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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1252018
審判番号 不服2010-4835  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-04 
確定日 2012-02-08 
事件の表示 特願2004-507884「光ファイバーを具備するスタブ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年12月 4日国際公開、WO03/100482、平成17年 9月 8日国内公表、特表2005-526994〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2003年(平成15年)5月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2002年5月20日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、平成20年12月9日に手続補正がなされたが、平成21年10月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成22年3月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、これと同時に手続補正がなされ、その後、当審において、平成23年2月4日付けで拒絶理由が通知され、平成23年6月6日に誤訳訂正書を提出して手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成23年6月6日になされた誤訳訂正書の提出による補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「 デバイスを作る方法であって、
スタブを選択する段階であって、前記スタブは、第1端部及び第2端部を有し、前記スタブの第1端部は前記スタブの第2端部から第1スタブ長さだけ離れている、スタブを選択する段階と;
前記スタブの第2端部の近くに円錐形を有するように開口の部分を形成する段階であって、前記円錐形状は頂点を有する、開口の部分を形成する段階と;
前記スタブの開口内に光ファイバーを挿入する段階と;
物理接触表面仕上部を形成するように前記スタブの第1端部及び前記光ファイバーの第1端部を研摩する段階と;
前記スタブの開口の円錐部分の頂点に近接した前記光ファイバーの第2端部のための場所を選択する段階と;
前記光ファイバーの第2端部を形成するために該光ファイバーを終端させる段階であって、前記光ファイバーの第1端部は前記光ファイバーの第2端部から第1光ファイバー長さだけ離れており、そして前記第1スタブ長さは、前記第1光ファイバー長さよりも長い、光ファイバーを終端させる段階と;
前記光ファイバーから放出される光エネルギーが円錐形状を有する前記開口部分の表面に衝突することを防ぐように、円錐形状を有する前記開口の部分の寸法を調節する段階と、を備える方法。」

3 引用刊行物の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平9-152524号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(1)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種光モジュール等に用いるフェルールの中心貫通孔に光ファイバを埋設したファイバスタブに関する。」
【0002】
【従来の技術】従来よりセラミックス製フェルールの中心貫通孔に、フェルールと同じ長さの光ファイバを挿入固定したものは、ファイバスタブと呼ばれて各種光モジュールに使用されている。
【0003】例えば、図5に示すように、レーザダイオードやホトダイオード等の光電変換素子4と光ファイバ6を結合して、光信号と電気信号の変換を行う光モジュールが使用されている。この光モジュールは、パッケージ2の内部に光電変換素子4を備えるとともに、光ファイバ6を備えたフェルール5を挿入結合するための筒状の光ファイバ結合部3を備え、この光ファイバ結合部3にファイバスタッブ1を備えてある。
【0004】この光モジュールにおいて、挿入したフェルール5の端面をこのファイバスタッブ1に当接させれば、光信号は、ファイバスタッブ1中の光ファイバを伝わって、光電変換素子4まで伝送することができる。このように、ファイバスタブ1を備えることによって、パッケージ2を気密にできるとともに、フェルール5を挿入する際のストッパーとして作用し、確実に光信号を伝送することができる。
【0005】上記ファイバスタブ1は、図6に示すようにセラミックス製フェルール10の中心貫通孔13に光ファイバ20を挿入して接着剤30で固定したものである。そして、固定した後で、フェルール5と当接する端面を球面11となるように加工してフェルール5との密着性を高めるとともに、光電変換素子4側の端面は斜面13となるように研摩加工して、反射戻り光が光電変換素子4に入射して特性を不安定にすることを防止するようになっている。」

(2)「【0013】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施形態を説明する。
【0014】図1に示すファイバスタブ1は、セラミックス製のフェルール10の中心貫通孔13に所定長さの光ファイバ20を挿入し、エポキシ系等の接着剤30で固定したものである。上記フェルール10の一方端は球面11に研摩加工されており、他方端は平坦面で中央にテーパ状の凹部12を有している。
【0015】一方、光ファイバ20の球面11側の端面はフェルール11と同一面となるように加工されているが、他方の光ファイバ20の端部は凹部12内にてフェルール10より突出し、その端面は斜面21となっている。なお、この斜面21の中心軸に垂直な面に対する角度は3?30°の範囲としてある。
【0016】このファイバスタブ1を用いる場合は、図5に示すような光モジュールの光ファイバ結合部3に備えれば、球面11側にフェルール5を当接させて、光ファイバ20との密着性を高めるとともに、光電変換素子4側の光ファイバ20の端面は斜面21となっていることから反射戻り光を防止することができる。
【0017】そして、光ファイバ20の斜面21側の端部では、フェルール10を斜面加工していないことから研摩工程を大幅に短縮することができる。しかも、光ファイバ20端部の斜面21はフェルール10の凹部12中に突出していることから、この部分が破損することを防止できる。なお、この凹部12は、光ファイバ20の挿入を容易にするとともに、接着剤溜まりとして作用する。」

(3)「【0018】次に上記ファイバスタブ1の製造方法を説明する。
【0019】まず、図2(a)に示すように、中心貫通孔13を有し、両端面が平坦面であり、一方の端部にテーパ状の凹部12を有するセラミックス製のフェルール10を用意する。一方、所定長さの光ファイバ20の一方端を予め研摩加工して斜面21とする。この研摩加工は光ファイバ20のみの研摩であるため、容易に行うことができ、しかも斜面21に傷をつけることはない。なお、この斜面21の加工は、光ファイバ20を治具等に固定しておいて研摩すれば良い。あるいは、光ファイバ20に引っ張り力と捻じり力を加えておき、一部に傷をつけて斜めに加工することも可能である。
【0020】次に、図2(b)に示すように、上記フェルール10の中心貫通孔13に光ファイバ20を挿入し、斜面21が凹部12内に存在する状態で接着剤30で固定する。この時、テーパ状の凹部12により光ファイバ20の挿入を容易にするとともに、この凹部12を接着剤溜まりとすることができる。
【0021】その後、図2(c)に示すように、凹部12と反対側のフェルール10及び光ファイバ20の端面を研摩加工して球面11とすれば、本発明のファイバスタブを得ることができる。
【0022】このような製造方法によれば、斜面21側のフェルール10の端面を斜面に加工する必要がないことから、研摩工程を大幅に短縮することができる。
【0023】なお、上記フェルール10の材質としては、アルミナ、ジルコニア等のセラミックスを用いるが、特にZrO_(2) を主成分とし、Y_(2) O_(3) 、CeO_(2) 、Dy_(2 )O_(3 )等の安定化剤を含む部分安定化ジルコニアセラミックスを用いることが好ましい。そして、上記セラミックス原料を用いて、プレス成形、押出成形等により成形した後、所定の温度で焼成することによって、フェルール10を得ることができる。」

(4)「【0027】さらに、上記例では光ファイバ20の端面を斜面21として反射戻り光を防止するようにした例を示したが、その他の形状に加工しておくこともできる。例えば、図4(a)に示すように光ファイバ20の端面を球面22としておけば、この部分がレンズ作用を有し、別途レンズを備える必要をなくすことができる。同様にレンズ作用を持たせるために、図4(b)は光ファイバ20と同一径の球面22としたものであり、図4(c)は光ファイバ20の端面を次第に小径となるテーパ面23としたものである。」

(5)上記(1)【0004】ないし【0005】の記載を踏まえると、上記(2)及び(3)の「(フェルール10及び光ファイバ20の端面を研磨加工した)球面11」は、光モジュールにおいて、挿入される他のフェルールの端面と当接し、密着性を高めるためのものであることが認められる。

以上を総合すると、引用刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 セラミックス製のフェルールの中心貫通孔に所定長さの光ファイバを挿入し、エポキシ系等の接着剤で固定したファイバスタブであって、上記フェルールの一方端は球面に研摩加工されており、他方端は平坦面で中央にテーパ状の凹部を有しており、上記光ファイバ端部の斜面はフェルールの凹部中に突出しており、上記球面は、光モジュールにおいて、挿入される他のフェルールの端面と当接し密着性を高めるためのものである、ファイバスタブの製造方法において、
中心貫通孔を有し、両端面が平坦面であり、一方の端部にテーパ状の凹部を有するセラミックス製のフェルールを用意する工程と、
所定長さの光ファイバの一方端を予め研摩加工して斜面とする工程と、
上記フェルールの中心貫通孔に光ファイバを挿入し、斜面が凹部内に存在する状態で接着剤で固定する工程と、
凹部と反対側のフェルール及び光ファイバの端面を研摩加工して球面とし、ファイバスタブを得る工程と、
を備えるファイバスタブの製造方法。」

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「フェルール」は、本願発明の「スタブ」に相当する。
そして、引用発明の「フェルール」は、「『平坦面であ』る『両端面』」を有するものであって、該両端面が所定の長さだけ離れていることは明らかであり、また、該フェルールが一方の端部に有する凹部の「テーパ状」は、頂点を有する円錐形状であるといえるから、
ア 引用発明の「(フェルールが一方の端部に有する)テーパ状の凹部」は、本願発明の「(スタブの第2端部の近くに形成した、頂点を有する円錐形状の)開口の部分」に相当し、
イ 引用発明の「中心貫通孔を有し、両端面が平坦面であり、一方の端部にテーパ状の凹部を有するセラミックス製のフェルールを用意する工程」は、本願発明の「スタブを選択する段階であって、前記スタブは、第1端部及び第2端部を有し、前記スタブの第1端部は前記スタブの第2端部から第1スタブ長さだけ離れている、スタブを選択する段階」及び「前記スタブの第2端部の近くに円錐形を有するように開口の部分を形成する段階であって、前記円錐形状は頂点を有する、開口の部分を形成する段階」に相当する。

(2)引用発明の「上記フェルールの中心貫通孔に光ファイバを挿入し、斜面が凹部内に存在する状態で接着剤で固定する工程」は、本願発明の「前記スタブの開口内に光ファイバーを挿入する段階」に相当する。

(3)引用発明の「(フェルールの一方端に研磨加工された)球面」は、「光モジュールにおいて、挿入される他のフェルールの端面と当接し密着性を高めるためのものである」から、
ア 引用発明の「球面」は、本願発明の「物理接触表面仕上部」に相当し、
イ 引用発明の「凹部と反対側のフェルール及び光ファイバの端面を研摩加工して球面とし、ファイバスタブを得る工程」は、本願発明の「物理接触表面仕上部を形成するように前記スタブの第1端部及び前記光ファイバーの第1端部を研摩する段階」に相当する。

(4)引用発明において、「所定長さの光ファイバ」は、「(その)端部の斜面はフェルールの凹部中に突出している」ものであって、上記(1)に示したフェルールの両端面間の「所定の長さ」は、光ファイバの「所定の長さ」より長いことが明らかであるから、
引用発明の「所定長さの光ファイバの一方端を予め研摩加工して斜面とする工程」は、本願発明の「前記光ファイバーの第2端部を形成するために該光ファイバーを終端させる段階であって、前記光ファイバーの第1端部は前記光ファイバーの第2端部から第1光ファイバー長さだけ離れており、そして前記第1スタブ長さは、前記第1光ファイバー長さよりも長い、光ファイバーを終端させる段階」に相当する。

以上によると、本願発明と引用発明とは、
「 デバイスを作る方法であって、
スタブを選択する段階であって、前記スタブは、第1端部及び第2端部を有し、前記スタブの第1端部は前記スタブの第2端部から第1スタブ長さだけ離れている、スタブを選択する段階と;
前記スタブの第2端部の近くに円錐形を有するように開口の部分を形成する段階であって、前記円錐形状は頂点を有する、開口の部分を形成する段階と;
前記スタブの開口内に光ファイバーを挿入する段階と;
物理接触表面仕上部を形成するように前記スタブの第1端部及び前記光ファイバーの第1端部を研摩する段階と;
前記光ファイバーの第2端部を形成するために該光ファイバーを終端させる段階であって、前記光ファイバーの第1端部は前記光ファイバーの第2端部から第1光ファイバー長さだけ離れており、そして前記第1スタブ長さは、前記第1光ファイバー長さよりも長い、光ファイバーを終端させる段階と、
を備える方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

a.本願発明は、「前記スタブの開口の円錐部分の頂点に近接した前記光ファイバーの第2端部のための場所を選択する段階」を備えるのに対して、引用発明は、そのような工程を備えるか否か明らかではない点(以下「相違点1」という。)。

b.本願発明は、「前記光ファイバーから放出される光エネルギーが円錐形状を有する前記開口部分の表面に衝突することを防ぐように、円錐形状を有する前記開口の部分の寸法を調節する段階」を備えるのに対して、引用発明は、そのような工程を備えるか否か明らかではない点(以下「相違点2」という。)。

5 判断
上記各相違点について検討する。

(1)相違点1について
引用発明において、「光ファイバ端部の斜面はフェルールの(テーパ状の)凹部中に突出している」とされているところ、光ファイバ端部(の斜面)を、テーパ状の凹部内でどこに位置させるかは、発明の実施に際して適宜設計し得る事項と認められ、その位置を、テーパ状(円錐形状)の頂点に近接した位置とすることに、格別の困難性は認められない。
そして、本願明細書(段落【0028】)の
「用途に応じて、スタブ220の円錐形状開口の近くの光ファイバー230の端部の位置は、円錐形状開口の近くに位置するスタブ230の端部に対して制御且つ規定し得る。従って、円錐形状開口近くの光ファイバー230の端部は、円錐の頂点と面一とし得るか又は円錐状領域内に延在し得る。」
との記載を踏まえると、本願発明において、「前記スタブの開口の円錐部分の頂点に近接した前記光ファイバーの第2端部のための場所を選択する」ことによって、設計的事項の域を超えるほどの格別顕著な効果を奏するものともいえない。
よって、引用発明において、フェルールの凹部内で光ファイバ端部の位置を円錐形状の頂点に近接した位置となるように設定し、相違点1に係る本願発明の特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点2について
引用刊行物の記載(上記3(1)を参照。)によれば、引用発明の製造方法によって製造されるファイバスタブは、レーザダイオードやホトダイオード等の光電変換素子と光ファイバを結合して、光信号と電気信号の変換を行う光モジュールに使用されるものであるところ、引用発明の「フェルールの(テーパ状の)凹部中に突出している」「光ファイバ端部の斜面」からの光信号が、フェルールのテーパ状の凹部の表面に衝突することは、光ファイバと光電変換素子との結合を妨げることになるため、そのような衝突を防ぐ必要があることは当業者にとって明らかであると認められるから、引用発明において、「前記光ファイバーから放出される光エネルギーが円錐形状を有する前記開口部分の表面に衝突することを防ぐように、円錐形状を有する前記開口の部分の寸法を調節する」ようにし、相違点2に係る本願発明の特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(3)小括
以上によれば、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2011-09-09 
結審通知日 2011-09-13 
審決日 2011-09-27 
出願番号 特願2004-507884(P2004-507884)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 将彦  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 杉山 輝和
稲積 義登
発明の名称 光ファイバーを具備するスタブ  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
代理人 渡邊 隆  
代理人 志賀 正武  

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