5000?10000 ÅのAl膜からなる第2のカソード電極で,シリコン基板11に形成されたコンタクト領域層17と接触し,その接触面においてシリコン基板11との間でオーミックコンタクトが形成されている。
【0021】23は,全面に形成された膜厚5000?10000 Åのシリコン酸化膜からなる層間絶縁膜で,第1のカソード電極19上及び第2のカソード電極20上にそれぞれ開口部24,25が形成されている。
【0022】26は,層間絶縁膜23上を配線され,層間絶縁膜23の開口部24,25を介して第1のカソード電極19と第2のカソード電極20との間を接続している配線である。
【0023】以上のように,本発明の第1の実施例のSBDを有する半導体装置においては,従来と同様にアノード電極18を取り囲むように第1のカソード電極19を形成するとともに,従来と異なりアノード電極18の形状を環状とし,かつ従来のアノード電極18形成領域の中央部に相当する領域に第2のカソード電極20を形成している。
【0024】従って,例えばアノード電極18から流入した電流は,アノード電極18の外側周縁部を取り囲む第1のカソード電極19と,アノード電極18の内側周縁部よりも内側に存在する第2のカソード電極20とに分散して流れるようになる。これにより,従来と比較して,電流の分布が均一化されるため,アノード/カソード間の直列抵抗を低減することができる。なお,電流の平均化による直列抵抗の低減は,第2のカソード電極20を形成するためにアノード電極18の面積を減らした分を十分に補うことができる。」

したがって,引用例2には,以下の発明が記載されているものと認められる。(以下「引用発明2」という。)
「アノード電極18を取り囲むように第1のカソード電極19を形成するとともに,前記アノード電極18の形状を環状とし,該環状のアノード電極18の内側の領域に第2のカソード電極20を形成することにより,前記アノード電極18から流入した電流が,前記アノード電極18の外側周縁部を取り囲む前記第1のカソード電極19と,前記アノード電極18の内側周縁部よりも内側に存在する前記第2のカソード電極20とに分散して流れるようにして,電流の分布を均一化することによりアノード/カソード間の直列抵抗を低減し,
さらに,前記アノード電極18は膜厚1500?3000Åのチタン膜/膜厚5000?10000 Åのアルミニウム膜の2層の導電体膜からなり,下層のチタン膜がシリコン基板11と接触し,その接触面においてシリコン基板11との間でショットキ接合が形成されている,
ショットキバリアダイオード。」

(3)本願補正発明と引用発明1との対比
ア 引用発明1において,「導電形がN形で低比抵抗のシリコンの半導体基板1」及び「同じ導電形で高比抵抗のエピタキシャル層2」は,いずれも「N形」となるようにドープされ,それらのドープ濃度は「低比抵抗のシリコンの半導体基板1」が,「高比抵抗のエピタキシャル層2」よりも高いことは明らかである。
したがって,引用発明1における「第2の領域」である「導電形がN形で低比抵抗のシリコンの半導体基板1」は,本願補正発明の「高濃度にドープされた第2の部分」に相当し,引用発明1における「第1の領域」である,「半導体基板1上に」「形成され」た「同じ導電形で高比抵抗のエピタキシャル層2」は,本願補正発明の「低濃度にドープされた第1の部分」であって,「前記第2部分の上に配置され」たものに相当する。

イ 引用発明1の「エピタキシャル層2」は「表面」を有しており,また,「エピタキシャル層2に」「さらに」「形成され」た,「その表面から前記半導体基板1まで延在する導電形がN形で低比抵抗の第3の領域7」は,本願補正発明の「更に前記第1部分の主要表面から前記第2部分まで延びるシンカー」に相当する。
したがって,引用発明1における前記「第3の領域7」と,上記アに記載した「半導体基板1」及び「エピタキシャル層2」を合わせたものが,本願補正発明の「第1主要表面を有」する「半導体ダイ」に相当する。

ウ 引用発明1の「前記エピタキシャル層2に」「接触して」いる「第1の電極5」は,「当該接触部分に金属と半導体間の接合であるショットキー・バリア3」を「形成」しているから,本願補正発明の「前記第1主要表面の一部の上に配置され,これにオーミック接触するショットキー構造体」に相当する。

エ 引用発明1の「表面から前記半導体基板1まで延在する導電形がN形で低比抵抗の第3の領域7に」接続されている「第2の電極6」と,本願補正発明の「前記半導体ダイの前記第1主要表面に電気的に接続されているが,前記第1電極からは電気的にアイソレートされ,かつ前記シンカーに電気的に接続されている第2電極」とは,「前記半導体ダイの前記第1主要表面に電気的に接続され,かつ前記シンカーに電気的に接続されている第2電極」である点で共通する。

オ 引用発明1においては「バンプ8,バンプ9が形成されて」いるから,本願補正発明の「複数のハンダバンプ」とは,「複数のバンプ」である点で共通する。
また,引用発明1において,「ショットキー・バリア3」を構成する「第1の電極5」と「バンプ8」とは電気的に接続されていることは明らかである。一方,本願補正発明において,「第1の電極」は「ショットキー構造体に電気的に接続された」ものである。
したがって,引用発明1における「前記第1の電極5と前記第2の電極6の上には,それぞれフエースダウンボンディングを行うためのバンプ8,バンプ9が形成されて」いることと,本願補正発明の「ハンダバンプのうちの少なくとも1つは,前記1つの第1電極および第2電極に接続されて」いることとは,「バンプのうちの少なくとも1つは,ショットキー構造体に電気的に接続される部分および第2電極に接続されて」いる点で共通する。

カ また,引用発明1に係る「ショットキバリアダイオード」が半導体デバイスを構成することは明らかであるから,引用発明1の「ショットキバリアダイオード」と,本願補正発明に係る「半導体デバイスパッケージ」は,「半導体デバイス」である点で共通する。

キ よって,引用発明1と本願補正発明とは,
「第1主要表面を有し,更に低濃度にドープされた第1の部分と,高濃度にドープされた第2の部分とを備え,前記第1部分は,前記第2部分の上に配置されており,更に前記第1部分の主要表面から前記第2部分まで延びるシンカーを備える半導体ダイと,
前記第1主要表面の一部の上に配置され,これにオーミック接触するショットキー構造体と,
前記半導体ダイの前記第1主要表面に電気的に接続され,かつ前記シンカーに電気的に接続されている第2電極と,
複数のバンプと,
バンプのうちの少なくとも1つは,ショットキー構造体に電気的に接続される部分および第2電極に接続されている,
半導体デバイス。」
である点で一致する。

ク 一方両者は,以下の各点で相違する。
《相違点1》
本願補正発明においては,「ショットキー構造体に電気的に接続された第1電極」を備え,第2電極が「第1電極からは電気的にアイソレートされ」ており,さらに,「バンプのうちの少なくとも1つは,前記1つの第1電極」に接続されているが,引用発明1においてはそのような構成を備えていない点。
《相違点2》
本願補正発明においては,「ハンダバンプ」を備えるが,引用発明1においては「バンプ」は備えるものの,「ハンダバンプ」であるとまでは特定されていない点。
《相違点3》
本願補正発明においては,「半導体ダイの中の前記第1電極と前記第2電極との間の領域の一部に形成されたガードリングとを備え」るが,引用発明1においてはそのようなものを備えていない点。
《相違点4》
本願補正発明においては,「前記第1電極は前記第2電極を取り囲む半導体デバイスパッケージ」であるが,引用発明1は,「半導体デバイス」ではあるものの,「前記第1電極は前記第2電極を取り囲む半導体デバイスパッケージ」という構成までは備えない点。

(4)当審の判断
以下,上記各相違点について検討する。
《相違点1について》
シリコンとの間でショットキ接合を形成する金属膜と,その上に形成されたアルミニウム膜の2層からなる電極を備えるショットキバリアダイオードは,前記第2 3.(2)で述べた引用発明2にも示されているように,普通に用いられているものである。引用発明1においても,ショットキー・バリア3を形成する第1の電極5を,ショットキ接合を形成する金属膜とその上に形成されたアルミニウム膜の2層からなる構造とすることは,当業者が適宜になし得たことであり,その結果,ショットキ接合を形成する金属膜が,本願補正発明の「ショットキー構造体」に対応し,前記「アルミニウム膜」が本願補正発明の「ショットキー構造体に電気的に接続された第1電極」に対応することとなり,また,第2電極が「第1電極からは電気的にアイソレートされ」ており,さらに,「バンプのうちの少なくとも1つは,前記1つの第1電極」に接続される点は,おのずと備わる構成であるといえる。
よって,相違点1は当業者が容易になし得たことである。

《相違点2について》
バンプを構成する材料としてハンダは,以下の周知例1にも示されているように,従来より慣用されているものである。
周知例1: 特開平6-37093号公報
本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平6-37093号公報には,次の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】バンプ電極と称する半導体素子の突起状電極は,絶縁膜に形成された開口を通じて半導体基板に接続された下地金属層と,この下地金属層の上面に茸形状断面で形成された中間金属層と,この中間金属層の上面に半球状に形成された半田層とから構成される。」

したがって,引用発明1におけるバンプ8,9をハンダバンプとすることは,当業者が適宜になし得たことである。
よって,相違点2は当業者が適宜になし得たことである。

《相違点3について》
一般に,ショットキダイオードにおいて,ショットキ障壁を構成する接触部周辺の半導体に,ガードリングを設けることは,前記引用例2のほか,以下の周知例2にも示されているように,従来より周知の技術である。
引用例2: 特開平6-5842号公報
引用例2には,図4(b)とともに,さらに次の記載がある
「【0028】また,第5の実施例の断面図である図4(b)に示すように,環状のアノード電極(第1の電極)18dとシリコン基板(半導体層)11cとの接触部であって,アノード電極18dの外側周縁部の接触部及び内側周縁部の接触部に,n型のシリコン基板11cにp型領域層(反対導電型領域層)30a,30bを選択的に形成することもできる。従って,電界の集中し易い,アノード電極18dのショットキ接合の周縁部が動作しないようにp型領域層30a,30bにより保護されるので,逆方向のリーク電流を低減し,かつ逆方向の耐圧を向上することができる。」

周知例2: 特開2000-323727号公報
本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-323727号公報には,図4(a)とともに次の記載がある。
「【0004】図4(a)は一般的なSBDの断面図,図4(b)はこのSBDの一部を省略した平面図である。N^(++)型のシリコン基板10上に形成したN^(-) 型のエピタキシャル層20の表面に環状の熱酸化膜60を形成し,この熱酸化膜60で囲まれたエピタキシャル層20の表面と接してショットキメタルとなる金属層50を形成し,ショットキ接合面30を形成している。ショットキ接合面30の周縁は電界集中がおこりやすく,これに起因して耐圧が低下するなど逆方向特性が劣化することを防ぐため,ショットキ接合面30の周囲には金属層50と接してP型のガードリング層40を環状に形成することで,逆バイアス時にエピタキシャル層20とガードリング層40とのPN接合により発生した空乏層70の広がりにより,逆方向特性の劣化を防いでいる。」

したがって,引用発明1において,ショットキー・バリア3が形成される第1の電極5との接触部の周辺の半導体にガードリングを設けることは,当業者が適宜になし得たことである。ここで,引用発明1は,「表面」において,ショットキ・バリア3と第2の電極6とが離間しているから,上に述べたようなガードリングを設けた場合には,ショットキー・バリア3と第2の電極6の間の領域の一部に前記ガードリングが設けられる構成となることは明らかであるところ,前記《相違点1について》において述べたように,引用発明1において,本願補正発明の「ショットキー構造体に電気的に接続された第1電極」に対応する「アルミニウム膜」を備えることに伴い,「半導体ダイの中の前記第1電極と前記第2電極との間の領域の一部に形成されたガードリングとを備え」ることとなることは明らかである。
したがって,相違点3は,当業者が容易になし得たことである。

《相違点4について》
前記第2 3.(2)で述べたとおり,引用発明2は,「アノード電極18を取り囲むように第1のカソード電極19を形成するとともに,前記アノード電極18の形状を環状とし,該環状のアノード電極18の内側の領域に第2のカソード電極20を形成することにより,前記アノード電極18から流入した電流が,前記アノード電極18の外側周縁部を取り囲む前記第1のカソード電極19と,前記アノード電極18の内側周縁部よりも内側に存在する前記第2のカソード電極20とに分散して流れるようにして,電流の分布を均一化することによりアノード/カソード間の直列抵抗を低減」するものであるが,一般に,ダイオードにおいて,アノード/カソード間の直列抵抗を低減することは,常に念頭に置いている課題であるから,引用発明1においても,電流の均一化を図るべく,ショットキバリアを形成する第1の電極5を取り囲むように,第3の領域7及びこれに接続する第2の電極6を形成するとともに,第1の電極5の形状を環状とし,該環状の第1の電極5の内側の領域に,さらに,前記第2のカソード電極となる第3の領域7及びこれに接続する第2の電極6を形成するようにすることは,当業者が容易になし得たことである。
そして,前記《相違点1について》において述べたように,本願補正発明の「ショットキー構造体に電気的に接続された第1電極」に対応する「アルミニウム膜」を備えることに伴い,相違点4に係る「第1電極は前記第2電極を取り囲む」構成を備えることとなることは明らかである。
また,引用発明1は,「フエースダウンボンディングが可能とされたショットキーダイオード装置」であるから,この「ショットキーダイオード装置」自体が,「半導体デバイスパッケージ」であるということができ,仮にそうでないとしても,「半導体デバイスパッケージ」とすることは,当業者が適宜になし得たことである。
したがって,相違点4は,当業者が容易になし得たことである。

(5)小括
以上のとおりであるから,本願補正発明は,引用例1及び引用例2並びに従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,本願補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4. 補正の却下の決定についてのむすび
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.平成21年12月18日に提出された手続補正書による補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成21年5月25日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載から見て,その請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(以下「本願発明」という。)
「【請求項1】
第1主要表面を有する半導体ダイと,
前記第1主要表面の一部の上に配置され,これにオーミック接触するショットキー構造体と,
前記ショットキー構造体に電気的に接続された第1電極と,
前記半導体ダイの前記第1主要表面に電気的に接続されているが,前記第1電極からは電気的にアイソレートされている第2電極と,
複数のハンダバンプと,
前記半導体ダイの中の前記第1電極と前記第2電極との間の領域の一部に形成されたガードリングとを備え,
ハンダバンプのうちの少なくとも1つは,前記1つの第1電極および第2電極に接続されており,
前記第1電極は前記第2電極を取り囲む半導体デバイスパッケージ。」

2. 引用発明
引用発明は,前記第2 4.「(2)刊行物に記載された発明」に記載したとおりのものである。

3.対比・判断
前記第2「1. 本件補正の内容」?第2「2. 補正の目的の適否」において記したように,本願補正発明は,本件補正前の請求項1(本願発明)について前記〈補正事項a〉及び〈補正事項b〉に係る限定を付したものである。言い換えると,本願発明は,本願補正発明から前記各限定を除いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,これをより限定したものである本願補正発明が,前記第2 3.「(3)本願補正発明と引用発明1との対比」?第2 3.「(5)小括」において検討したとおり,引用発明1及び引用発明2並びに従来周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって,本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-12 
結審通知日 2011-09-13 
審決日 2011-09-28 
出願番号 特願2004-551825(P2004-551825)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須賀 亮介河本 充雄  
特許庁審判長 北島 健次
特許庁審判官 市川 篤
近藤 幸浩
発明の名称 チップスケールのショットキーデバイス  
代理人 竹沢 荘一  
代理人 森 浩之  
代理人 中馬 典嗣  
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