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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07C
管理番号 1252042
審判番号 不服2009-4816  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-05 
確定日 2012-02-10 
事件の表示 特願2001-347779「ニトリルの第1級アミンへの水素化法、ラネー触媒の製法、およびラネー触媒」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月23日出願公開、特開2002-205975〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成13年11月13日(パリ条約による優先権主張 2000年11月16日)に出願したものであって、平成20年5月19日付けで拒絶理由が通知され、同年10月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月8日付けで拒絶査定がされ、平成21年3月5日に拒絶査定に対する審判請求がされたものである。

第2 本願発明
この出願の請求項1?12に係る発明は、平成20年10月21日付けの手続補正により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「(a)?(f)の順序を有する工程:
(a)合金、成形助剤、水および増孔剤からなる混練組成物を製造し;
(b)混練組成物を成形して造形品を作り;
(c)造形品を焼成し;
(d)アルカリ金属水酸化物水溶液で処理して、焼成した造形品を活性化し;
(e)アルカリ金属水酸化物水溶液で触媒造形品を洗浄し;
(f)水で触媒造形品を洗浄する
を含む方法により製造される、アルミニウムと鉄、コバルトおよびニッケルから成る群より選択される少なくとも1種の遷移金属ならびに場合により、チタン、ジルコニウム、クロムおよびマンガンから成る群より選択される1種以上の別の遷移金属とから成る合金をベースとし、0.1?0.5ml/gのマクロ孔体積、少なくとも80体積%のマクロ孔割合、及び20m^(2)/g以下の比表面積を有する、活性α-Al_(2)O_(3)-含有マクロ孔ラネー触媒上での、ニトリルの第1級アミンへの水素化法。」

第3 原査定の拒絶の理由
本願発明についての原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用例1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


引用例1:特開平10-151350号公報(以下、「刊行物1」という。)

第4 刊行物に記載された事項
1 刊行物1に記載された事項
この出願の出願前(優先日前)に頒布された刊行物1には、以下の事項が記載されている。

1a「【請求項1】金属粉ではなく、マクロ細孔を有し、かつアルミニウムと周期律表のVIII亜族金属の少なくとも一種との合金を基に形成された活性化した固定層のラニー金属触媒であって、該触媒が、全細孔容積に対してマクロ細孔を80容量%を超える量で含む固定層のラニー金属触媒。
【請求項2】周期律表のVIII亜族金属として、ニッケル、コバルト、銅、鉄又はこれら二種以上の混合物を含む請求項1に記載の触媒。
【請求項3】α-Al_(2)O_(3)を触媒全重量に対して1重量%未満含む請求項1に記載の触媒。
【請求項4】金属粉でなく、マクロ細孔を有し、かつアルミニウムと周期律表のVIII亜族金属の少なくとも一種との合金を基に形成された活性化した固定層のラニー金属触媒であって、該触媒が、全細孔容積に対してマクロ細孔を80容量%を超える量で含む固定層のラニー金属触媒を、下記の工程:
(1)合金、成形助剤、水及び細孔形成剤を含む混練材料を作製する
(2)該混練材料を成形して成形体を得る
(3)該成形体をか焼する、及び
(4)該か焼した成形物をアルカリ金属の水酸化物で処理する
により製造する方法であって、
該細孔形成剤として、モル重量が6000?500000g/モルの範囲にある水混和性重合体を使用する固定層のラニー金属触媒の製造方法。
【請求項5】成形体のか焼を、大気圧下で三段階の工程にて行う請求項4に記載の方法。
【請求項6】請求項1?3のいずれかに記載の触媒又は請求項4又は5の製造方法で製造された触媒を用いて、有機化合物を水素化、脱水素、水素化分解、アミノ基を導入する水素化あるいは脱ハロゲン化する方法。」

1b「【0010】DE-A-4446907には、アルミニウムと遷移金属との合金とを、助剤としてポリビニルアルコールと水又はステアリン酸とを用いてラニー水素化触媒を製造する方法が記載されている。ポリビニルアルコールのモル重量は3000?6000g/mol の範囲にある。
【0011】ここに記載されている方法の欠点は、低分子量のポリビニルアルコールを使用する点にある。このため、マクロ細孔の比率が低下し、触媒活性が低下する。」

1c「【0027】
【発明の実施の形態】
触媒およびその製造
Pure Aplied Chem.45(1976)、71頁等の定義によれば、本発明で用いられるマクロ細孔という用語は、50nmを超過する径を有する細孔を示すものとして用いられている。新規触媒の全細孔に対するマクロ細孔の割合、すなわちマクロ細孔度は、全細孔に対してそれぞれ80容量%を超過し、好ましくは90容量%以上、特に好ましくは90容量%以上とされる。
【0028】本発明では、金属粉状ではなく、アルミニウムと周期表第VIII亜族の1種類以上の金属との合金を基礎とする触媒先駆物質を、例えば以下に示す新規方法の工程(1)?(3)に準じてまず製造するが、この前駆物質も同様に全細孔に対して80容量%を超過するマクロ細孔率を有することも重要である。
【0029】上述のようにα-Al_(2)O_(3)は触媒作用を妨るため、α-Al_(2)O_(3)の含有率を比較的低く保つのが一般的であり、触媒の全重量に対して、1重量%未満の量で用いると好ましく、0.5重量%未満であると更に好ましく、0.3重量%未満であると特に好ましい。α-Al_(2)O_(3)含有率の下限は、通常約0.01重量%である。
【0030】新規固定層金属触媒の製造にあたり、アルミニウムの他に、周期表第VIII亜族の全金属、またはこれらの金属の2または3種類の混合物が原則的に合金成分として使用可能であるが、ニッケル、コバルト、鉄、または銅、或いはこれらのうちの2種類以上の混合物が、周期表第VIII亜族の金属として好ましく用いられる。」

1d「【0032】他の実施の形態において、新規触媒の性能を向上させるため、周期表の第IV、V、VIまたはVIII亜族の少なくとも1種類の元素、またはこれらの2種類以上の混合物を用いた場合にその活性と選択性が向上する。特に適する促進剤はクロム、鉄、コバルト、タンタル、チタン、モリブテンおよび周期表第VIII亜族の金属である。周期表第VIII亜族の元素またはこれらの元素の2種類以上の混合物を促進剤として用いた場合、これらの元素は合金成分として用いられる上述の第VIII亜族の1種類以上の金属とは異なる金属を用いることに注意を要する。」

1e「【0036】形成助剤としては、上述のように従来技術で用いられている、例えば米国特許第4826799号、同第4895994号、同第3404551号、および同第3358495号に記載されているあらゆる成形助剤の使用が可能である。ヘキスト社製、Wachs C Mikropulver PM等のワックス、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸アルミニウム等の脂肪、チローゼ(tylose(メチルセルロース))等の炭水化物含有重合体が好ましく用いられ、ステアリン酸およびチローゼが更に好ましく用いられる。・・・」

1f「【0037】細孔形成剤としてはモル質量が6000g/モルを超過し、約500000g/モル未満である限り、いずれの水混和性重合体も使用可能である。細孔形成剤のモル質量は約10000g/モルから約200000g/モルであると好ましく、約13000g/モルから約150000g/モルであると好ましく、約13000g/モルから約50000g/モルであると特に好ましい。
【0038】新規方法における細孔形成剤として使用可能な重合体の例には、ポリ塩化ビニル、オレフィンと、極性コモノマーとの共重合体、例えばエチレンまたはプロピレンとポリ塩化ビニルとの共重合体、ポリ塩化ビニル共重合体、ABS樹脂、ポリエチレンと、酢酸ビニル、アルキルアクリラート、アクリル酸との共重合体、塩化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミド、例えばナイロン5、ナイロン12、ナイロン6/6、ナイロン6/10、およびナイロン11、弗素含有樹脂、例えばFEP、弗化ポリビニリデンおよびポリクロロトリフルオロエチレン、アクリロニトリル/メチル(メタ)アクリラート共重合体、アクリロニトリル/塩化ビニル共重合体、スチレン/アクリロニトリル共重合体、例えばメタクリロニトリル/スチレン共重合体、ポリアルキル(メタ)アクリラート、酢酸セルロース、セルロースアセトブチラート、ポリカルボナート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリエステル、例えばブチレンテレフタラートおよびポリビニルアルコールがあり、このうちポリビニルアルコールが好ましく用いられる。
【0039】混練材料中の細孔形成剤の含有率は、混練材料の総重量に対して、約1重量%?約20重量%、好ましくは4重量%?8重量%である。
【0040】細孔形成剤として重合体を選択する場合、水混和性重合体を用いるため、新規方法において成形体からほぼ完全に除去可能であり、マクロ細孔含有率が80容量%を超過する、本発明で好ましく用いられる触媒が得られることは重要である。」

1g「【0046】本発明によると、か焼成形体は、アルキル金属の水酸化物、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化カルシウムにより、単独でまたは混合物として、特に好ましくは単独の水酸化ナトリウム、または水酸化ナトリウムと上述のアルカリ金属の水酸化物との混合物により活性化される。通常、アルカリ金属の水酸化物の水溶液、好ましくは水酸化ナトリウム溶液を、水とアルキル金属の水酸化物の重量比が一般的には約10:1から約30:1、好ましくは約15:1から25:1となるように用いる。アルカリ金属水酸化物とアルミニウムのモル比は通常約1:1から約4:1、好ましくは約1.5:1から約2.5:1とされる。
【0047】活性化温度は、約25℃から約95℃、好ましくは約45℃から約90℃の範囲とされる。
【0048】活性化状態の継続時間は主に、所望のアルミニウム最終含有率により左右され、10-30時間、好ましくは15-25時間である。この活性化操作は繰り返し行うことも可能である。」

1h「【0049】活性化後、成形体を水で洗浄するが、洗浄水のpHが少なくとも8となるまで洗浄を行うのが好ましい。洗浄され、活性化された成形体を水中、好ましくは水とメタノールの混合物中に保存する。」

1i「【0053】本発明において用いられる「有機化合物」という用語は、触媒的に反応可能な低分子量(単量体)および高分子有機化合物を含む全ての有機化合物、特に水素により処理可能な基、例えばC-C二重結合またはC-C三重結合を有する有機化合物を意味するものとする。この用語には、重合体の他に、低分子量有機化合物も含まれる。・・・
【0056】・・・
以下にその例を挙げる。・・・
【0061】ニトリル類、好ましくは脂肪族または芳香族物モノまたはジニトリル、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、・・・、特に脂肪族α-、ω-ジニトリル、例えば・・・、アジポニトリル、・・・、またはアミノニトリル、・・・を水素化することにより、対応のモノ-、ジアミノ化合物が得られる。」

1j「【0100】
【実施例】
[実施例1]
触媒Aの製造
52重量%のコバルト及び48重量%のアルミニウムから構成される900gのコバルト/アルミニウム合金、8gのチローゼ(Tylose;カルボキシメチルセルロースのり剤の商品名)と60gのモル重量が85000?146000g/モルのポリビニルアルコールとの混合物に、170gの水を、何回かに分けて添加し、その材料を6時間ニーダで混練した。こうして得られた混練材料を、押出機内で45?50バールの圧力で成形し、3mmの直径の押出成形体を得た。得られた押出成形体を120℃で16時間乾燥させた。それのか焼を、まず450℃で1時間行い、次いで750℃で1時間行い、最後に900℃で2時間行った。活性化のため、20%濃度のNaOH溶液1.5L(リットル)を、500gの押出成形体に90℃にて加えた。24時間後、過剰のNaOH溶液を傾しゃし、活性化した押出成形体を洗浄水のpHが7.5に下がるまで水洗した。この活性化処理は合計で4回行った。
【0101】得られた触媒は、合計細孔容積が0.44ml/gそしてマクロ容積が0.40ml/gであった。従って、マクロ細孔の比率は91%であった。α-アルミナは、X線回折法(XRD)で検出されなかった。」

1k「【0106】[実施例4]
触媒Aを用いた水素化
アクリロニトリルを18重量%含みかつテトラヒドロフラン(THF)中で重量平均分子量が3000であるアクリロニトリル/ブタジエン共重合体の15重量%の濃度の溶液100g、60mlのアンモニアと15gの触媒Aとを、300mlの耐圧オートクレーブに導入した。次いで、水素化をバッチで、180℃、2.5×10^(7)Pa及び12時間の条件で行った。溶剤として使用したTHFを蒸発除去した。
【0107】ニトリル変換率は95%であった。得られたアミンの95%は第一級アミンであった。分子量の減少は見られなかった。」

2 また、周知例として、この出願の出願前(優先日前)に頒布された以下の参考文献1及び2を挙げ、その記載事項を示す。
(1)参考文献1:特開平2-9446号公報(原査定における引用例2)

2a「1.
I :(a)約15-50重量部の量で存在する、ラニー法金属の粒子;
(b)約1-30重量部の量で存在する高分子量重合体;及び
(c)全体の混合物の約0.1-90容量%の量で存在する混合物内の均質な気孔
の緊密な混合物から成る組成物であって、
約20-80m^(2)/gのBET表面積、全体の気孔率の約0.1-70%のマクロ気孔率、約0.8-2.0g/ccの付形物密度及び約0.5-1.4g/ccの付形物充填密度を有するラニー法組成物により製造された付形された触媒;及び
II:アルファ-アルミナで互いに接着されたラニー法金属から成るラニー法組成物により製造された付形された触媒であり、
15-50重量部のラニー法金属、1-42重量部のアルミナ、0.1-90容量%の気孔から成り、約1-1.7g/ccの密度、約0.6-1.3g/ccの充填密度、約20-80m^(2)/gのBET表面積、及び全体の気孔率の約0.1-70%のマクロ気孔率を有する付形された触媒から成る部類から選択されたラニー法組成物により製造された付形された触媒。」(特許請求の範囲第1項)

2b「“ラニー法(Raney process)”とはまず少なくとも一種の金属が浸出可能である、少なくとも二成分系の金属の合金を作り、次いでその金属を浸出し、それにより触媒として活性を有する不溶性金属から成る多孔性の残渣を得ることによる多孔性の活性な金属触媒を製造する方法を称する。・・・
“ラニー法金属”は多孔性の残渣として残留する、ラニー法技術において周知の或種の群の任意の不溶性金属を称し、一般にはNi、Co、Cu及びFeである。
“ラニー法合金”はラニー法金属とアルミニウム、亜鉛又はケイ素との合金を称する。
“ラニー法により製造された触媒”はラニー合金からアルミニウム(又はZn又はSi)を浸出した結果得られる組成物を称する。・・・
“ラニー法により製造された触媒を用いる触媒反応”は、一般に水素化、脱水素化、アミノ化等を含む機構により、供給原料試薬を他の生成物に転化する際に、ラニー法によって製造された触媒(本発明による触媒を含めて)を使用することを意味する。」(2頁右下欄下から4行?3頁右上欄下から5行)

2c「ここで上記のように本発明は分岐する。次ぎの段階は(4-A)、苛性ソーダ溶液によるAlの浸出か、又は(4-B)、焼成のいずれかであることができる。
(4-A)Alの浸出
強力な苛性ソーダ溶液(一般には約6N)を用いるAlの浸出が(4-A)で記載される。浸出は熱時、約90℃で行われるが、100℃を超えないことが好ましい。NaOHを用いる浸出は発熱的であり、温度を90℃に保つために周期的に冷水を添加してもよい。浸出には数時間を要し、最後の1時間は新鮮な水酸化ナトリウム溶液を用いて締めくくることが好ましい。次いで浸出された付形物を繰り返し水で洗い、洗浄液のpHが9以下に落ちるまで洗浄する。その結果ラニー法によって製造された触媒粒子の重合体によって結合された凝集体から成る付形物が得られる。」(8頁右下欄9行?9頁左上欄5行)

2d「ここで(3)の組成物を工程(4-B)で焼成し、次いで工程(5-B)で水酸化ナトリウムにより浸出する第二の別法を述べる。
(4-B)焼成
(3)の付形物は重合体を除去するために加熱され、次いで合金粒子を多孔性の金属構造物として融着させるために焼成される。同時にAl金属の一部がアルファ-アルミナに転化する。このように、組成物は最初に約300-700℃の炉中で、好適には空気又は酸素の存在において焼成される。温度を上げ、850ないし1,200℃の間の温度で焼成を完結させる。900℃で約2時間の焼成が最適である。」(9頁左下欄14行?右下欄6行)

2e「この付形物を活性化するために、既知の方法でアルミニウムを浸出する最終工程、工程(5-B)に進む。
(5-B)アルミニウムの浸出-焼成触媒
この工程は工程(4-A)の浸出工程と同一であり、その結果ラニー法により製造された高度に活性な触媒が同様に得られる。組成物は(重合体マトリックスがないので)その使用が低温度に限定されない点で(4-A)の組成物と異なっている。
この(5-B)触媒組成物はその始めの寸法と形状を保っている。それは極めて活性であり、耐久性があり、良好な破砕強度を有している。」(10頁左上欄10行?右上欄2行)

2f「本発明の焼成触媒のBET面積は市販の充填型粒子よりも極めて高い。」(10頁右下欄下から4?3行)

(2)参考文献2:国際公開第98/16309号(当審において新たに引用。当審による仮訳)

3a「骨格金属触媒(ラネー金属触媒)は、ニッケルやコバルトや鉄や銅やパラジウムなどの触媒活性金属と、アルミニウムや珪素やマグネシウムや亜鉛などの容易に溶出する触媒不活性金属とを含む合金から製造される。この合金では、触媒活性金属は、溶解、すなわち微分散されている。触媒不活性金属は、触媒活性金属に対し不活性な溶媒、通常はアルカリ水溶液を用いて合金から除去され、触媒活性金属は、微粒子形態の触媒として残存する。このようにして製造した触媒は、金属酸化物の還元によって製造した触媒よりも、活性が高く、この非常に高い活性によって、その重要性や広範な用途が説明される。
骨格触媒は、ラネーによってはじめて特許化されている・・・。
不活性金属成分は、通常約50%の活性金属と約50%の不活性金属とを含む合金から、一般に2つの工程によって溶出される・・・。これらの工程は、次のとおりである。
(1)初期アルカリ洗浄処理
(2)最終アルカリ洗浄処理
初期アルカリ洗浄処理は、一般に、合金を、この合金重量の4倍の重量を有する5?25重量%アルカリ溶液に添加することによって実施される。通常、この添加には、激しい水素の発生と発熱反応を伴うため、合金をゆっくり添加する。次いで、混合物を水素の発生が終了するまで加熱する。・・・
初期アルカリ処理が終了すると、溶液をデカンテーションによって分離し、次いで一般に、残った懸濁液を、初期アルカリ洗浄と同じ量の新鮮なアルカリ溶液と共に、再加熱して、溶解工程の完全化を図る。
以上の方法は、現在一般的な方法に従ったものである。」(1頁8行?2頁11行)

第5 当審の判断
1 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、「請求項1?3のいずれかに記載の触媒又は請求項4又は5の製造方法で製造された触媒を用いて、有機化合物を水素化・・・する方法。」(摘示1aの請求項6)が記載され、該触媒は、摘示1aの請求項4に記載の「マクロ細孔を有し、かつアルミニウムと周期律表のVIII亜族金属の少なくとも一種との合金を基に形成された活性化した固定層のラニー金属触媒であって、該触媒が、全細孔容積に対してマクロ細孔を80容量%を超える量で含む固定層のラニー金属触媒を、下記の工程:
(1)合金、成形助剤、水及び細孔形成剤を含む混練材料を作製する
(2)該混練材料を成形して成形体を得る
(3)該成形体をか焼する、及び
(4)該か焼した成形物をアルカリ金属の水酸化物で処理する
により製造する方法」で製造された触媒であり、該「周期律表のVIII亜族金属の少なくとも一種」とは、「ニッケル、コバルト、銅、鉄又はこれら二種以上の混合物を含む」(摘示1aの請求項2)ものであり、該「有機化合物」は、例えば、「ニトリル類」(摘示1i)であって、このニトリル類を「水素化することにより、対応のモノ-、ジアミノ化合物が得られる」ことになる。また、該方法により製造された実施例1の触媒Aは、「マクロ容積が0.40ml/g」(摘示1j)であるので、上記触媒は、マクロ容積が0.40ml/gであるものを包含する。
そして、「新規触媒の性能を向上させるため、周期表の第IV、V、VIまたはVIII亜族の少なくとも1種類の元素、またはこれらの2種類以上の混合物を用いた場合にその活性と選択性が向上する。特に適する促進剤はクロム、鉄、コバルト、タンタル、チタン、モリブテンおよび周期表第VIII亜族の金属である。」(摘示1d)と記載されているので、上記触媒は、場合により、クロム、チタン等の別の金属を含んでよいものである。
また、刊行物1には、「α-Al_(2)O_(3)を触媒全重量に対して1重量%未満含む」(摘示1aの請求項3)と規定され、「α-Al_(2)O_(3)含有率の下限は、通常約0.01重量%である」とされているから、該触媒は、通常α-Al_(2)O_(3)を含むものといえる。なお、参考文献1の摘示2dに示されるように、アルファ-アルミナ(α-Al_(2)O_(3))は、焼成工程によりアルミニウム金属の一部が転化して生ずるものであり、刊行物1記載の上記(3)のか焼工程を経ることにより不可避的に生成するものであるため、刊行物1においては、その後の処理工程を経ても、α-Al_(2)O_(3)を「通常約0.01重量%」以上は含むものと認められる。
さらに、上記(4)における「アルカリ金属の水酸化物」は、「通常、アルカリ金属の水酸化物の水溶液」(摘示1g)であり、アルカリ金属の水酸化物で処理することにより、「か焼成形体は、・・・活性化される」(摘示1g)。また、「この活性化操作は繰り返し行うことも可能」(摘示1g)であり、実施例1の触媒Aの製造においては、「この活性化処理は合計で4回行った。」(摘示1j)と記載されており(以下、繰り返しの工程を、工程(4’)とする。)、加えて、該活性化処理後、「成形体を水で洗浄する」(摘示1h)ことも記載されている(水で洗浄する工程を、工程(5)とする。)。なお、摘示1jの実施例1では、「活性化した押出成形体を・・・水洗した。」という記載の後に、「活性化処理は合計で4回行った。」と記載されているが、摘示1g及び1hからみて、水洗は活性化処理後の工程であることが明らかであるので、水洗も含めて4回繰り返したのではなく、「NaOH溶液」を90℃にて加え、「24時間後、過剰のNaOH溶液を傾しゃした」工程、すなわち、「(4)該か焼した成形物をアルカリ金属の水酸化物で処理することにより、か焼成形体を活性化」する工程を4回繰り返したものと認められる。

したがって、刊行物1には、
「下記の工程:
(1)合金、成形助剤、水及び細孔形成剤を含む混練材料を作製する
(2)該混練材料を成形して成形体を得る
(3)該成形体をか焼する、及び
(4)該か焼した成形物をアルカリ金属の水酸化物の水溶液で処理することにより、か焼成形体を活性化し、
(4’)この活性化処理を繰り返し(例えば、工程(4)と合わせて合計4回)行い、
(5)成形体を水で洗浄する、
により製造する方法で製造された、アルミニウムとニッケル、コバルト、銅、鉄又はこれら二種以上の混合物を含む周期律表のVIII亜族金属の少なくとも一種と、場合によりクロム、チタン等の別の金属との合金を基に形成され、マクロ容積が0.40ml/gであり、全細孔容積に対してマクロ細孔を80容量%を超える量で含み、α-Al_(2)O_(3)含む活性化した固定層のラニー金属触媒を用いて、ニトリル類をモノ-、ジアミノ化合物へ水素化する方法。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。

2 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「成形助剤」は、「ワックス」、「チローゼ(tylose(メチルセルロース))」(摘示1e)等を包含するところ、本願発明の「成形助剤」も、「ワックス」、「チロース(Tylose、メチルセルロース)」(本願明細書の段落【0015】)等を包含するから、引用発明の「成形助剤」は、本願発明の「成形助剤」に相当する。
引用発明の「細孔形成剤」は、「水混和性重合体」であり、例えば「ポリビニルアルコールが好ましく用いられる」(摘示1f)ところ、本願発明の「増孔剤」も、「特に有利にはポリビニルアルコール」(本願明細書の段落【0017】)であるから、引用発明の「細孔形成剤」は、本願発明の「増孔剤」に相当する。そして、引用発明の「合金、成形助剤、水及び細孔形成剤を含む混練材料」は、摘示1jの実施例1に示されるように、これら以外の成分を特に含むものではないから、本願発明の「合金、成形助剤、水および増孔剤からなる混練組成物」に相当するといえる。
つまり、引用発明の「(1)合金、成形助剤、水及び細孔形成剤を含む混練材料を作製する」は、本願発明の「(a)合金、成形助剤、水および増孔剤からなる混練組成物を製造し」に相当する。
次に、引用発明の「か焼」及び「成形体」(工程(4)では、「成形物」ともいう。)は、本願発明の「焼成」及び「造形品」にそれぞれ相当するので、引用発明の
「(2)該混練材料を成形して成形体を得る
(3)該成形体をか焼する、及び
(4)該か焼した成形物をアルカリ金属の水酸化物の水溶液で処理することにより、か焼成形体を活性化し、
・・・
(5)成形体を水で洗浄する」の各工程は、本願発明の
「(b)混練組成物を成形して造形品を作り;
(c)造形品を焼成し;
(d)アルカリ金属水酸化物水溶液で処理して、焼成した造形品を活性化し;
・・・
(f)水で触媒造形品を洗浄する」の各工程に相当する。
そして、引用発明の「下記の工程」は、(1)?(5)の順序を有する工程であることが明らかであるから、引用発明の「下記の工程:・・・により製造する方法で製造された」は、本願発明の「(a)?(f)の順序を有する工程:・・・を含む方法により製造される」に相当する。
また、引用発明の「ニッケル、コバルト、銅、鉄又はこれら二種以上の混合物を含む周期律表のVIII亜族金属の少なくとも一種」は、該金属がニッケル、コバルト、鉄である場合、本願発明の「鉄、コバルトおよびニッケルから成る群より選択される少なくとも1種の遷移金属」に相当し、引用発明の「場合によりクロム、チタン等の別の金属」は、本願発明の「場合により、チタン、ジルコニウム、クロムおよびマンガンから成る群より選択される1種以上の別の遷移金属」に相当し、引用発明の「との合金を基に形成され」は、本願発明の「とから成る合金をベースとし」に相当する。
さらに、引用発明の「マクロ細孔」と本願発明の「マクロ孔」が同一の意味を有することは、刊行物1の摘示1c及び本願明細書の段落【0030】の各定義から明らかであり、引用発明の「マクロ容積」は、マクロ細孔の容積を指すものと認められるので、本願発明の「マクロ孔体積」に相当し、引用発明の「全細孔容積」に対しての「マクロ細孔」の「容量%」は、本願発明の「マクロ孔割合」(体積%)に相当するといえる。
そうすると、「マクロ容積が0.40ml/gであり、全細孔容積に対してマクロ細孔を80容量%を超える量で含み」は、本願発明の「0.1?0.5ml/gのマクロ孔体積、少なくとも80体積%のマクロ孔割合・・・を有する」に相当する。
そして、引用発明の「α-Al_(2)O_(3)含む活性化した固定層のラニー金属触媒」は、マクロ細孔を有するから、本願発明の「活性α-Al_(2)O_(3)-含有マクロ孔ラネー触媒」に相当するといえる。
さらに、引用発明の「・・触媒を用いて、ニトリル類をモノ-、ジアミノ化合物へ水素化する方法」は、その「モノ-、ジアミノ化合物」が摘示1kに示されるように主として「第一級アミン」であるから、本願発明の「・・・触媒上での、ニトリルの第1級アミンへの水素化法」に相当する。

よって、両者は、
「(a)?(f)の順序を有する工程:
(a)合金、成形助剤、水および増孔剤からなる混練組成物を製造し;
(b)混練組成物を成形して造形品を作り;
(c)造形品を焼成し;
(d)アルカリ金属水酸化物水溶液で処理して、焼成した造形品を活性化し;
(f)水で触媒造形品を洗浄する
を含む方法により製造される、アルミニウムと鉄、コバルトおよびニッケルから成る群より選択される少なくとも1種の遷移金属ならびに場合により、チタン、ジルコニウム、クロムおよびマンガンから成る群より選択される1種以上の別の遷移金属とから成る合金をベースとし、0.1?0.5ml/gのマクロ孔体積、少なくとも80体積%のマクロ孔割合、を有する、活性α-Al_(2)O_(3)-含有マクロ孔ラネー触媒上での、ニトリルの第1級アミンへの水素化法。」
である点で一致するが、以下の点で相違するということができる。

A 本願発明においては、工程(d)と(f)の間に、「(e)アルカリ金属水酸化物水溶液で触媒造形品を洗浄し」という工程を有するのに対し、引用発明においては、工程(4)と(5)の間に、「(4’)この活性化処理を繰り返し(例えば、工程(4)と合わせて合計4回)行い」という工程を有するものの、洗浄について特定されていない点
B 本願発明のラネー触媒は、「20m^(2)/g以下の比表面積」を有するのに対し、引用発明のラニー金属触媒は、比表面積について特定されていない点
(以下、それぞれ「相違点A」及び「相違点B」という。)

3 検討
(1)相違点Aについて
引用発明の工程(4)は、摘示1gによると、アルカリ金属の水酸化物の水溶液として、「好ましくは水酸化ナトリウム溶液」を用い、「活性化温度は、約25℃から約95℃」、「活性化状態の継続時間は主に、所望のアルミニウム最終含有率により左右され、10-30時間」で行う工程であり、摘示1jに示されるように、具体的には、「活性化のため、20%濃度のNaOH溶液1.5L(リットル)を、500gの押出成形体に90℃にて加えた。24時間後、過剰のNaOH溶液を傾しゃ」する工程である。そして、工程(4’)は、この工程(4)を、例えばあと3回繰り返すということである。
ところで、ラネー触媒の製造において、アルカリ金属の水酸化物の水溶液で処理することによる活性化工程は、引用発明のように、複数回繰り返すのが一般的である。
例えば、参考文献2を参照すると、「ラネー金属触媒」は、「ニッケルやコバルトや鉄や銅やパラジウムなどの触媒活性金属と、アルミニウムや珪素やマグネシウムや亜鉛などの容易に溶出する触媒不活性金属とを含む合金から製造」されるもので、その溶出工程は、「通常約50%の活性金属と約50%の不活性金属とを含む合金」から、「不活性金属成分」を、「2つの工程によって溶出」する処理よりなり、その2つの工程とは、「(1)初期アルカリ洗浄処理」及び「(2)最終アルカリ洗浄処理」である(摘示3a)。
まず、「(1)初期アルカリ洗浄処理」は、「通常、この添加には、激しい水素の発生と発熱反応を伴うため、合金をゆっくり添加する。次いで、混合物を水素の発生が終了するまで加熱する。」(摘示3a)と記載されているように、水素の発生を伴う反応が終了するまで加熱する工程である。
一方、「(2)最終アルカリ洗浄処理」については、「初期アルカリ処理が終了すると、溶液をデカンテーションによって分離し、次いで一般に、残った懸濁液を、初期アルカリ洗浄と同じ量の新鮮なアルカリ溶液と共に、再加熱して、溶解工程の完全化を図る」(摘示3a)と記載されているように、触媒不活性金属であるアルミニウムの溶解の完全化を図ることを目的とする工程である。
つまり、「最終アルカリ洗浄処理」は、通常、「初期アルカリ洗浄処理」が終わった後、溶液をデカンテーションによって分離し、次いで新鮮なアルカリ溶液によって、ラネー金属触媒から、アルミニウムの溶解の完全化を図る処理であり、すなわち、アルミニウムを洗浄する「洗浄処理」ということもできる。
そして、参考文献1を参照すると、「ラニー合金からアルミニウム(又はZn又はSi)を浸出」(摘示2b)してラニー法による触媒を得るための「Alの浸出」工程は、「強力な苛性ソーダ溶液(一般には約6N)」を用い、「約90℃」で「浸出には数時間を要」すると記載されており、「最後の1時間は新鮮な水酸化ナトリウム溶液を用いて締めくくることが好ましい」(摘示2c)と記載されているから、上記「初期アルカリ洗浄処理」は、通常数時間を要するものであるといえる(焼成工程を経る製法であっても、摘示2cと同じ処理を行うことについては、摘示2dを参照)。
以上の一般的な技術常識を踏まえると、引用発明の工程(4)は、上記したように、具体的には、「活性化のため、20%濃度のNaOH溶液1.5L(リットル)を、500gの押出成形体に90℃にて加えた。24時間後、過剰のNaOH溶液を傾しゃ」(摘示1j)する工程であって、その処理時間からみて、水素の発生を伴う反応が十分に完了しているものと認められるから、「初期アルカリ洗浄処理」に相当するものといえる。
そして、該工程(4)で「過剰のNaOH溶液を傾しゃ」した後に繰り返す工程(4’)は、改めて新鮮なNaOH溶液を用いていると考えるのが自然であるので、水素の発生を伴う反応が十分に完了した後に、溶液をデカンテーションによって分離し、次いで新鮮なアルカリ溶液によって、ラネー金属触媒から、アルミニウムの溶解の完全化を図る処理であり、すなわち、アルミニウムを洗浄する「洗浄処理」にあたるものといえ、実質的に上記「最終アルカリ洗浄処理」に相当するということができる。
してみると、工程(4’)は、実質的に「アルカリ金属水酸化物水溶液で触媒造形品を洗浄」する工程であるということができ、相違点Aは実質的な相違点であるとはいえない。

(2)相違点Bについて
本願発明の「比表面積」とは、本願明細書の実施例(段落【0046】等)を参酌すると、「BET法での表面積」を指すものと認められる。そして、刊行物1には、触媒の比表面積に関する記載ないし示唆はない。
しかしながら、参考文献1に「約20-80m^(2)/gのBET表面積」(摘示2a)について、「本発明の焼成触媒のBET面積は市販の充填型粒子よりも極めて高い。」(摘示2f)と記載されているように、マクロ孔ラネー触媒において、BET表面積は、20m^(2)/g以下であるのが通常であるということができる。
さらに、本願発明と引用発明における各触媒は、そのマクロ孔体積、マクロ孔割合が一致し、製造工程においても差異がないのであるから、引用発明の比表面積(BET表面積)が、20m^(2)/g以下からかけ離れたものとなる蓋然性は低いものといえる。
そうすると、引用発明の「ラニー金属触媒」について、その比表面積を測定し、通常想定される「20m^(2)/g以下」であることを確認し、それを数値範囲として特定することは、当業者が適宜なし得ることに過ぎない。

(3)本願発明の効果について
ア 本願発明は、本願明細書の段落【0009】の記載からみて、
第1級アミンの形成に高い選択性を示し、ニトリルの解離のような2次反応を回避でき、穏やかに水素化できる、
という効果を奏するものと認められる。
しかしながら、刊行物1には、従来技術の欠点として、「低分子量のポリビニルアルコールを使用する点にある。このため、マクロ細孔の比率が低下し、触媒活性が低下する。」(摘示1b)と記載されていることから、引用発明は、マクロ細孔の比率を大きくすることにより、触媒活性が向上することを指向するものであり、実際、刊行物1には、アクリロニトリルの水素化を具体的に行った実施例4として、「180℃、2.5×10^(7)Pa(当審注:250barに相当)」で水素化を行い、「ニトリル変換率は95%であった。得られたアミンの95%は第一級アミンであった。分子量の減少は見られなかった。」(摘示1k)と記載されているので、引用発明は、第一級アミンの形成に十分に高い選択性を示し、2次反応が起こっているとは認められず、本願発明の実施例4と同程度の温度及び圧力条件で、穏やかに水素化を行っているものと認められる。
また、上記(1)及び(2)で述べたように、引用発明の触媒が、製造工程について本願発明と実質的な相違点がなく、比表面積(BET表面積)が、20m^(2)/g以下からかけ離れたものとなる蓋然性も低いものといえることからみても、引用発明は、本願発明と同程度の効果を有するものと予測される。
してみると、本願発明によって奏される上記効果は、当業者の予測を超える格別顕著なものであるとはいえない。

イ 請求人は、平成20年10月21日付けの意見書において、「実施例1による触媒」(本願明細書の段落【0045】に記載の触媒)と、該実施例1による触媒とは、「工程(e)」を行わないことのみが異なる製造方法により得られた「比較例1による触媒」とを用い、アジポジニトリルの水素化を行った追加の実験データ(実施例5及び比較例2)を提示している。
そして、該意見書において、「上記比較例1の触媒は、引用文献1記載の方法に従って製造されたものです。比較例1の手法は、水酸化ナトリウム水溶液での洗浄工程を省略する以外は、本願発明による方法と全く同一であります。実施例5及び上記比較例2は、このようにして得られた触媒の、液相プロセスにおける、アジポジニトリルからアミノカプロニトリル及びヘキサメチレンジアミンへの水素化における性能を比較したものです。・・・
上記実験結果は、水酸化ナトリウム水溶液での洗浄工程(e)を実施することにより、より良好な性能を有する触媒が得られることを明確に示しています。アジポジニトリルに関する本願発明による触媒の、40時間の処理後の変換率は、引用文献1による触媒の変換率よりも明らかに高いものです。更に、ヘキサメチレンジアミン及びアミノカプロニトリルの形成に関するその選択率は、著しくより高いものです。本願発明による触媒の選択率でのより高い変換率は、明らかに当業者の予想を超えた効果であります。」と主張する。
しかしながら、比較例1による触媒は、活性化工程を繰り返していないから、刊行物1記載の方法に従って製造されたものではなく、上記実施例5及び比較例2は、本願発明と引用発明とを比較したものとはいえない。
そして、引用発明が、第一級アミンの形成に十分に高い選択性を示すことは、上記アで述べたとおりである。
してみると、上記請求人の追加の実験データに基づく主張は採用することができない。

4 まとめ
したがって、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-12 
結審通知日 2011-09-16 
審決日 2011-09-27 
出願番号 特願2001-347779(P2001-347779)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C07C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 泰之  
特許庁審判長 柳 和子
特許庁審判官 松本 直子
橋本 栄和
発明の名称 ニトリルの第1級アミンへの水素化法、ラネー触媒の製法、およびラネー触媒  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 星 公弘  
代理人 二宮 浩康  
代理人 久野 琢也  
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